第22話 お嬢様は王城に行く。

翌日、ホームルームで各グループが見学場所を発表していく。


セシル・ウーゴが発表する。


「私のグループは、魔法省を見学いたします。

父の許可も得ました。」


クラスがどよめく。

セシルは、満足気に着席する。


続いて、どんどん発表していく。


そして、最後にメル達のグループの番になった。

アリスが席を立ち発表する。


「私達のグループは、フィリア王国王城に見学することになりました。」


すると、クラスが一気にどよめく。

(王城なんて見学の許可がでるのか!?)

(魔法士とか近衛騎士とかの訓練が見れるの?!羨ましい!)

(城の中に入れるなんて、羨ましすぎるだろ!でも、本当に見学できるのか?!)


一気に思い思いのことを言うクラスメート。


リーナ先生が手を叩き静粛にさせる。

そして、言う。


「王城ですか………許可が降りるのかしら?」


するとメルが言う。


「はい!昨日のうちに〜母様に〜ジイジとバァバに聞いて貰いました〜。

是非是非おいでって〜。

どこでも〜見ていいよって。

お昼の食事も〜用意しているから〜って。

私も〜謁見の場しか〜行ったことがないから〜城の中を〜探検するの〜楽しみです!」


「……ああ!そうでした!フォスターさんは、陛下と王妃様のお孫様でしたね。

これは、凄いですね。

アリスさん、シェリルさん、キャスバルさん!貴重な体験です。

是非楽しんできてください。

報告を楽しみにしています!」


すると、クラスがまた騒つく。

(城の食事!羨ましい!)

(やっぱりメル様は凄いですわ)

(いいな〜!)

色んな感想が飛び交う。


そんな中、セシルは、アリスを睨みつけていたのだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


そして、木曜日の社会見学当日の朝になった。


フォスター家の白馬車が商業ギルド前に止まる。

アリスとシェリルを乗せる為に。

しかし、そこには、アリスとシェリル以外の人物も居た。

メルは、馬車を降りる。


「なんで〜髭のオッチャンがこの時間にいるのよ〜!」


「おう!メルちゃん!おはよう!

頼まれたんだ!アリスとシェリルの両親がよ、メルちゃんに挨拶がしたいって言うからな!間を取り持ってくれってな。」


メルは、アリスとシェリルの両親に挨拶をする。


「メルル・フォン・フォスターと申します。

アリスちゃんとシェリルちゃんとお友達に〜なりました〜。

これからよろしくお願いします!

シェリルちゃんのレストランには、この土曜日くらいに行きたいと思っています〜。

アリスちゃんの商家にも興味があります〜

お邪魔した時は〜またよろしくお願いします〜。

アリスちゃん〜シェリルちゃん〜馬車に乗って〜ミーアちゃんも〜まだかな〜って待ってるの〜。」


アリスの父親が代表してメルに言う。


「メル様。うちの子達が何か粗相をしたらいつでも言ってください!

叱り飛ばしますので。」


「ふふふっ。お友達に〜粗相なんてありません。お友達だよ〜。

あっそうだ!髭のオッチャン!コンビハンドル沢山出来上がってるの〜あんなの重いから〜婆やには無理よ〜取りにきてよね〜。

じゃあ〜アリスちゃんとシェリルちゃんの父様母様。いってまいりますね〜。」


メルも馬車に乗り込み、馬車が動き出す。


サイラスが言う。


「なっ!言ったろ!

メルちゃんは、友達だって思ってるって!

メルちゃんは、貴族や平民なんて気にも止めてねえよ。うちの姫様は、器がデカいんだ。

自分達の娘の言う事を信じてやれよ!」


「はい。メル様の器量の大きさは、わかっております。我々も中毒騒動の際、メル様に救って頂いたのですから。

そのメル様と娘が友達と聞いて、驚いたのです。」


「ハハハッ!メルちゃんのあの様子だと、フィリア亭には、必ず行くぞ!土曜日って言ってたな。

商家に興味あると言ってたな!

ハハハッ!まあ、うちの姫様は、そんなにガチガチに緊張しなくていい。

俺が言うのもあれだが、とても優しいお人だ。相手に寄り添うことのできる人間だからな!その辺のクソ貴族の娘とは違うからな!

心配いらねえよ!

ハハハッ!」


商業街にサイラスの笑い声が響き渡ったのだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


白馬車は、商業街から職人街に入り、三本煙突のキャスバル鍛治屋の前に止まる。


ミーアが、すでに待っていた。

扉を開け、ミーアが乗り込んできた。

慣れたものだ。


そして、白馬車が動き出す。


「メルちゃん〜。

私〜楽しみすぎて〜いつもより〜早く起きちゃったよ〜」


シェリルが言う。

「私は、逆に寝れなくて起きるのが辛かったな。」 


「あっ!シェリル!わかる!私もそうだよ!

ドキドキして寝ついたの朝方だったわ」


「なんで〜ドキドキするの〜怒られに〜行くのではないんだよ〜」


「メルちゃん!そりゃ緊張するでしょ!

貴族の子達も簡単に行けるとこではないんだよ!」


「そうなのかな〜?

ジイジとバァバは〜いつでも〜おいで〜って言ってくれるけどな〜。」


アリスとシェリルは、本気で言ってるメルに呆れて言う。


「それは、メルちゃんがお孫様だからでしょう。今日だって、メルちゃんだからだよ!」


「ふふふっ。メルちゃん〜。メルちゃんが思うより〜お城の敷居は〜高いんだよ〜。」


三人が笑う。

メルは、あまり自覚がないようだった。


白馬車は、職人街を抜けて、学生街に入る。そして、左の道に逸れていく。


ここからが、余り一般的には通らない道だ。

王城に続く道なのだ。

城が真っ正面に見えてくる。


アリスもシェリルも、ミーアも馬車の窓から、少し顔を出して城を見ていた。


そして、城の前の橋を白馬車が走る。


白馬車がスピードを落とす。


門番が、すぐさま門を開閉する。


白馬車が城の門を潜っていく。


すると、風景が一変した。

両サイドを色鮮やかな花が咲き乱れ、アーチ状に薔薇の花が育っていた。


その中を白馬車が進んでいく。

アリスもシェリルも思わず声をあげる。


「うわぁ。素敵!綺麗!」


ミーアが言う。


「メルちゃんの屋敷も花が凄いけど〜城も凄いね。」


「バァバと母様が〜お花が好きだからね〜

母様は〜薔薇が好きなの〜名前が惜しいでしょ〜ローザ。バァバに聞いたの〜なんで〜ローズにしなかったの〜って。

ローズよりローザのほうが可愛いでしょう〜って。言ってた〜。」


「メルちゃんもお花好き?」


「まあ〜好きか嫌いかで言えば〜好きだけど〜私は〜早起きして〜お水をやったりするの〜無理だよ〜。

寝ていたいもの〜。

城のお花〜バァバがお水をあげているんだよ〜。うちの屋敷は〜母様がお水をあげてるんだ〜。」


「メルちゃんでも〜眠たさには〜勝てないのね〜。メルちゃんの〜弱点を〜初めて〜聞いたよ〜」


「ふふふっ。眠たいときは〜寝ないと〜

レディは〜睡眠が大事だと〜母様は、いつも言ってるもの〜。お肌の敵だって〜言ってた〜。だから〜私は〜いっぱい寝るの〜。ふふふっ。」


そんな話をしていると、白馬車がスピードを落としていく。

そして、白馬車が止まる。


外から扉を開けられる。

レナ宮廷魔法士長だった。


「ようこそ!フィリア王国王城へ!

皆の者!お嬢様方の、ご到着だ!」


すると、魔法士と近衛騎士が道を作る。


魔法士は、魔法の杖を上に向け、近衛騎士は抜剣し、真上に向ける。


レナの後ろに続いて歩くメル達。

メルは、満面の笑顔。

ミーアは、ポカンと口を開けて両サイドを見て歩く。

アリスとシェリルは、緊張の面持ちで歩く。


魔法士と近衛騎士が作った道の先にいたのは、ランド元帥だった。

体の大きい勇ましい姿。

知らない者ならビックリするだろうが、メルは良く知っていた。いつも、ジイジとバァバがお忍びでメルに会いに来ていた時、必ずランド元帥が付いてきていたからだ。


レナは、ランド元帥の後ろに控えた。

ランド元帥が口を開く。


「メルお嬢様!そして、お嬢様方!

ようこそ!フィリア王国王城へ!

我らは、皆様を歓迎いたしますぞ!」


すると、メルが言う。

「元帥のオジ様〜。

歓迎してくれてなかったら〜

来てないの〜。」


「メル様。ローザ様の幼き頃と、そっくりでございますな!

すぐそうやって拗ねて見せられる。

でも、知ってますぞ!

その後、笑って、ありがとうと言うのでしょう!」


「ふふふっ。元帥のオジ様〜わっるいんだ!

先に〜言われると〜ありがとうって言えないじゃない〜。

ふふふっ。歓迎ありがとう!

楽しみにしてました〜。ふふふっ。」


アリスとシェリル、ミーアは、メルと元帥のやり取りを見て、思わず微笑んだのだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


メル達は、まず訓練場を見学する。


まず魔法士の訓練場だ。

アリスとミーア、シェリルは、魔法士が的に向けて放つ中級魔法の激しい音と、威力に驚愕の表情だ。


メルは、レナの横で頭を傾げていた。


「レナおばちゃん〜全然的に当たらないね〜。精度上昇を付与したらいいのに〜。

まあ〜詠唱してるくらいだから〜魔法陣に余裕がないから無理か〜。

あの奥の人と〜一個飛ばして〜あの人は〜もう詠唱しないでもいけるでしょう〜なんで詠唱してるのかな〜?」


「めっメルちゃん!精度上昇付与?!

魔法陣に余裕?

あの二人が詠唱無しで行ける?

めっメルちゃん!そこの所!もっと詳しく!

もっと詳しく教えてくれる?

おい!集まれ!

メルお嬢様が、お前達に教えてくださる!

集合だ!」


魔法士達が駆け足でメルの元に集まってくる。

アリス、ミーア、シェリルは少し離れて元帥とその様子を見ていた。


「お前達の魔法が的に当たらないのを見て、メルお嬢様が精度上昇付与ということをおっしゃられた。

メルお嬢様に教えて頂く。

しっかり聞くように!

じゃあ、メルちゃん!お願いします!」


メルは、少し照れながら話を始める。


「えっと、やって見せようかな。

レナおばちゃん〜あの的に魔法当ててもいい?」


「ああ!いいよ!その為の的だし。

じゃあ、的の前に行く?」


「いや、ここからでいいよ〜ここからでも当たるから。


じゃあやるね。

何の魔法にしようかな〜?サンダーランスにしようかな〜。

魔法陣をこう展開するでしょ。」


メルの前に魔法陣が展開される。


「わかるかな〜この時点で〜皆んなとの違いが〜。

そこの貴方魔法陣展開してみて〜見比べた方がわかりやすいから〜」


メルに指名された魔法士がメルの横で同じようにサンダーランスの魔法陣を展開する。


「はい。同じサンダーランスの魔法陣でも〜見た目からして〜違うのわかるでしょう。

私の魔法陣は〜まだまだ隙間があって〜余裕があるでしょう。

貴方の魔法陣は隙間がないでしょう。

貴方、サンダーランスの魔法陣ということで魔法陣を〜そのまま記憶してそのまま展開しているでしょう〜。

魔法の、魔法陣の作りの意味を理解できてないの〜だから私との差が生まれるのよ〜。」


レナは、真剣にメルの話に耳を傾けていた。

メルは、指名した魔法士を座らせた。

そして、メルは展開していた魔法陣を一旦消した。


「えっと〜魔法陣の作りの意味から説明するね〜。

まず初級のサンダーの魔法陣がこれでしょう。

中級のサンダーランスは、この初級のサンダーの外側にプラスして描くことでサンダーランスになるということ〜これをまず理解して欲しいの〜。皆んな〜サンダーランスの魔法陣は〜こうだということしか頭にないから〜サンダーランスの魔法陣の中にサンダーがあるって事を理解して欲しいの〜そうしないと更に複雑になる上級魔法に移れないの〜。

積み重ねなのよ〜。


だから、このサンダーの魔法陣に〜サンダーランスに〜する為の魔法陣を外側に付け加える〜これがサンダーランスの魔法陣でしょう?違うと言う人手をあげて。」


誰も手をあげない。皆サンダーランスの魔法陣だと認識していた。



「だから〜積み重ねということがわかったら〜一つ一つをパーツとして捉えて〜

まずサンダーの魔法陣を展開して〜それを思いっきり圧縮する〜サンダーランスにする為の魔法陣をその外側に展開する。

更に圧縮する。その外側に〜上級魔法の〜神の雷の魔法陣を外側に展開する。

圧縮する〜って感じでパーツで考えると上級魔法も簡単なの〜。

私は更に圧縮して〜創造魔法の魔法陣まで展開しちゃうけど〜。

で〜話は逸れたけど〜この中級のサンダーランスのこの外側に精度上昇付与をするの。

イメージを書き込むの〜。

私のイメージは、魔法を発射して〜さらに的の前に魔法陣を展開して方向修正するイメージ。

やってみるね〜」


メルは、サンダーランスの魔法陣に精度上昇付与のイメージを書き込む。


そして、サンダーランスを発射する。

的とは平行に飛ぶサンダーランス。

すると、魔法陣が的の前に移動した途端、サンダーランスが直角に曲がって方向を変えて、的の前の魔法陣に向かって飛んでいき、

凄い音とともに、的を撃ち抜いた。


レナが拍手をして言う。

興奮状態だ。

「お前達!わかったか!今物凄いことを教わったのだぞ!

初級中級上級をパーツとして考える!

積み重ねていくってことだ。

頭を柔らかくしろ!中級の魔法陣はこうだ!ではなく、初級の魔法陣に付け加えたら中級になり、中級に付け加えたら上級になると言う考え方だ!

その考え方をすると、メルお嬢様がやった、圧縮するということも容易くなるはず。

付与するにしても、魔法の格を上げるのも全ては、魔法陣をいかに、整理し、圧縮して付け加える隙間を作れるかということだ!

私は、今興奮している!私も創造魔法まで、これで行けるぞ!

お前達!理解できたらやって見よ!」


レナは、捲し立てた。


するとメルが言う。

「レナおばちゃん〜精度上昇付与を練習するなら〜サンダーで良いの。

精度の高いサンダーのほうが〜殺傷力が高いの〜。そのほうが理解も進むと思うし。」


「メルちゃん!わかった!お前達!サンダーでやって見ろ!

それとメルちゃん!おばちゃんの創造魔法の相談にも乗って欲しいんだ!

魔法の授業の時、メルちゃんは〜おばちゃんに教えて欲しいんだ!いいかな?!」


「ふふふっ。良いよ〜

レナおばちゃん〜魔法のことになると〜必死だね〜ふふふっ。」


「当たり前だよ!宮廷魔法士長として!

魔法でやれることは、全てやりたいもの!」


レナは、鼻息荒く、メルに言い切ったのだった。



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