第6話 お嬢様は、お友達ゲット!

ケインは、湯浴みを終えてタオルで頭を拭きながら自分の書斎にやってきた。


ケインは、タオルで頭を拭きながら言う。


「いつまで、その姿で居るつもりだ?

シャドウ!

王都に帰ってきたんだ。

お前も男爵として仕事をせねばならんぞ!」


すると、シャドウの体が光輝き、人の型に変わっていく。


光が収まると、そこには、スーツを着こなした20代半ばあたりの銀髪のイケメン青年が立っていた。

長めの髪を後ろで結っていた。


「主よ。お嬢様には、この姿を見せてもよろしいので?」


「ああ!すこし都合が変わった。

お前もサイラスの話を聞いていただろう!

明日の王子の婚儀パーティー。

メルに付いておけ。

貴族派の子供がメルに寄ってくるだろう。

様子を、見ながらメルを貴族派の子供から引き離せ。

いいな。メルが傷付かんように頼むぞ!」


「はっ!承知いたしました!」


その時、書斎の扉が開けられた。

湯浴み後のメルだった。

白のプリンセスナイトドレスを着て、髪を後ろで束ねたメルだった。


「父様〜お屋敷〜本当にとても広いね〜迷子になっちゃうよ〜

あっ!…………お客様……。」


メルは、人型のシャドウを見てお客様だと思い、後退りした。


「お嬢様!逃げなくて良いですよ。

シャドウです。

私は、シャドウです!

この姿をお見せするのは、初めてでしたね。

証拠をお見せしましょう!」


シャドウは、また、聖獣フェンリルの姿になる。


「えっ!えっ〜!

本当に〜シャドウだ!シャドウだよ〜!

なっなんで〜なんで犬が人に変身するの〜?!」


シャドウは、また人型に戻る。


「お嬢様、シャドウのことを犬だとお思いだったようですが、シャドウは犬ではございません!

聖獣フェンリルなのです。」


「………聖獣フェンリル…?!

あっそうか!聖獣フェンリルという犬種なのね〜!

聖獣フェンリルという犬種は、人型に変身できるのね〜!

すっ凄いね〜凄いよ〜

シャドウ〜なんで〜今まで〜黙っていたのよ〜

変身できる犬種なんて〜超レアじゃない!

これは、皆んなに自慢できるよ〜

だって〜変身できる犬なんて〜図鑑でも見たことないもの〜!」


シャドウは、頭を抱えた。


ケインが言う。


「ぶっハハハッ!

メル!そうだ!そうなんだよ!

シャドウ!凄えだろ!

超レアだぜ!

これからは、人型で出来る限りメルの護衛をするからな!

王都は、黒き森と違って何かと危険だ!

街に出るときは、必ずシャドウを連れて行くんだぞ!」


「黒き森より危険なの〜!?

シャドウを〜連れていくなら〜

今まで通り犬の姿でも良いと〜思うわ〜

父様〜。」


「ハハハッ!メル!シャドウ、犬だとワンしか言わねえぞ!

それで良いのか?

人型だと、お喋りできるんだ。

お喋りできたほうが良いだろ?」


「ふふふっ。そうだね〜お喋りできたほうが〜いいよね〜

今までも〜シャドウに喋りかけていたけど〜

なんか〜独り言みたいに〜なってたもの〜。」


「そうだろそうだろ!

うん?なんだシャドウ不満そうな顔をして。」


「主、わざとですよね。私を犬扱い。

まあ、もうそれでよろしいかと。

お嬢様も、いくら言っても犬だと言われますでしょうし。

本当、そういうところ、主とお嬢様は親子です。

よく似てらっしゃる。

わざとか、本気か分からないボケを入れられる。」


「ハハハッ!メル!シャドウが拗ねたぞ!」


「うん?なんで〜シャドウ〜拗ねるの〜

なんで〜?」


ケインの笑い声が響いたのだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


そして、翌日。


教会で、ラムザ王子とキシリアの結婚式がとりおこなわれた。


厳かな雰囲気の中、式は進む。

メルの母様、聖女ローザが式を進行していく。


メルは、いつもと違い神格が増しているローザを見て思う。

(母様〜!とても〜綺麗〜!)


普通は花嫁を見て綺麗だと思うのだが………



そして、今婚儀パーティーの真っ最中である。


メルは、サイラスとケインの予想通り貴族派のお嬢様達に囲まれていた。


「…………………と、いうことなのです。

なのでメル様は、何のご心配をされなくても大丈夫ですわ〜

学園では、私達がお友達としております故。

安心していただきとうございます。」


「……………………」


「どうされましたか?

メル様?聞いておられましたか?」


「……………………」


メルは無言だった。

メルが考えていたこと、それは、


(なっなんなの?!この人達〜。

ペラペラペラペラと〜。

折角の〜お料理が食べれないじゃない〜!

あんなに美味しそうなのに〜)


すると、スッと現れたのがシャドウ。


「ちょっと、失礼〜!

素敵なレディ達。

少しメルお嬢様をお借りしますよ。

お嬢様、お手を。」


「きゃぁ〜シャドウ男爵様よ〜

素敵だわ〜!」


メルを囲んでいたお嬢様から、声が上がる。


メルは、シャドウに手を取られてその場を立ち去る。


「……シャドウ〜遅いわ〜!もっと早く〜来てよ〜!」


「少し様子を伺っておりました。」


「なんなの〜あの子達〜つまらない話をペラペラと〜。

あんなに美味しそうなお料理があるのに〜食べもしないで〜。

あんな人達とは〜価値観が合いません!」


「しかし、お嬢様?どうして、帯剣されておるのです?」


「えっ!?おかしいの〜?

だって父様も〜帯剣してるじゃない〜。

父様が〜抜かないならいいよ〜って言ってたもん。」


「男は、正装に帯剣も含まれますからね。

しかし、レディはドレスに帯剣されている方はいらっしゃらないかと。」


「あっ!シャドウ!おかしいって思ってんだ!でも、私はこれが落ち着くの!

シャドウ〜もう〜私お腹ペコペコだよ〜

早く〜食べようよ〜」


「ハハハッ!お嬢様!では、お料理をいただきましょう!

ハハハッ!堪能するまで頂いてくださいませ!」


シャドウは、メルに料理を取り分けていく。


そしてメルは、やっと料理にありつくことができたのだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「もぐもぐっゴクン!

うわぁ〜これ、とても美味しいわ〜!」


「お嬢様。こちらのミートパイもとても美味しいですよ。」


「どれ〜?あっ!これか〜!

もぐもぐっゴクン。わあ〜本当だ〜

うん?」


メルは、視線を感じ取った。


壁際に、立っている女の子がメルのことをジッと見ていたのだ。

年頃は、メルと同じくらい。

赤毛のロングヘアの可愛いらしい女の子だった。


メルと、その女の子の目が合う。

メルは、ニコッと微笑む。

すると、その女の子は、びっくりして壁に頭をぶつけてしまった。


メルは、何故かこの少女に親近感を感じた。大丈夫かなと思い見ていると、恐る恐る女の子は、近づいてきた。


「あっあの、メル様でございますよね。

フォスター公爵様の御令嬢の……。

わっ私は、キャスバル騎士爵の娘のミーアと申します。

突然で、大変申し訳ないのですが、メル様の帯剣されている刀を是非見せて頂けたらと思いお声を掛けさせて頂きました。

それは、父が作成した斬月だと思うのです。

私の夢なんです。刀を作成するのが!

父が作成した、名刀斬月を目にして、それを目標としたいのです。

お願いします!」


「斬月?シャドウ〜?この刀、斬月というの?」


「お嬢様。そうです。

それは、紛れもなく斬月です。

お嬢様のお父上が、魔竜を討伐する際、その名刀斬月とお嬢様のお父上が今帯剣されている黒刀マサムネで討伐されたのですよ。」


「そうなんだ〜。父様に聞いてないよ〜。

これ使いなさいって渡されただけだもん。

そうか〜名刀斬月というのね〜

どおりで良く斬れるはずだわ〜。

あっ!ごめんなさい〜

斬月を見たいのだったね〜

でも、ここでは〜抜剣したら〜ダメなの〜。

だから〜後で違う場所で〜いっぱい見せてあげるよ〜

ミーアちゃん〜いくつ〜?

私〜この春から〜学園に入学なんだよ〜

ミーアちゃん〜もう〜学園に通っているのかな〜?」


「はっ、はい。まだ通ってません。

わっ私も春から通います!

今10歳です。」


「うわぁ〜本当に〜!

嬉しい〜!同じ歳なのね〜!

シャドウ〜!同じ歳だって〜!」


「それは、良かったです。

しかし、先程のお嬢様方も同じ歳だったのでは?」


「だ・か・ら〜!シャドウも〜わかってないわね〜先程の方とは〜価値観が合わないと言った〜でしょう〜。

ミーアちゃんとは〜なんか〜こう〜斬月が結び付けてくれた〜って感じの……

ミーアちゃん!

私、王都に〜出てきたとこなの〜

なので〜お友達が居なくて〜

良かったら〜お友達になって〜欲しいな〜

ダメ?」


メルは、ミーアを上目使いに見て、頭をコテンと横に倒して聞いた。


「あっわわわわ。わっ私がメル様のおっお友達〜!よっ良いのでしょうか〜?!」


「良いも悪いも〜お願いしてるの〜私だよ〜それに〜メル様は嫌なの〜様はいらないの〜メルでも〜メルちゃんでも良いの〜」


「めっメルちゃん!わっ私で良ければ、お友達!よろしくお願いします!」


「ヤッター!お友達ゲットだ〜!

もう〜ミーアちゃん〜お友達だから〜

後で〜これでもか〜っていうくらい斬月を見せてあげるね〜

毎日でも良いよ〜!

ねえ〜ミーアちゃん!一緒にお料理頂きましょう!

とっても美味しいの〜!」


ミーアは、メルの柔らかい雰囲気と喋り方でメルのことを一気に好きになった。


「ふふふっ。私も〜さっきから、お腹がクウクウいってたの〜。でもなかなか、食べに行く勇気が出なくて〜どうしようかと思っていたの〜

メルちゃんとなら〜堂々と〜頂けるね〜!」


シャドウは、その場をスッと離れた。

メルとミーアの邪魔にならないように。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「おいおい!ケイン見てみろよ!

ウーゴ伯爵が早速陛下に近づいているぞ!」


「うん?あれがウーゴか。

俺達が言うのもあれだが、若いな!

まあ、好きにしたら良いんじゃねえか?!

俺の目の前で民や、家族にチョッカイかけるなら許さんけどな!ハハハッ!」


「ケイン様は、相変わらずですね。」


「なんだ?!ガロ、それは誉めてんのか?

まあ、誉めてると解釈しとこう!ハハハッ!」


ガロ、元勇者パーティー。参謀役、

爵位は、男爵。この男、剣も魔法も、中途半端だが、兎に角頭が切れるのだ。


「あっ!そうだ。

サイラス様!是非取引してもらいたい物があるんです。」


「お!なんだなんだ!?

儲かる話か?」


「まあ、私の読みでは、今年の秋には!

金貨と白金貨が飛び交っているのが見えるのですが。」


「ほう!ガロ!早く聞かせろよ!」


「トーア国の主食、米の苗を取引して欲しいんです!」


「米の苗?…トーア国……!

お前いきなり、難題じゃねえかよ!

トーアといやぁ、近隣の国とも関わらねえ鎖国状態の国じゃねえかよ!」


「まあ、そうなんですよ。

つい最近トーアから流れてきた者が居まして、今うちの領民として、居るんですが、その者からの情報です。

メルちゃんのポーションを三本ほど持って行けば、喜んで取引に応じるだろとのことです!」


「なんだよ!その眉唾物の情報は!

王家が上級ポーションを欲しがってんのかよ?」


「フフフッ。そうらしいです。

それと、ケイン様この春、領地に来られますよね?」


「ああ!学園にメルが入学する前に、領地を見せてやりたいからな!」


「その時にその、トーアから流れて来た者達を紹介します。そして、ローザ様に見て貰いたいのです。少し病んでいまして。」


「そうなのか。わかった!ローザにも言っとくよ!」


「お願いします。サイラス様も頼みますよ!」


「まあ、俺のほうでも少し情報集めるか!

了解だ!」


すると、ケイン達の元にシャドウが戻ってきたのだ。


「おい!シャドウ!メルについとけって言ったろ!」


「主、お嬢様は今お友達と歓談中です。

あの楽しそうな姿を見てください。

私は、お邪魔でしょう?」


「うん?ほう!?楽しそうにしているな!

あのお嬢さんは、何処のお嬢さんだ?」


「フォスター公爵様。

あれは、私達の娘、ミーアです。

お久しぶりでございます。」


ケインは、振り返る。


「おお!ジルとエルサじゃねえか!

元気にしてたか?!

それと、フォスター公爵様はやめろ。

前の通りでいい。ケインで!

お前達の娘とメルは、友達になったのか!

確か同じ歳くらいだったな!

お前達の娘なら良い!そうか!そうか!」


「やはり、ケイン様はお変わりないですね。

良かった。

娘がお嬢様に声を掛けたようです。

ご迷惑でなければ良いのですが!」


「変わる?変わるはずないだろう?!

俺は俺だぜ!

それと、ジルもエルサも見てみろよ。

うちの娘もお前んとこの娘も良い笑顔してるじゃねえか!

迷惑なはずがねえ!」


「なあ!

ジル!エルサ!言ったろ。

ケインは、こういう奴だよ。裏表ねえ。

いくら、偉くなってもな!

だから、お前らも考えろって!」


「サイラス様、まさに今それをケイン様にお願いに参ったのです。

ケイン様、お願いがあって参りました。

是非、私をケイン様の末席に加えて頂きたいのです!」


ケインがポカーンとしているのを見て、サイラスが助け船を出す。


「ケイン!昨日話したろ?!

貴族派の話!

ジル達も貴族派に嫌がらせを受けているって!

だから、ジルを寄子にしてやってくれよ!」


ケインは、ハッとして頷いた。


「ああ!そう言うことか!

末席とか言うから、何の話かなとビックリしたぜ!

そういうことなら、全然構わないぜ!

娘達も友達になったみたいだし、丁度良いじゃねえか!」


「ありがとうございます!

なんでも、言ってください!

頑張りますので!」


「ジル!エルサ!よろしくな!

俺は、堅苦しいのは好かん!

楽に行こうぜ!

知らん仲じゃねえんだし!」


「ジルさん!私は、ケイン様の領地を管理しているガロです!

是非、一度領地の鍛治屋を見て貰いたいです!

どうも、腕が悪いんじゃないかと思うんですよ!指導して貰えばありがたい!」


「はい!鍛治しか能がありませんから!

喜んで!」


その時だった。メルとミーアの雰囲気が変わっているのに、気がついたのだ。


目を少し離したすきに、メルとミーアを貴族派のお嬢様が囲んでいたのだ。


「主よ。今から行って参ります!」


「うん?シャドウ!待て!

今メルの魔力が揺らいだ。

メルが片付けるようだ。

少し見守ろう。」


シャドウは思った。


(この魔力の揺らぎ。お嬢様、かなりお怒りだ。魔法をぶっ放さないだろうか……。)


シャドウは、待てと言われたが、お嬢様の側にと足を運ぶのだった。



☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★


応援ありがとうございます!

リニューアル版となります。

以前と表現を変えています。

内容は一緒です。

これからも、よろしくお願いします!


今、メルの成長した姿を描いた物語も投稿中です!

↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓


https://kakuyomu.jp/works/16817330661954911180


こちらも是非よろしくお願いいたします。



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