第14話 崋山白龍観と周国姫昌

                     

 紀元前11世紀中頃、殷王朝時代末期、周国姫昌は、雍州渭河流域を領有し西伯の立場になります。周国姫昌は、殷王朝に対抗し牽制する行動を起こします。


 周国姫昌西伯は、まず渭河流域南岸、北岸で少数民族や遊牧民を討伐した。その結果、饕餮衆西方軍は渭河流域から追われました。彼らは河西地域へ敗走した。

 周国姫昌西伯は、本拠地である雍州の渭河流域南岸、北岸の治安と商業活動の活性化を行います。

 そして周国は黄河、長江、淮河の物流を掌握し中華圏おいて交易の主導権を長距離交易商人と共に執り行う。


 梁氏宋家当主は仲間の豪商と共に渭河流域雍州を交易隊商の出発点として私設鳳邑交易所に通じる渭河流域南岸、北岸の商業道路、市場、宿泊施設、倉庫などの整備事業を隴西地域まで推進していく。


 翌年、周国姫昌西伯は、隴西地域の北西の寧夏ねいか平原を支配する遊牧民ミツス(密須)討伐する事を決断する。

 寧夏ねいか平原を支配する遊牧民ミツスは、西伯である周国姫昌に対して服従しないのです。⒈

 寧夏平原は、中華圏西方の河西地域、隴西地域と雍州を結ぶ交通の要衝です。寧夏平原には黄河上流域の鉄、金、銀の鉱物鉱山があります。そして畑作農業と遊牧が盛んです。⒉


隴西地域の葛邑領主葛氏は、周国の官吏に対して周国姫昌に従い長男さねと共に兵1個連隊500人を率いて従軍する事を約束しました。次男しんは葛邑を守ります。

 領主葛氏の狙いは、隴西地域南方の隴南ろうなん地域の上質な薬草群生地と薬草、生薬の集積地の領有です。⒊

 また隴南地域は、梁州南鄭と同様に中華圏西南地域の入口となり梁州の穀倉地帯から長距離交易商人が集まる農産物、交易品の集積地です。


 そして雍州青銅器、鉄器鋳物工房火炎の工匠将氏は、周国の官吏に対して姫昌に従い1個連隊500人を率いて従軍する事を約束した。将氏の狙いは遊牧民ミツスの平原の鉱山の獲得です。


 周国軍によって、雍州渭河流域の街道と貨客船運行と私設豊邑交易所が取引を停止した。

 そして周国の官吏かんりたちは、頻繁に中原豫洲と冀州に行き来するようになります。


 周国姫昌西伯のミツス平原遠征により、中華圏の西方雍州と隴西地域は、突然の非常事態に陥る。葛氏山桃と沢そして江氏汰、湧の故郷である隴西地域が戦場となる。


 周国姫昌西伯のミツス平原遠征の知らせが、信者の白龍観担当周国官吏よって山華白龍観主太白に届いた。


 「我ら崋山白龍観は、周国と共に渭河流域の治山治水に協力して来ました。

 がしかしこの事態は何か!白龍密須分観を見捨てるつもりか!」

 すると、周国の官吏は黙ってしまいます。

 黄河上、中流域の治山治水拠点が白龍密須分観です。白龍密須分観には分観主と修行者とが常駐している。

 このままでは白龍密須分観が戦禍に巻き込まれる恐れがあります。

 そして太白は周国の官吏に対してもう一喝しました。

 「西方を守護する白龍様がお怒りです!

  周国軍に白虎様の守護は得られません!」

 そう太白が言うと信者の白龍観担当周国官吏は顔が蒼白になり

「白龍密須分観に対して…善処します…」と言い、

 官吏はすっ飛んで周原に帰国しました。


 白龍観主太白はテレパシーで黄龍観主土黄と対策を協議する。

 豫洲より漢江流域沿いをさかのぼり、白龍密須分観にたどり着く強行作しか無いとの結論に至りました。しかしそれでは間に合わない事になります。


 すると白龍がテレパシーで太白と土黄の2人に呼び掛けました。

 「安心せよ!我が密須分観の木像に憑依して分観の常駐者を守護しよう」

 「ありがとうございます白龍様」

 太白と土黄は白龍に感謝しました。がしかし黄龍はテレパシーで2人に呼び掛けた。

 「我ら五龍観を無視するとどうなるか、周国王と周国軍に知らしめようでは

  ないか、白龍どうだ?」

 「黄龍、手荒な真似はダメだぞ!」

 「安心せよ我に良い考えがある」


 その頃、中岳嵩山黄龍観の学問所では。

 周国姫昌西伯のミツス平原遠征影響が、学問所の実技課程にも影響を与えていた。鄭氏吾たち同期入所の子ども達は一年間の学科課程が終了し、白龍密須分観で実技課程を受講する予定していた。

 しかし西方の隴西地域に、有事が起きて実技課程が行なえない事態になった。

 学問所の長は、どこで実技課程を行うか?頭を悩ませている。

 

 学問所の長のもとに、観主土黄が尋ねて来た。土黄は、西方の隴西地域が有事が

起きている。だから葛氏山桃と沢そして江氏汰、湧を帰国させる命令が黄龍様と白龍様から発せられたと言った。 

 「…帰国させるのですか?」

 学問所の長は不思議に思う。


 黄龍観の山門の外では、キリン君と黄龍観自警団副長の黄守おうしゅ、白虎と白龍観自警団副長の白守はくしゅが待機している。

 五龍観自警団は、武術修行者で組織された各五龍観、分観、献納信者の領地を警備する自衛のための「」です。


 そこへ鄭氏吾と葵、魯氏智、箪氏満と月そして同期入所の子どもたちが葛氏山桃一行を見送りに参道を下りて来た。

 鄭氏吾は、隴西地域の皆に声を掛けた。

  「4人とも無事に学問所に帰って来て下さいね!」

  葵が葛氏山桃に声を掛けた。

 「寄宿舎の女子だけで夏の暑い夜、眠れないので故国の話しをしましたね…

山桃さんから隴西の話を聞きました…そんな…周国が許せません!」

 「葵、だめだよ、辛いのは山桃さん達なのだから…」

 吾が葵の言葉を遮りました。

 「だって…」

 魯氏智が沢に声を掛けました。

 「沢クン、男子みんなのまとめ役で誰より強く武術では武術師範より強い沢クン、

無事に学問所に帰って来て下さいね」

 同期入所の子どもたちは、葛氏山桃一行を囲み隴西地域の安寧と、無事に学問所に帰って来る事を願いました。

 「みんなありがとう…私達は帰って来ます」

 そう言って葛氏山桃一行は山門を出ました。


 「もういいのかい?」

 キリン君が山桃一行に尋ねた。

 山桃一行は、みんな故郷のことを考えていました。山桃一行は黄龍観主土黄から帰国するように命じられていて、自分たちの故郷と家族を守るよう決心している。

 沢は、山桃、江氏汰、湧の肩を抱き皆黙り込んでいます。 

 「じゃあ崋山白龍観へ行こうね!」

 キリン君と白虎は、光球を発生させ山桃一行と、黄龍観自警団副長の黄守と白龍観自警団副長の白守を包み込むとゆっくりと浮上します。

 山門に同期の子どもたちは、光球を見送っています。やがて光球は、西方に飛び去っていった。


 雍州渭河流域、周国の拠点となる邑群に周軍の兵が配置にされており臨戦態勢が整っていた。周軍はミツスの平原へ進軍する準備ができている。

 がしかし…

 周軍の兵たちは目を疑います。渭河下流流域崋山方面から、光球が飛翔して来るのです。その光球は、周軍の兵たちの目前で止る。

 そして周軍の兵たちは、信じられない光景を目にします。


 光球より麒麟が現れ先頭を歩き、黄龍観自警団副長の黄守が五龍観の紋章五つ巴の旗を掲げている。

 その後方に、白虎と、白龍観自警団副長の白守が白龍観の紋章一つ巴の旗を掲げている。

 さらに後方に、葛氏山桃と沢そして江氏汰、湧がつづいて行進して来ます、

 そして何か言っている様です。

「五龍観、正義よって渭河の街道を通る」

「五龍観、正義よって密須まで行く」


 周軍の兵たちは、隊列を止めたり邪魔したりしません。街道を守る兵たちを白虎が睨み威嚇しています。

 そして、周軍の兵たちは悟るのです。中華圏西方を守護霊獣である白龍と白虎。

周軍は、白龍と白虎の見放されていることに気が付きます。そして周軍の兵たちは、戦意を失っていきます。

 

 渭河上流隴西地域。

 麒麟の光球が、白龍観密須分観を目指し北西に向かって飛翔して行く。

 白虎と山桃一行は、家族が心配なので葛邑に立ち寄ります。


 葛邑は、臨戦態勢で兵が防備を固めています。

 門番は、山桃一行に気が付きます。

「山桃お嬢様だ!お嬢様がお帰りだ!」

 次男の真が山桃に近づきます。

「姉上お帰りなさいませ、沢、江氏汰、湧ご苦労様」

「真、ヨロイ姿がりりしいな」

 山桃がそう言うと、葛氏と兄の実は葛軍を率いて明日の朝、ミツス平原に向け進軍する事になっていた。

 がしかし,

 周国姫昌は、五龍観の行進を側近より聞いた。そのため姫昌は、ミツス平原進軍の一時中止を周軍の伝令が伝えて来たのです。

 

「姉上、沢、江氏汰、湧は葛邑とミツス平原を守ったのですよ!」

 

「本当に!」

 山桃、沢、江氏汰、湧に笑顔が戻ります。


 五龍観の抗議の行進は、周国と周国軍に対して伝わったようです。

 葛邑の兵士たちは、山桃一行を英雄として大歓迎し歓喜に沸きます。


 しかし棟梁江氏は、白龍密須分観へ向かう職人や工夫を黄河上流西岸の作業小屋で待機させています。だから江氏汰、湧は父親を助けに行くと言った。

「二人とも無理しないで」

 山桃は江氏汰、湧に忠告します。

「お嬢様、僕たちには白虎様と沢君がいますから大丈夫です」

 沢は遊牧民ミツスの平原をよく知っていて、江氏汰たちを助けると言います。

 「死なないで沢」

 「お嬢様、大丈夫です俺は死にません」

 沢は山桃を抱きしめた。

 「お嬢様、俺たちは必ず帰って来ます」

「約束して沢、みんなで学問所に帰るの」

 「ハイお嬢様、約束します」

 そして沢と江氏汰、湧は朝になると白龍密須分観へ白虎と共に旅立ちます。


         

 第15話 白龍と共に永遠の時を生きる つづく 


 本文の『』は引用

 文末の数字は解説と引用

 第12話解説と引用を参照

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