第二章 お嬢様奮闘編

第10話 お嬢様は助けます!

職人街での、貴族派の貴族達とのひと騒動から数日が経った。

職人街の職人達に、メルが公爵令嬢だと認識され、それだけではなく、貴族派の貴族を言い負かす姿、民を思う姿を見て職人達は、メルのことをまるで聖女のようだと、神々しい姿を見て、母のローザと姿をダブらせたのだ。

聖女メル様などと呼ぶ職人達もいるくらいの反響があった。


そんな話は、当然ローザの耳にも自然と入ってくる。

ローザは、(流石は〜私の〜娘♡)と機嫌良く満足気だった。


そして、ある日の朝である。


メルが起きてきた。


シャドウのワシャワシャタイムが終わって席につく。

メルは異変に気がついた。


「父様!母様!食べたら駄目!

毒が入っているよ〜!」


ローザは、食べようとしていた手を止めた。

ケインは、がっつり食べていた。

騒ぎを聞いて婆やと爺が飛んでくる。


婆やが鑑定魔法で鑑定する。


「たっ確かに、毒が入っています。

なっ何故………。」


「旦那様、食べられましたがどうもないのですか?」


「爺〜ケインは毒無効化なの〜だから何も感じてもいないわ〜。

私も元勇者パーティもそれなりの毒耐性はあります〜。

ケインみたいに無効化ではないけれど〜」


「メル!お前、よくわかったな!

全然気付かなかったぞ!

無効化も考えようだな。

そういうことに、疎くなる。

婆や。料理を作ってる間、その場を離れたことは?」


「ありません!

お嬢様の起床時間に合わせて調理を始めますので、その場を離れることなどありません。

何故、このようなことに…

旦那様、奥様、お嬢様。誠に申し訳ございません。」


婆やは、落ち込んだ表情で頭を下げる。


「婆や。落ち込む暇はないぞ。

原因を明らかにしないと。

ここだけのことでは、ないかもしれん。

この水は?この水を婆や鑑定して見てくれ?」


婆やが、水を鑑定する。


「旦那様!水も毒に侵されています!」


「水が汚染されているのか?!

当然料理は、水道水を使っているな!」


「はい!水道水をつかっています!」


「これは、大変なことになったぞ!

王都の民全員が毒に侵されるぞ!」


すると、メイドが走ってリビングに駆け込んでくる。


「まかないの朝食と水を飲んだ者が、泡を吹いて倒れました!」


メル達は、メイドの休憩室に走っていく。


そこには、6人のメイドが泡を吹いて倒れていた。看病しているメイドを婆やがその場を離れるように言う。


メルとローザが神聖魔法キュアを唱える。


毒気が抜けて、意識を取り戻す。


メルとローザがメイド全員を救ったのだった。


すると、廊下をドタドタと走ってサイラスがやってくる。


「ケイン!王都が大変なって、ここもか!」


「サイラス!水だ!水が汚染されている!

レナとミレーネはどうした?」


「レナとミレーネは倒れてる奴らを取り敢えず教会に運ぶ指示役で街に残ってもらった。王都中、民が倒れている!」


「サイラス!倒れて居ない者を使って、水を飲むな、水を使った料理を口にするなと注意喚起して回るよう指示をしてくれ!

シャドウ!陛下と王妃、王族が心配だ!

王城へ向かえ!

水を飲むな、水を使った料理を口をするなと無事な騎士に注意喚起と、倒れている者達を教会に運べと指示を出せ!」


「父様!ミーアちゃんが心配なの!」


「サイラス!街に戻る前に、メルをお前の転移魔法でジルの所に!

メル!お前は、そこで倒れている民を救ってやってくれ!できるな!

サイラス!商業街職人街で倒れている者は、メルの所に!

王城、貴族街など、商業街と職人街以外は教会へ!」


「ケイン〜もしチール川自体が汚染されているとしたら〜王都だけの問題ではなくなってくるわ〜

東側は、トーア川で川が違うけど、北と南は全てチール川の水を取っているのよ〜」


「うん。ローザ。わかってるよ。

しかし、今は目先のことから一つ一つ片付けて行こう。

俺は、貯水槽とチール川を見に行く。爺、馬車の用意を。婆やも同行してくれ。鑑定してもらわないといけない。」


「ケイン〜ごめんなさい。

そうよね。目先のことを片付けていくしかないよね。」


「皆んな!大変だが、おのおの動いてくれ!

頼んだぞ!」


ケインの指示で皆が一斉に動いた。

王国の危機なのだ。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


メルは、サイラスの転移魔法でミーアの元に飛んだ。


一瞬体が持っていかれる感覚に陥るが、

すぐに元に戻る。

元に戻ったときには、ミーアの鍛治屋の前にいた。

職人街でもかなりの人が倒れているようだ。

人々の悲壮な声がメルの耳に飛び込んでくる。


メルは、走って鍛治屋に入っていく。


ミーアとジル、エルサが泡を吹いて倒れていた。

メルは、ミーアに神聖魔法キュアを唱える。


「ごっ!ゴホッゴホッ!ふぅ〜ふぅ〜

めっメルちゃん!わっ私!どうして?!

あっ!母様!父様!」


ミーアの視界に泡を吹いて倒れているジルとエルサの姿を捉えたのだ。


「ミーアちゃん!大丈夫だよ!

私が助けるから!」


メルは、ポンポンと魔法陣を展開し、ジルとエルサに神聖魔法キュアを唱える。


ジルとエルサも息を吹き返した。


サイラスが言う。


「復活してすぐにすまねえ!

ジル!エルサ!水が汚染されてる!

水か、水を使った料理を口にすると、お前達みたいに泡を吹いて倒れる!

王都中倒れているんだ!

毒消しも効かねえ!

ローザとメルちゃんの神聖魔法しか手がないんだ!

ジル!ここに、倒れている者達を運びこんでくれ!メルちゃんに治療してもらう!

無事な奴を使って運んでくれ!

エルサ!水飲むな!水を使った料理を口にするな!と注意喚起して回ってくれ!

頼むぞ!俺は、商業街に行く!

商業街の者達もここに運んでくる!」


「わっわかりました!

エルサ!行くぞ!」


サイラスとジル、エルサは鍛治屋を飛び出して行った。


メルは、魔法袋からポーションを大量に取り出す。そして、精霊草も大量に取り出した。


「メルちゃん。私も何か手伝えることがあるかな?!

私が出来ることは、なんでもやりたいの!」


「ミーアちゃん!じゃあ、このポーションを何か大きな入れ物……鍋で良いわ。鍋に入れていって。

精霊草と混ぜて、キュアポーションを作るから〜」


ミーアは、すぐさま台所に行って鍋を取ってくる。


メルは、精霊草を錬金術で液体にした。


ミーアは、ポーションを鍋に入れていく。


全て入れ終わったところでメルが精霊草の液体を鍋にいれて、攪拌していく。


光輝き、キュアポーションが出来上がった。


「ミーアちゃん。これを元の瓶に詰めていってくれる?」


「わかった〜。この辺りまでで良いの〜。」


「うん!それで良いよ〜。」


すると、ジルが男達とともに中毒で倒れていた者達を連れてきた。


「お嬢様!連れてきました。

まだまだ居ます!」


メルは、すぐさま神聖魔法キュアを唱える。


ジルが復活した者達に言う。


「お前達も、倒れている者達をここに運ぶんだ!お前達のようにお嬢様が助けてくれる!」


復活した者もすぐさま、ジル達とともに出て行ったのだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


王城も、混乱に陥っていた。

シャドウは、一際大きな声で指示をしている男に声を掛ける。


「ランド元帥!ケイン様の指示で来ました。

水が汚染されています。水を飲むな!水を使った料理を口にするなと注意喚起をお願いします!

陛下と王妃!それと王族の皆さんは?」


「陛下も王妃も王族全て倒れられた。

毒消し草も、ポーションもなにもきかん!」


「神聖魔法キュアなら回復します!

すぐに、教会へ!

ローザ様が治してくださります。

王都中倒れています。

メルお嬢様が職人街で同じように神聖魔法で治療しています。

無事な騎士を割り振って下さい。

職人街と商業街で倒れている者は、職人街のキャスバル鍛治屋へ運んでください。

それ以外は、教会へ!ケイン様の指示です。」


「そうなのか!メルお嬢様まで!

聞いたか!

陛下、王妃!王族の皆様を教会にお連れしろ!

その他の倒れている者達も!

隊長!グループを分けろ!商業街、職人街、貴族街、役所に騎士を派遣!

商業街と職人街は、キャスバル鍛治屋へ!

その他は、教会へ!

すぐ動け!」


ランドは一斉に指示を出した。


「ローザ様とメルお嬢様がご無事で良かった!

神聖魔法など使える者は居ないからな!

メルお嬢様も使えるとは!

助かる!

ケイン殿は?」


「貯水槽とチール川の調査に出られました。

じきに、原因も判明するでしょう!」


「そうか。元勇者パーティは、毒耐性があるのだな。

流石だ。」


「我らは、毒耐性ですが、主、ケイン様は毒無効化です。

恐らく、お嬢様もそうだと思います。」


「そっそうか。無効化か。

メルお嬢様も。

………メルお嬢様は、底がしれんな。……」


ランド元帥が、そう言っている頃。


ケインは、爺の操車で婆やを連れて貯水槽に来ていた。


貯水槽を管理している者達も倒れていた。

ケインは、爺に教会に運ぶよう指示を出し、婆やとともに貯水槽を確認する。


「旦那様、駄目です。毒に侵されています。」


「まあ、それはそうだろうな。

貯水槽の水が無事なら、このような中毒はおきていないのだから。

ということは、やはり川か。

バルブを閉めて、婆やチール川に行くぞ。」


「はい。承知いたしました。」


ケインは、川から貯水槽へ流しているバルブを閉めた。


そして、チール川へと遡ることにした。

合間合間に婆やに鑑定をしてもらいながら。


中々原因が掴めないでいた。とうとうチール川まで来てしまっていた。


川のほとりに降りた時、原因が判明した。


大量の生き物が一斉に跳ねたのだ。


「だっ旦那様!あっあれは!」


「ああ!原因が判明したな!

ポイズンフロッグの大量発生だ!」


「……しっしかし、旦那様!

おかしいです!ポイズンフロッグは、この地域には生息しておりません!

それこそ、生息域は限られております。

マール共和国の北にある、魔の湖にしか生息しておりません!

なっ何故?こんなところに!」


「……まあ、人為的に仕掛けられたことだろうな!

魔の湖から、ここまでポイズンフロッグが跳ねてこれるはずがない。

いくつもの街を抜け、王国にたどり着くには、あの山脈を抜けねばならん。

ありえないだろう?

そして、この数だ。川を汚染するくらいの毒気だ。

相当な数がいる。

この数を人が運ぶのも無理だろうな。

となると、考えられるのは婆やここまで言えばわかるだろう!」


「………ポイズンキングトード……。

それをツガイで山脈の源流に放つ。

自然に産卵する。

卵が川の流れに沿って全域に卵が広がる。

それが孵化し、ポイズンフロッグに成長した。」


「そうだ。

いわゆる毒の卵の時限式爆弾だな。

卵からオタマジャクシ、ポイズンフロッグへの成長は恐ろしいくらい早い。

一週間でポイズンフロッグになると聞いた。

そして、ポイズンフロッグは毒気を撒き散らす。

やられたな!マール共和国に!

ポイズンキングトードの産卵は途轍もない数を産卵すると聞いている。

見てわかるように駆除できる数じゃない!」


「旦那様!でっでは、チール川は毒の川となるのですか?!」


「なるのではなく、もう、毒の川になっちまったんだ。」


「でっでは水をどうするのですか!?

王都だけでは、ありません!

王国の北も南もチール川頼みですよ。」


「………そうだな。

どうしたものか。今は、答えが出んな。

直近で、できることをしよう。

貯水槽の水だけでも、ローザかメルに浄化させよう。

神聖魔法の浄化で。

各地の貯水槽もだな。

その前に、中毒も抑えないと!

まだ、先のことは考えれんな。」


「しっ失礼しました。旦那様。

婆やも歳をとったのか、弱気になっておりました。」


「フフフッ。婆や!

帰るぞ!原因がわかったんだ!必ず何か手がある!」


ケインと、婆やはチール川を後にしたのだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


メルは、次から次と運ばれてくる人達を神聖魔法で治していっていた。


しかし終わりの見えない状況と、苦しんでいる人達の姿を見て、疲れもあり気付かないうちに、涙をこぼしていた。


そのメルの涙をミーアがハンカチで何度も拭いていたのだ。


メルは、ハッとし、正気に戻った。


「ミーアちゃん〜ごめんね〜

少し弱気になってたよ〜気づかないうちに涙を流していたよ〜

駄目だね〜母様も〜頑張ってるのに〜。」


メルは、指輪を一つ外した。


メルの体に魔力が一気に行き渡る。


そして、メルは思考をフル回転させる。


魔力の枷を一つ外したことで、思考スピードが数段上がっているのだ。


(川が汚染されてたら〜いつまでも毒の水。

これを解消させないと〜必ず水不足になる。

……水を浄化させれば良いのか〜川ごと浄化は難しいなあ〜

水道から出る水を浄化すれば良い…

水道に浄化できる装置を付ける……

ハンドルの部分に魔法陣を展開……

魔力供給が問題ね〜

魔力の代わりになるもの………

魔石かぁ。

なんとか出来そうな気がする。

錬金術で。)


メルは、治療しながらそんなことを考えていたのだった。



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以前のものと表現を変えていたり加筆したりしています。

第二章スタートです。

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