追放された僕の下に女神が舞い降りた〜剣聖スキルを勇者に捧げたら、ただのデブは不要と言われ追放されたが、女神に結婚を申し込まれ、神として生きて行く事になりました。今度は僕のターン、追放返しだ〜
episode 32 天からの交信 -ミカエル視点-
episode 32 天からの交信 -ミカエル視点-
私はミカエル。大天使と言う階位にありながら神導様、天聖様に代わり神界を治める……など務まる訳ないと思いつつ、私はミレイネス様のお気持ちを汲んでこの役目を引き受けた。
今のところ魔族の目立った動きもなく、神界は穏やかな時間が流れていた。
そんなある日、人間界ではある1人の人間が突然、人間の能力では絶対に辿り着けない力に目覚めてしまうと言う異変を捉えたのである。
天使オリフィエルによって、その報告が為された。
「無理矢理に能力を進化させている様に感じました。ミカエル様この特徴、あの悪魔に似ていませんか?」
「それは〝ファーシル〟の事を言っているのか?」
「あり得ないとは思います。ただ、仮にこれがファーシルの仕業なのだとしたら、放っておくのは危険です」
「とは言え、私達は人間界に干渉する事は容易ではない。様々な条件が揃わないと降りる事は出来ないのだ」
それに今は神導様、天聖様が不在となっている状態。
下手に動いてしまうと魔族達に攻め入られる可能性もあるのだ。
仕方がない。次代の神導となられたアステル様にご助力いただく他ない。
ただ、私のようなたかだか大天使が、神族の王にお願いするなど許されるのだろうか。
私の曇った表情を見逃さなかったオリフィエルも察したのか、彼女の顔も曇って行く。
「今代のアステル様は凄くお優しい方で、ミレイネス様も仰ってましたし……それにもしこれがファーシルなら、緊急事態と言っても良いかと」
「そうだな……ここで躊躇っていては事態は更に悪化してしまうからな…………よし! オリフィエル、頼んだ」
「え!? わ、私がですか!? いくらミカエル様のご命令でもそれは……嫌です!」
「お前は私よりも階位が低いではないか! 上位の私の命令に背くのか?」
「そ、それズルいっすよぉ〜!! 聞くところによると、アステル様はとてもお優しい魂。私なんかが話して良い身分じゃありませんし……は、恥ずかしくて。それに神導様とのやり取りは今神界で最高階位のミカエル様の役目じゃないっすかぁ! ミカエルはどうした? ってなりますよ絶対!」
た、確かに……この神界で最高階位となる私が王に報告すべきであるのは至極当然。しかし私とて恥ずかしいのだ。
あのミレイネス様のお心を奪った方……以前に少しだけ魂を感じる機会があったが、正直私も心が激しく揺れ動きアステル様にこの身を捧げても良いと思ってしまった。
私は怖いのだ。もしアステル様の事を本気で愛してしまったら……私はミレイネス様の信頼を失う事になる。
いや、今は緊急事態! こんな事を心配してる場合ではない!
アステル様にご報告しなければっ!
◆
-アステル視点-
《やはり、デリックとリューインは繋がりがあったか》
頭の中でウルの声が響く。
《アステル、とりあえず貴方の指示の通り、ミラクルズハプンを休業にして皆でデルメシアに向かおうと思っています》
「わ、わわ、分かった。き、き気をつけて」
審議官から貰った水晶玉に映る王様や兵士達の記憶を何度も見返し、比較的簡単にデリックとリューインに繋がりがある証拠を掴んだ。
あとは審議官にこれを見せれば判決は覆せるとは思うけど、肝心のリューインの居場所が分からない。
もうアルヴァニアにはいないような気がして、だからミレイネス達にデルメシアに向かうように頼んだ。
さ〜て僕は僕でこの証拠を審議官に見せて再審をしてもらうかな。このまま放っとくと本当に死刑になっちゃうからね。
アルヴァニア城地下には、重い罪を犯した極悪人のみが入る牢獄があって僕は今その牢獄の中にいる。看守が時々見回りに来るんだけど、看守が持つ松明以外の明かりがここにはないから真っ暗。そのせいなのか他の囚人達も静かで大人しい。
ぶっちゃけて言うと、力を使ってしまえばこんな牢獄を脱して死刑を免れる事なんて簡単に出来てしまう。
だけど人々の心の中に、アステルは〝王様や兵士を殺した殺人鬼〟だって言うのがずっと残ってしまうんだよな。
これって神様としては非常にまずい事。何故なら神導の力の源は人々の信仰なんだ。
人々の信仰心を育てる事も神様としての僕の使命なんだけどアステルに対する疑念の心、軽蔑の心みたいなマイナスの思い、感情なんかも影響を受けてしまうんだ。
だって神様=アステルだからね。だからちゃんと無罪を勝ち取って、みんなに僕に対する思いや感情を変える必要があるって訳だね。
《ア、アステル様…………あの、……そのぅ…………えぇ…………っと》
「…………え?」
《し、しし失礼致しました! わ、わわ私の声が届いていらっしゃいますか!?》
ん? またテレパシー? 僕はてっきりミレイネス達からだと思っていたんだけど、その声は思いも寄らない人物だったんだ。それにしても何だろ……なんだか話し難そう。
《ご、ごほん! ……わ、私は大天使ミカエル。ミレイネス様に代わり神界を治めている者です。アステル様にお伝えしたい事があり、交信致しました》
ミレイネスと初めて会った時に感じた母親のような、恋人のようなあの不思議な感覚がミカエルにも感じた。
この声のトーン、張り、話し方を聞いて断言出来る事がある。
ミカエルは間違いなく〝きょぬー〟だ!
って、いかんいかん……。
ミカエルについてはミレイネスから説明された訳じゃないけど、幻界で2000年間修行した中で天使達の事も学んだからそれなりに知ってるつもり。
ただ、どうして今神界から僕にテレパシーを送って来てるのかは分からなかった。
そもそもよっぽどの事がない限りは
《人間界で気になる反応を捉えました。その者は人間を実験台にして無理矢理ファクターを付与して進化させているとの報告もあり、恐らくこの者は人間ではありません》
神界にはかつて〝ファーシル〟と言う欲深い天使がいた。天使でありながら邪悪な思想を持ち、ルールを破って勝手に人間に干渉したり、天使を堕落させては神界の秩序をめちゃくちゃにして来たとんでもない奴で、当時神導の天翔様による神罰で魂を浄化させ、消滅させたらしいんだけど、ミカエルが言うにはそのファーシルと特徴が似ているとの事。
《消滅したはずのファーシルが、どうにかしてそれを逃れて人間界に身を隠していたのだとしたら、放っておく訳には行きません。しかし我々は人間界に干渉してはいけないと言うルールがあり、人間界へ向かう事さえ簡単ではありません》
なるほど、そこで僕の出番って訳なんだな。
「わ、わわ、分かった。ぼ、ぼ僕がみ、みみみ見つけてな、ななんとかすす、する」
《神導様にこの様なお願いをする身分ではありませんが、このまま放っておくと人間の存在そのものが危険な状態になります。そしてもしも報告通りなら、神気を発揮出来る可能性が高いです。くれぐれもお気をつけ下さい》
ミカエルの話によると、アルヴァニアにいる事も分かっていて、もしかしたら接触してくる可能性があるんだって。
なんかミレイネス達が心配になってきたし、早く看守を呼んでここから出してもらわないと……。
《あ、あのぅ……アステル……様》
「う、うん?」
《わ、私……あの……す、すす……好きっ》
それっきりミカエルと交信が途絶えた。
今のって……もしかして告白? でも途中で途切れたみたいな感じだったけど……。
とりあえず、審議官に伝えて再審をお願いしよう。
ミカエルの突然告白を改めて思い出して1人でニヤけながら、僕は暗闇の中、看守がやって来るのを待っていたのだった。
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