第一章 第三話 小鬼族の里へ
「お前、人間のくせに
困惑する仲間たちをよそに、その
「あ、ああ、一応は。」
そこそこの距離があったにも関わらず、それを一気に詰めて鼻と鼻がくっつきそうなまでに突き合わせてくる若い
「凄えな、お前!!
人間が
「そ、そうか?」
正人が
ちなみに、創造主からもらった
「下郎、
金髪を肩まで伸ばした、
「やめろ、ベータ。」
そのまま
「ですが・・・」
「この
邪気が無いというよりも、邪気が無さ過ぎる。だからこそ正人を守るために随伴しているメイド型
「わかりました。」
不満気にベータは
「すまない。
私の名は正人。君の名前は?」
名を尋ねられた
「オレか?オレの名前はダァっていうんだ。」
これが、
ーーー
「ダァ・・・」
ダレは映像として映し出される末息子の姿に涙をみせる。
「ダァは自慢してましたよ、自分の名前は部族の英雄から取った名前なんだって。」
正人にそう言われ、ダレは苦笑する。
「まあ、間違ってはいないのですが・・・」
ダレの説明では、ダァというのはかつての
「ですが、
ダレの話によると、ダァはどうしょうもないほどの甘えん坊だったらしい。
「実は本来の名前があったのですが、“だぁだぁ”と甘える姿から皆んなが“ダァ”と呼ぶようになりまして。ダァが名前になってしまったのですよ。」
部族の英雄から取ったというのは、後付けの理由だったようだ。
「あの子は本当に甘えん坊で、邪気の無い子でした。」
懐かしそうに語るダレだが、そのことには正人も同意する。
人懐っこくて邪気が無く好奇心旺盛。そして、あまりにも警戒心が無かった。警戒心が無かったからこそ、正人を受け入れて友人にもなれたのだが、それだからこそ悲劇を産むことにもなってしまったのだが。
ーーー
正人は隣に座ったダァとの会話から、
たとえば、
そして、そういったことを開けっぴろげに話せるということは、性的なことに関して
「それにしても正人さあ。
「何が危ないんだ?」
「だって人間たちは、
そんなところに連れて来ちゃ危ないだろ?」
正人たちの乗る荷車の横を歩くダギは、弟の軽口に冷や汗をかいている。もし
ダギは森の警備隊の隊長を務めるほどなので、それなりに戦闘経験もあるし、部族の中では上位の強者であると認められてもおり、そのことを自覚もしている。
だからこそ正人に仕えている女たちの所作であったり、その醸し出す
そんな女たちがダァの言葉を真に受けて戦いを仕掛けて来たらどうなるか?
そのことを想像して背筋が凍る思いでいる。
ただ、幸いなことに正人に敵対する意思がなく、その意を汲んで大人しくしていることに感謝している。
そんな
「まあ、そんなことはしないけどな。」
と笑って話している。
「だって
それなのになんでわざわざ人間の女を襲うんだよ。」
風評被害だと言わんばかりの口調だ。
「極々一部には、そういう趣味の奴もいるようだがな。」
横からダギが口を挟む。
ダァに対して下手なことを言うなと、言外にそう意図を込めている。
ダギとダァの言葉に、正人もそんなものだろうと頷く。
そもそも異種族では美醜の基準が違うし、同族で雌雄がいるのならわざわざ危険を犯して他種族の女を襲うなどあり得ない。そんなことをしたら、必ず戦争になってしまうだろう。
そして極々一部にそういう趣味の者がいるというのも、人間の中にも獣姦をするような者が極々一部にいるのと同じことだ。
その極々一部に獣姦趣味の者がいるからといって、人間の全てが獣姦を好んでするわけではないのと一緒で、
「ホント、変な噂を広める奴がいるんだよな。」
ダァはそう言うが、それはおそらくだが森の奥深くに入らないようにするために、人間たちが自分たちへの警告とするために作った話だろうと推測する。
似たような話は、正人の転生前の世界にも昔話とかでいくらでもあるのだから。
「そろそろ里に着くぞ。」
ダギの言葉にダァは荷車から降りると、
「客人が来たことを伝えてくる!」
と駆け出して行く。
「まったくアイツは、落ち着きというものが無いんだよなあ。」
まだまだ子供と言いたげな表情で、ダギはそう呟いていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます