第17話 お嬢様は田植えする。

その後、メルとローザはトーア王都を解呪した。

メルが王都を包み込む巨大な魔法陣を展開し魔力を使い、ローザがメルの体を抱き寄せながら、詠唱したのだ。


王都の民、王族、城に勤務していた者達が一気に解呪されたのだった。


そのあと、サイラス、シャドウによってメルが大量に魔法袋に持ってきていたポーションを民に配って行った。


王都は、これで全て完了した。


その後、各町を周り同様に解呪して周り、トーア国の呪術問題は決着を迎えたのであった。


しかし、メルのポーションも魔法も、命を落とした者の復活は出来ない。


今回の呪術問題で、トーア国は、沢山の犠牲者を出すことになったのだった。


これには、聖女ローザも、メルも肩を落として、民と共に深い悲しみに落ちた。


その日の夜に、王都の中心部で聖女ローザは、亡くなった民を思い追悼の儀式をとりおこなった。

これには、トーア国王族も参加した。

そこには、王族も民も関係なかった。

亡くなった者達を思う気持ちは、一緒だった。

厳かな雰囲気で追悼の儀式を終えた時には、

トーア国の王族、民は、涙を流しながらも、

強く前を向いて進んでいく意志を見せたのだった。

メルは、トーア国の者達の前向きな姿勢を見て、安堵するとともに、母ローザの聖女としての役割、人々の心を癒やす、人々の心に寄り添う姿勢を見て幼いながらも、自分も、こうあるべきと心に刻んだのだった。

そして、トーア国での長い一日が終わったのだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


トーア国で夜を明かしたメル達は、トーア国の城内で、トーア国王族と共に朝食を頂いていた。


国王陛下が言う。


「フォスター公爵、聖女ローザ、メル嬢。

そして、王国の皆さん。

………トーア国は、皆さんのおかげで救われた。

それだけではなく、昨日は亡くなった者達への追悼式までしていただいた。

トーアを代表して、深く感謝をする。

ありがとうございました。」


国王だけではなく、王族全てが立ち上がり深く頭を下げた。周りの従者達もだ。


「疑心暗鬼になっていたとはいえ、純粋に我らを救おうとしていたのにも関わらず、一瞬でも疑った自分が本当に情けない。

サイラス殿の言葉、胸に刺さったぞ。

我らトーア国は、長い間他国との関係を絶ってきたが、大変虫のいい話ではあるのだが、

フィリア王国と、友好関係を結びたいと考えている。

我らが、此度のことで王国に礼をすることとなると、トーア国の農作物、水産物の取引をさせて頂くことが、サイラス殿が言うには一番の礼になると言われるのだが、そんな物で良いのだろうかと考えておる。

やはり、金銭的にもお礼が必要なのではないかと思うのだが……。」


ケインが言う。


「国王陛下!

今回の一件、王国は何一つ知りません!

後日王国国王陛下には、報告はいたしますが、我らの独断で行ったこと。

たまたま、私の領地にトーアの者が流れてきたから、トーアで起こっていることを我らが知ったのです。

なので、金銭的なことは必要ありません!

フィリア王国と友好関係を結んで頂けることが、我らは嬉しいことです。

我らは、このトーア主食、米ですかな?

今初めて頂きましたが、これは、良い!

味は最高だし、腹にも溜まる。

そして、聞けば保存にも適していると。

トーア国と友好関係を結んで、この米の苗を頂けるだけで、充分ですよ!」


「そう言ってくれると、我らトーア国も面目が立つ。

それに、苗を渡すにも良い季節だ。

なので、農業支援もさせてもらう。

田植えも初めてであろう。

もう、すでに農家に声を掛けて支援をするように言っているんだ。

農家の者達も喜んで支援すると言っている。

これで、礼とさせてもらって良いだろうか?

足りないのは、重々承知している。」


「何をおっしゃるのですか!

ありがとうございます!

十分です!

そして、友好国となるのです。

末永く友好を築けることが出来ればと考えます。」


メルは、おにぎりを食べていた。


「もぐもぐもぐもぐゴクン!

美味しいね〜髭のオッチャン〜これは〜

凄く良いよ〜」


「おう!メルちゃんも、気に入ったか!

俺もこんなに美味いもんだとは、思わなかった!ビックリだ!」


「しっかり〜育てないといけないね〜。

美味しいし〜お米は〜王国とトーアの友好の証だもんね〜。」


すると、王子がメルに話しかける。


「メル嬢は、魔法も凄かったが、考え方もしっかりとしていますね。

おいくつですか?

私の息子のアランと見たところ同じ年くらいにおもえるのだが。」


「10歳です〜。来月から〜王国の王都の学園に通うのです〜。」


「ほう!ならば、アランと本当に同じ年だ。

アランも学校に通うのですよ。

しかし、本当にメル嬢は凄い。

ケイン殿とローザ様のご教育の賜物ですな。」


話に出たアラン王子がチラチラとメルを見る。


メルは、アラン王子に微笑んだ。


アランは、顔を赤く染める。


アランは、昨日メルに救われた時に、メルの輝くような微笑みにハートを撃ち抜かれていた。

言わば、メルに恋をしたのだ。


王子がアランに話を振る。


「アランよ。お前も学校で、しっかり学ばなければならんぞ!

メル嬢に負けんようにな。」


すると、アランは立ち上がり言う。


「なっならば!父上!そして、爺様。

私は王国に、留学しとうございます!

私が留学することで、トーア国と王国の友好関係も証明できますし、私が他国の地で勉強することで、視野も広がると考えます!

必ず!トーアの未来が明るいものになると考えます!どうかお許しを!」


「なっなんだと!

アラン!お前は、また突拍子もないことを!」


爺様である国王陛下が言う。


「アランよ!志しは、立派じゃ。

しかしのう。留学となれば容易なことではないのだ。後ろ盾も何もないのだ……。」


すると、ローザが言う。


「陛下〜。王国の学園には、過去にも〜他国からの王子が留学してきておりましたわ〜それこそ〜西の大国エタリア国からも〜。

アラン王子が〜本気で留学をお考えなら〜後ろ盾は〜我フォスター家がなりますわ〜学園の理事には、私の〜妹、王国第二王女が付いておりますわ〜妹にアラン王子の留学を言っておきますわ〜。

ねえ〜ケイン。」


「そうだな!陛下、私はこう見えて公爵ですぞ。後ろ盾になるには、持ってこいですぞ。」


国王陛下は、うんうんと頷きながら言う。


「……それは、心強い。

すれば、住まいを探さねばならんな。」


すると、サイラスが口を開く。


「住まいなら、私の屋敷を使われたらどうか?

私は、今の屋敷を持て余していましてな。

これでも子爵故、屋敷も馬鹿みたいにデカいのですよ。

私は、ほとんど商業ギルドで寝泊まりしているので、ほぼ屋敷の主が居ない状態なんですよ。」


「そうよ〜サイラスの屋敷を使えば良いのよ〜従者達も喜びますわ〜。

メイドも執事も〜主が帰ってこないから〜やる気が起きないと〜嘆いていたもの〜。

陛下〜サイラスの屋敷が空いておりますわ〜。」


「ほう!甘えてよろしいのかの?

サイラス殿?!」


「ええ!是非!使ってください!

従者も喜ぶみたいですし。

私も屋敷に帰らんで良くなるし!

こんな良い話はない。」


「ハハハッ!サイラス殿。では、よろしく頼む。

アランよ!フォスター家が後ろ盾となり、サイラス殿が屋敷まで貸与してくださる!

半端な気持ちならダメだ。

しっかりやれるのだな!」


「はい!爺様!

このアラン、トーアの為にしっかりと学んで来たいと思います!」


メルは、拍手して言う。


「アラン王子〜凄いよ〜。

私と〜同じ年で〜母様と〜父様の元から離れることが〜できるなんて〜尊敬だよ〜。

私は〜当分無理だよ〜。」


すると、ケインとローザが同時に同じことを言う。


「「メル!メルちゃん!は、まだまだ家から出しません。」」


すると、陛下が笑っていう。


「ハハハッ!メル嬢は、父様と母様が絶対離さないと言う感じだな!ハハハッ!」


その場に居た者が皆笑ったのだった。


アランの留学が決まったのだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


昼前に、メル達はトーア国を後にした。


メル達がトーア国を出て行く際、多くの民が感謝を伝えるため、出てきていた。


大歓声の中、トーア国を後にしたのだった。


夕方に、領地の屋敷に着いたメルは、ネネとミーアに抱きつかれ迎えられた。


そして、その後3日間メルは、ネネとミーアと楽しく遊んだのだった。


最終日、メル達は、ガロが管理しているミレーネの領地に行った。

ここで米を生産するのだ。


この地に、トーアから農業支援としてトーアの農家が来てくれていた。

その者達の頑張りで、メル達が行った時には、すでに田んぼが出来上がっていた。


メル達が来たのは、田植えを体験する為に来たのだった。


「メルお姉ちゃん〜ミーアお姉ちゃん〜

ここに、入って植えるんだよ〜。

田んぼに、線が入っているでしょう〜

あの間隔で植えていんだよ〜」


ネネは、裸足になり田んぼに慣れた感じで入っていく。


「ネネちゃん〜田植えしたことあるの〜なんか〜慣れてない?!」


「ネネは〜毎年〜お手伝いしてたんだよ〜。お姉ちゃん達も〜裸足になって〜入ってきて〜」


メルとミーアは、裸足になり恐る恐る入る。


「きゃあ〜足が〜足が抜けないの〜!」


「お姉ちゃん達〜足先を横に振ってみて〜足が抜けやすくなるから〜」


「わあ〜本当だ〜抜けた〜

抜けたよ〜!ネネちゃん〜凄いね〜!」


メルとミーア、ネネは、田植えを始めた。


時折、腰を伸ばして腰をトントンしながら、頑張って植えたのだった。


そして、夕方近くになりメルとミーアが王都に帰る時になった。


ネネは、涙を流していた。

折角できたお姉ちゃんとの別れだ。


メルとミーアは、ネネを抱きしめる。


「ネネちゃん〜永遠の別れじゃないの〜。

また、夏には必ずくるし〜。

少し会えなくなるだけ〜。

ネネちゃんは〜お米作り〜頑張ってくれるのでしょう〜?

笑って〜また会いましょうってバイバイしよ。」


ネネは、涙を拭き微笑んで言う。


「メルお姉ちゃん〜ミーアお姉ちゃん〜

約束だよ〜!必ず来てね〜!

ネネ、頑張ってお米育てておくから!」


「「「うん。約束!」」」


メルとミーアが乗った馬車が王都に向けて走り出す。


ネネは、いつまでもいつまでも手を振っていた。

そんなネネの体を優しく撫でるように春風が吹き抜けていった。


ネネは、独り言を言う!


「頑張らなきゃ!お姉ちゃん達をビックリさせてあげないと〜!」


ネネは、メル達を驚かす為、米を育てることを頑張ることを心に決めたのだった。



     ー第二章 完ー


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応援ありがとうございます!

こちらは、リニューアル版です。

第二章お嬢様奮闘編 完となります。

第3章から、学園編になります。

これからもよろしくお願いします!


今、メルが成長した物語も投稿中です。


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https://kakuyomu.jp/works/16817330661954911180


こちらも是非よろしくお願いいたします。

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