第26話 お嬢様のお茶会
屋敷に帰ったメルは、父様と母様に相談したのだった。
「……………って感じなの〜。
どうしたら〜クラスが一つに〜なるのだろう?」
「おお!メル!青春してるな!
良いぞ!羨ましいな!」
「もう〜!ケイン!茶化さないの〜。
メルちゃんは〜真剣に〜悩んでいるのよ〜。
そうねぇ〜………………!
メルちゃん〜。お茶会なんかは、どうかな〜?」
「え〜。お茶会〜?」
「そうよ〜。メルちゃんが〜主催で〜この屋敷で〜お茶会をするのよ〜。
そして、ドレスを着飾って来るのではなく〜ドレスコードを学生服にするのよ〜。
これなら〜平民の子達も参加できるわ〜。
美味しいお料理と美味しいお菓子を食べながらクラスメートとお話しするのよ〜。
すぐ皆んな仲良くなるわよ〜。」
「………でも〜皆んなくるかな〜?」
「ふふふっ。来るわよ〜。
平民の子達もドレスコードが学生服なら〜気兼ねしないだろうし〜メルちゃんは〜どちらかと言うと〜平民の子達とのほうが〜仲良くしているのでしょう?
貴族の子は〜メルちゃんが〜誘えば〜必ず来るわ。確実に。
何故なら〜貴族の子達は〜公爵家に興味深々だもの〜。」
「…………なんかぁ〜結局公爵家っていう爵位を利用してる〜なんかずっるいんだ。」
「そんなことないわよ〜。
皆が勝手に思うことだもの〜。
爵位を利用しているわけでは〜ないのよ〜。」
「……そっか〜。
お茶会……。母様〜お茶会!採用します〜!」
「ハハハッ!じゃあ!ミレーネに言って山程お菓子を用意させようか!
そうだな!?今週の土曜日が良いんじゃないか?!
次の日も休みだしな!」
すると、婆やが口を挟む。
「お嬢様!準備は、お任せを。
庭に、テーブルと椅子を用意して……
お料理は、何がよろしいでしょうか?
臨時で給仕も応援要請しましょうね。」
「ハハハッ!メル!
お茶会!任せておけ!
婆やも、このように張り切っているからな!」
「旦那様!当たり前でございます。
旦那様が、そういうことに興味をしめしてくださいませんから、私の腕がウズウズしっぱなしなんでございますよ。
お嬢様!お茶会!この婆やに、お任せを!
美味しいお料理と美味しいお茶。
必ず皆、仲良くなれますよ。」
「ハハハッ!
婆や!頼むぞ!
メル!心強いな!」
「はい!婆や〜!お願いします!」
メルは、お茶会を企画することにしたのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
次の日の朝。
メルは、教室に行く前に職員室に寄った。
そして、教室に入る。
すると、いつものようにアラン王子が、女の子に囲まれていたが、メルを見つけてアラン王子がメルに声を掛ける。
「メル!今度日曜日!お茶会を開催しようと思っている。
是非メルも来てくれ。
たまには、ドレスで着飾って、そういう催しをするのも、王族、貴族の嗜みだ。」
「………お茶会?王族、貴族の嗜み?
……行かない。
お茶会が王族と貴族の嗜み?誰が決めたの?
ドレスで着飾って?
そういうのって自己満足したい方を誘えば良いじゃない。
それと、私も土曜日にお茶会を企画しているの。ドレスコードは学生服よ〜。
皆〜平等なお茶会よ〜。」
メルは、ツンとして席に着く。
アラン王子は、焦りながらジョルノに言う。
「こっ断られてしまった………。」
ジョルノは言う。
「こっこれは。キツイですね。
めっメル様の地雷を踏んでしまったようです。」
そうしてると、リーナ先生が教室に入ってくる。
「はい。皆さんおはようございます。
先程、フォスターさんからとても良いお話しを頂きました。
フォスターさんから、皆さんにお伝えしてください。」
メルは、立ち上がり言う。
「はい!
えっと〜。今週の土曜日に〜フォスター家の屋敷で〜お茶会を開催します。
色々あったけど〜やっぱりクラスが一つに纏まらないと〜ダメなの〜。
皆んなと仲良くなりたいの〜。
その為のお茶会を〜開催したいと〜考えてます。
ドレスコードは〜学生服です。
必ず〜学生服で来て欲しいの〜。
リーナ先生もお休みの所申し訳ないのですが、是非ご参加いただけたら嬉しいです。
うちの婆やが〜張り切ってお料理も沢山用意してくれます。
父様が〜ミレーネお姉ちゃんに言って〜山程ケーキとお菓子を持ってきてくれます。
美味しいお料理と美味しいお菓子。美味しいお茶を飲みながら、皆んなと仲良くなれたらと思います。
参加の有無を直接〜今日中に私に言いに来てください〜。
是非全員〜参加してくれれば嬉しいです。」
クラスが騒然となる。
(うわぁ。公爵家の屋敷!すげえ!)
(メル様とも仲良く慣れる!)
(聖女様とお話しできるかしら?)
(勇者様に魔竜討伐のお話しを聞きたい!)
アリスがメルに言う。
「学生服でってことは、私達平民もお茶会に参加して良いってこと?」
「当たり前だよ〜。アリスちゃんとシェリルちゃんが〜来てくれなかったら〜私〜泣いちゃうから〜」
ミーアが言う。
「私も〜一緒に〜泣くよ〜!」
シェリルが言う。
「ふふふっ。絶対行くよ!ねえ!アリス!」
「ふふふっ。そうだね!」
などなど皆、思い思いのことを口走っていた。
皆の笑顔が弾けている中、セシル・ウーゴだけ顔を俯け、暗い表情をしていたのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
昼休みが終わる寸前。
「メルちゃん〜参加は〜どんな感じ〜?
見た感じ〜ほぼ揃ってるのかな〜?」
「うん。そうだね〜。
後〜セシルさんだけね〜。
セシルさん〜来てくれないのかな〜?」
すると、アリスが言う。
「メルちゃん!なら、私に任せて!
声掛けてくるよ!」
アリスがそう言ってセシルの席のほうに向かう。
「セシルさん!
後貴方だけだよ!お茶会!」
セシルが俯いていた顔を上げて言う。
「私が行って場がしらけるなら、行かない方が良いと思って……。」
「なんで、しらけるのよ!
皆んな仲良くしようっていうお茶会なのよ!
貴方が来ないと意味ないじゃない!」
「アリスさん。貴方は……なんとも思わないの?」
「もう、貴方からは十分謝罪を受けたし。
……それにさ、メルちゃん達と一緒にいるとさ、なんか、そんな小さなことどうでも良くなってくるんだ。
あの人の笑顔は、本当に凄いよ。」
「そうなんですね。
流石、メル様です。
私とは器が違いますね。」
「だからさ!貴方も参加しようよ!」
「アリスさんが、良くても………。
貴族の子達が許しませんわ。
まあ、私が今まで横暴な態度を取っていたから悪いのですけど。」
「それに、気付けたことはセシルさんに取ってとても良いことだと思うよ!
ふふふっ。なんやかんや言って、私、メルちゃんとミーアちゃん以外の貴族の子と喋るの、貴方だけよ。
なんやかんや、やり合ったけど、私は面と向かってぶつかってくる貴方のほうが、他の貴族の子達より性格的に好きよ。
だから。もう、こうやって一人でいるの辞めなよ!
私達の所においでよ!
メルちゃんが貴方の傷付いた心を包みこんでくれるよ!
ね!私達の所においでよ!」
すると、ジョルノがアリスとセシルに声を掛ける。
「セシル嬢!私は、丁度メル様の席の後ろです。
こちらの方がお話しもしやすいでしょう。
代わりましょう!」
「うわぁ〜流石ジョル君!
紳士だよ〜!ありがとう!」
アリスとセシルがやって来る。
「…………なんか……すいません。
気を使わせてしまいました。」
「ふふふっ。何言ってるの〜。
アリスちゃんが〜貴方に声を掛けて〜呼んで来てくれた〜もう〜お友達だよ〜。
あっ!私達〜名前で〜ちゃん呼びなの〜
だから〜セシルちゃんだね〜!」
シェリルが言う。
「メルちゃんも、綺麗な金髪だけど。
セシルちゃんも、綺麗な金髪だね。
羨ましいわ!」
セシルが言う。
「…でも、私は、メル様と違ってクセっ毛ですから。」
ミーアが言う。
「セシルちゃん〜。メルちゃんだよ〜。
様はお友達じゃないの〜。
ねえメルちゃん〜。
クセっ毛でも綺麗な色だから羨ましいよ〜。
私なんて赤毛なんだもの〜」
アリスが言う。
「ミーアちゃん、何言ってるのよ。
ミーアちゃんの赤毛も素敵だわ。
私とシェリルなんか、なんの特徴もない茶色だよ!」
「うわぁ!アリス!特徴のない茶色で悪うございましたね。ふふふっ。」
「あっ!そうだ〜セシルちゃん〜キシリアお姉ちゃんの事聞いたかな〜?」
「あっ!はい。父様から聞きました。
メルちゃんがキシリアお姉様を救って下さったと。ありがとうございました。」
「違う違う〜!治療するのは〜当たり前なの〜。
聞いてないかな〜。キシリアお姉ちゃんの〜赤ちゃん!男の子なんだよ〜!
ジイジもバァバもお喜びだったんだよ〜。」
「まあ!それは、素晴らしいですわ。
キシリアお姉様も王族と婚姻して、後継を産む役目を果たされホッとされているでしょう。とても、喜ばしいことですわ。」
「セシルちゃん〜とても綺麗な言葉を使うね〜なんか〜私〜恥ずかしくなるよ〜。
私なんか〜喋り方〜トロいし〜。
普通に喋っても良いんだよ〜。」
「メルちゃんの喋り方は、とてもお優しい喋り方ですわ。
あの、私喋り方、これが普通なので、これで許していただけますか。」
「ふふふっ。うんうん〜。無理してないなら〜全然良いよ〜。
でも〜良かった〜!これで全員お茶会参加だね〜。
よしっ!皆んな仲良し作戦のスタートだよ〜!」
「「「ふふふっ。仲良し作戦って。」」」
アリスとシェリル、ミーアが笑った。
セシルは、メル中心に繰り広げられる緩い会話と笑顔に、涙が溢れそうになるのを必死に堪えていた。
とても、温かい気持ちになれたのだ。
自分もメルの様に、なりたいと思ったのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
そして、土曜日。
朝早くから、婆やの指揮で給仕達がお茶会の準備をしていた。
普段、フォスター家で見ない給仕が沢山いるのは、婆やの、もう一つの姿、王国諜報機関"影"の部下が応援に来ているからだった。
婆やの部下は、給仕としても超一流で、普段は城の給仕をしているのだ。
婆やにとって、これほど力強い助っ人はいないのである。
婆やは、朝早くから料理を沢山用意していた。
そして、皆が集まる11時に向けて今会場が着々と用意されているのだった。
フォスターの花が咲き誇る綺麗な庭園に、丸テーブルが沢山用意され、一つの丸テーブルに五人分の椅子が用意された。
丸テーブルの中央には、テーブルを彩る花が置かれていた。
その沢山の丸テーブルを囲むように、長テーブルが配置され、沢山の料理と沢山のケーキ、お菓子が並べられていた。
ドリンクも、ブドウジュースにオレンジジュース、りんごジュース、紅茶に種類豊富に用意されていた。
「婆や〜!凄いよ〜!ラムザお兄ちゃんの婚儀パーティにひけを取らないよ〜!
ありがとうね〜!」
「ふふふっ。お嬢様!
婆やも、嬉しゅうございます。
やっと、腕を振るうことができました。
ふふふっ。」
メルは、婆やに礼を告げた。
「お客様がお見えになられました!」
そんな声が次々と響き渡り、フォスター家の庭園にクラスメートが集まりだす。
クラスメートは、花が咲き誇る庭園に目を奪われ、そして、用意された沢山の料理とお菓子に圧倒されていた。
リーナ先生は、来るなり、ケインと聖女ローザと話をしていた、
マーガレット王女は、今婆やと喋っていた。
ローザがマーガレットも呼んでいたのだ。
そして、クラスメートが全員席についたところで、メルが皆の前に立つ。
「ふふふっ。皆さん〜ようこそ!
フォスター家へ!
今日は〜兎に角仲良くなる為の〜お茶会です。
と、その前に、セシルちゃんが皆に話をしたいというので〜話を聞いてください。
じゃあ〜セシルちゃん〜どうぞ。」
セシルが立ち上がり、メルの横に行く。
「………皆さん……本当に、本当にごめんなさい。
私の偏った考え方で、クラスを混乱させる羽目になりました。そして、あのような事件を起こしてしまいました。
……誠に申し訳ございませんでした。
今、私はアリスちゃんに許して頂きお友達になってくださいました。
私もこのお友達のような人間になりたいと心から今、思っています。
………厚かましいお願いなのではありますが……是非皆さんとも……仲良くできたらと……願っています……仲良くしてください。お願いします……うっうっう。」
最後セシルは、我慢できずに涙を流した。
メルが優しく背中を撫でる。
すると、例の伯爵令嬢が立ち上がり言う。
「…………せっセシルさん。
私達も貴方に……謝らないといけません。
イジメをしたこと………とても恥ずかしく思います。許してください。
…………ごめんなさい……。」
伯爵令嬢も涙を流す。
メルは、セシルの手を取って伯爵令嬢の元へ行く。
そして、伯爵令嬢の手とセシルの手を取り言う。
「ふふふっ。良かった〜。お互いが〜歩みよって〜くれて〜。
もう大丈夫だね〜。
皆んな〜クラスメート仲良くしよう!
親が何であろうと関係ないよ〜。
アラン王子〜!王子も〜良いよね〜。」
アラン王子が答える。
「私は、王子と偉そうにしたことはないよ。
クラスの皆友だと思っている。
皆仲良くしようではないか。」
皆が拍手をした。
大人達もみな拍手だ。
すると、婆やが大きな声で言う。
「さあ!お嬢様もおぼっちゃまも、沢山お料理を用意しています!たーんとお召し上がりくださいませ!」
メルが言う。
「よ〜し!今日は〜皆んなで盛り上がろう!」
皆の笑顔が弾ける。
その笑顔は、丸テーブルを飾る花より、庭園に咲き誇る花よりも美しいものであった。
ー第3章完ー
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いつも、応援ありがとうございます。
4章は、夏休み編となります。
4章に入る前に間話を挟みたいと思います。
これからもどうぞよろしくお願いします、
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