第13話 黄龍観の学問所に集う子どもたち

 そしてようやく山桃一行が、黄龍観の山門に到着した。


 とキリン君は梁宗家当主の目前に現れた。

 「白龍の使いの2人が揃って黄龍観に何しに来たの!」

 「何をおっしゃますか麒麟様」

 「山桃!この男の弁舌を信じてはいけないよ!」 

 「あなたは誰?」山桃が尋ねた。

 

 キリン君は、答えるのが面倒だったので、山桃一行に早く行けと言いました。

 そして葛氏山桃と沢、江氏汰、湧が黄龍観の長い参道を上って行きました。

 梁氏宋家当主が山門に残り、いつの間にかキリン君の姿が消えていた。


 すると修行者数人が、黄龍観の黄色の武道服を着で参道を駆け足で降りて来て梁 氏宋家当主を囲みました。

 護衛の男たちは、梁氏宋家当主を守ろうとします。

「黄龍観の歓迎かな?」

「そうです先生」

 

 黄龍観の武術修行者たちが、梁氏宋家当主を囲み参道を上って行きました。

 境内に入り正面に、黄龍廟と麒麟廟があります。

「先生、黄龍様と麒麟様に礼拝を」

 梁氏宋家当主は軽く会釈した。

 そして梁氏宋家当主は本堂に案内された。

「ここでお待ち下さい」

 武術修行者たちが下がると、黄龍観主土黄が現れた。

「私に対して威圧的な歓迎ですね観主」

「そうですか?梁様あなたにはこれ位しないとお分りならない。で話とは何ですか?」


 梁氏宋家当主は、西方の周国姫昌が渭河南岸で五つの徳目の政治の実践を再開した事。

 また黄河中流域や西方などから、多くの民衆が渭河南岸へ移り住み人口が増え始めた事。

 そして周国の人々が、お互いに田んぼの境界を争わず平和に共有しお互いに協力し、またお互いに尊重し合っていること。

 梁氏宋家当主は、この時代の流れを読み取り五つの徳目の政治の実践する西方の周国姫昌を中華圏の君主に担ぎ上げるので、五龍観の信者に手伝ってほしいと観主土黄に要望した。

 黄龍観主土黄は反論します。

「それはあなたの政治的策略ですね」

 梁氏宋家当主は黙ってしまった。

「麒麟様のお告げがありません」

 我ら五龍の導師の使命は、五龍様や五獣様のお告げを信者の皆さんに伝え実行する事です。

 黄龍観主土黄は、梁氏宋家当主に諭します。

 我らは、あなた個人の政治的策略で動く事はありません。

 我ら五龍の導師の使命は、信者の皆さんと共に開発した耕作地や、信者の皆さんが生産した工芸品を守り発展する事にあります。

 そして信者の皆さんの生業と命を守る事が、我ら五龍の導師のもう一つの使命です。

「その使命を忘れて梁様の政治的策略に、信者の皆さんを共謀させる権限は私には無い!」

 梁氏宋家当主は反論しようとしましたが……

「よくぞ言った土黄」

 黄龍が人の姿で降臨。

「白龍!出て来い!出て来ないならこの使者の身体を奪ってやるぞ!」

「黄龍、穏やかではないな」

 白龍が白い道服を着て人の姿で降臨。

 白龍の人の容姿は、白髪で髪は長く腰のあたりまである。切れ長の目で全てを見通すかの様な瞳です。

 黄龍は、梁が献納信者である事を増長している。だから梁が黄龍観に来るたびに思い上がって無理難題を押し付けて来る。

 さらに黄龍は、黄龍廟と麒麟廟に梁が礼拝しなかった事を怒っています。

「無礼者!礼儀がなっていない!今日学問所に来た子どもたちは、皆ちゃんと礼拝していた」

「黄龍、小さい事で怒るな!」

「小さい事だと…」

 黄龍の顔は、みるみる黄色くなり龍の姿になりました。白龍も仕方がないので龍の姿になった。

 2頭に龍が睨み合い対峙しています。

 梁氏宋家当主は唖然としいます

 観主土黄は、2頭の龍様が暴れ狂うと本堂がどうなるだろう…と心配しています。

 そこへキリン君が現れ、土黄にそっと耳打ちをしてすぐに消えた。

「あの…黄龍様、白龍様…」と土黄が言ったところ、2頭の龍は恐ろしい形相で土黄を睨んだのです。

「麒麟がどうかしたのか!」

「えっ…ハァ」

 すると黄龍は土黄に言います。

「我に仕えるなら土黄お前は肝が小さい!もっと大きくなれ!」と命令した。

「ハァ…?」

 と土黄は呆れたように言った。

 土黄は気を取り戻して。

「…梁氏宋家当主による次代の中華圏の君主に担ぎ上げる政治的策略に対して五龍観は一切関知しない。政治的火遊びは梁が自由にせよ…との事です」

「麒麟に従おう…」

 そう言うと黄龍と白龍は、姿を消した。

 土黄は、本堂が壊れなくてホッとする。💕


 梁氏宋家当主の策略は、麒麟によって潰された。

 しかし梁氏宋家当主は、これで諦める豪商ではありません次なる手を考え出すでしょう。


 その頃、学問所では鄭氏吾、葵、魯氏智、箪氏満と月そして葛氏山桃、沢が再会を喜び会っています。

 江氏汰、湧と鄭氏葵は、青龍治水治山職工集団黄(おう)氏の子どもたちや、赤龍治水治山職工集団鳳(ほう)氏の子どもたちと挨拶しています。

 学問所は、中原梁氏が増改築し2階建の立派な講堂に改装されました。また食堂や男女別の寄宿舎も併設されています。

 次代を担う五龍の小さな導師たちは、この先どんな試練や困難、悲しみそして喜びが待っているのでしょうか。


 第14話 崋山白龍観と周国姫昌  につづく

 

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