第20話 お嬢様は頭を抱える

三時限目錬金術


「錬金術は、皆さんにとってあまり興味の無いものかも知れません。

しかし、錬金術は皆さんの生活に欠かせない物です。

今皆さんが使っている水道の浄化ハンドル、今は更に進化して、温度調節付きコンビハンドルになっていますね。

皆さんも使ってますね!

全て錬金術で作られたものなのです!

そうですね!フォスターさん!

フォスターさんにお聞きします。

この浄化ハンドルと温度調整付きコンビハンドルの、魔石システム。

どのような過程で作られたのでしょうか?」


メルは、考えながら答える。


「う〜ん。

浄化ハンドルを思い付いたのは〜あの毒をどうにかしないと〜いけない状況で〜

王国全体の民が安心して使える水にしないといけない〜と考えて私と母様しか使えない神聖魔法を〜いかに皆に使って貰えるか〜

それを中心に思考を重ねました〜。

最初は〜魔法陣の展開をしておけば、各々の魔力で〜どうにかなるかな〜とも考えたのですが〜水を使う度に魔力を消費するのも大変だな〜と考えました。

魔力に代わるものがないかと〜考えて〜魔石の持つ力が使えるのでは〜ないかと考えました。

まあ、ハンドル自体元からあったものだし〜

錬金術といっても〜いちから形を作るものでは〜なかったので〜たいしたものでは〜ないと思います。」


「おお!ご謙遜を。

とても、素晴らしい物をお作りになられたのですよ。

魔石システムは、いろんな物に使える素晴らしい物です。ここから、どんな派生品ができるか楽しみです。

私が皆さんに伝えたいことは、フォスターさんのように創造力を働かせて欲しいということ。

皆さんのすぐ身近に、こうすれば便利になるのに、ああすれば助かるのにといったことがあるということ。

すれば、皆の生活が豊かになる!

それが錬金術の魅力だということです!

皆さんも是非錬金術に興味を持って、授業に参加していただければと思います。

さあ!それでは、今日は錬金術に必要な魔力操作について、勉強していきましょう!

それでは、教本の5ページからはじめましょう!」


錬金術の先生は、久々に張り切っていた。

学生にとって、錬金術は、なかなか不人気な授業であったのだ。

やはり、派手な魔法や剣術、武術がどうしても生徒には人気なのだ。


しかし、今年入学してきたメルという錬金術の傑物。

錬金術の先生は、興奮していたのだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


四時限目、教会の教え。


扉を開け、入室してきたのは聖女ローザ。

メルの母様だ。


とても神々しい美しさで微笑みながらの入室で、クラスメートは思わず息を飲む。

思わず、" うわぁ〜聖女様〜"と声を上げるクラスメートもいた。


メルはと言うと、とても複雑な表情をしている。


ミーアが気になり声を掛ける。


「メルちゃん〜どうしたの〜なんか〜微妙な表情しているけど〜。」


メルは、ミーアに苦笑いしながら言う。


「…………みんな……母様の怖いところ知らないから〜。私〜ちょっと〜この時間〜一番疲れるかも〜。」


その時、聖女ローザが語り出す。


「あれ〜?メルちゃん〜いつまでお喋りしてるのかな〜?

もう教壇に私が立っていますよ〜

どういうことかな〜?」


メルが答える。


「はい!ごめんなさい〜。母様の教えの邪魔をして〜母様〜続けてください〜。」


「ふふふっ。

メルちゃん〜まだ教えに入ってないから〜大丈夫よ〜ふふふっ。

さあ〜皆さん〜ご機嫌よう!

聖女ローザです〜。

皆さんとは〜週一回〜教会の教えを一緒に勉強していきます〜。

聖典の中に記述がある通り、全てにおいて平等に神は〜幸せを与えてくださります。

この学園も教会の教えの元に、貴族、平民区別なく平等に学べるよう設立されました。

一年生の間は、主に教会の教えについて学びます。

二年生からは〜聖典の理解を深めて行きます〜聖典を理解しきれば〜皆さんの中にも〜神聖魔法を行使できる方が現れるかもしれません。

そうですよね〜メルちゃん。

ふふふっ。私とメルちゃんだけが〜使える訳ではないと言うことです〜。

まあ〜聖典を理解することが〜難しいのだけど〜。皆さん〜頑張りましょうね〜。

神は、見ています。皆さんの頑張りを。

平等に。」


すると、うんうんと頷きながら、セシル・ウーゴが手を挙げる。


「えっと〜質問かしら〜。

とても〜意欲があってよろしい〜。

では、どうぞ〜。」


「はい!聖女ローザ様!

私は、セシル・ウーゴ。魔法省担当しているウーゴ伯爵の娘でございます。

私は、幼き頃より毎週日曜日教会に家族で礼拝し、牧師様のお話、枢機卿のお話、最近では教会にお戻りになられた、聖女様のお話を聞かせて頂いております。

父は、教会にも寄付をさせて頂いています。

神は、全てにおいて平等という教え。

素晴らしいことと思いますが、少し腑に落ちないのも事実です。

何故、寄付もしない平民にまで平等を謳われるのでしょうか?」


すると、他の貴族の子達も、うんうんと頷いている。


メルは、内心" あっ!そこに触れる?やっやめてよ!"と思ったのだ。


聖女ローザが口を開く。


「毎週日曜日に礼拝されているのは〜素晴らしいてすね〜。

う〜ん。でも〜少し考えかたに〜偏りがあるかな〜。」


すると、前列に座っているアリスが手を挙げる。


「……はい。貴方どうぞ。」


「聖女ローザ様。アリスと申します。

平民です。

あの方は、何かにつけ平民を見下す発言をされます。

それこそ、何が平等というのでしょうか。」


メルは、思わず頭を抱えた。

魔法学の時同様、貴族の子のリーダー、セシルと平民の子リーダー、アリスがぶつかったのだ。

一週間で、実は、クラスは二つに分かれていたのだ。

貴族と平民に。

割合は、平民が当然ながら数が少ない。

男子4人と女子2人。

圧倒的に不利な立場だが、このアリスは頭が回り貴族の子の理不尽に対して、的確に突いてくるのだ。

メルもミーアも平民の子達のほうが正論を言っていると思っているが、今は静観していたのだ。


「あらあら〜。これは困りましたわね〜。

貴族の子、平民の子共に平等という事に疑問を感じていますね〜

これでは〜教会の教えに入れませんね〜。

…………メルちゃん!

メルちゃんは〜どう考えますか〜!?

貴方は〜幼き頃より〜学んでいますね〜

聖典も神聖典まで理解してますから〜

メルちゃんの考えを述べなさい。」


メルは、やっぱりかと思いながら席を立つ。


「はい。母様〜平等について考えを言えば〜良いの〜?」


「はい。そうですね。

それと、クラスの現状も含めて〜メルちゃんの考えを皆に聞かせてあげて欲しいの〜

わかった〜。」


「はっはい。

では〜。聖典にある、全てに置いて平等にという部分について、先程貴族は寄付をしている平民は寄付をしていない平等ではないとの話ですが〜論点が元々違います。


 "全てに置いて平等に幸せを与えてくれる" ということであって、寄付してるしてないの話ではないのです。

損得の話ではないということです。

しかしながら、ウーゴさんの父様が教会に寄付するのは、教会の教え平等の社会に賛同しての行為であり、その寄付によって救われる者が必ずいるでしょう。素晴らしいことです。

でも、それを他に求めると折角のウーゴさんの父様の素晴らしい行いが無意味な物になりますよ。


後、何かにつけ貴族の子が平民の子を見下す発言をしている件について。

これは、認めます。

先程の魔法学の時もそうでした。

私は、見て見ぬふりをしていました。

貴族の子を代表して、私が謝罪します。

ごめんなさい。仲良くしましょう。」


セシル・ウーゴは焦って言う。


「メル様!やっやめてください。」


「やめません。

聖女ローザに私が問われているのです。

貴族、平民ともに、ただの王国の民なのです。

そこに、なんの隔たりもありません。

王家により民のリーダーとして選ばれたのが、貴族と呼ばれる人達。元は平民です。

王族以外は、皆元平民ですよ。

リーダーは、領地を発展させる為いろんな政策を立てます。

しかし、それには労力が必要となります。

労力となるのが民です。

なのでどちらかでも欠けてしまうと国は滅び、皆不幸になるでしょう。

お互いが手を取り合って領地を国を発展させれば皆が幸せとなるでしょう。

これが平等の社会です。損得ではないのです。

国の話をクラスに言い換えると、クラスが二つに分裂してしまうと誰も幸せになれない。

だから、皆仲良くしよう。

見下す発言をしていたのは明らか。

謝罪は当たり前。ごめんなさい。

仲良くしましょう。」


すると、ミーアも立って頭を下げた。


アリスがそれに応える形で口を開く。


「フォスターさんもキャスバルさんも頭を上げてください。

元々お二人は、何もされていません。

フォスターさんが貴族の子を代表して謝罪してくださったことを受け入れます。

謝罪するということは勇気のいること。

尊敬いたします。

それに、先程の話。どちらかでも欠けるとという話。大変感動いたしました。

お互いが普通に暮らせることが平等の幸せということ理解しました。ありがとうございます。」


ローザがうんうんと頷いて言う。


「はい!皆座ってください〜。

メルちゃん〜よく代表して謝罪しました。

偉いですよ。

メルちゃんの最後の話は、どっちかというと王家の考え方も入ってましたね。

まあ、平等ということを説明するには〜

そっちのほうが〜わかりやすいかもね〜。

最初の方の話を補助すると、神を信じ神を崇めれば、神は見捨てない。同じ神を崇める人達が手を差し伸べるでしょう。

まさに、ウーゴさんのお父様は、これでしょうね。

だからそれを損得で言うとお父様の価値が下がりますよとメルちゃんが言ったのよ。

ウーゴさんのお父様は素晴らしいことをしていますよ。それは、誇ってください。

はい!議論は〜素晴らしい勉強になります。

色んな意見を出し合い、教会の教えを理解していってください。

これからよろしく〜お願いしますね〜。」


アランは、思った。

(メルは素晴らしい!やはり嫁に!)


ジョルノは思った。


(聖女ローザ様。優しいお言葉の中に、圧を感じる。こっ怖い人だ。メル様も思わず、真面目な口調になっていました。…)


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


昼休み。


メルとミーアは学生食堂に行く。


学年ごとに食堂が分かれているのは有り難かった。


メルとミーアは四人掛けのテーブルに座った。


「………何か〜疲れたよ〜。

毎週〜母様の授業が〜あると思うと〜

もう〜なんか〜やだよ〜。」


「えっ!でも〜メルちゃん〜立派に答えていたよ〜。私〜流石〜って思ったもん。」


「母様の〜圧が凄いの〜。

母様〜教えるとき〜人が変わるもの〜。

今日も〜私を〜あてた時〜あの何とかしなさいっていう目。

すっごい〜プレッシャーだったよ〜。」


すると、ジョルノとアランが食事を持ってやってくる。


「ジョル君〜アラン王子〜ここ空いてるよ〜。」


「ありがとうございます!アラン王子、ご一緒させて頂きましょう。」


「ああ!では、お邪魔する。」


四人は、仲良く昼食をともにする。


「メル様は、幼き時からローザ様から教わっていたのですか?

とても、的確なお答えだったものですから。」


「そうだね〜。教会の教えだけではなく〜他のお勉強も全て母様に教わっていたの〜

だって〜生まれてから〜ついこないだまで〜黒き森で〜暮らしていたから〜。

お勉強教えてくれるの〜母様しか居ないよ〜。お勉強の時の母様〜怖いの〜。」


「ハハハッ!やっぱりですか!

メル様が若干いつもと違うご様子でした。」


「笑い事じゃあ〜ないよ〜。

私〜4時限目〜最初から最後まで〜気を抜けなかったんだよ〜!」


「王家のお話とかもされていたんですか?」


「今〜思うと〜王家の教えは〜ジイジとバァバからかな〜。あっ!国王陛下と王妃ね〜。」


「そうなのですね。

メル様は、流石ですね〜。」


「そんなことないよ〜。

あっ!ミーアちゃん〜食べ終わった〜?

じゃあ、行こうか!」


メルとミーアは食べ終わり行ってしまった。


すると、アランが言う。


「また、喋れなかった。

なんでジョルノは、普通に喋ることかできるのだ!」


「あのですね!アラン王子!

私は、何度もアラン王子に話に入ってくるように意識して、話題をふってましたよ!」


「えっ?!どこだ?」


「王家の話のくだりですよ!」


「なっなんて言えば良かったのだ?」


「そんなの!私も、同じように話をいつも聞かされていたとか、言うこといくらでもあるでしょうが!」


「そっそうか。そうだな。」


ジョルノは思う。


(もう、この人ダメだ〜。諦めたらいいのに。)


呆れるジョルノだった。

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