第24話 お嬢様は赤くなる。
1時間もたたない間に、爺がローザを連れて城にやってきた。
「おお!ローザ!きっキシリア姫が大変なのじゃ!なんとかしてくれ!」
ローザは、狼狽えている父親である国王を丸無視し、キシリアとメルの側に行く。
「メルちゃん〜魔力の通り道が〜塞がっているって?ちょっと見てみるね〜。」
ローザは魔眼を発動する。
ローザの目が金色に輝き、キシリアの体内を見通していく。
ローザの目の色が元に戻る。
すると、国王が言う。
「で、で、どっどうなのじゃ!
なっなんとかなりそうなのか?!」
ローザが言う。
「母様〜。父様をどうにかしてください!
いい加減〜ウザいです〜。
なんとかする為にメルちゃんが〜私を呼んでくれたのでしょう!」
王妃が国王に言う。
「貴方〜私達は少し離れていましょう。
ローザとメルちゃんの邪魔になります。」
ローザがメルに言う。
「辛うじて〜母体から赤ちゃんへの魔力供給は出来ているけど〜赤ちゃんから母体に行く道が塞がっているわね〜
メルちゃん〜どうしようか?」
「母様〜私が瞬発的に魔力を膨大に流すの〜その勢いで〜開通させるの〜。
母様は、その流した魔力を吸い上げて欲しいの〜そうしないと〜急性魔力酔いを起こしてしまうから〜母体と赤ちゃんにも良くないの〜。」
「そうね〜それしか手はなさそうだわ〜
メルちゃんの魔力を吸い上げる為に、少し暴れてくるわ〜」
ローザはそう言うと立ち上がり、部屋から出て行こうとした。
すると、国王が言う。
「まっ待て!ローザ!何処にいくのじゃ!
こんな時に!」
ローザが言う。
「父様は少し落ち着いてくださいませ!
メルちゃんと治療の方針は決まりました!
私は、魔力を受け入れる準備をしに、訓練所で魔法を、ぶっ放して魔力を消費してきます!」
ローザは、ツンとして部屋を出ていったのであった。
王妃が国王に言う。
「貴方〜。ローザが怒ってますわよ。
ローザとメルちゃんに此処は、任せて〜
私達は見守りましょう。
メルちゃん〜ジイジは〜情けないわね〜。」
メルが言う。
「……でも〜キシリアお姉ちゃん。
かなり危険な状況なの〜。
魔力が尽きかけているの〜。
ギリギリなの〜。
かなり前から〜辛かったと思うの〜。
ジイジ〜母様と私が〜必ず助けるから〜。
赤ちゃんもキシリアお姉ちゃんも〜絶対助けるから〜。」
「おお!メルちゃん〜頼んだ、頼んだぞ!」
国王は、メルの言葉でメルとローザに任すしかないことを改めて悟ったのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ローザが魔力を消費して戻ってきた。
治療の開始である。
「母様〜魔眼を使っていて〜タイミングが大切なの〜。」
「オッケーよ〜。それでは、やりましょうか。」
メルは、キシリアの額に手を置き魔力を高める。
「母様〜行くよ〜勢いよく行くからね〜。
うっ!行ったよ!
赤ちゃんへの道は通過!」
「………来たわ!……開通した!
吸い上げるわね!
…………………うっ!ちょっと、ちょっと、待って〜!メルちゃん!ダメっ!受けきれない!」
ローザは、顔が真っ赤になっていた。
メルは、急いでローザの体に手を当て吸い上げる。
ローザの顔色が普通になっていく。
「ふうふうふう。危ないわ〜私が魔力酔いを起こすとこでした〜メルちゃん助かったわ〜。
開通して、魔力が循環しだしたわね〜。
キシリア姫の顔色も、赤みをさしてきましたわ〜。
赤ちゃんも元気に動いてます。
ラムザ。これで取り敢えずは、大丈夫よ〜。
でも、安静よ!」
「姉様!メルちゃん!ありがとう!ありがとう!助かった!」
ローザがラムザに怒って言う。
「何故!キシリア姫が調子が悪いと気付いた時点で私に見せないのですか!
本当に危なかったのですよ!
早いうちに、私に見せて〜おけば〜キシリア姫もこんなにも苦しむことは、無かったのです!」
「……いっ医者が……妊娠の影響で、誰でも調子を崩すと。つわりとかで。
医者の話を鵜呑みにしたのが悪かった。
薬も処方してもらったのでそれで治るかと。」
「薬?どの薬を処方されたのよ〜」
ラムザは、小瓶をローザに見せる。
ローザは、小瓶を見て言う。
「あらあら!こんなの飲んでも治るはずがないでしょう!
これは、腹痛の薬よ!」
ローザの怒った声が響く。
メルは、少し離れた場所で、魔法袋から何やら出して、錬金しだしたのだ。
王妃が言う。
「なっなんてことでしょう!
医者は何を見たのですか!
ゆっ許せませんわ!」
ローザが言う。
「母様!今回の件は〜母様と父様も悪いですわ!
調子が悪い時点で〜何故私の顔が浮かばないのですか!?
今回の場合、症状を見極めることができるのは、魔眼を使える私とメルちゃんしかいませんよ!
妊婦なんです!命は二つ!慎重になるべきです!
それと、父様〜いつも言っているではありませんか!白魔法士をもっと、レベルを上げさせなさいと!
神聖魔法を使えるようになれとは、言いません!
白魔法の上級を使える者を育成しないと!」
国王が、ローザに言う。
「……そっそうは言ってもじゃ。
白魔法士自体が貴重な人材じゃ。
なかなかおらんのが現実なのじゃ。」
「では!なおさら!私に頼るべきでしょう!」
国王と王妃は、ローザに叱られ、たじたじになっていた。
するとメルが言う。
「母様〜怖いよ〜。
次から〜ジイジもバァバも〜絶対〜母様に一番に見てもらうよ〜!
それはそうと〜母様〜お薬作ったの〜。
小瓶が〜欲しいの〜。」
ローザが、メルに言われ少し正気に戻る。
「メルちゃん〜お薬作ってくれたの〜!
流石だわ〜。
父様!小瓶!小瓶を早く用意して!」
「わっわかったのじゃ。
だから、そうツンケンするのはやめてくれ!」
国王は、従者に小瓶を持ってこさした。
メルは、小瓶に詰めていく。
そして、ラムザに渡す。
「ラムザお兄ちゃん〜キシリアお姉ちゃんが起きたら〜これを飲ませてあげて〜。
精力強壮剤なの〜。
元気にもなるし〜、魔力を整えてくれるの〜。朝昼晩で飲んで〜。」
ローザが言う。
「流石!メルちゃん〜だわ!
これよ!これを処方しないと!
ラムザ!貴方も、酷い顔しているわ!
沢山メルちゃんが作ってくれています!
貴方も〜一緒に飲んでおきなさい!
元気になるわ!」
「はっはい。わかりました。」
「それと!貴方は、父になるのよ!
もっと、キシリア姫を見てあげないとダメよ!
慣れない王城暮らしに、妊婦なのよ!
しっかりしなさい!」
「はっはい!申し訳ありません!」
マーガレット王女が口を開く。
「ふふふっ。久々にローザお姉様の〜喝が王城に響き渡ってますわ〜。
でも〜面白いですわ〜。父様とお兄様に言う感じと〜メルちゃんに言う感じと全然違うのですから〜。
メルちゃんに言う時は〜声色から違いますわ。凄く優しいお声ですもの〜。」
王妃が言う。
「それは〜私もマーガレットも一緒でしょう。可愛いメルちゃんですもの。」
「ふふふっ。そうですね〜。
うちは〜女のほうが強いですし〜
母様も父様をよく叱っておられますし〜。
ふふふっ。」
王妃、ローザ、マーガレットは笑ったのだった。
国王とラムザ王子は、逆にしょげていたのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
翌日、メルは学園につくなりアリスとシェリルとミーアに言った。
「昨日は〜一緒に帰れなくて〜ごめんね〜。」
アリスが言う。
「うん!大丈夫だよ!
でも、姫様は大丈夫なの?」
「うん!大丈夫だよ〜母様と一緒に治療したから〜。」
「「「良かった!」」」
すると、リーナ先生がやってきた。
「さあ!皆さん今から順番に社会見学の発表をしていただきます!
良いですね!」
順番に発表していくことになったのだ。
そして、順番に発表していく。
「…………………ということで、魔法省は、魔法を取り締まる大変な仕事だと私達は、勉強いたしました。
以上で発表を終わります。」
セシル・ウーゴが魔法省の見学発表を終え、鼻高々に席についた。
そして、メル達のグループの発表の番になった。
発表者は、アリスだ。
「私達は、フォスターさんの白馬車で王城に向かいました。
王城の門が開き、門を潜ると色とりどりの花が咲き誇っていました。
薔薇のアーチを抜け、窓から見える花の綺麗な姿に目を奪われました。
そして、馬車が止まり、レナ宮廷魔法士長が馬車の扉を開け、私達は、降り立ちました。
すると、魔法士の方々と近衛騎士の方々が道を作ってくださり、近衛騎士の方々は抜剣し、天に向けて剣を翳し、魔法士の方々は杖を天に翳しました。
その道の先に元帥様がいらっしゃり、歓迎のお言葉を頂きました。
そのあと、訓練所を見学し、魔法士の方々の中級魔法の迫力と近衛騎士の方々の白熱する模擬戦に圧倒されました。
その後城内に入り、マーガレット第二王女様が案内してくださいました。
まず行ったのは図書室です。本の数に圧倒されました。それぞれ、オススメの本をお借りしました。
謁見の場のとても厳かな雰囲気。
文官の方々がお仕事をしている詰所。
そして、煌びやかな宝物庫を見学し、サロンに案内されました。
そこで国王陛下と王妃様にお会いいたしました。
食事をご一緒させていただきました。
沢山の食事と沢山のお菓子とケーキを頂き、食べ切れませんでした。
王妃様が、お土産にとお菓子とケーキを箱に詰めてくださりました。
陛下と王妃様との歓談もとても楽しいものでした。お二人がとても優しく語りかけてくださったので、私達もとてもお話をしやすかったです。
そこでフォスターさんが陛下と王妃様に提案をしました。
民も皆本を読みたいと思っている。
商業街に、図書室みたいな物を作らないかという提案です。
すると、国王陛下が是非作ろうと言ってくださいました。
マーガレット第二王女様が担当されるそうです。
本を民も読めるようになります!
とても、夢のような時間を過ごさせて頂きました。
以上で発表を終わります!」
教室が騒然とする。
(中級魔法!羨ましい!)
(近衛騎士の模擬戦!凄かったんだろうな!)
(うわぁ。どんな本を借りたのかしら?)
(王様と王妃様と食事!ありえないだろ!)
(図書室を作る!凄い!本を読める!)
など、思い思いのことを口にしていたのだ。
リーナ先生が言う。
「まあ!素晴らしいですわ。
図書室をお作りになると。
先生も、とても楽しみです!
とても、貴重な体験をしてきましたね!
はい!よろしいですよ。
席に戻ってください。
さあ、皆さん!それぞれ貴重な体験をしていました。是非その体験を忘れないでくださいね。
それでは、授業を終わります!」
リーナ先生が教室を出て行く。
アリスが言う。
「……凄い睨まれてるんだけど。」
シェリルが言う。
「本当だ。」
メルがアリスとシェリルの視線の先を見る。
セシル・ウーゴが凄い目で睨んでいたのだ。
メルは、アリスとシェリルの肩に手を置き言う。
「大丈夫だよ〜私が〜守るから〜。」
メルがそう言った瞬間、アリスとシェリルは温かい気持ちになったのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
メルは、学園帰りに王城に立ち寄った。
キシリア姫の様子が気になったからだ。
「おお!メルちゃん!どうしたのじゃ!学園の帰りかの!」
「メルちゃん〜どうしたの〜?」
「ジイジ!バァバ!
キシリアお姉ちゃんの様子を見に来たの〜!」
「おお!そうか!おかげ様で、だいぶ良くなって食事も取れるようになったぞ!
会いにいくか!」
国王陛下と王妃に連れられ、ラムザとキシリア姫の部屋に行くメル。
「あっ!メルちゃん!
ありがとう!凄く良くなったわ!」
「ふふふっ。そうだね〜でも〜安静だよ〜!
ちょっと〜魔力の流れを見るね〜」
メルは、魔眼を発動する。
「うん。魔力は〜ちゃんと流れているね〜大丈夫だね〜。
あっ!ああ!そうなの。そんなんだ!」
キシリア姫は、言う。
「えっ!何か?何かありましたか?」
メルは、キシリア姫の耳元で小声で言う。
「まあ!そうなんですか!ふふふっ!」
国王が言う。
「なんじゃ?なんじゃ?気になるのう!
メルちゃん!なんなのじゃ!」
キシリア姫がメルに言う。
「メルちゃん。教えて差し上げてください。」
「ふふふっ。キシリアお姉ちゃんの赤ちゃん!男の子だよ〜!」
「まあ!メルちゃん!本当ですの〜!」
「メルちゃん!なっ何故?!わかったのじゃ!なんでじゃ?」
「……みっ見えたから……」
「なっ何が見えたのじゃ?」
メルの顔がどんどん赤くなる。
察しがついたラムザ王子が王様に耳元で言う。
王様は、手をポンと打って言う。
「ハハハッ!メルちゃん!スマン!すまん!」
「……ジイジのバカ!デリカシーがないのです〜!」
国王陛下、王子、王妃が歓喜の声を上げたのだった。
キシリア姫も、後継を身籠ることが出来て、安堵の表情を見せたのだった。
王家は、幸せに包まれたのだった。
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