第一章 ゴブリンたち。
強引に資料室へと連れられた正人は、壁一面にセットされた大型スクリーンの前に座らせられる。
能力的にはウイルド配下の
「さあ、この世界に来てからの一〇年、正人様の行動を振り返りましょうか。」
有無を言わさぬウイルドの圧に屈し、
「わ、わかったよ。」
と、渋々ながら椅子に座ると、アルファがすかさず目の前のテーブルに飲み物を置き、一礼して下がる。
アルファたちメイドは正人の背後に立つと、そのまま彫像のように微動だにしない。
そしてオメガたちは正人に一礼し、退室する。
メイドたちは正人の身の回りの世話をするのが役目だが、執事タイプであるオメガたちの役目は正人の生活環境を快適に保つことである。
そのためにオメガたちは、自分のそれぞれの部下たちに指示を出すためにこの部屋から下がったのである。
オメガたちを見送ると、
「さあ、始めましょうか。」
ウイルドは宣言する。
ーーー
正人がこの世界に来てからの一〇年とはいうものの、初めの三年ほどのは特筆するようなことは何もない。
身体が自由に動かせることに感動し、色々なことを勉強できることに幸福を感じた正人は、ウイルドを教師役にして様々な武芸であったり魔法を学んでいた。
これは、地上に降りた時のことを想定したもので、もしもの時に自分の身を守ることができるようにするためだ。
そして天空の城のシステムであったり操作法を、ウイルドとともに試行錯誤しながら学んでいく。
その過程で作られたのが
天空の城の機能を十全に活かすための生体コンピュータである
天空の城で作成された者たちが全て女性型なことに疑問を抱いた正人が、ウイルドに尋ねたところ、
「創造主様からの御配慮です。」
とのことである。
『
ということらしい。
全て女性型のほうが潤いがあって良かろうとの配慮だと言われても、それはそれで落ち着かないものである。
そこでなんとか男性型ができないかと思い作成されたのが、執事タイプのオメガたちだったりする。
自分たちが作成されるところを見たアルファたちは、小さく歓声をあげている。
メイドたちは歓声を上げられても、正人はそうはいかない。はっきり言って動きがなく、退屈なロードムービーを観せられている気分になってくる。
それも三年目になり、ようやく変化が現れる。
正人がある程度の武芸を学び、魔法を使えるようになって、地上に降りたからだ。
その地はモラヴィア大陸北西端、ポメラニア王国の北西端に広がるリボニア大森林と呼ばれる地であり、
ーーー
「オメガ様より、大魔王様がお呼びとのことで・・・」
正人は自分の隣に座るよう促す。
ダレは恐縮するように頭を下げると、正人の隣に座る。
モニターに映し出されているのは、
「これは、カティン大森林では?」
そう、ダレたち
「私が“ダァ”と初めて出会った場所でもある・・・」
正人の言葉に、ダレもハッとする。
「そうでしたな。」
ダァはダレの末の息子であり、正人にとってはこの世界で初めてできた友人でもある。
懐かしさと共に、どうしようもない寂しさを感じる二人の目に、人懐っこい顔をした若い
「ダァっ!!」
ダレの目に涙が溢れる。
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