3-1 覚悟
次に第二美術室の扉を開けるときには、きっと明るい気持ちなのだろうと信じていた。
第二美術室はいつも通り、絵の具と油の匂いがしていた。部屋にいた棗子さまは、珍しく衣装を触っていなかった。部屋の中央で椅子に腰掛け、こちらをじっと見つめている。
「調べるのね」
私が何か言う前に、棗子さまは短くそう言った。私が言うことをすでに分かっているようだった。狭い学園内のできごとだ。棗子さまの耳にも、情報が入ってきているのだろう。
棗子さまとはやっと少し歩み寄れたばかりだ。このタイミングで、新しい事件を持ち込むのは正直なところ心苦しい。けれど、今の私たちであれば大丈夫だと私は信じていた。
私たちは共犯者。棗子さまが推理で傷つくことがあっても、私はその傷を共有できる。
「はい」
棗子さまの目を見て、放った言葉はたった一言。けれど、私たちは言葉以上の覚悟を共有し合えていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます