追放された僕の下に女神が舞い降りた〜剣聖スキルを勇者に捧げたら、ただのデブは不要と言われ追放されたが、女神に結婚を申し込まれ、神として生きて行く事になりました。今度は僕のターン、追放返しだ〜
episode 34 ピンチに必ず現れる -ミレイネス視点-
episode 34 ピンチに必ず現れる -ミレイネス視点-
ゴダルガ村に着くと、すぐにディルナさんの特徴を持つリザードマンを見つけました。
村の人口がたった16人と言う事、そして彼女が住む家が赤色の煉瓦の屋根と言う事もこの村で唯一だったので、容易に探し当てる事が出来ました。
丁度家に向かって歩いているところを見つけ、家の中に入った事を確認した事でディルナさんで間違いないと思ったわたくし達は、会いに行きました。
そして30分程お話を聞いて、リューインがディルナさんの息子である事が判明したのです。
「急に居なくなったと思えばナ、骨になって戻って来たんだがヤ」
ディルナさん達はとても貧しい生活を送っていたらしく、明日食べるお金もなく、今日はどうやって食料を調達しようかそれが毎日の日課だったそうです。
しかしある日、リューインが大金を持って帰って来ました。どうやってこんな大金を手に入れたのかリューインに聞くと、勇者デリックに助けてもらったとその時ディルナさんに話していたそうなのです。
その後、大きな仕事があるからと言って家を出て行って次に戻って来た時には骨になっていた。つまり何処かで亡くなったと言うのです。
ディルナさんの話を聞いて、恐らくデリックが今回のアステルに濡れ衣を着せる件でリューインと金銭の取引をしたのでしょうね。
ただ疑問が残ります。リューインは何故亡くなったのでしょうか? 骨となって戻って来たと言う事は、ただの事故や殺されたと考えない方が良いでしょうね。
国王殺害を達成し、アステルに濡れ衣を着せるのも完璧であったリューインをデリックは殺すでしょうか?
村を後にして再びアンビルに向けて砂漠を歩きながら皆で考察します。
「たしかにミレイネスの言う通りだ。この件はデリック以外に何者かが絡んでいるな」
「ちょっと待って……これってヤバくない? リューインが死んだって事はアステルに化けたって証明が出来なくなっちゃったって事でしょ?」
「骨しか残らない……しかも体の一部だけ……こんなの武器や魔術で殺されたんじゃないよね。でもそれじゃ、リューインはどうやって亡くなったんだろう」
「まさか事故……ですか?」
「わたくしは何者かに殺害されたのだと思います。デリックにはその様な力はありませんし、仮にあったとしても完璧に熟したリューインを殺す必要がデリックにはあったのでしょうか」
「知りたいか?」
突然、我々の会話の流れに自然と入って来た者がいました。
目の前や背後、周りを見回しても姿が見えません。感覚的にはすぐ後ろなのですが……。
「上だ!」
「やっと気づいたか。俺がその気だったらこの時間で全滅になっていたぞ。てめぇら」
水色の長髪、その口調、空に浮いていたのはデリック。ふわふわと空中に浮いている事に言葉を失いました。
それは魔術や魔力ではない力なのです。その事に皆も気づき始めます。
「デリック!?」
「デリックなのですか? 今までと少し雰囲気が違うような……」
「勇者の力を感じない。貧弱だったが、これまでは確かに勇者の力を感じたんだ。聖剣ギグドラーンも見当たらないし……あれはデリックなのか……?」
「魔力を全然感じない……でも魔力じゃなかったら、あいつどうやって浮いてるの!?」
「くっくっく。てめぇらには感じ取れねぇ力に目覚めたんだよ。今の俺は勇者も剣聖も精霊の力も必要ねぇ。何故なら神になったんだからな!」
シュウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥー!
わたくしは目を疑いました。こんな事あり得ないのです。
人間が、自力で昇華し神気を扱えるようになるなど……。
神気を感じ取れた訳ではありません。魔力や精霊力でないなら消去法で神気としか……けれども人間が自力で辿り着ける力ではない。つまり、他の者の介入が考えられる訳ですが、人間を昇華させると言う行為自体が人間では成し得ない業。
と言う事はまさか……神族!?
仮に神族という事ならミカエル達が既に動いているはず。
ならば何らかの報告を伝えてくれるはずなのに未だに連絡がない。と、思った瞬間自分が人間である事を再認識しました。
あぁ……そうでした。今のわたくしは人間。わたくしとコンタクトを取る事は彼女達には許されない行為。
ただ、アステルには何らかの報告が為されているでしょう。
テレパシーでアステルと連絡を取ろうと、ウルの名前を呼んだ時でした。
急に金縛りにあったかの様に、わたくしの体が動けなくなったのです。
その後直ぐに他の4人も同じく体が動かなくなりました。
「くっくっく。てめぇらは漏れなく全員が俺好みの女だ。だからチャンスをやってもいいぜ」
スッと降りて来たデリックは、ニヤついた笑みを見せつけながらわたくし達に向かって歩いて来ます。
正直、恐怖を感じました。神気らしき力を扱える彼に……ではありません。
女性として身の危険を感じるのです。
それはわたくしだけではなく、恐らく他の4人も同じ思いだったでしょう。
精霊のウルでさえも怯えてる様子でした。
「俺の女になれ。特に精霊と銀髪の女はまだ味わってないから楽しみなんだよな」
と、デリックはわたくしの耳元まで顔を持って来て、生温い吐息混じりの声で囁いて来ました。まるで捕食される獲物の様な心境です。全身に鳥肌が。
「あんなデブより俺のが満足させられるぜ。それにしても……美味そうな唇だよなぁ」
恐怖を避ける為に目を閉じてしまいました。けれどもそれは逆だったのです。
見えていない方がより怖くて、しかし開けるのも怖い……。
思わずわたくしは〝アステル〟と心の中で強く叫びます。何度も何度も。
「そうか、答えはノーか。だが、残念ながらてめぇらに拒否権はねぇ」
デリックが言葉を発した後、4人共一斉に両手が同じ動きをし始めたのです。
胸元がはだけ、下着が……わたくしの意思でどれだけ抵抗しても勝手に両手が動いて行きます。
「いいねぇ♪ 流石にこんなに美女に囲まれちまうと興奮が半端ねぇぜ……。んじゃ今度は下も見せてもらおうかな♪」
またデリックの言葉通りにわたくし達の手はどんどんと下に……。
「い……ゃ……」
「くくく、銀髪のネェちゃんいい顔するなぁ〜!」
スパァァァァァン!!
衝撃波が突風の様に感じたかと思えば、自由に体が動かせる様になっていたのです。
わたくし達は直ぐに服を元に戻し、事態を把握しようと周りに目を向けようとした時、
「皆、大丈夫?」
その安心感のある優しい声に全身が包まれた様な感覚がしました。それは、神威フォームの姿で神威刀を握って立っていたアステルでした。
人間界でよく語られている、ピンチの時に助けてくれるヒーローの様な……。
アステルの絶妙なタイミングの登場に目がハートになってしまっていたのは、きっとわたくしだけではなかったでしょう。
「やっと現れやがったか! てめぇよくも俺の楽しみの邪魔をしてくれたな!」
「君こそよくも僕の仲間に酷い事を……覚悟は出来てるんだろうな!」
アステルの目つきが鋭くなりました。
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