第34話 新たな作物の苗を手に入れた!

 エルフの里での一件が落ち着いた後。

 

 俺はエルフの里からリリーボレアまで、デュランタの馬車で送ってもらったのだが、感覚的にはほとんど一瞬でついた。

 というのも、戦闘による疲れで眠ってしまったからだ。


「かわいい寝顔だったわよ」


 とはシアの談で、起きた時には彼女に膝枕されていたのだ。


「ゴメンね。シアも疲れてるだろうに、重かったでしょ」


「別に構わないわよ。この体でアルトの寝顔を見るのは、あんまりないんだから。しっかり堪能させてもらったから、問題なしよ」


 と、やけにつやつやした顔で言ってくれた。


 寝ている間に何をされたかはわからないが、ともあれ、街に降り立つ頃には、大分疲れも取れていた。

  

 そして町の入り口で、俺はデュランタの馬車を降りたのだが、


「送ってくれてありがとう、デュランタさん」


「いえいえ。これくらい何時でもやりますとも。それと……こちらをどうぞ」


 別れ際、そういってデュランタが渡してきたのは、大きな三つの布袋だ。


 中からは土のにおいがした。


「これは?」


「助けてもらってばかりでしたから。せめてものお礼として、里で保管していた『エルフのトマトの種』と『エルフのクルミの苗』の詰め合わせを、先にお渡ししておこうと」


 見れば、袋の中には見覚えのある種や、やけに香りのいい苗木が入っていた。


「良いんですか? こんなにいっぱい」


「もちろんです。今の里の畑では育てられないもの故。ぜひ、使っていただければと。ほかの作物の種や苗は、明日以降、私たちのほうでアルト様の農園に持っていかせていただきます」


「あ、わかりました。では、試しにやってみますね」


 魔王城跡地の土と合うかも、こちらで出来るだけ試しておいて損はない。 


「しかし、クルミを育てるのは初めてだけど、いけるかな……」


 勝手が違いそうだが、と思っていると、デュランタが言葉をかけてきた。


「そうなのですね。クルミは果実以外にも、建築材として使えるので。とても便利な植物ですよ。林業にも使えるかと思います」


「林業かあ。やったことがないので、今度教えてもらえますか?」


「ええ! お手伝いに行った際に、手取り足取りお教えしますとも」


「ありがとうございます。では、また近いうちに」


「はい。それでは」


 そうして、俺のエルフの里訪問は一旦の区切りがついたのだった。


―――――――――――― 

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