勇者の軌跡エピローグ2:勇者、伝説になる

 俺は、愉快な仲間たちパーティメンバーと王都で別れた後、暇つぶしにあちこちの土地を廻っていた。いろいろな種族と出会い、中々楽しめたのだが、1年ほど放浪していたら流石に飽きてきたので、生まれ故郷に戻って食っちゃ寝の生活を送っていた。

 町の人たちや両親は、「世界を救ったんだから少しぐらいはいいんじゃね?」という感じで、放ったらかしにしてくれていた。

 そんな「風呂入ってイモ食って屁こいて寝る自堕落」の生活を送っていたある日、俺を訪ねて客が来た。

「・・・な~んで、お前らがここに来たんだ?」

 ここは自宅のリビング。俺の目の前には、顔を赤くしてもじもじ君している「聖女」と、満面の笑みをたたえて正座している「ちみっ子王女」がいた。

「べべべ、別にいいじゃない!今日は、あああ、アンタと『絆』を結ぶ決心がついたから来たのよっ!あああ、ありがたく思いなさいよねっ!!」

 何故か真っ赤な顔をして、どもりながら聖女がそう言った。

「私も、勇者様の妃となるためにまかり越しましたのですわ!」

 ちみっ子王女は、眩しい笑顔でそんな寝ぼけたことを言ってきた。いやいや、両親国王と王妃の許諾は得てきたんか?「一応」これでもこの国の「第一王女」何ですけど。

「ちょっとアンタ、何図々しいことを言っているのよ!!大体、アンタみたいな『子供』には結婚なんてまだ早いわよっ!!」

「何をおっしゃられているのでしょうか?聖女様こそ、そんな『ちんちくりん』な成りをされていて、勇者様に輿入こしいれされるなんて、ちゃんちゃらおかしいですわっ!!」

 などと、(見た目)ちびっ子2人が醜い争いをしている。はっきり言わなくても面倒くせぇ。

 そんな不毛な争いをしている所に、両親がお茶と茶菓子を持ってやってきた。

「あらあら、流石は『勇者様』ね~。『聖女様』と『王女様』に言い寄られるなんて~。凄いじゃない。」

 そう、母親が暢気のんきに言ったかと思えば、

「いや~、それにしてもお前に『幼女趣味』があったとはな~。でも流石に『未成年者』はまずいんじゃないか?」

 と、父親が無意識に爆弾を投下した。

 すると、醜い争いをしていた2人が、同時に両親の方を見たかと思ったら、

「「おいコラ今なんつったんじゃおどれらお前達。これでも立派な『大人』じゃと何辺言わせれば分かるんじゃボケ。耳から手ぇ突っ込んで奥歯ガタガタ言わしたろうか!!」」

「「ひいぃぃぃっ!!」」

 見事なシンクロ率で、両親にお馴染みの関西弁による文句(恫喝どうかつともいう)を言って、両親を恐怖のどん底(誤記)に落とした。

 ふむ、グッドなタイミングじゃあ~りませんか。それじゃあ今のうちにトンズラこきましょうかねぇ。「三十六計逃げるにかず」だ。わが子の為に尊い犠牲になった両親のことは忘れないぜ(ハッピースマイル)。ほんじゃ、あばよ、とっつあん大平原の小さな胸を持つちびっ子共!!


 <勇者は逃げだした!しかし、聖女と王女に回り込まれてしまった!コマンド?>


「どこに行こうとしているのかしら~?」

「勇者様、まだお話は終わっておりませんですわよ?」

 何と、ついさっきまで両親を恫喝していたちびっ子共が、俺の退路を塞いできたではないか。

「チッ、流石はちびっ子。素早さ『だけ』は天下一品だな。」

 そう言いながら、いつものコマンド一覧を見てみると、


 コマンド一覧

[にげる]


「逃げる」コマンドしかねぇ~。まあ、こいつらと戦うつもりは毛頭ないから、当然っちゃあ当然だけどな。

「じゃあ、秘技『ご都合主義ワープ』!!」

 ・・・・・・・・・

 あれ?何も起こらないが何で?


 <勇者は秘技を使った!しかし、何か不思議な力が働いて発動しなかった!コマンド?>


「ふっふっふっ、アンタがそうする事は分かっていたわ。」

「勇者様、無駄なあがきはお見苦しいですわよ?」


 ・・・まさかここまでとは。何という執念。

 そう思ってふとコマンドを見ると、


 コマンド一覧

[かんねんする]←New!!


 ・・・Oh,No.Jesus Christ!なんてこった、パンナコッタ


「「さあ、観念して大人しく縛につきなさいっ私達と一緒になりなさい!!」ですわっ!!!」


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 さて、その後の勇者について、軽く話しておこう。


 <勇者:人族にして「神の使徒」>

 聖女と第一王女の熱烈なアプローチに屈した勇者は、2人まとめて(しぶしぶ)妻として迎え入れた。結婚式の時、2人の幸せそうな顔に対して、勇者は不幸のズンドコ(誤記ではない)の顔をしていたそうだ。

 その後、2人の妻の寵愛ちょうあいを受けまくった勇者は、多くの子宝に恵まれた。

 なお、以前ポンコツエルフが言っていた「『絆』を結んだエルフは急速に成長して大人の姿になる」だが、聖女に至ってはそのような兆候は全くなく、ちびっ子のままであった。

(子供ができた時に、一瞬大平原が「弁天山日本一低い山」位にはなったが、すぐ元に戻った。)

 また、第一ちみっ子王女も王妃と同じくゴージャスボデーになるかと思われたが、こちらも期待空しくちびっ子のままであった。

(こちらも、子供ができた時に以下略)

 勇者はと言えば、2人に色々搾り取られたようで、枯れ枝のようになっていた。


 それから、勇者たちは生まれ故郷を出て、人族のいる大陸とエルフが住む島の間にある小島に、自分たちの国を作った。

 その国は、小さいながらも「あの」勇者の国らしく、いろいろな種族がお互いを尊重し、仲良く暮らす理想郷となっていた。


 勇者の没後、彼の行った数々の偉業は「英雄譚えいゆうたん」として、聖女から「散々」聞かされてきた勇者の子供たちにより語り継がれることとなる。

(なお、ポンコツエルフが言っていた「絆を結んだ相手が亡くなると、その相手の記憶もなくなる」ということだったが、聖女が勇者のことを忘れることはなかった。)

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 これで、歴代最強と言われた勇者の英雄譚は完結となる。

 この勇者は、確かに実力は歴代の勇者の中でも最強と言われるほどであったが、何よりこの勇者の強さは、歴代のどの勇者も持っていなかった、


「種族に関係なく慕われる能力」


 ではないだろうか。


 ー 面倒くさがり屋(だけど最強)勇者の英雄譚 ー

 完


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 実は、あと一話あります。

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