第33話 お嬢様は高ランクレディ

メル達は、鉱山ダンジョンに踏み入った。


シャドウが先頭を歩き、お嬢様方は、それに続く。

ネネは、セシルに手を繋がれていた。

最後尾をメルが行く。


すると、早速ボアが出てきた。


「お嬢様方、ボアです。丁度良い腕試しです。

お願いします。

メルお嬢様は、手出ししたら駄目ですよ。」


アリス、シェリル、ミーア、セシルが思い思いに魔法を放つ。


シェリルがサンダーを放つがボアを掠めただけ。

ミーアのファイアボールは外れた。


セシルのウインドカッターがボアの足を捉えた。


そして、動けないところをアリスがサンダーで仕留めたのだった。


シェリルが言う。


「くぅ〜当たらないもんだね!

セシルちゃん!ナイスだよ。足狙いは!」


「いえいえ。狙って出来ていたら良いのですが、たまたまそこに飛んだだけですわ。

動いているのを狙うのがこんなに難しいとは思いませんでしたわ。」


アリスが言う。

「そうだね!私は、セシルちゃんが足を止めてくれたから当てることが出来たけど、これは、難しいよ。」


ミーアが言う。

「前に〜メルちゃんが言ってた〜精度向上付与。魔法士の方々が〜必要とするのが〜わかったよ〜。」


シャドウが言う。

「ハハハッ!まあ、初めてですし、こんなもんですよ。

慣れれば楽に当てれますよ。

あれ?メルお嬢様?どうしました?」


メルは、皆んなが倒したボアをまじまじと見ていたのだった。


「シャドウ〜。私が黒き森で〜倒していた〜ボアと違うね〜。

こんな小さくて可愛らしいのなんて、初めて見るよ〜。

何で〜?」


「ハハハッ!

メルお嬢様!メルお嬢様やケイン様がボアと言っていたのは、ボアの最上種のグレートビッグボア。

違うものです。

そのボアは、Fランク。グレートビッグボアは、Aランクに位置付けされています。

メルお嬢様は、簡単にグレートビッグボアを倒されますが、普通は、隊を組んで倒す魔物ですよ。」


「そうなの〜?

グレートビッグボアっていうのか〜。

隊を組んで……対して強くないのにな〜。」


「ハハハッ!メルお嬢様にかかれば、Aランクの魔物も形無しです。

メルお嬢様、黒き森は弱い魔物は出ません。

お嬢様が拳一発で倒されていた、トレントも

最上種のエルダートレントですからね。

あと、ブラッディタイガーなんかは、限りなくSランクに近いと言われていますからね。」


「メルちゃん〜そのグレートビッグボアって大きいの〜?」


「そうだね〜まあ、だいたい平均5メートル以上あるよ〜顔も憎たらしい顔してるのよ〜。

まあ、首を落として〜終わりだけどね〜。

シャドウ〜!このボア持ってかえらないの〜?」


「ボアの肉なら、安く買えますよ。

メルお嬢様。グレートビッグボアの肉と味が全然違いますからね。

あの味で慣れているメルお嬢様のお口には、合わないと思いますよ。屋敷で婆やが出す肉は、グレートビッグボアの肉ですから。

なので、置いときましょう。ダンジョンが自然と処理してくれます。」


アリスが言う。

「あっ!お茶会の時のあのお肉がそうだったんだ!あれ、めちゃくちゃ美味しかったもん!」


「あっ!あれか!確かに!とろけたよ!」


ダンジョンの中で、のんびりと会話をするメル達。


「さあ!どんどん行きましょう。

先は、長いですから。」


メル達は、先に進むのだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



メル達は、地下3階を踏破し、今地下4階を進んでいる。


地下2階までは、メル以外のお嬢様達だけで魔物を倒していたが、地下3階からシャドウが補助していた。

そして、地下4階に入ったところでお嬢様方は、後ろに下がりメルが対処していた。

魔物のランクがCランクに上がったからだ。

その辺の冒険者でもCランクの魔物は苦労するのだ。特に鉱山ダンジョンの魔物は、地下4階からゴーレムなど硬い魔物が主になる為、冒険者もなかなか足を踏み入れることが出来ないエリアなのだ。


しかし、メルは拳一発で粉砕していく。

一度ミーアがメルに聞いた。

「メルちゃん〜あんな岩の化け物を手で〜痛くないの〜?」


「ふふふっ。魔力を纏っているから痛くないよう〜。何も纏ってなかったら〜さすがに手が血まみれだよ〜。」


との事だった。


拳に魔力を纏って粉砕しているのだ。


なのでアッサリと地下4階を踏破してしまった。


地下5階に降りようとした時、シャドウが言う。


「メルお嬢様。ここから先は、恐らく冒険者は一切入っていません。

入っていたとしても、帰ってきてません。

だから、一応気をつけて下さい。

もうワンランク魔物の質が上がると思いますよ。

メルお嬢様なら、大丈夫だと思いますが。」


「うん。わかった〜。

この下に鉱石が沢山あるのでしょう!?」


「はい。誰も入っていないということは、鉱石に手を付けていないということですから。

その誘惑に負けて、欲を出した冒険者が足を踏み入れ帰ることができない羽目になるのですから。」


「じゃあ〜取り放題だね〜

じゃあいくよ〜!」


メルは、足取り軽く階段を降りて行く。

他のお嬢様達は、恐怖を感じながらも、表情は明るい。

言わばお化け屋敷の感覚に近いのかもしれない。

それに、メルとシャドウと言う圧倒的強者が居るという安心感もあるのかもしれない。


階段を降りて、地下5階に足を踏み入れた。

いきなり、襲ってきたのはゴーレムの上位種のミスリルゴーレムだった。


メルは、拳を叩きつけるが、一発で粉砕することは出来なかった。


「くっ!硬いな〜!

じゃあ〜行くよ〜」


ミスリルゴーレムの懐に入って、メルは連打する。

すると、バラバラバラという形でミスリルゴーレムが崩れていく。


その場に残ったのはミスリルの山。


「シャドウ〜これ!ミスリルよね〜!

持って帰る?」


「お嬢様、ミスリルはミスリルですが所詮ゴーレムが食した後のミスリルですから良質ではございません。

やはり、原石の塊を採掘するほうが良いと思いますよ。恐らく、そろそろ岩肌に突き出ている原石があると思いますよ。」


ミーアが言う。

「しかし〜感覚がおかしくなるわ〜ミスリルゴーレムって〜本当は、強敵なんでしょう?

メルちゃんに掛かればたやすく倒してしまうんですもの〜本当に強いの?って感じだよ〜」


シャドウが言う。

「ミーアお嬢様。ミスリルゴーレムは、間違いなく強敵ですよ。

皆さんあれを見てください。

欲を出した冒険者の成れの果てです。」


皆がシャドウの指差した方向を凝視する。


「「「「きゃあ!ガイコツ!」」」」


お嬢様方が悲鳴をあげる。


メルが言う。

「シャドウ〜貴方は〜デリカシーに欠けているわ〜。

ああいうのは〜皆んなの目に入れないように振る舞うのがスマートな紳士じゃなくって〜?」


「おっと!これは失礼いたしました。

失念しておりました。

メルお嬢様が、ああいったものを怖がらないので同様に思っていました。」


「ちょっと〜シャドウ〜失礼しちゃうわ〜!

それだと〜私が普通のレディではないみたいじゃない!」


メルがプンプンとした感じでシャドウに言う。


するとネネが言う。

「ふふふっ。メルお姉ちゃんは〜高ランクレディなんだよ〜。

普通のレディではなくて〜高ランクレディです〜」


「おっ!左様でございます!

流石ネネお嬢様!

わかってらっしゃる。

メルお嬢様!ネネお嬢様がおっしゃるように、メルお嬢様は、高ランクレディなのですよ。」


「………ふふふっ。もういいわ!

シャドウ〜そういうことにしといてあげるわ〜!じゃあ鉱石探すわよ〜!」


少し歩くと景色が一変する。


岩肌から鉱石の塊があちこちで突き出ているのだ。


ミーアが興奮気味に言う。


「きゃあ!あれは、アダマンタイト!あんなに大きい!

こっちは、ヒヒイロカネだわ!これも大きい!そして、ミスリル!どれもこれも、最高品質だわ〜!」


メルが言う。

「うわぁ〜本当にこれは〜取り放題だわ〜!

シャドウ!取るわよ〜!」


メルは、張り切って鉱石を取ろうとするのをシャドウが止める。


「メルお嬢様がすることではありません。

私が掘りますから。

私にお任せを。

メルお嬢様に採掘させたとローザ様に知れたら、怒られますから。」


「そうなの〜?シャドウ大丈夫〜?

私も手伝うのに〜。

まあ〜そう言うことなら〜頑張ってね〜。

取り敢えず〜人数分のお土産をお願いね!

魔物は、私が対処しとくわ!」


シャドウは、腕まくりをしてツルハシを振りかぶったのであった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「はぁ、はぁ、はぁ。

………めっメルお嬢様……

人数分……ミスリル、アダマンタイト、ヒヒイロカネ掘り出したと思うんですが……。」


シャドウの周りでお嬢様方は、鉱石に目を輝かせていた。


「シャドウ〜後〜ミーアちゃんの父様用がいるの〜。

何〜疲れたの〜?

だから〜私も手伝おうかって言ってるじゃない。」


「だから、メルお嬢様に、こんなことさせるわけにいきません。」


「ふふふっ。じゅあ〜もうちょっと頑張って〜

応援してあげるわ〜

♪頑張れ頑張れ!シャドウ!♪

♪頑張れ頑張れ!シャドウ♪

さあ皆んなも一緒に〜

♪頑張れ頑張れ!シャドウ♪

♪頑張れ頑張れ!シャドウ♪」


その時、奥から音がして、魔物が現れた。

ミスリルリザードだ。

簡単に言えばデカいトカゲの全身ミスリルで覆われた魔物だ。


メルがミスリルリザードと対峙する。


シャドウが叫ぶ。

「ハァハァ。メルお嬢様!

そいつは、厄介な相手です。

弱点は、腹です。腹だけミスリルに覆われていません。なんとか裏返しにして、腹を斬月で切り裂いてください。私は動けそうにないです。お願いします!」


「ふ〜ん。裏返しにして腹を切り裂いたら〜良いのね〜!

わかったよ〜!

皆んな〜少し離れていて〜。」


メルは、斬月を抜かずミスリルリザードに瞬歩で突っ込む。

背後を取り、尻尾を掴み壁に、ぶち当てる。

そして、瞬時に斬月を抜き、腹を斬り裂く。


ミスリルリザードは、呆気なくメルによって狩られてしまった。


「お見事です!メルお嬢様!

流石です!Sランクを、こうも容易く屠るとは。

お嬢様!そいつは、持ってかえりますよ。

良い素材になりますから。」


「そうなの〜シャドウ〜!

さっさと〜掘ってよ〜。

もう良い時間よ〜!

お腹空いてきたし〜!」


「はい。頑張ります。」


その後、無事鉱石を掘り出し、ダンジョンから抜け出したのだった。


「………メルお嬢様、満足していただけましたか?」


「ふふふっ。大満足です〜!

シャドウ!良く頑張りました〜。」


「良かったです!まあ、私は必ず筋肉痛になりそうですけど。

体がすでにピキピキですよ。」


「えっ!大丈夫なの〜!

馬車の操車は〜私〜できないわよ〜。」


「まあ、今はまだ大丈夫です。

明日は、もしかしたらヤバいですね。

では皆さん帰りましょうか。」


日も暮れかかった頃、メル達は白馬車に乗り込み、領地の屋敷に戻ったのだった。






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