第16話 10年分の育成、成功
トマトの芽を見て、シアは笑みを浮かべた。
「やったわね!」
「うん! トマトも育てられそうだよ! ただ――」
そう。ただ、一つ問題もあった。
目の前の畑には、トマトの芽以外も出てきているものはあって。
「雑草、というか、これ、モンスターだよね」
朝、スライムの報告があったから、急いで来てみたのだが。
めちゃくちゃな量の雑草――というか、モンスターが育っていた。
作物が急速成長するのだから、雑草だって育つ。それは分かる。
けれど、この土壌は栄養があり過ぎるのか、あるいは魔力が強すぎるのか、普通の雑草はあまり生えかったのだ。
そして今、生えているのは、いばらのような蔦が寄り合い、樹木の様になって蠢いている植物系モンスターだ。
「多分、アイヴィートレント種だと思うけど。なんにせよ、間違いなくモンスター……ねっ!」
「しかも問答無用で、攻撃してきてるしね……!」
「ウオオオオオ……!」
呻くような声を上げて、棘を弾丸のように飛ばしてきていた。
畑に近づくなり、仕掛けてきたのだ。
俺とシアは避けられており、スライムがトマトへの直撃を防いでくれているので、被害は今のところないが、
「倒さなきゃ、作物がやられるし。そもそも栄養も持ってかれるよね」
「でしょうね。スライムたちじゃ、防ぐのがやっとだけど、いずれ疲れちゃうわ」
「それなら申し訳ないが、倒させて貰うしかないか……!」
俺は、持ってきた農具――草刈り用のナタを取り出す。
この地に生える、強靭な雑草を刈り取れるように鍛冶屋に頼んだ特注品だ。それを手に、棘の合間をかいくぐって近づき、
「よいしょっ……と!」
アイヴィートレントの根元に向けて大きく振って叩きつけた!
それだけで、
――ズパッ!
と、勢いよく、アイヴィートレントの根元は、切断された。そして、
「ウオォォ……」
トレントはそのまま枯れる様に、力を失い、地面に落ちて、朽ちてしまった。根からの栄養を遮断されたからだ。
「流石! もう手慣れたものね! あとは復活しないように、根を掘るだけよ」
「う、うん。ここまでの大きさのものは初めてだけどね……!」
俺は、トレントの根を掘り返して、息を吐く。
何度かトレント種は刈っているので、やり方は分かるが、ここまで大きいと流石に大変だ。さらに言えば、
「まだ、何体もいるよね……!」
トレントは、何処から湧いてくるのかわからないが、生命力と繁殖力が強い。目の前には、未だ、数体のトレントがいる。
頑張ってスライムは防いでくれているので、
「今のうちに、倒しきっちゃおう……!」
「そうしましょう!」
そうして、俺は、シアと共に、トレントを刈った。
途中でエウロスの力も借りて風のカッターで切ったり、アディプスから、雑草が生えにくい肥料を教えて貰ったりで工夫もした。
それでも、一夜ごとに数体は生えてくる草系モンスターを刈って刈って刈り続けて、2週間。
「実ったよ……。10年が、2週間で……」
「ええ。真っ赤で、芳醇な香りがする。こんなの見た事がないわ」
俺たちは宝石のような、真っ赤なトマトの実を、手にすることに成功したのだ。
――――――――――――
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