第28話 呪いに対する提案
アディプスの言葉に、まず反応したのはデュランタだ。
「呪い、とは。それはどういう事ですか?」
「この土地、魔力が残っていませんです。土地そのものに、魔力が抜ける呪い、とでも言いますか。それが掛けられてますね。これでは肥料を蒔こうが土を入れ替えようが厳しいです」
「そんな……。魔力は作物の育成にとって、大事な要素ですよ……」
「確かに、近所の農家のおじさんも、言っていましたね」
魔王城跡地で農業する際にアドバイスされた。
魔力が無くても育つ草花がないわけではないが、こと野菜においては、作るために魔力と栄養は必須であると。
……そして、魔力が土からなくなるなんて、普通はないことだ。
同じ場所で何も手入れをせずに作物を永遠と育て続けたら枯渇しちゃうだろうね、とその農家は言っていたが。見た限り目の前の畑はきっちり手入れされているように見える。
それ故に、他の原因がある、と言われたら頷ける。アディプスはさらに言う。
「呪いは里全体に広がっていますね。感じる限りでは、里の周囲までカバーされてしまっているかと」
「そんなに広いのですか!? 道理で近隣で新しく畑を作ってもダメだった訳です……」
「何かここ最近で変わった事はないです? この畑を中心に呪いが広がっているように見えますけど」
「最近で変わった事……それこそ、スケルトンを引き連れた、竜の襲撃ですかね。この広場で、ピュセル様が竜を砕いたは記憶に新しいですが」
「打ち砕いたということは、血はここに落ちたんです?」
「ええ。文字通り、バラバラに砕かれましたので。ここに竜の血はまかれていますね」
「それが本当に竜だとしたら、竜の血液による土の強化がなされている筈です。アルトの畑に近い事になっている筈です」
「アルト殿の……? ま、まさか、アルト殿も竜を倒された事があるのか……?」
デュランタは驚きの目を向けてくる。
「ええ。まあ。俺が、というより、シアがなんですが。ともあれ、アディプス。竜の血が入ってても、呪いで魔力が吸い取られているって事かい?」
「幾ら呪いが掛かっていても、土には、形跡が残るです。竜の血が入っていれば間違いなくその形跡は残ります。ですが、それが全く見られません」
「ということは、ここで倒されたのは竜じゃなかった、ということかしら?」
「そうなりますね。むしろ、その竜もどきによる血肉が呪いの原因かもしれません」
「確かに。人間から竜の姿になったので。竜が人間の姿に変身していたのか、その逆なのかはわからないですが……ともあれ、普通の竜ではなかったんですね……」
「呪いは解けるの?」
「分からないですね。呪いをかけた本人を倒せば消えるものもありますし。死して呪いをかける方法もありますから」
シアの質問に、アディプスはそう言った。
その言葉を聞いて、まず反応したのは、
「つまり、この畑を復活させるのは難しい、ということかね。お客人よ」
俺達の背後にいた、白髪のエルフだ。
「里長。ピュセル様のお世話をされていたのでは」
デュランタにそう呼ばれたエルフは、
「ピュセル様が『休眠』に入られたので。その際に、こちらはいいから、君たちを手伝えと言われたもので」
里長の言葉に、シアが目を細めた。
「休眠ってことは……アイツ、しばらく起きてこないわね」
「貴女は、ピュセル様の旧友の……。ということは、存じられているのですな。あの方の特殊な『休眠』を」
「ええ。昔からアイツ何日も眠らずに動けるけれど、その代わりに一度寝たら、何が起きても、どんなことをされても、起きないのよね。例えベッドから転げ落ちようが、それこそ自分が攻撃されてても」
シアの言葉に里長は頷く。
「昔からなのですな。ここでも、どんな衝撃があっても起きません。最短でも24時間は眠られるので、警護だけはしております。……今まで、スケルトンの駆除に集中できるようにと魔獣除けの結界を張り続けるなど、気を張り続けていたのもあって。今回はもうちょっとかかりそうですが」
守り続けて頂いた分、こちらのことはこちらで解決せねば、と里長は息を吐いた。そしてデュランタに顔を向ける。
「それで横から話を聞かせて貰ったのだが、厳しそう、なのだな」
デュランタは、難しい表情をしながら頷く。
「ええ。畑を復活させる手掛かりは今の所つかめないですね。備蓄が尽きるまでの間に、どうにかしたいのですが」
言いながら彼女が見るのは、大きな倉庫だ。
中には、保存のきく食料などが入っているようで。今も、エルフの住民によって、幾つか持ち出されていた。
「君が必死で集めてくれた食料だ。その分の時間でどうにかしたいところだが、我々はここ以外に行ける場所などないのだし。町との交流もなく、頼れるところもない。どうしたものか……」
「そうですね……」
と、デュランタと里長は悩んでいる。
そこで俺は少し、思った事があった。だから聞いてみる。
「あの。作物を育てられる場所があればいいんですよね?」
「あ、ああ。だが、畑を作ろうにも使えそうな土地はないのだ。唯一、農作が行える土地に里を作ったのだから」
その言葉に対し、俺は頷き、提案することにした。
「だとしたら――良ければ、ウチの農園の土地をお貸ししましょうか?」
――――――――――――
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