第36話 お嬢様は頭を傾げる
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大変申し訳ございません。
これから、ボチボチ更新していきますので
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トーア王族との謁見を終えたメル達。
今、トーア国王城の中庭をアラン王子とジョルノに連れられ歩いている。
「メル!酷いではないか!
おかげで、お祖母様である王妃から説教を頂くことになったではないか!」
「ふふふっ。私は〜何も嘘は言ってないよ〜
ねえ〜皆んな。違う〜?」
「はい。メルちゃんは、嘘は言っておられませんわ。ただ先に実は誘われていたのをおっしゃらなかっただけ。」
「まあ〜そこが〜メルちゃんの〜愛嬌なんだよね〜。」
「でもアラン王子が結局悪いでしょ。メルちゃんに断られたからといって、別のお嬢様を誘わなくても良かったのに!」
「そうそう!結局誰でも良いんじゃないのって思うわよね!」
「なっなんで!そうなるんだ……」
「まあまあ。王子も済んだこと。ウジウジ言うのは男らしくないですよ。
さあ皆さん!見えてきましたよ!
王子が皆さんに楽しんで昼食を取って貰う為に考えて考えた、趣向をこらした昼食です!」
ジョルノが指差した方向をお嬢様達が一斉に見る。
高い場所に料理長の姿が見える。
そこから、下に向かって竹が半分に割られた物が伸びていた。
その先には、桶が置いてあり竹から水が流れてきていた。
そして、その傍らにはテーブルと椅子が用意されテーブルの上には、おにぎりが用意されていた。
メルは、竹には興味を示さずテーブルのおにぎりに歓喜の声をあげる。
「うわぁ〜。おにぎりだよ〜!
皆んな〜これが〜おにぎりだよ〜。
ネネちゃんが〜育てているお米よ〜。
トーアの主食なのよ〜!」
メルの声で、お嬢様達がテーブルのおにぎりに注目する。
するとアラン王子が、ガクッと項垂れながら言う。
「メル!おにぎりより注目するのは、この竹のほうではないのか?!
なんなんだろうと思わないのか?」
「うん?……それもそうね〜
なんなのそれ?食べれる物ではないでしょう?私達お腹空いてるのよ〜!」
「…………まあ、メル!聞け。
竹に水が流れておるであろう?
そこに、素麺というトーアの麺を流すのだ。
それを掬って食べるという趣向のあるものなのだ!」
すると、それに反応したのはネネだった。
「なっ流し素麺だ〜!お姉ちゃん達!
流し素麺だよ!ネネ、やったことあるの〜!」
それを聞いてセシルが言う。
「ふふふっ。では、ネネちゃん。
お姉ちゃん達に見本を見せて頂けますか?」
ジョルノがネネに箸と、つゆの入った器を渡しながら言う。
「では、ネネさん。皆様に見本を見せて差し上げてください。」
ジョルノは、そう言いながらネネを竹の所に誘導しながら、料理長に声を掛ける。
「料理長!それでは、流してくれ!」
張り切るネネが箸を構える。
すると、アラン王子が箸と器を持ってネネの前に立つ。
そして、流れてきた素麺をすべて掬ってしまった。
唖然とするネネと周りのお嬢様。
ネネは、がっくりとして、目に涙を溜めていた。それを見たセシルとアリスがアタフタしながら、ネネを抱きしめる。
すると、アラン王子の頭をジョルノがハタキながら言う。
「貴方は、空気を読めないのですか!?
今の流れは、ネネさんが見本を見せる流れでしょうに!」
「イテっ!なんで叩くのだ!」
メルがアラン王子にスッと寄り、耳元で言う。
「ネネちゃんは〜私達の妹なの〜。
妹が一番なの〜。皆んな王子を許さないから〜。そこのところ王子しっかりとご理解くださいね〜。」
アラン王子は、一気に青ざめた。
メルは、大きな声で言う。
「皆んな〜!今のでわかった?
わからないよね〜。だから〜
もう一回〜ネネちゃん!見本お願いしたいの〜。」
それに呼応するかのようにセシルが言う。
「そうですわ!全然わからないですわ!
ネネちゃん!お願いできますか?」
ネネは、涙をふき言う。
「お姉ちゃん達の為に〜見本するの〜。」
ネネが竹の側に再度行く。
ジョルノが料理長に指示する。
素麺が勢い良く流れてくるのを、今回は見事にネネはキャッチすることができた。
メル達お嬢様達がネネに対して歓声を上げた。
ネネは、満面の笑顔になったのだ。
遠目で見るアラン王子。
そこに、ミーアとシェリルが行き言う。
「王子〜次からは〜気を付けて〜!」
「あっ…はっはい。」
タジタジになるアラン王子であった。
その後、中庭にはお嬢様達の楽しそうな声が響き渡るのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
メル達が流し素麺と、おにぎりを頂いているころ、ラトリシアでは山崩しの件で忙しくしていた。
「陛下!ご報告いたします!
連絡通り、山崩しが行われ帝国の兵達の進軍を遮断することに成功いたしました!
山が崩れたことにより、魔物達が一瞬溢れましたが、突如土の壁が立ち魔物の侵入を防いでくれました。」
「………おお!そうか!良かったのだ!
しかし山崩しを容易く行う魔法!
なんと凄い魔法士か!
元勇者パーティのレナ魔法士なのか?!」
すると、スッと影が伸びるようにラトリシアの国王の前に現れたのが、爺こと王国諜報機関"影"のキングだった。
「山崩しを行ったのは、レナ魔法士ではない。私がお仕えしているフォスター公爵家の御令嬢メルル・フォン・フォスター様だ!
レナ魔法士を超えるお力をお持ちなのだ。」
爺が突然現れた為、報告を行っていた文官が騒ぎ立てる。
「なっ何奴!陛下!お逃げください!」
「そう騒ぐでない!私の叔父上だ!
もう良いぞ。下がれ。」
文官は国王の言葉で我を取り戻し、畏まった雰囲気で下がっていった。
「叔父上!この度は、助かりました。
叔父上のおかげで、ラトリシアが守られたのです。」
「フフフッ。間違えるな。
私は、何もしていない。全てケイン様のご指示。
そして、メルお嬢様のお力あってのこと。
礼ならば、誰にすべきか、わかるな。」
「あっ!失礼しました。
王国フォスター公爵と、その御令嬢に礼をつくさなければですね!
と、なれば何をしたら良いか………」
そう言って考えるラトリシア国王に、爺は口髭を撫でながら言う。
「フフフッ。ラトリシア特産の蜂蜜を用意しなさい。
お嬢様と奥様は、甘い物が大好物。
ラトリシア一番の特級の蜂蜜ならば、お喜びになるだろう!ケイン様は、お嬢様と奥様が喜ぶものならばこれ以上の礼はないと言われるだろう!」
「……そっそれでよろしいのですか?」
「ああそれで良い。
ケイン様もお嬢様も卑劣な帝国が許せなかっただけのこと。
ラトリシアを守ったというのはあくまで結果論。帝国の邪魔をしただけの認識でおられる。
しかし、わかるな。
ラトリシアと王国が友好関係を築いているから良いが、王国に牙を剥くとお嬢様の魔法でラトリシアなどすぐに消えてしまうぞ!
王国は、いずれ帝国に戦争を仕掛けられるだろう。
その時に、貴様達ラトリシアは王国の為にどう動く?」
「………叔父上、ラトリシアは小国故、助太刀とは簡単にいきませぬ。」
「助太刀など求めておらん。
民の避難の受け入れ、王国からの何かしらの要請に答える心づもりをしておけと言うことだ。王国と敵対するなら、ワシがお前の首を取る。」
そう言うと爺は、ラトリシア国王に圧を飛ばす。
ラトリシア国王は、爺からの圧で息苦しさを感じた。
爺が言う。
「私は、もう戻らないといけない。
早う蜂蜜を用意せんか!」
「わっわかりました!すぐに!」
爺は、蜂蜜をとびっきりの笑顔で食されるメルの姿を思い描いて微笑むのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
流し素麺と、おにぎりを頂いて満足したメル達。
すると、中庭の向こう側が騒がしい。
剣のぶつかり合う音が聞こえたのだ。
それに気づいたメルが言う。
「王子〜ジョル君〜。
兵士さんの訓練かしら〜?
だとしたら〜見学したいわ〜。」
すると王子が答える。
「近衛騎士団と一般兵士の合同訓練だろう。
近衛騎士団が一般兵を鍛えているのだ。
メルが見たいなら見学するか!
トーアの近衛騎士団も中々強いというのを見せてやろう!」
そう言うとアラン王子は、真っ先に歩きだす。
すぐにその場所に辿り着く。
鉄鎧の兵士と白い鎧の近衛騎士が模擬戦を行っていた。
その模擬戦を囲むように近衛騎士と鉄鎧の兵士が座っているが、その様子は両極端であった。
鉄鎧の兵士は綺麗に整列し、いかにも訓練に参加しているといった感じだが、白い鎧の近衛騎士は、バラバラに座り模擬戦に対してヤジを飛ばしている。近衛騎士だけみると訓練とは言えない様子であった。
王子が来たことにも気づいているはずだが、姿勢を正すことすらしない近衛騎士達にメルは頭を傾げる。
そして、メルは模擬戦を注視する。
ここでも、メルは頭を傾げる。
近衛騎士は魔力を纏い模擬戦を行っているが、鉄鎧の兵士は魔力を纏っていない。
当然魔力を纏って身体強化している近衛騎士のほうが強くなるのは当然だ。
しかし、鉄鎧の兵士は押されながらも必死に食らいついていた。魔力を纏わずあの剣筋は、メルは純粋に凄いと思ったのだ。
しかし最後は吹き飛ばされて、兵士は膝をついた。しかしその兵士の目は、近衛騎士を睨みつけていた。
一段落ついたということで、アラン王子がメルに言う。
「どうだ!メル!近衛騎士は強かろう?!」
それに答える形でメルは、強い眼差しでそして大きな声で言う。
「王子!鉄鎧の兵士が近衛騎士ですか?」
「何を言ってる?白い鎧のほうが近衛騎士だ!模擬戦も白い鎧が勝ったであろう!」
「私の目には、鉄鎧の兵士の剣筋のほうが優れて見えました。」
そう言うとメルは鉄鎧の兵士の前に歩いて行き、言う。
「貴方、お名前は?」
「………ぜっゼフィロスと申します。」
「ゼフィロスさんね。
ゼフィロスさん、貴方は何故魔力遮断の腕輪をしているのですか?」
「…………………」
「悪いようにはいたしません。言えませんか?」
「…………一般兵故、言葉は制限されております。」
その時、ダラけていた近衛騎士達が、一斉に姿勢を正した。
すると、メルに声をかける者がいた。
「メル!どうした?その兵士が何かあったのか?」
王太子と王太子妃だった。アラン王子のご両親だ。
「王太子様〜王太子妃様〜。
近衛騎士と兵士の訓練を見ていたのですが〜
どうも、訓練というのは名だけで〜訓練というイジメのようなものです〜。
王太子様は〜ご存知なのでしょうか?」
王太子は、近衛騎士達を一瞥する。
近衛騎士達は、目を逸らす。
「メルよ。どういうことか説明してくれるか?」
「一般兵士だけ魔力遮断の腕輪をつけさせて模擬戦をさせています。
そこに、訓練という意図は感じませんでした。
近衛騎士のヤジも平民を虐げるような酷いものでした。」
王太子は、先程まで模擬戦をしていた近衛騎士を厳しい目で見つめ問いかける。
「団長。これはどういうことだ?
説明しろ。」
先程模擬戦を行なっていたのは近衛騎士団長だったようだ。
「いっ…いや…メル様の言われていることが、わっ私は理解できません。」
近衛騎士団長は王太子の厳しい目を避けるように、震えながら俯き答える。
メルは、言う。
「王太子様〜近衛騎士は〜どういう立ち位置なのでしょうか?
見るから貴族ばかりが集まった無能集団にしか見えません。
近衛騎士の仕事は?なんですか?
王族をお守りするのが仕事ではないのですか?トーアでは違うのでしょうか〜。」
王太子が答える。
「メルの言う通り近衛騎士の仕事は、王族を守る為のものだ。
メルよ。はっきり言ってくれて良い。
私に気づいたことを教えてくれ。」
「はい。
王族を守る近衛騎士が、アラン王子が訓練に現れたのに気付きながらも、ダラけた姿勢を正すこともせず、模擬戦に対して王族の前で酷いヤジを飛ばす。
これは、不敬であると思うのですがいかがですか?
子供だからと気を抜いているのですか?
その辺りからして訓練とは名ばかりの物と判断できます。
正式な訓練であるならば、王子が見学するということは王族が視察に来たということ。
模擬戦を中断してまで王子に礼を尽くすのが、私達王国では当たり前のこと。
実際、王太子様と王太子妃様が見えた時は一斉に姿勢を正しました。
これらを見ると、王太子様、王太子妃様。
アラン王子は、近衛騎士達に王族と認識されていないと言うことになりますが、それでよろしいのですか?
それで本当に緊急時に王族の皆さんは、近衛騎士を信用できるのですか?」
王太子は、近衛騎士団長に怒りの表情を見せながら言う。
「メルの言ったこと!誠であるな!
我息子を何だと思っている!
腕輪の件といい、キチンと説明をしてもらおうか!」
するとメルが言う。
「王太子様〜腕輪の件ですが〜簡単な方法がございます。
あの一般兵士のゼフィロスさんに腕輪を外して、もう一度その団長さんと模擬戦をしたら、近衛騎士団が無能集団だということもわかりますよ。」
王太子がゼフィロスを見て言う。
「ゼフィロスと申す者。腕輪を外しなさい。
魔力を存分に使い模擬戦を!
叩きのめしても構わん。私が王太子の名の元に許可する。」
ゼフィロスは、腕輪を外す。
ゼフィロスは一気に魔力が体に行き渡るのを実感する。
そして、魔力を全身に纏う。
全身から白いモヤを立ち昇らせる姿は、強者の姿だった。
ゼフィロスは、近衛騎士団長の前に一歩踏み出す。
ただそれだけだった。
それだけで、近衛騎士団長は泡を吹いて倒れてしまった。
その他の近衛騎士達は恐れるように後退りしていた。
すると王太子が言う。
「あいわかった!
近衛騎士団が名ばかりの物と確認した!
近衛騎士団を解体し、再度近衛騎士団を作り直す!
ゼフィロスよ。腕輪の件、訓練という名ばかりイジメ。メルの言う通りで間違いないか。」
ゼフィロスは王太子とメルの前に跪き口を開く。
「間違いありません。一般兵士は平民ということで従うしかありませんでした。
言葉も吐けず……。
メル様。先程はお答え出来ず申し訳ございませんでした。」
後に、ゼフィロスは剣豪ゼフィロスと呼ばれ、近衛騎士団団長につくのだが、それは、又後の話。
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