『幕間 不穏の影④』
五年に一度の祭事、
街も城も、夜だと言うのに光に
ノエルはそんな光から遠ざかるように、与えられた
主が不在だったために照明の
どさり。と音を立てて、
抜け殻のように体を全部預けて深く沈むと、久しぶりに会った彼女——姉さんの様子に思いを
(……楽しそうだった)
破壊の騎士、ルーカス・フォン・グランベル——黒髪で長い後ろ髪を一つにまとめ、エターク王族特有の
破壊の力をその身に宿した〝救国の英雄〟と名高い騎士だ。
姉さんは彼と
(嬉しそうだった。幸せそうに見えた)
(連れ帰るつもりで来たのに……出来なかった)
幸せそうに笑う姉さんを、あんな地獄みたいなところへ連れて帰る気が起きなかった。
不在がばれないよう、
「
「あれ? 戻ってたんですか?」
予告なく、暗闇から鈴のような声が聞こえた。
——
「……頼んだことは?」
「ちょこっと抜け出して来ただけですよ~。と言うか、戻られたのならノエル様が自分で行けばいいじゃないですか」
「そんな気分じゃない」
「わがままだなぁ」
彼女から
コツコツと足音を鳴らして、暗闇から彼女が姿を現わす。
その容姿は——長い銀髪に
姉さんの姿を
「失敗しちゃったんですね」
事実だ。言い返す気力もない。
「
そう言う割には楽しそうな声色だ。
ゆったりとした動きで、彼女がこちらへやって来る。
そして
見上げれば赤く色付いた唇に
「
姉さんに似せた声で甘ったるく
(言い知れぬ
一瞬そんな思いが
姉さんの姿でそんな事、悪趣味にも程がある。
「ふざけてないで戻って役目を果たせ」
「つれないなぁ」
彼女は残念そうに
闇に包まれて、彼女の姿が変化して——次に闇が晴れた時には、ノエルの姿を写した彼女が立っていた。
「頑張ったらご
そう言って彼女は闇に
「僕の顔でそのノリはやめてくれ」と思うが、彼女は立ち去った後だ。
(……なんだか色々と疲れた)
やらなければいけない事は多いけれど、今日は休もう、そう思った。
ふと、窓の外の明かりが目に付く。
キラキラと輝く色はまるで宝石だ。
(宝石……僕の宝石)
彼女は世界でただ一人の、ノエルに残された宝物。
——家族。
(姉さんを守るためなら、僕は修羅、悪鬼にだってなれる)
これから
自分の全ては、愛する姉さんの為に
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