第4章 夏休み編

第29話 お嬢様は避暑に行く。

教室内も、じわりと汗をかく季節になっていた。

制服も夏服に変わり、メル達女子は、白を基調とした制服に変わっていた。


クラスの揉め事も、あのお茶会以降おきず、平和な毎日を過ごしていた。


「はい!明日より皆さんが待ちに待った夏休みです。

楽しい日々を過ごしてください、

しかし、宿題があること、頭の片隅に置いておいてくださいね。

また、二学期皆さんに会えることを楽しみにしていますよ!

では、楽しい夏休みを!」


リーナ先生が教室を出て行く。


教室内は、一斉に解放感に包まれる。


メル達も同様だった。


「あっ!そうだ〜!

私〜夏休み〜領地に〜避暑に行くんだ〜。

出来たら〜皆んなと〜行きたいな〜

どうかな〜?」


「メルちゃん〜湖で〜今度は〜釣りしなきゃね〜!ネネちゃん〜元気かな〜?!」


ミーアの言葉にセシルが反応する。


「湖があるのですか?!

それは、避暑に持ってこいですわ!

是非、ご一緒したいですわ。」


セシルは、あれ以来メル達と常に行動するようになっていた。

前までの尖った性格も、とても丸くなり、アリスとも親友となっているのだった。


シェリルが言う。

「メルちゃん!行きたいけど、いつ頃なの?

日程がわかってるほうが参加しやすいの。

私、店のお手伝いあるから!アリスもでしょ!」


「そうね。その方が良いよ!

母さんにお小遣い前借りしなきゃ!」


メルが笑顔で言う。

「じゃあ〜皆んな来てくれるんだ〜

ヤッタ〜!

じゃあ、今からミレーネお姉ちゃんの店で日程を決めよう!母様と父様には、言っているの。皆んなを連れて行きたいって。

日程を決めて来なさいと言われてるの〜。」


メル達が席を立つと、アラン王子とジョルノがやってくる。


「メル!夏休みに領地に行くのだろう?!

その時に、少し足を伸ばして是非トーア国にも来てくれ!

湖も良いかもしれんが、夏と言えば海だ!

海は良いぞ!」


「海〜?なぁに。それ。見たことないんだけど〜。」


「メルちゃん。王国は、海に面していないので、なかなか海を見ることはありませんわ。

私も海は、見たことありませんもの。

海。とても魅力的ですわ。」


「おお!セシル嬢!其方は、良い事を言う!

そうだろ!そうだろ!

トーアは海に面しているからな!

海遊び楽しいぞ!」


「そうかぁ〜海かぁ〜領地からトーアまで半日ほどで着くから〜良いかもね〜。

春に行った時は〜町は巡ったけど海は〜見てないもの〜。

日程に組み込むとしますか〜。

なら、アラン王子!しっかり楽しませてくれないとダメだからね!」


メルは、アラン王子の鼻先に人差し指を突き立てて、ツンとした感じで言ってから、微笑んだ。


アラン王子は、一気に顔が赤くなる。


ミーアが言う。

「でも〜大丈夫かな〜?アラン王子、結構抜けたところが〜あるから〜

ジョル君〜アラン王子と一緒に計画立ててくれるの〜?」


「ハハハッ!勿論です。しっかり皆さんに楽しんで頂ける計画をアラン王子とともに練らせて頂きますから!」


すると、メルはジョルノの手を両手で包み込みジョルノの顔を下から覗き込み、ニコっと笑顔で言う。


「ジョル君〜お願いね〜!

アラン王子だけだと〜不安だから〜。」


「はっはい!わかりました!

お嬢様方に満足頂ける計画を!しっかり立ててみせます!」


ジョルノの真っ赤になりながら答えた。

それを聞いたメル達は、ミレーネの店に行くため、教室を出て行ったのだった。


「なっなんで!私だけだと不安なのだ!

………それと、なんでメルは、ジョルノの手を握ったのだ!羨ましい!

ちょっと!ジョルノその手を貸せ!」


アラン王子は、ジョルノの手を握る。


「なっなんなんですか!

気持ち悪い!

王子!離してください!」


「………メルの感触が残ってるのではないかと思ったが……なんもないな。」


「あっ当たり前でしょ!

冗談はそのくらいにして、我々も帰りますよ!トーアに!

トーアに帰ってから、忙しくなりますよ!

お嬢様方に満足して頂く、計画を立てないといけませんから!」


「そっそうだな!

では!さっさと帰るとしよう!」


アラン王子とジョルノは、教室を後にしたのだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


結局、メル達が領地に行くのは八月の頭からになったのだった。


そして、今、メル達は宿題を片付ける為、

商業街に出来た、王国図書館にいるのだった。


「なんでなの〜なんで図書館にも聖女と勇者の物語がないのよ〜!

おかしいわ〜。マーガレットお姉ちゃんに言わないと〜!

読みたいのに〜!」


シェリルが言う。


「めっメルちゃん!本の話はしないで!

集中できなくなるから!

………ほら!もう私の頭の中、謎男シリーズで一杯になってしまったじゃない!」


「ごっごめん!シェリルちゃん!

さあ、集中して〜魔法陣を書ききるのよ〜!」


シェリルは、王城で借りた謎の男爵シリーズにドハマりしているのだ。


セシルが言う。

「でも、メルちゃんに魔法陣教わりながらだと進みますわ。

宿題の難関は、魔法陣の書き写しですもの。」


アリスが言う。

「セシルちゃんは、なんやかんや言って、基本がわかってるからよ!

私は、教えてもらってもなかなか難しいわ。」


ミーアが言う。

「これ〜皆んな苦労してるだろうな〜。

でも〜メルちゃんには〜余裕の〜宿題だよ〜。現に〜とっくに終わってるし〜。」


シェリルが言う。

「メルちゃんに、難しいものなんてあるの?

ないでしょう!ズルくない?!」


メルが言う。

「ふふふっ。まあ〜この宿題は〜私にとって〜宿題と言えるものでは〜ないわね〜。

でも〜皆んなも〜もうかなり〜できてきているよ〜。

頑張って〜。」


その時、図書館にドタドタと入ってきた者がいた。


「おお!メルちゃん!屋敷行ったらよ、図書館にいるっていうからよ!」


「ひっ髭のおっちゃん〜!シィ〜なの!

図書館で、 そんな大きな声は〜ダメなの〜。私に用事なの〜?じゃあ〜外で〜話しましょう」


メルは、サイラスの背中を押して、図書館を出て行く。


「メルちゃん!領地に避暑のついでに、トーアまで足を伸ばすそうじゃねえか!

当然、城にいくだろ?アラン王子絡みだろ?

だからさ、この手紙を王様に渡して欲しいんだ!

実はな、ガロから連絡があったんだけどよ。

春に植えた米がよ!大豊作になりそうなんだよ!あっそうそう!ネネちゃんが、凄い頑張ってくれたそうなんだ!

メルちゃんとミーアに見せる為に凄い頑張ってくれたんだとさ。

それでな、王国に事前に米の味を広めたほうがいいとガロが言うんだよ!

それでな、米を仕入れようと思ってな。

その手紙なんだよ!」


「うわぁ〜そうなんだ〜!

ネネちゃん〜頑張ってくれたんだ〜!

今度あったら〜お礼言わないと〜!

手紙ね〜わかったよ〜

お米の味を広めるなら〜お店の協力が〜必要なの〜。

髭のおっちゃん!私良い店知ってるの〜!」


「ハハハッ!シェリルの親父の店だろ!フィリア亭!

それは、俺もわかってる!

だから、先に話を通してきた!

俺も、フィリア亭が適任だと思ってる。」


「流石〜髭のおっちゃん!

わかってるね!

……それと〜お米をしって貰うんだったら〜おにぎりが〜いいわ〜シェリルちゃんの店では、お米を使った料理を出して貰って〜

おにぎり専門店みたいな物、絶対〜流行ると思わない〜?!」


「おお!おにぎり専門店か!良いな!

場所探しとく!

それは、絶対やろう!

儲かるぞ!

メルちゃん!おにぎりの具も調査してきてくれな!

頼むぜ!」


サイラスは、メルに手紙を預ける。

そして、頼むぜと言い残しその場から去っていった。

メルは、その手紙を眺めながら、ネネが頑張ったことを思い、優しく微笑んだのだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


そして、ところ変わって、トーア国。

アラン王子とジョルノがお嬢様方を満足させる為に、計画を練っていた。


そして、二人は海辺にいた。


「王子。海まで来ましたが、何か目的があるのですか?」


「何を言っているんだ!海がメインだろ!

メルが海を見たいと言ったのだ!

とりあえず、ここで、メルが喜んでいることを妄想するんだ!」


「もっ妄想!王子!言うことがキモいですよ!」


「何故だ!キモいとか……言うなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


「なんで海に向かって叫ぶんですか!

恥ずかしい!やめてくださいよ!」


「ジョルノ!お前、私を応援すると言っていたが、メルに手を握られて顔を赤くしていたり、怪しいんだよ。お前は、メルのこと好きなのかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


「だから、叫ぶな!恥ずかしい!」


「照れているのか?好きなのか?どっちなんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


「だ・か・ら!叫ぶなと言ってるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!」


「で、どうなのだ?」


「そっそんなの。メル様を嫌いな人がいますか?メル様は、上級生にも大人気ですよ。

なんとか、お近づきになろうと皆必死ですよ。」


「ジョルノ!応援するって言ったではないのかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


「だから!叫ぶなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!

応援してますよ!

でも、ハッキリいって、アラン王子!

脈なしではありませんか!

なんなら、私のほうがメル様の好感度は高いじゃないですか!」


「うぐぐぐぐぐ。うぉ〜!」


アランは、駆け出し海に飛び込んだ。


そして、びしょ濡れで戻ってくる。


「何しているのですか!

そういう所ですよ!

メル様に引かれるのは。」


「メルが海に飛び込むかもしれん。

事前調査だ。」


「貴方は………馬鹿なのですかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!

メル様がそんな、はしたないことするはずないでしょうが!」


アランとジョルノのやりとりを見た者は、滑稽なやりとりに見えただろう。

しかし、二人は真剣なのだ。

真剣にお嬢様方を喜ばす為に考えているのだ。

ただ、このような形になってしまうのは、全て、アラン王子のキャラが悪いのだ。

この頃は、まだ無邪気な男の子だったのだ。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る