第23話 お嬢様は、提案する。
メル達は、近衛騎士達の模擬戦を見ていた。
メル以外は、その激しさに驚愕の表情をしていた。
元帥がレナに言う。
「メルお嬢様の魔法の知識は凄いものがあるな。創造魔法?!
そんな魔法があるのか?」
「創造魔法とは、上級のさらに上です。
その属性を元に、魔法をメルお嬢様が作り上げている強力な魔法です。
私も先程の説明には、目から鱗でした。
魔法陣の積み重ねの考えはありませんでした。
パーツとして考える。
成程なって感心しました。
私も次のステップに上がれそうです。」
「魔法士達はどうだ?理解できていそうか?」
「う〜ん。どうでしょうね。
まあ、これから叩きこみますよ!」
レナと元帥がそんなことを会話していると、メルが言う。
「元帥のオジ様〜。
どの近衛騎士も〜踏み込みが甘いの〜。
あれじゃあ、ボアの首も落とせないの〜。」
「ほう!踏み込みが甘いと。
しかし、ボアの首くらいは落とせるでしょう!」
レナが、元帥に小声で言う。
「多分メルちゃんが言っているボアは、グレートビッグボアです。」
元帥は、目を見開き言う。
「……メルお嬢様。メルお嬢様は、グレートビッグボアの首を落とせるので?」
「うん。あんなの一太刀で十分だよ〜
動きも単純だし〜ただ骨が硬いの〜。
だから、思いっきり〜踏み込まないとダメなの〜。」
「メルお嬢様。やって見せてくれますかな?
ワシがお相手しましょう。
剣をぶつけてもらいましょうか。」
メルは、近衛騎士から剣を受け取る。
元帥は、自身の大剣を構える。
「皆んなの踏み込みからやるね。」
メルは、スッと動き、左下から右上に剣を振る。
大剣にぶつかり、元帥は受け切った。
「次は〜しっかり踏み込んだやつ。」
メルは、スッと動く。
シュッタ、ドン。
メルは、思いっきり踏み込み、その反動を体全体に伝えるように、その力をそのまま剣に伝え、左下から右上に振る。
その時の風切り音が、先程と全然違っていた。
" シュッバッ " ガッキィィィィィィィィィィィィィィン "
凄い音がしたかと思うと、元帥の大剣が跳ね上がる。そして、腕が伸び切り思わず元帥は大剣を手から離してしまった。
ガッランガランガラン
元帥は、思わず、開いた口が閉まらなかった。
そして、自身の手を見る。
両手が、衝撃で痙攣していたのだ。
「ね!元帥のオジ様〜!
全然違うでしょう!
これ〜父様の必殺技なんだって〜。
ブレイブスラッシュって言うの〜。
これがないと魔竜は斬れないんだって。
でも〜父様に言われているの〜
まだ〜私は〜力がないから〜魔竜は斬れないだろうなって。
ドラゴンくらいかって。」
元帥は、唖然としていたのを正し言う。
「けっケイン殿は、なっなんて物をお嬢様に教えているんだ!
お嬢様。これは、とても真似できるものではございません!
近衛騎士には無理です!」
「えっ。そうなの〜。
でも〜また〜魔竜が出てきたら〜大変だよ〜。父様以外にも〜斬れる人が居た方が良いのに〜。
私は〜子供だから〜力が足りないって〜言われてるもんな〜。
難しいのなら〜しょうがないね〜。
私、さっきのなら〜すぐできたけどな〜。」
元帥とレナは、ケインとメルに呆れたのだった。
自分達の異常な強さを自覚しない二人に。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
その後、レナに連れられ城に入る。
すると、マーガレット王女が待っていた。
「レナさん〜訓練所の見学は終わったのでしょう。
ここからは〜私が〜案内しますからもうよろしいですわ〜。」
「はっ!
では、よろしくお願いします。
では、メルちゃん、お嬢様方。ここで失礼いたします。」
レナは、笑顔で去っていった。
「マーガレットお姉ちゃん〜学園は?
なんでいるの〜?」
「メルちゃん達が〜見学に来るって〜聞いたから〜待っていたのよ〜。
別にいつも学園に〜いなきゃいけないってことはないのよ〜。
皆さん〜お城に〜よく来ました〜。
ここからは〜私が案内してあげるわね〜。
どこに行こうかしら〜。
どこか行きたいところあるかな〜?」
「マーガレットお姉ちゃん〜図書室に行きたいですっ!」
「図書室ね〜。
わかったわ〜それでは行きましょう!」
マーガレットに付いて、歩くメル達。
アリスとシェリルは、色んなところをキョロキョロ見ながら歩いていた。
二人にとって、城の中は夢の世界だったのだ。
ミーアは、メルに歩きながら、脇を突かれたりチョッカイをかけられて、メルと笑いながら歩いていた。
図書室に着くまでの間、色んな人に頭を下げられる。
そんなことも、アリスとシェリルには新鮮なことだったのだ。
図書室の前に着いた。
マーガレットが扉を開ける。
圧倒的な数の本が目の前に広がる。
メルとミーアは、もうすでに中に入って本を眺めていた。
アリスとシェリルは、本の数に圧倒されて、扉の前で、口を開けて立ち尽くしていた。
「ふふふっ。貴方達も〜早く中に入って〜。
本を見なさい〜。
読みたいのが〜あれば〜貸し出してあげるわよ〜。
読み終わったら〜理事室に持ってきてくれたらいいから〜。」
それを聞いたアリスとシェリルは、目が輝いた。
四人は、沢山の本を見て回る。
マーガレットは、何処からか現れた給仕が椅子と机を用意し、優雅にお茶を飲み始めたのだった。
すると、メルが言う。
「あれ〜?おかしいわ〜!
聖女と勇者の物語〜3巻から5巻までないわ
〜。
読みたかったのに〜。
なんでないの〜マーガレットお姉ちゃん!」
「……あれ?おかしいわね〜誰かが持ち出したのかしら〜。
あっ!メルちゃん〜その横にある〜亡国の王女と竜騎士も〜とても面白いわよ〜。」
「……しょうがないな〜誰よ〜持ち出したの〜。
読みたかったのに〜」
マーガレットは思った。
(危ないところですわ〜お姉様の言った通りでしたわ〜。
メルちゃんは必ず聖女と勇者の物語を読みたがると。
指示通り3巻から5巻まで〜私の部屋に持っていっていて正解でしたわ〜。
もう〜お姉様も〜読まれたくないなら〜書かせなかったらよろしかったのに〜。)
すると、シェリルが言う。
「わあ〜。これ!面白そう!
謎の男爵と不思議な島!だって!」
マーガレットが言う。
「ああ!謎男ね!
謎男シリーズは、とても面白いわよ!
一巻ごとに、話が終わるのも良いのよ〜
シェリルちゃん〜それは、超オススメよ〜。」
それぞれ、オススメの本を借りることにしたのだった。
メルは結局、亡国の王女シリーズになったのだ。
アリスもシェリルもミーアも笑顔で、宝物のように、本を抱えていたのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
その後、城の謁見の場、文官達の詰所、宝物庫などを見学し、マーガレットに連れられサロンに入るメル達。
そこで待っていたのが、メルのジイジとバァバ。国王と王妃だった。
「おお!よく来たの!メルちゃん!
ジイジとバァバは嬉しいぞ!
見学に王城を選んでくれて!
ミーアも久しぶりじゃの。
メルちゃん!後、二人紹介しておくれ!」
「ふふふっ。アリスちゃんとシェリルちゃんだよ〜!お友達になったの〜!」
「あっわわわわ。お招き頂いて、あっありがとうございます。
アリスと申します。」
「シェっシェリルです。よろしくお願いします。」
「ふふふっ。そんなに〜緊張しないで〜いいのよ〜。
メルちゃんの〜バァバとジイジなのですから〜。
皆んなお腹空いたでしょう。
昼食を〜用意してます。一緒に頂きましょう!」
「おお!そうじゃ!
アリスもシェリルもミーアも、いっぱい食べるのじゃ。沢山用意したからの。」
「ジイジ!なんで私には〜いっぱい食べるように言わないの〜!わっるいんだ!」
「ハハハッ!メルちゃんは言わんでも、いっぱい食べるじゃろうに!」
「ふふふっ。当たり前だよ〜!」
皆、メルと国王のやりとりで、笑ったのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「もぐもぐごくん。
もうお腹いっぱいになってきたよ〜。
あのケーキも〜食べたかったのに〜
もう食べれないよ〜。」
「私もだよ。どれもこれもとても美味しいんだもん!」
「私も。そうだよ。」
「私〜もう苦しいよ〜。」
すると、王妃が言う。
「ふふふっ。では〜お菓子は〜お土産で持って帰ってもらおうかな〜一人づつ箱に詰めてあげましょうね〜。」
「「「ありがとうございます!」」」
メルが言う。
「ジイジ!バァバ!私!思ったことがあるの〜!言っていい?」
「なんじゃ?勿体ぶって。
言わんでも良いと言ったら怒るくせに。」
「ふふふっ。あのね〜!
図書室でね〜本を借りたの〜。
その時に思ったの〜。
民の人達も〜本を借りることが〜出来たら〜喜ぶだろうなぁ〜って。
ジイジ、バァバ!本って〜とても高価なんだよ〜!
読みたくても〜なかなか読めないんだよ〜。
商業街の何処かに〜そういう図書室みたいな〜ものを作れないかなぁ〜って。」
「ほう!それは、なかなか興味深いのう。
ミーア、アリス、シェリルはどう思うのじゃ?」
アリスが答える。
「王様!メルちゃんの言った通りです!
民は、本を読みたいと思っています!
けど、高価な物なのでなかなか、読むことは叶いません。
もし、図書室みたいな借りれる施設があれば、必ず皆んな喜ぶと思います。」
王様は、ふんふんと聞いて言う。
「あいわかった!図書室を作ろう!」
アリス、シェリル、ミーアが歓声を上げる。
王妃が国王に言う。
「貴方〜言った限りは〜絶対に作りなさいよ〜。」
「わかっとる!
それにな!前々から、お前も聞いとるじゃろ。
ローザに、もっとわかりやすく民の為に何かをせねばならんと言われておるじゃろ。
これほど、わかりやすいことはなかろう?!
メルちゃん!作るぞ!良い話じゃ!
サイラスに、商業街の土地を探させよう!」
マーガレットが言う。
「父様〜。なら〜私が後を引き継ぎますわ〜。本を読むのは、老若男女皆良いことです。
私が責任を持って〜話を進めますわ〜。」
マーガレット王女が、図書室を取り仕切ることになったのだった。
後に、商業街に図書館が作られる。
図書館は、民に大人気の施設になるのだった。
そんな話をしていると、サロンに爺が顔を出す。
国王が言う。
「おっ!爺が迎えにきたの!
楽しい時間が過ぎるのは早いのう。
皆んな、楽しい時間じゃった。
皆は、どうかの?」
シェリルが言う。
「夢のような時間を過ごさせて頂きました。
皆に、国王様と王妃様がとてもお優しい方だったと、自慢します!」
「ハハハッ!そうか!夢のような時間か。
もっと、民に近しい王族になれるよう、努力するからの!」
「さあ、皆さんお土産のお菓子も〜用意できているわ〜忘れないようにね〜。」
「ジイジ!バァバ!今日は〜ありがとう!
楽しかったよ〜!」
そう言ってメルは、ジイジとバァバに抱きついた。
国王も王妃も、とびっきりの笑顔でメルを抱きしめた。
その時、サロンにラムザ王子が悲壮な顔で、キシリア姫を連れてやってきた。
キシリア姫は、気力がないのか、ラムザ王子に寄りかかり辛そうにしていた。
「どうしたのじゃ!ラムザ!
キシリア姫は、安静にしとかんといかんじゃろ!」
「父様!違うのです!キシリアの様子がおかしいのです!
まるで、気力も無し。息をするのも辛そうで。」
王妃が言う。
「医者には、見てもらったのでしょう?
妊娠による物だと言われたのでしょう?」
「そっそうなんですが…どうも様子がおかしいのです。」
メルは、駆けて行き、言う。
「ラムザお兄ちゃん!私が見るね!」
メルの目が金色に輝く。魔眼だ。
メルは、ジッとお腹を見る。
そして、焦ったように言う。
「たっ大変だよ!キシリア姫〜魔力が循環してないの〜!
赤ちゃんに供給するほうは、かろうじてまだ開いているけど〜赤ちゃんから〜キシリア姫に行く方が完全に閉じているの〜。
爺!皆んなを送って、その足で母様を連れてきて欲しいの!
母様と私で〜二人で〜やらないと無理なの!
皆んな〜ごめんね〜緊急事態なの〜一緒に帰れないわ〜」
爺は、メルの焦った感じを見てすぐに、お嬢様方を促しサロンから出て行ったのだった。
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