第28話特別編 爺と婆やの日常
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今日も、日常編です。
爺と婆やの日常をお送りしたいと思います。
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フォスター家。
フィリア王国の公爵である。
元勇者で、現在公爵のケイン。
そして、元第一王女のローザ。
そして、その二人の娘。メルが暮らす屋敷である。
このフォスター家には、住み込みでフォスター家を守る者が居る。
それが爺と婆やだ。
二人の朝は早い。
外の色が黒から紫に変わる頃、二人の朝が始まる。
まず爺を見て見よう。
まず爺が一番に行うのは、フォスター家の象徴ともいえる、白馬の世話と白馬車の手入れだ。
白馬をブラッシングする爺。
「ハハハッ!気持ち良いですか。
其方は、いつでも綺麗な白を保ってくれんといかん。
綺麗で気品を保って貰わねばな。」
爺は、白馬に話しかけながら綺麗にブラッシングをしていく。
馬の手入れが終われば、厩舎の掃除。
厩舎が綺麗になったところで、白馬に飼葉と水を与える。
「ハハハッ!しっかり食べるのだぞ!
フォスター家の皆様を運んで貰わねばならんのだからな!」
そして、次は白馬車の手入れだ。
雑巾を搾り、手洗いをするのだ。
そして、両サイドに付いている家紋をピカピカになるまで、拭き上げる。
白馬車の中の掃除もかかさない。
「おやおや。お嬢様の髪飾りですな。
置き忘れていらっしゃる。
ああ!昨日お友達のお嬢様に髪飾りを付けたりして、遊んでおられましたな。
一番のお気に入りの髪飾り。良かった。
お嬢様が起きられる前で。」
爺は、メルの髪飾りを大事に執事服のポケットに入れ、屋敷に入って行くのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
婆やは、まず最初にトイレの掃除を始める。
2階のトイレ掃除から始めるが、出来る限り音を立てないように始める。
家人が起きないようにだ。
見た目ピカピカのトイレ。
これを保てているのも、婆やの毎日の掃除の賜物である。
そして、一階のトイレ掃除も同様である。
そして、屋敷を見回り出勤してくるであろう部下の給仕の仕事の割り振りを頭の中で整理していく。
そして、調理場に入る。
薪に火をつけ、調理開始だ。
スープの具材を切り分け、鍋に投入していく。
そして、煮立つまでの間に、昨日仕込んでいたパン種を取り出す。
「ふふふっ。しっかり発酵して、膨らんでいますね。」
そして、パンを焼いていく。
スープが煮立ったところで、トマトを大量に刻んで、スープに投入していく。
「う〜ん。少し味が濃いかしら。
朝は、味薄めを食していただかないと。
旦那様は、物足りないでしょうが。
ふふふっ。」
健康管理は、食からである。
フォスター家の健康管理は婆やの仕事なのだ。
そうこうしていると、部下の給仕達が出勤してくる。
((((おはようございます!)))
「はい。おはようございます。
それでは、もうすぐ旦那様と奥様も起床されるでしょう。
お嬢様の起床を待ってから、2階部分の仕事を始めてください。
二階のテラス前のテーブルの下あたりの絨毯が汚れています。
お嬢様が誤って飲み物をこぼされたのでしょう。
そこは、しっかりと綺麗にしといてください。それと、……………………………………
……………………………二階部分は、そんな感じですかね。
皆さんがお出かけになってから、各部屋の清掃をしてください。
それでは、一階部分の清掃と仕事を始めてください。」
(((承知いたしました!)))
部下に指示を出す婆や。
部下と言っても、もう一つの顔、諜報機関"影"の部下ではない。
なので、口調も柔らかいのだ。
「婆や!おはよう!」
「婆や〜おはよう!お花に水をあげてくるわね〜」
「旦那様、奥様おはようございます。
奥様、水やりに給仕を一人つけましょうね。
貴方、奥様と一緒に水やりに行ってください。」
ローザが給仕とともに庭園に出て行く。
「旦那様、こちら届いております。
マール共和国方面の分でございます。
帝国方面は、まだ届いておりません。
お茶をご用意いたしますね。」
婆やは、そう言って"影"からの調査書をケインに渡す。
「おお!わかった!
帝国方面は届いてないのか。
珍しいな。"クイーン"と"ジャック"が定期調査書を遅らすとは。
何か動きがあったのかもな。」
「そうだと良いのですが、"クイーン"が忘れている可能性もあります。
あの子は、そういうところがありますから……本当に申し訳ございません。」
「ハハハッ!
忘れているなら、そのほうが良いじゃないか!動きがないってことだからな!
そう怒ってやるなよ。婆や。」
「旦那様も奥様も、あの子を甘やかしすぎですわ。
"ジャック"には、ちゃんと"クイーン"を導けと言っているのですが。」
「婆や!それはそれで、ジャックが不憫だ!
姉を弟が導く。それはそれでやりにくいだろ。
まあ、いずれ帝国は動くだろうが婆や、俺はそんなに心配はしていない。
帝国は、知らないからな。
メルの存在を。」
「お嬢様のお力は、私もわかっておりますが、やはり正確な情報をいち早く手に入れることも重要でございます。
普段からスピードをもって情報を扱いませんと!マール共和国方面が出来ていることを
仮にも4柱と言われている"クイーン"と"ジャック"が出来ていないとは、嘆かわしい!
"影'の上官としてもそうですが、母親としても情けないですわ。」
ケインは、婆やのプリプリモードに苦笑いをするのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「あっ!お嬢様!動きますと、クシを通せませんよ。」
「は〜い。婆や〜。髪飾りは〜いつものお気に入りの〜髪飾りが良いの〜。」
「お嬢様。その髪飾りですが、何処に置かれましたか?」
「えっ?ええっ!いつもの所にないの〜?
なんで〜?
昨日〜湯浴みした時かな〜?」
「お嬢様。湯浴みの時は、もうすでにございませんでしたよ。」
「うそ〜。どこにやったんだろ〜?」
すると、爺がやってくる。
「お嬢様。お探し物は、これですかな?」
「あっ!そうだよ〜。爺〜何処にあったの〜。」
「ハハハッ。お嬢様白馬車の中にお忘れになられておりました。
昨日、お嬢様方の髪に付けたりしてお遊びになられていたでしょう。」
「あっ!その時か〜。忘れていたのか〜。」
「お嬢様。あったからよろしいですが、いつか無くされますよ。
いつも言っておるでしょう。
帰ってこられたら、必ずこの箱に入れて下さいねと。」
「は〜い。婆や〜。ごめんね〜。
でも〜婆や〜婆やも〜髪飾りしてないの〜気づいてなかったでしょう。
ふふふっ。だから〜おあいこだよ〜。」
「ふふふっ。お嬢様。何故おあいこになるのか婆やはわかりませんわ。ふふふっ。」
「ハハハッ!
それでは、お嬢様。馬車の用意はできています。お送りいたしましょう!」
「はい!爺〜参りましょうか〜。
婆や〜行ってくるね〜。」
「はい!いってらっしゃいませ!」
メルが屋敷を出て行く。
ここからが、婆やの仕事が忙しくなるのだ。
婆やが、食器を洗っている時だった。
すっと現れる影があった。
婆やは、食器を洗いながら口を開く。
「引き続き、大統領周辺を洗え。
帝国からの密書が手に入るなら手に入れろ。
あくまで、手に入るならだ。
無理はするな。
まだその時ではない。」
「……はっ!」
影がスッと消える。
それと入れ替わりに入ってきたのがフォスター家に仕える給仕。
「給仕長。二階の部屋の清掃に移ります。」
婆やは、振り向いて言う。
「はいはい。しかし、交代で休憩を取ってくださいよ。休憩室にお茶とお菓子を用意してますよ。」
「「「ありがとうございます!」」」
婆やは、洗い物を続ける。
すると、又スッと影が現れる。
「母様。遅くなりました。ごっごめんなさい。」
「やっとですか。定期報告は、昨日ですよ。
4柱としての自覚があるのですか。
マール共和国方面は、ちゃんと昨日報告にきていますよ。
4柱の貴方達二人が何をしているのですか。
甘えですか。答えなさい。」
「………母様。怖いです。」
「仕事の話をしている時は、母様と呼ぶのはやめなさいと何回言わせるのですか。」
「……はい。"エース"遅れたのは、動きがあったからです。調査書にも書いてますが、例の召喚された勇者が、活動を始めたのでそこまでを今回調査書として提出しようとしたからです。
経験を積むために魔物を狩りだしました。
まだ、ビビり腰ですけど。」
「理由があったなら良いです。
調査書を出しなさい。」
「はい。これです。
…………では、帝国に…戻ります。」
「待ちなさい。お茶くらい飲む時間はあるでしょう。
貴方の母として、そんなしょぼくれたまま潜入調査させれませんから。ふふふっ。」
「母様!お茶飲みます!」
「では、このお茶セットを休憩室に持っていってください。」
「は〜い。母様、お嬢様の話も聞かせてくださいね!」
「はいはい。お嬢様は凄いですよ。
あっ!そうだ。"ジャック"は野菜は食べてますか?食べるように言っときなさいよ。」
「母様にチクルなと言われていましたが、ジャ……違うレンは、肉ばっかり食べてるの。言っちゃった。」
「もう!あの子は!母様が怒っていたと言っときなさい!」
「は〜い!
私は、野菜も食べてるもん!」
「ふふふっ。そう。」
婆やと"クイーン"ことラムは、微笑んだのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
爺は、メルを学園に送った後、ローザを教会に送る。
そして、今王城の敷地内にある諜報機関が管理する特別牢に来ていた。
ここに入れられている囚人は、王国にとって、害になると"影"が判断した者を入れているのだ。
ここは、治外法権。いくら国王であっても手出しができない場所なのだ。
爺こと"キング"がその場に行くと、警備していた"影"達が一斉に礼をする。
「変わりはないか。」
爺が毅然とした態度で言う。
(はっ!何もありません!)
「そうか!しかし、注意は怠るなよ。
こないだ捕まえた盗賊団は、残党どもが残っておる。頭を取り戻す計画は立てておるはずだ。警戒を!」
「はっ!」
「それでは、今から私はその頭を取り調べをする。
すべてのアジトを吐かすからな!」
「はっ!お願いいたします!」
爺は、この後メルの帰宅時間まで取り調べをしたのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
メルを乗せた白馬車がフォスター家の門を潜って停車する。
婆やが待ち構えていた。
扉を婆やが開ける。
「婆や〜!ただいま〜
見て〜!今日は〜髪飾り〜付いてるでしょう〜。」
「ふふふっ。お嬢様。おかえりなさいませ。
ふふふっはい。確かに。髪飾り付いてますね。
部屋に戻りましたら、まず箱に入れてくださいませ。
湯浴みの準備もできています。
湯浴みをしてくださいませ。」
「は〜い。婆や〜湯浴みしながら〜お話ししよう〜今日ね〜とても〜面白いことがあったんだよ〜!ふふふっ。もう〜ずっと〜婆やに聞いてもらおうと〜思ってたんだよ〜!」
「まあまあ。なんでしょうか?
楽しみですね〜。
爺は聞いたのですか?」
「いや。何度かお尋ねしたのだが、これはレディの話だと言われるのでな。
教えていただけないのだよ。」
「まあ。レディのお話なら、爺はダメですね。さあ、それではお嬢様。湯浴みしながら婆やに教えてくださいませ。ふふふっ。」
「は〜い!
メチャクチャ面白いんだよ〜
婆や楽しみにしててね〜!」
メルの笑顔を見て、爺と婆やは、愛おしいそうに微笑むのだった。
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