第30話 お嬢様の妹分

メルとミーアは、ビックリした表情で稲を見ていた。アリスとセシル、シェリルは初めて見る植物に興味を示していた。水の中から生えているのだから。


すると、駆けてくる者がいた。

メルとミーアに抱きつく。


「メルお姉ちゃん!ミーアお姉ちゃん!

やっと会えたぁ〜!

ネネ!お姉ちゃん達をビックリさせる為に稲を育てるの、頑張ったんだよ〜!」


「ネネちゃん〜!ビックリだよ〜!

私達が植えた時〜こんな小さかったのに〜

もう私達の背くらいあるよ〜

ネネちゃんが〜凄い頑張って育てて〜くれたって〜聞いてたよ〜!ありがとう!」


続いてミーアが言う。

「稲も凄い伸びたけど〜ネネちゃんも〜背が伸びたんじゃない〜?大きくなった気がするよ〜」


アリスとセシル、シェリルが興味深々で寄ってくる。


「メルちゃん、ミーアちゃん!

ご紹介頂きたいですわぁ。」


「あっそうだね〜!

ネネちゃんっていうの〜!私達の妹なの〜!」


「うわぁ。ネネちゃん!

私アリス!私のこともお姉ちゃんと思ってくれる?!私、妹欲しかったんだよ!」


「はい!アリスお姉ちゃん〜!

よろしくお願いします!」


「アリスちゃんズルいですわぁ。

私も妹が欲しかったのです。

ネネちゃん!私もセシルお姉ちゃんと呼んでくださいますか?」


「ふふふっ。はい!セシルお姉ちゃん!

よろしくお願いします!」


「ネネちゃん!私は、シェリルよ!

よろしくね!」


「シェリルお姉ちゃん!よろしくお願いします!」


ネネは、とびきりの笑顔で三人に微笑む。


すると、三人は、ネネの妹力にメロメロになったのだ。抱きしめ出したのだった。


メルが言う。


「ネネちゃん!私達〜ネネちゃんを〜迎えにきたんだよ〜。

父様母様は〜先に領地の屋敷に行ってるの〜。

ネネちゃんも〜一週間、私達と一緒に遊ぼう!」


「うわぁ〜ヤッタ〜!

母様と父様に言わなきゃ!

お姉ちゃん達〜家こっちなの〜!」


ネネは、喜び勇んで、家に駆けていく。


メル達は、笑顔でネネを追いかけたのだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「メルお嬢様、本当にネネも、よろしいのでしょうか?

お邪魔じゃないのでしょうか?」


「ネネちゃんの母様〜。

私とミーアちゃんが〜ネネちゃんも来て欲しいと思っているの〜。

それに、他の皆んなも〜ネネちゃんと遊ぶの〜楽しみにしてるの〜。」


「そうなのですか。

………甘えてよろしいのでしょうか?」


ここで爺が言う。


「ネネお嬢様は、メルお嬢様とミーアお嬢様の妹だと私は、認識しておりますぞ。

お嬢様が望まれておるのですから、甘えると言うのは違いますぞ。

気にされなくても大丈夫です。」


「そうですか…では、お嬢様。

ネネをよろしくお願いします。」


「はい!一週間〜ネネちゃんを〜お借りしますね〜。」


すると、奥からネネが大きな鞄を抱えてやってきた。


「ネネちゃん〜忘れ物は〜ない?」


「えっ!……無いと思うんだけど〜。

メルお姉ちゃんに言われたら〜心配になってきたよ〜。」


爺が言う。


「ハハハッ!ネネお嬢様。

大丈夫ですぞ。

何か忘れていたとしても、領地の屋敷には、婆やが居ますから。

婆やが、全て用意してくれますから。」


「本当?爺〜?」


「こっ、これ!ネネ!失礼ですよ。」


「いやいや。爺でよろしいですよ。

お嬢様の妹ですからな。

そうでしょう!メルお嬢様。」


「そうだよ〜爺。私達の〜妹なの〜。」


「ふふふっ。お姉ちゃんが〜五人もできちゃったぁ〜。」


「ネネ!「よろしいかと。」


ネネの母様がネネに注意しようとしたのを、爺が止めたのだった。


「メルお嬢様。ネネお嬢様の用意もできたようですし、そろそろ参りますか?」


「うん!そうだね〜行こうかぁ〜。

では、ネネちゃんの母様〜

一週間〜ネネちゃんをお借りしますね〜。」


白馬車に乗り込んでいく。


ネネは、メルとミーアに挟まれる形で座る。

ニコニコ笑顔だ。


窓から、母様に向けてネネは、手を振る。

「母様〜行ってきます〜。父様に言っといてね〜。」


「ネネ。……では、楽しんできなさい。

ご迷惑をかけては駄目ですよ。」


白馬車が、ゆっくり動きだす。


ネネは、母様に手を振る。


そして、姿が見えなくなって座り直す。


ニコニコ笑顔で。


その笑顔が、アリスとセシルのハートを鷲掴みする。


領地の屋敷に着くまで、ネネを中心にお喋りが止まらなかったのだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


所変わって、トーア国では、アラン王子とジョルノがお嬢様方をおもてなすのに、試行錯誤を重ねていた。


今いるのは、果樹園だった。


王子が来たので、果樹園の主は、慌てふためいていた。


ダラダラ汗をかきながら、対応している。


「おっ王子。どっどのような用事でしょうか?」


「おお!其方の作る果物は、とても味が良いと聞いたのでな。メル達をもてなすのに良いと思ってな。メルが来るのだ。トーア国に。

其方も、命を助けて貰っただろ!

メルをもてなさなければな!なっ!そうだろ?」


「おお!メル様が!メル様がトーアに又、来られるのですか!

それは!是非美味しい果物を食べていただかないとなりませんな!」


「そうであろう!

園主よ!今、何が美味しいのだ?」


「今は、良い時期です。

まずは、桃。果肉から、滴り落ちる果汁がたまりませんよ。

そして、夏と言えば、スイカは外せませんね。

それと、後は、ブドウですかね。

実際に切ったものがございます。

食べて見てくださいませ。」


園主の嫁が、桃を切ったものとスイカを持ってくる。


アラン王子が手を伸ばそうとしたのを、ジョルノが制する。


「王子。貴方は、立場がわかっておられないのですか。

簡単に出された物を口にしては、なりません。

私が毒味をいたします。」


「………そっそうか。」


ジョルノが園主と園主の嫁に言う。


「すまない。気を悪くしないでくれ。

王子は国の宝。簡単に口にできないのだ。

どれ?私が頂こう。

これが桃か。

ガブリ。もぐもぐごくん。

こっこれは……あっ甘い!

良いな!

スイカは、どうだ?

ガブリ。もぐもぐゴクン。

うん!これも甘くて美味い!

暑い夏に持ってこいだな!

王子!桃とスイカとても良いですよ!」


「………そうか。

メルが満足してくれそうか?」


「はい!間違いありません!」


「……………そうか。

ならば、桃とスイカを貰おうか。」


「いや。王子。

ここに、メル様達に来てもらいましょう!

とれたてを食べていただくのです。

この辺りにテーブルを用意して。

そうですね……園主!

メル様達に収穫して頂くことは可能か?」


「はい。それは、可能です。」


「おお!王子!メル様達に収穫してもらうという趣向が良いと思います。

採って楽しい!食べて美味しい!

二度楽しんで貰えますよ!」


「毒味は、どうするのだ。」


「ご自分で採って食べて頂くのです。

毒をいつ盛るのですか。

必要ありません。

目の前で、給仕に切り分けさせます。

問題ありません。」


「………そうか。」


「どうしました?歯切れが悪いじゃないですか!

メル様!絶対お喜びになりますよ!」


「……歯切れが悪いって……食べてないからな。味がわからんから。」


「じゃあ、食べたらいいじゃないですか。

残ってるので。

もう、毒味は終わってますし。

さあ!どうぞ!

私が食べた後、食べれば良いのに!

何してるんですか!」


アラン王子は、ジョルノを一瞥してから桃をガブリ。

「おお!これは!美味いな!

うん!これは良い!」


アラン王子の機嫌が一気によくなったのだ。


すると、園主が言う。


「王子。今、トーアの若者で流行っていることがあるのですが……。」


「なんだ?言ってみろ。」


「はい。砂浜にスイカを丸ごと持っていって、目隠しをして棒でスイカを叩く遊びが流行っています。

スイカ割りという遊びですな。

非常に盛り上がり、叩き割った後、美味しく頂くといった流れです。」


「ほう!私達も海には必ず行こうと思っている。

園主よ!詳しく!そのスイカ割りというものを教えてくれ!」


アランは、目を輝かせ園主に話を聞くのだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


メル達は、領地の屋敷についた。


屋敷の中に入るとケインとローザが待っていた。


ケインが言う。

「おお!お疲れさん!

アリスもセシルもシェリルも自分の家だと思って気楽にしてくれよ!

ミーアとネネは、二度目だからな!

気楽にできるだろう!

ネネ!久しぶりだな!」


ネネが言う。

「ご当主様〜!お世話になります〜!」


「ネネ〜!おじちゃん、なんか寂しいぞ!

なんでご当主様なんだよ!

前は、おじちゃんって呼んでくれてたろう!父様も母様も居ないんだから、おじちゃんでいいだろう?」


「ふふふっ。そうだね〜父様と母様がいたら怒られるけど〜居ないから〜おじちゃんだね。

おじちゃん〜久しぶりなの〜!」


ケインは、ネネを抱き上げる。


「おお!そうこないとな!」


すると、婆やが言う。


「お嬢様方。お茶とお菓子の用意ができましたよ。こちらにどうぞ。」


各々席につく。


すると、セシルが言う。


「ネネちゃん、私の隣で頂きましょう。」


すると、アリスが言う。


「ズルい!私の横においでよ。」


すると、ネネが言う。


「ふふふっ。じゃあ、アリスお姉ちゃんとセシルお姉ちゃんの間に座る!」


婆やは、笑顔で椅子をセットする。


ネネは、ニコニコ笑顔でアリスとセシルの間に座った。


アリスとセシルが甲斐甲斐しく世話をする。

この二人が妹が欲しかったというのは、本当のようだ。


そんな三人を見て、メルは優しく微笑んだのだった。


この日は、皆で楽しく屋敷ですごしたのだった。










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