第20話 ステータス増強の検証

 レベルが360になっているのは、トマトを育てる際に現れたモンスターを倒し続けたからだ。

 筋力ステータスもその際Aになっている。それは別にいい。先日、チェックしたのと変わりない。

 

 問題は、(+D)のところで、 


「なんだこれ……」


 見れば他の能力値にも、(+D)という記載がなされている。


「シア、+ってあるんだけど」


 そう言うと、あー、とシアは空を見上げ、


「補正が足されてるのね。因みに、私も、補正が加わって、体が軽い感覚はあるけど」


「補正……というと……」


「ええと、『ステータス増強ポーション』ってあるんだけどね? 知ってるかしら?」


「あー……主に戦闘で使われる奴だよね。能力補正の底上げっていう」


 薬屋で売っているのを見た事がある。モンスターに対して使ったり、軽いものだと日常に使うこともある。

 

 例えば、鍋の振り過ぎて肘を痛めていた料理長が飲んで、手首の力だけで鍋を振っている姿も見た事がある。

 

  まあ、料理長はその後、祖父に無理をしている所を見つけられて、治るまで無理やり休暇を取らされたりしていたのだが、それはともかく、

  

「それに近い効果がある、と」


「そうね。ポーションは、出来にもよるけど、+Dは結構強めね。買うと高かった筈よ」


 彼女の言う通り、ポーションは補正の高さによって値段が変わる。+Gのポーションでも、およそレストランで三食で食事が出来るだけの価格になるはずだ。

 1段階上がるごとに、値段も上がっていった。

 

 ……効果が非常に強くなる+c以降は、とんでもない値段がすると薬屋の店主さんから教えて貰ったっけ。


 そして普通は、筋力用だったり、体力用だったりと、各ステータスごとに違うポーションが必要だったはずである。


「この全部のステータスに+Dは大分破格だよね」


「ええ。それに、一般的なものは、ほんの数十分から一時間くらいしか効果がないんだけど」


「一時間……何も食べてないけどなあ」


 水は飲んだが、それくらいだ。

 つまり、一時間以上前に何かしらを摂取した効果が残っているという事になる。

 一時間以上前だとすると、朝食のパンを食べたっきり、特に何も口にしてはいない。

 

 パンはとても美味しかったが、+の補正を与える事は今までなかった筈だ。

 

 その以前で、思い当たる原因としては、


「昨日のトマトのせい、かなあ?」


 印象的なのはそれだ。


「かもしれないわね」


「あるいは、料理で使った食材の組み合わせの効果か。魔王城で育てた作物が全て、+補正を与える――って事なのかもしれないけど。芋を食べた時は普通……だった気もするし。いや、ちょっと体は元気だったかな?」


「そんな気も今にして思えばするかもね」


 芋の場合は、単純に栄養豊富なものを食べて体が元気だった、という可能性もある。


 毎度毎度、料理を食べた後、ステータス表を見ている訳ではないし。

 微弱な補正であれば気付かずに過ごしていても仕方はない。

 

「トマトが特殊で、効果が強く出ているなのか、魔王城で育てた作物が全て補正が掛かるのか、あるいは、ここの竜の二坪が特殊なのかも、ちょっと調べる必要はありそうだね」


 魔王城産の作物と、普通の作物を食べ比べたりして検証をしてみよう。

 

 とりあえず、今日出来る検証として、夕方にエルフのトマトを食べて、翌日まで普通の食材で過ごしたところ、翌日の昼前には+の補正は無くなっていた。

 

 どうやらトマトの場合は、食べてから半日強、ステータスに+Dの補正が働くようである。

 

 生で食べた場合と料理した場合でまた変わるかもしれないし。

 

 単一の食材で食べることなどあまりないけれど、他の作物についても、出来る限り調べたいところではある。ともあれ一番思うのは、

 

「美味しいものを食べて、体にもいい影響が出るっていうのは、ありがたいなあ。食べてトレーニングをすれば、もっと体力も筋肉もついていくってことだし」


 開拓は力仕事だし。

 フィジカルはいくらあっても困らない。


 この魔王城跡地では予想外な事ばかり起きるが、日々、新しい事が見つかって、検証していくのは、楽しい限りだ。


―――――――――――― 

【お読み頂いた御礼とお願い】


 本作品をここまでお読み頂き、有り難うございます。

 

「この先が気になる!」

「アルトやシアの続きがもっと見たい!」


 ちょっとでもそう思って頂けましたら、↓にある「☆で称える」の「+ボタン」を3回押して、☆を入れて、応援して貰えますと嬉しいです!


 大勢の方に見て貰う事が出来ますので、作者の執筆継続のモチベーションになります! 

 また、フォローして頂けると、とても助かります。


 どうぞよろしくお願いいたします。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る