第四話 試合の決着
久方ぶりの父との打ち合いをルーカスは楽しんでいた。
刀を振り、
ルーカスの剣術の師匠は父だ。
幼き頃から
成人して軍人となってからは戦場を駆け、経験を重ねて腕を磨いて来たつもりだが、それでも父を圧倒するには
(けれど——負けるつもりはない!)
ルーカスは
レナートが水平に構えた刀の
レナートは両足で踏ん張っており「ギギギ……」と金属の
ルーカスは負けじと踏む込むと、ありったけの力を込めて
すると——レナートの足がほんの一瞬よろめく。
ルーカスはその
訪れたチャンスをモノにするため、力を
そうすれば耐えきれず、力に押し切られたレナートの体勢が崩れて刀が離れ、体は後ろへと後退していった。
ルーカスは
戦場であれば命はない構図、王手だ。
「降参だ」
白旗の代わりにレナートが両手を上げた。
試合が決着した瞬間だ。
観戦していた騎士達から「わああ」と
「腕を上げたな、ルーカス」
レナートが肩を
ルーカスはその様子を視界に捉えながら刀を引き、鞘へと納める。
「父上こそ。その腕前は
「はは。最近は頭の
試合を終えた二人は屋根のある通路で、壁に背を預けた。
レナートは気を利かせた騎士の用意したタオルを手に持っており、ルーカスも同じものを手渡され、首にかけた状態で
訓練所では二人の試合に感化された騎士が、
「父上、先の一件について教団から何か
先の一件とは、黒いローブの少女がイリアを連れ去るため襲撃して来た件だ。
「いや。知らぬ
「……そうですか」
「ディーンから報告はあったか?」
ルーカスは首を横に振った。
教団の内情を探るため、神聖国へ潜入しているディーンからの情報はまだない。
教団を
それらは全て慈悲深い女神の意思であり、女神の代理人・国主でもある教皇により行動が
各国にも協力的で、教義に
と、これが世間一般に知られるアルカディア神聖国だ。
しかし実態は——。
女神の意思など存在しないに
政治を回すのは教皇と十人の
(——どこにでもある話だ)
だが教団は取り
完璧な情報統制がされており、内情を探るのは
「アディシェス帝国の方はどうですか?」
ルーカスの問い掛けに、レナートは遠くを見つめた。
「静かなものだよ。不気味なくらいにな。戦争好きで、女神を否定し独自の宗教を
「何を考えているかわからないと言う点では、アルカディア教団もアディシェス帝国も変わりませんね」
「
レナートの視線を追って、ルーカスも空を見つめると、いつの間にか陽が沈み始めていた。
女性陣の作り出す音色だ。
「む、どうやら戻ったみたいだな」
「そのようですね」
街へ繰り出した彼女たちの帰宅を
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