第35話 お嬢様は謁見する。

メル達の乗る白馬車が、トーア国の王都に入る。

メル以外のお嬢様達は、他国の建物、街の様子に興味深々だ。


すると、トーアの民が歓声を上げる。


(メル様〜!よくきてくださったぁ!)

(メル様!メル様〜!こっち見て〜!)

(メル様〜おかえり〜!)

(メル様〜ゆっくりしてください!)


お嬢様方は、メルの人気の高さに、ビックリしていた。


「メルちゃん〜王国の商業街や職人街でも〜大人気だけど〜トーア国でも凄い!」


「他国で、この人気は凄いですわ。」


「ちょっと、もしかしてさっき、ラトリシアを帝国から救ったから、ラトリシアでも人気が出るんじゃない?」


「ふふふっ。アリスちゃん〜いくらなんでも〜ラトリシアでは〜人気出ないわよ〜。

私〜行ったことないんだもん。

トーア国は、春に呪術問題を母様と二人で〜解決したから〜皆んな感謝してくれているのだと〜思うよ〜。」


「王国の中毒騒動に、トーア国の呪術問題。

メルちゃんは、凄いなぁ。

私と同じ歳なのに、人を助ける事をして、こうして皆に尊敬されてるんだもん。

本当に凄いわ。そんなメルちゃんとお友達になってる私も何かしなきゃっておもうよね。」


「中毒騒動の時〜私、メルちゃんの側に居たけど〜私は私の出来ることを頑張ろうと思ったもん。でも、それで良いんだとわかったんだ〜。だから、シェリルちゃんも〜シェリルちゃんが〜出来ることを頑張ったら良いんだよ〜」


「うん。そう思いますわ。

緊急時に、出来ることを頑張る勇気が大事なんですわ。私も、そんな時に動ける人になれるよう努力しますわ。」


お嬢様方の話を微笑みながら聞いていたネネが言う。


「メルお姉ちゃんも、お姉ちゃん達も〜

皆んなカッコいいです〜。

ネネも〜お姉ちゃん達のように〜出来ることを頑張ろうと思う!」


「ふふふっ。ネネちゃん〜私からすれば〜ネネちゃんは凄いよ〜。

あんな小さかった稲を〜あんなに大きく育てて〜くれたのだもの〜。

凄いよ〜ネネちゃん。」


メルは、そういうとネネの頭を撫でた。


「あっ!皆んな〜トーアの城が見えてきたよ〜。王国の城と同じくらい〜大きいんだよ〜。

春来た時〜ゆっくり城の中見れなかったから〜皆んなで探検させてもらおうね〜。」


お嬢様が一斉に歓声をあげて白馬車から城を眺める。


白馬車は、警備兵の敬礼を受けながら、城の門を潜る。


そして、停車した。


そこには、トーア国の近衛騎士と宰相、そしてアラン王子とジョルノが待っていた。


爺が、白馬車の扉を開ける。


お嬢様方とネネが白馬車から降りてくる。

そして、最後に爺の手を借りてメルが降り立つ。

メルは、爺に馬車の操車の礼を言い、白馬車を引いた白馬の元に行き、白馬の首を撫でながら、白馬を労う。


それを見たトーア国の近衛騎士、宰相、アラン王子、ジョルノは、メルの神々しいまでの慈愛の姿を見て、思わず見惚れたのだ。


メルは白馬を労った後、宰相の前に行き、華麗なカーテシーを披露し、挨拶した。


「迎えて頂き、とても嬉しいです。

大臣も騎士の皆様もお元気そうでとても良かったです。お世話になります。」


メルが挨拶の言葉を言い終わるとお嬢様方、ネネがそれに合わせて頭を下げた。


「メル様!思わず見惚れましたぞ。

とても、美しいカーテシーでした。」


「ふふふっ。えっと……宰相様ですか?

ジョル君のお父様?」


「はい。まさしく、ジョルの父でございます。

ジョルとも仲良くして頂きありがとうございます。お疲れでしょうが、謁見の場で国王と王妃、そして王太子、王太子妃がお待ちです。

このまま、謁見の場へお進みくださいませ。」


メル達は、宰相に連れられ謁見の場へと足を向ける。


アリスが、小声でセシルに言う。

「せっセシルちゃん!

謁見の場で、どっどうしたら良いの?!

あんな、メルちゃんみたいに出来ないよう〜。」


「大丈夫ですわ。

先程みたいに、メルちゃんが代表して挨拶してくださいますわ。

私もメルちゃんみたいに、あんな洗練された所作は出来ませんわ。

先程のように、合わせて頭を下げたら良いのですわ。」


「そっそっか。よっ良かったよ〜。」


アリスは、ホッとした表情を見せた。

同じく平民のシェリルは、ポカンと口を開けながら、他国の城を興味深く見渡していた。

ネネは、ミーアに手を引かれてニコニコ笑顔だ。


ミーアは、メルに、この先に何があってなど、説明を受けていた。


アランとジョルノは、宰相とともに、メル達の前を歩いていたのだった。


そして、謁見の場の扉が開かれた。


アランは玉座の横に立っている父である王太子と母である王太子妃の横に立つ。

宰相とジョルノは近衛騎士達が両端に立つ先頭に立つ。


メル以外のお嬢様方は、一気に顔が引き攣った。


自分達が通る道の両端を大臣や文官、近衛騎士が立っているからだ。


メルは、それに気づいたのか、振り向き、優しい笑顔でお嬢様方を横一列にした。


そして、優しい笑顔を浮かべながら堂々と赤い絨毯の上を歩いたのだった。


メルが歩きだし、お嬢様方も横一列で進んだ。


そして、玉座の前でメルが立ち止まって、一呼吸入れてから華麗なカーテシーで挨拶する。


「国王陛下、王妃様。そして、王太子様、王太子妃様、ご無沙汰しております。

皆様、お元気そうでなによりでございます。

アラン王子にお誘いを受け、遊びに来させて頂きました。

六人と大人数になりましたが、どうぞよろしくお願いいたします。

あっ!そうですわ〜。

まずは、お礼を。

春先に、お分け頂いた稲が今年の秋、大豊作となりそうです。

ありがとうございました。

この稲は、トーア国と王国の友好の証。

永遠に、引き継ぐべきもの。

大切にしていきますわ。」


国王陛下が口を開く。


「ハハハッ!皆のもの!見たか!

メル殿の口上!10歳の娘とは思えぬ落ち着きよう!流石は、トーア国の救世主と言ったところじゃ!

聖女ローザ様の教育が素晴らしいのだろうな。

あっ!すまぬすまぬ。メルよ。

置いてけぼりにしてしもうたな。

もう、メルよ外向きの喋りはよかろう?

もう、楽に話をしようではないか。

後ろのお嬢様方も楽にしておくれ。」


「ふふふっ。はい、そうします〜。

慣れない〜喋り方をして〜舌を噛んでしまいそうでしたぁ〜。」


メルの言葉で、謁見の場が和やかな雰囲気になった。


王妃が口を開く。


「ふふふっ。メル。やはり、貴方はその喋り方が良いですわ。貴方の優しい心が良くわかる喋り方です。

王国とトーア国の永遠の友好をと言うのであれば、メル。簡単な方法がありますよ。

貴方がトーアに、アランの嫁に来てくれたら良いのですよ。」


王妃の言葉に、王太子と王太子妃が頷く。

アランは、顔を真っ赤にして慌てふためいていた。


お嬢様方は、ポカーンと口を開いていた。


メルがそれを受けて答える。

「ふふふっ。王妃様〜。

アラン王子が〜その気が無いようです〜。

夏休み前も〜学園の近くの〜カフェで〜同じクラスの〜伯爵令嬢とデートされていました〜。アラン王子は〜モテモテなんですよ〜。私達なんか〜なかなか近づけないですよ〜。ねえ〜セシルちゃん。」


「はい確かにそうですわ。

白馬車の中から、皆で見ましたもの。

外でジョルノ君が護衛してたので、お声掛けしましたもの。

ケーキ店で一緒にお茶しましょうと。

まあ、護衛中だからとお断りされましたが。」


すると、ミーアが言う。

「私、あまりアラン王子と話した〜ことないかも〜。ジョル君とは〜よくお話しするけど。」


アリスとシェリルが言う。

「私もそうだね。

ジョル君とは話するけど、王子とは話す機会がないもんね。

クラスの女子が必ず誰かいるもんね。」


すると、王妃が呆れた顔でアランを見ながら言う。


「アラン、貴方は何をやっているのですか。

メルと仲良くなる為に留学したのではないのですか。

王太子妃からそう聞いていましたが!

その伯爵令嬢がダメとは言いません。

しかし、アラン!貴方は、王太子が国王となった後、次の王太子ですよ。

お相手は、度量良しだけでは足りません。

器量も必要なのですよ。

メルなら、度量も器量も文句なしなのですよ!

本当に嘆かわしい。」


アラン王子は焦ったように言う。


「おっお祖母様!ちっ違います!

伯爵令嬢とは別に何も!

ただの友としてお茶を飲んだだけです!

めっメル!ひどいじゃないか!

あの日、私が真っ先に誘ったのは其方だ。

其方が、お友達とケーキ店でお茶するから無理と言ったのではないか。」


「ふふふっ。そうだったかもね〜。

でも〜モテモテなのは〜嘘じゃないじゃない。ねえ〜ジョル君!

ジョル君も護衛で、外に立って大変だと思うよ〜。」


ジョルノが言う。


「いえいえ。それが私の役目ですから。」


王妃が言う。


「宰相。貴方の息子は立派ですわ。

何か褒美を考えないといけません。

その歳で、立場をわきまえているのは、凄いことです。宰相の教育の賜物ですね。」


「ありがとうございます。

まあ、しかしその為に王子とともに留学させて頂いているのですから。当たり前のことです。」


国王が言う。


「メルよ。稲は順調に育ったのは大変喜ばしい!大豊作とは、また良かった!」


「国王様〜そこにいるネネちゃんが〜とても頑張ってくれたんですよ〜。」


「……もっもしや!ネネ、其方達が王国に呪術で苦しんでいることを伝えてくれた者か!?」


ネネが笑顔で答える。


「はい!今〜メルお姉ちゃんの〜父様の領地で〜お世話になっているの……なっています〜。

頑張って稲を育ててます!」


国王陛下は立ち上がり、ネネの元に行きしゃがみ込み、ネネと目線を合わせ言う。


「そうか。そうか。其方達のおかげで今、トーア国はあると言っても過言ではない。

よく王国に助けを求めてくれた!

ありがとう!

どうじゃ?幸せに暮らしているか?」


「はい!王国の人達は〜皆んな優しいの〜。

ネネ、お姉ちゃんが五人も出来たの〜。

皆んな大好きなの〜。」


「ほう!そうか。そうか。

良かったの〜。

これからも頑張るのだぞ。

ネネから、ネネの父様と母様に伝えてくれるか?

トーアの王様が、感謝していたと。」


「はい!わかりました〜」


ネネは、とびきりの笑顔で答えた。

国王は、ネネの頭を優しく撫でたのだった。


王妃が言う。

「陛下、メル達も馬車で長い時間揺られて来たのです。疲れているのです。ここらへんにしときましょう。

長々と話込んでしまいました。

ごめんなさいね。

あっそうそう。

なにやら、アランとジョルノが色々趣向をこらしているみたいです。

楽しんでいらっしゃい。

滞在中は、自分の城だと思って過ごしてもらっていいですからね。

給仕になんでも言いなさいな。」


「ありがとうございます!

2日間お世話になります〜!」


メル達の謁見は終わったのだった。





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