勇者の軌跡39:勇者、ここでも面倒ごとに巻き込まれる

 さて、今俺たちはエルフ族の女王の屋敷にて、女王自ら「お願い」をされている。

「実は、折り入ってご相談したいことがありまして...。」

「誰が『檻に入って相談する』じゃ!」

「は、はい...?」

 俺の華麗なボケに、女王は戸惑っている。うーむ、やはりよわい8歳の小娘には、俺のエレガントなギャグは理解できんか。

「勇者様、御冗談はおやめください。陛下がお困りになっておられます。」

 俺がそう思っていると、女王の傍にいた宰相(ちびっ子)が苦言を呈してきた。

 あらまー、女王が言ったように「堅物カッチカチ」なのね~。俺としてはただのモーニングジョークの心算つもりだったんだけどな~。悔しいですっ!

「それで、相談事って何?」

 俺は、女王の横で未だにブチブチ言っているキモい宰相を無視して、女王に要件の催促をした。

 そうそう、俺の口調だが、面倒くさくなったから普段通りの言葉遣いにした。

 女王にもそのように言うと、何だか喜んでいた。フラットに話してくれる相手がいなかったからだろうな。知らんけど。

 ただ、「俺にも名古屋べ...『エルフ訛り』で喋ってくれてもいい」と言ったのだが、何だか変に意識してしまうらしいので、今は「女王モード」の口調になっている。

「は、はい。実は、この近くの森に『オーガ』が住み着いてしまい、対応に苦慮しているのです。」

 女王の話によると、つい最近(と言っても5年ぐらい前)、女王がいる集落の近くの森に、どこから来たのかわからないが、巨人族の「オーガ」が居座ってしまったそうだ。

 そのオーガは、特にエルフたちに危害を加えることはなく、一人で大人しく暮らしているらしい。

「別に放っといてもいいんじゃね?何か被害があったわけじゃないんでしょ?」

 無許可で住み着いたとしても、別に被害をこうむったわけじゃなく、相手も大人しくしているんだったら気にしなくてもいいんじゃない?と思うんだが。

「そういう訳には参りません。今は大人しくしていますが、何時いつ暴れだしてこちらに被害が出ないとも限りません。」

 俺の話を聞いて、宰相がそのように言ってきた。

 確かに、宰相の懸念はもっともだ。俺みたいな「部外者」としてはどうでもいいことだが、当事者エルフにとっては問題なんだろう。

「なるほど。で、俺らにどうしてほしいの?」

 そう聞くと、何故か女王がもじもじしている。何だ、うん●でも漏れそうなのか?

「それはさっき済ませてきたで、心配せんでええがね。・・・って、違ぁーーーう!!」

 俺の考えていることを読んだ女王が、見事なノリツッコミをしてきた。

 今のが「俺の考えを読んでの女王のリアクション」とは分かっていない他の連中は、「何言っているんだこいつ?」みたいな顔をしている。アサシンに至っては、「じょうおう、ついにあたまがおかしくなった。」とか失礼極まることをつぶやいていた。

 そんな寸劇があったが、改めて俺達への依頼と言うのが、「はぐれオーガの調査」だそうだ。

 な~んか、前にも似たようなことをやったような気がするぅ~、と思って聖女を見たら、聖女も、そのことにうすうす感付いていたようで、「うわっ、まるで私が初めてコイツ勇者に会った時みたいじゃない...。」とブツブツ言っていた。

「わかった。で、調査する?ほかに何かある?」

 そう俺が宰相に尋ねると、彼女は「?」という顔をした。

「・・・はい?依頼はあくまで『調査』だけなので、要件が済みましたら速やかにお戻りください。」

 ふむ、他に色々頼んでくると思っていたが、意外とあっさりしているな。ここが「人族欲の皮が張っている連中」との違いなのかもしれん。

 俺がそう思って、承諾しようとしていたら、

「ちゅーことで、うちも行くで。」

 などと、突然女王が言い出した。いや、お前も行くんかい。あと、名古屋べ...「エルフ訛り」が出ているから、「女王モード」は終わったのか。

「何か、面白そうだがね。それに、『オーガ』っちゅうのといっぺん戦ってみてゃーかったんだわ。」

 おいコラそこの「頭が残念な」ロリ巨乳、さっき「調査」って言っただろうが。なんで「戦う」前提何だ?お前はサイ●人か?

 つーか、宰相が許さないだろう?と思って見てみたら、盛大なため息をついている宰相の姿があった。

「そういう事ですので、よろしくお願いします。」

 認めるんかい!?というか、どちらかというと「諦め」ているっぽいな。

「実は、陛下はああ見えてもまだ8歳です。」

 うん、知ってる。あの姿で年齢が2桁行っていないなんてミラクル以外の何物でもないけどな。

「それに、『ハイエルフ』という事で、非常に戦闘力が高いのです。」

 うん、それも知ってる。というか、前にそこにいる未亡人エルフ近衛隊長から聞いた。

 ・・・ん?もしかして。

 ガキんちょ8歳(ロリ巨乳)、女王偉い人戦闘力が高いハイエルフクルクルパー脳筋、近くに格好の獲物オーガがいる。これらから導かれる解は...。

「はい、困ったことに勇者様の思われている通り、『腕試し』をされたいようなのです。」

 そう、またため息をつきながら宰相が言った。

 うーん、それは困るな~。もしかして、俺が探しているラス1メンバーになるかもしれないからな~。

 そう思った俺は、近くで雑談をしている合法ロリーズを手招きで呼んだ。

「どうしたの?もうお昼ごはん?」

「ゆうしゃがてまねきなんてめずらしい。それとも『てのうんどう手の運動』?」

 そんなことを言ってきた(見た目)ちびっ子共である。

「違うわ。今から調査に行く『オーガ』なんだが、もしかして俺たちのパーティメンバーになるかもしれない。」

 俺がそう言うと、合法ロリーズはお互いの顔を見合わせた。

「そういえば、私たちがこっち方面に来たのって、それが目的なのよね。」

「『オーガ』はきょじんぞく、ゆうしゃがいってたじょうけんにはあう。」

 そう言って、納得していた。

「そういうことだ。で、だ。あの名古屋べn...、エルフ訛り名古屋弁の酷いクルクルパーロリ巨乳頭がおかしい8歳のパーフェクトボデー女王がその『オーガ』と戦いたくて仕方がないみたいで、なんと宰相の許可も得てしまった。」

「あんた、サラッと酷いこと言ったわね...。それは兎も角、ちょっとまずいわね。」

「『はどめがきかないぼうそうれっしゃ歯止めが効かない暴走列車』ということ?」

 んー?それとはなんか違う気がする。つーか、お前「列車」を知っているんかい。

 ・・・と思ったけど、「蒸気船」があるなら「列車」もあるか。知らんけど。

「まあ、それよりもだ。聖女が言ったように今戦って、もし『オーガ』が倒されるようなことがあると困るので、アサシンが一足先に行って、情報を仕入れてほしい。」

「あらほらさっさー。」

 そう言うと、アサシンはあっという間にいなくなった。

 さて、そうしたらアサシンが戻ってくるまでどうやって時間を稼ぐかな~、とか考えながら、例のクルクルパーロリ巨乳思考が残念な女王を見てみたら、すっかりバトルモードに突入しているらしく、腕をぐるぐる振り回しながら準備運動をしている。

 ふむ、向こうはやる気満々だな。しかし、世の中そんなに思い通りいくとは限らないという事を、このロリ巨乳8歳の一応偉い女王に教えてやらねばならない。これも年長者の務めなのだ。くっくっくっ。

「あんた、まーた何か良からぬことを企んでいるわね...。」

 何か、聖女が言っているが、そんなの気にしねぇ。勇者様による「教育的指導」だっ!フハハハハハ!!

「ということで、捕縛~。」

「うにゃーーーーーーっ!!?」

 俺がそう言うと、何という事でしょう。あのクルクルパーのロリ巨乳思考が残念な一応偉いハイエルフの女王がものの見事に「亀甲縛り」にされているではありませんか!

 うん、自分でやって何だが、めっさエロい。これは通報案件になるな。お巡りさんコイツです。

「ゆゆゆゆ、勇者様?!いきなり何をしとりゃーすかぁ?!!」

 と、地面に転がってもぞもぞうごめく亀甲縛りされているロリ巨乳8歳の多分偉い女王がそんなことを言ってきた。

「やかましいこの変態戦闘狂が。『調査』だっつーてんのになんで『戦うこと』前提になっているんだコラ。今俺の仲間が情報収集をしているからそれまで待たんかい。」

 俺がそう言っている間も、話を聞かずに何とか捕縛から逃れようともぞもぞ動いている変態ロリ巨乳偉いと思われるハイエルフの女王である。

「にゃーっ!ぜんっぜんほどけにゃーがねー!!どーなっちょるんじゃーっ!!」

 動けば動くほど、いろいろなところに縄が食い込んでいく姿を見ていると、放送禁止レベルにエロい。見た目は大人、中身はガキんちょが悶える(ように見える)姿は、何か凄い背徳感がするでごわす。

 もぞもぞ悶える変態女王8歳のパーフェクトボデーと、それを目が点になって無言のまま見つめている聖女らエルフ陣。

 そんな混沌とした場面に、これまたグッド(?)タイミングで偵察に行っていたアサシンが戻ってきた。

「ただいま...。ゆうしゃ、じょうおう、あたまがおかしくなっただけでなく『えすえむ』ぷれいもするようになったの?」

 うむ、ぱっと見は確かにその通りでござる。しかし、相変わらず身も蓋もないことを言うな、このちびっ子。

「まあ、いろいろあってな。んで、どうだった?」

 アサシンからもたらされた情報は、中々大したたまげた門左衛門もんざえもんだった。

「よし、それじゃあ早速会いに行ってみるか。」

 そう俺が言ったら、フリーズ状態から復帰した聖女が慌ててこう言った。

「ちょ、ちょっと!行くのはいいけど、『あの』女王様はどうするのよっ?!」

 俺は、相変わらず悶えている変態女王を見ながら、

「勿論連れて行くよ?そうお願いされたから。てことで、アンタはそこの変態芋虫8歳の「一応」ハイエルフの女王を運んでおくんなまし。」

 と、亀甲縛り状態の女王の傍にいた未亡人エルフに言った。

「う、うむ。分かった。それでは陛下、参りましょう。」

 そう言って、亀甲縛りの変態芋虫これでもエルフ族では(多分)偉い女王を担いだ。

「こりゃー!近衛隊長ーっ!!言われた通りに担がにゃーで早うこれを解きんしゃーい!!」

 肩に担がれた女王が、未亡人エルフ近衛隊長にギャーギャー文句を言っているが、当の未亡人エルフは、

「・・・それにしても、いくら油断されていたとはいえ、あの女王様をあっという間に捕縛するとは...。」

 と何やらブツブツ言っていた。キモい。


 そんな訳で、亀甲縛りの変態女王を連れて、俺たちは「仲間候補」のはぐれオーガの元に行くのだった。

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