第八話 教皇ノエル
ルーカスがゼノンの護衛として、式典会場の壇上で教皇聖下一行の到着を待っていると——。
観客席からわっと歓声が
歓声がした方向に視線を向けると、観覧席の合間を
ルーカスはその後に続き、一歩後ろに並び立つ。
ゼノンが頭を低くして礼を取り、それに呼応して王族の面々も立ち上がって礼を取った。
礼は女神の代理人である教皇への敬意を
護衛についた騎士は礼を
ルーカスは
先頭を歩いて来るのは、純白の祭服に身を包んだ青年だ。
長めに切り揃えられた髪は純然たるマナの輝きと同じ銀色、
(——彼が教皇……ノエル・ルクス・アルカディア聖下)
教皇ノエルを先頭に、追従した
「教皇聖下。遠路はるばるお越し頂き、光栄の
ゼノンが、頭を低くした状態で出迎えの言葉を口にした。
それに対し、教皇聖下は右手の拳を胸に当て、目を閉じて告げる。
「
そして「楽にして欲しい」と続け、頭を上げる様に
教皇の言葉を受けてゼノンと王族が顔を上げる。
「ありがとうございます。
「お言葉に甘えよう」
教皇は微笑んで
ゆっくりとした動作で右手を
すると——会場一帯へ銀色に輝くマナの
まるで雪の様に舞い落ちる輝きに、観客の歓声が勢いを増して響き渡る。
教皇はそんな
ルーカスの眼前にもマナがきらきらと舞っている。
これは彼が持つ
あらゆる不浄と
前方へ目線を戻すと一瞬、教皇と目が合って、すぐに
(見られていた……のか?)
教皇が持つ瞳の色は、特段珍しくもないよくある色だが——銀髪に青い瞳の組み合わせは、彼女を連想させた。
ルーカスはふと思う。
イリアが記憶を失わず健在であったなら、この場に並び立っていたことだろう、と。
教皇を守るように彼の両翼に分かれて並び立つ、体格も様々な
彼らの中に〝【太陽】のレーシュ〟——彼女を語る偽物がいる。
皆フードを被り、顔には白い仮面を装着しているため容姿は確認出来ない。
(……手の込んだ演出だな)
深読みすれば、彼女の不在を
歓迎式典は順調に進行して行った。
教皇はゼノン以外の王族とも言葉を
この後の教皇一行の
翌日に王都を立ち、巡礼の目的地の一つ、グランベル公爵領ラツィエルにあるターコイズ神殿へ向かう予定だ。
その後は北上し、王都と港町ミトラの中間地点にあるアダマス神殿へと
式典の終わりを告げるように、再度歓声が
「教皇聖下、ご案内致します」
教皇を先導するため、ゼノンが城へ向けて歩き出す。
それを受けてルーカスは
団員達は無駄のない動きで集合して、ルーカスの後ろに着いた。
ルーカス達は城へ向かうゼノンの動きに合わせて歩を進めていく。
その後ろに教皇一行が続いて退場し、歓迎式典は
式典会場で何か起こるのではないかと、身構えていたルーカスだったが、
(教団が何を考えているのかわからないな……)
ルーカスは後方の教皇をちらりと盗み見ると——ばちり、とまたしても青い瞳と視線が合った。
彼は目を細め笑って見せたが——視線を戻した直後、背筋に冷たいものが走る。
再度彼を見ると、殺気にも似た感情を乗せた
氷を思わせる冷たい青がそこにある。
(教皇ノエル、どうやら彼は腹に
このままでは終わらない。
そんな予感にルーカスはきゅっと唇を引き結ぶのだった。
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