勇者の軌跡37:勇者、ハイエルフの女王に会う
「驚いたかもしれないが、これでも
あ、そうか。人族を基準にしていたが、絶対数が違うわ。つーことは、未亡人エルフが言うようにそこそこ大きな集落になるのか?分からんけど。
俺たちが集落に着くと、門番らしきエルフ(大人)が未亡人エルフに気付き、敬礼をする。
「近衛隊長、お疲れ様です!...して、後ろにいる者たちは?」
門番の問いに、未亡人エルフが笑顔で答える。
「ああ、この者たちは先日人族に捕らえられた同胞だ。そして、この男は同胞を助けてくれた『勇者』と、そのパーティメンバーだ。」
「おおっ、そうでしたか!お前たち、捕らわれたと聞いて心配していたが、無事で何よりだった。そして勇者殿、わが同胞をお助けいただき感謝します!」
と言って、門番が頭を下げた。うむ、もっと感謝するがよい。
「そういう訳で、助けてくれた礼と報告を兼ねて、陛下に
「はっ!」
未亡人エルフがそう言うと、門番の一人が集落の奥に走っていった。
「さて、伝令が戻るまでしばらく待っていてくれ。」
そう言われて、俺たちはしばらく門の所で待っていた。
その間、聖女とちびっ娘エルフ(未亡人エルフの娘)が何やら話していた。
「ねえねえ、あの『勇者』って、どのくらい強いの?」
「そうね~、人族の町を襲った無数の魔物を魔術一発で全滅させたり、さっきなんて奴隷商船とそれを襲っていた魔物たちを
「・・・へ、へぇ~。でも、それだけの数を相手にしたら、怪我位するわよね?」
「う~ん、私が見ている中で、怪我したのは、私がパーティに入って直ぐの時ぐらいかしら?怪我と言っても『かすり傷』程度だったけどね~。」
「それ以外は、ほぼ一方的な展開になるから、怪我なんかしないわよ。まあ、攻撃を受けても『ノーダメージ』みたいだけどね。」
「・・・ガタガタ(戦わなくてよかった...。)」
・・・何か、ちびっ娘エルフが震えているみたいだが、別に寒くはないな。もしかして、う●こが漏れそうなのか?だったら我慢しないでしてきなさい。
そんなことを思っていたら、ちびっ娘エルフに睨まれた。解せぬ。
「そういえば、この島で『魔族』が何かやらかしていないか?」
俺が横にいる未亡人エルフにそう聞くと、少し考える素振りを見せて、こう答えた。
「・・・いや、そのような報告はない。何より、ここ何百年も『魔族』を見かけたことがないな。」
ふうむ、「たまたま」かもしれないが、もしかして、魔族がいろいろやらかしているのは「人族」だけなのか?
そんなことを話していたら、伝令に行った門番が戻ってきた。
「近衛隊長、陛下への拝謁が許可されました。陛下も『ぜひお礼を言いたい』と申されております。」
「そうか、ご苦労。あとは私がするので、お前は仕事に戻るがいい。」
「はっ!」
「待たせたな、それでは行くとするか。」
そう言って、俺たちは未亡人エルフを先頭に女王がいる屋敷に向かって歩き出した。
「・・・・・・・・」
ふと横を見ると、聖女がド緊張していた。歩き方が一昔のロボットみたいにぎこちなくなっている。
「何だ、お前緊張しているのか?前に国王に会ったときは、緊張なんてしていなかっただろうが。」
俺がそう言うと、「ギギギ」という音が聞こえるような動きで聖女が顔をこちらに向けた。
「あ、当たり前でしょ!私達みたいな一般エルフにとって、女王様は『雲の上の存在』なの!緊張位するわよっ!!」
そりゃそうか。ぶっちゃけ、人族の国王なんて
一方、反対側にいたアサシンを見ると、何やら難しい顔をしていた。
「何だアサシン、腹でも痛いのか?正露●飲むか?」
俺がそう聞くと、アサシンは「むぅ」という顔をして俺を見た。
「ちがう、このさきのやしきから、すごいちからをかんじる。あと、『せい●がん』はくさいからのみたくない。」
「ほう、俺はそんな圧力は感じないが、そんなに凄いのか?」
俺がそんな感想を言うと、アサシンが俺の顔をじっと見つめて、「はぁ」とため息をついた。何故だ。
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未亡人エルフに道案内されて、俺たちは女王がいる「屋敷」に着いた。
・・・あれ、ここまで来る途中に見てきた、所謂「一般エルフ」達の家と同じ気がするんだが?一般エルフたちの家よりでかい事くらいしか違いが分からないな。
「ふふっ、意外そうな顔をしているな。我々エルフ族は、住居に
なるほど、価値観の違いだな。人族の王宮とかは、「権威の象徴」みたいな意味合いもあるらしいからな。知らんけど。
それより、一緒に来た未亡人エルフ母娘以外のエルフたち(聖女も含む)が緊張しすぎて顔面蒼白になっているんだが、大丈夫なのか?
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「よくいらっしゃいました、勇者様。」
鈴を転がすような声で、女王が片膝をついて頭を下げている俺たちにそう言った。
「この度は我らが同胞をお救いいただき、ありがとうございます。」
「はっ、もったいないお言葉、身に余る光栄であります。」
女王の感謝の言葉に、俺は頭を下げたままそう答えた。
一応、勇者は人族の「王」と同じ地位なので、別に
「他の者も、怪我などなく無事で何よりです。」
「「「ひゃいっ!ありがたき幸せに御座いますっ!!」」」
女王に声を掛けられたエルフたちは、ド緊張のあまり声が裏返っていた。
「近衛隊長、今回助けられた者たちを家族のもとに返してあげてください。」
「はっ!」
「それから、この後に勇者様御一行の歓迎の宴を催しますので、その準備をお願いします。」
「
「それでは勇者様、また後程お会いしましょう。」
そう未亡人エルフに言うと、女王は退出し、謁見は終了した。
うーん、女王のご尊顔を拝したかったのだが、流石にあの場の雰囲気では
「はぁ~、緊張したぁ~。」
そう言って、聖女が疲れた表情をした。
「さすがは『ハイエルフ』、
と、感心した顔をしてアサシンが呟いた。
そっかぁ~、確かに聖女たち「一般エルフ」と違って、何か別の雰囲気を感じたんだが、特に威圧される感じはなかったな~。俺が鈍いだけなのか?
「・・・ふぅ、いつものことだが、やはり陛下の御前だと緊張するな。」
未亡人エルフが一息吐くと、そう呟いた。恐らく一番女王と接する機会がある近衛隊長ですら緊張するとは、やはりアサシンが言ったように女王から「強者のオーラ」が溢れ出していたのだろう。
「さて、私は助けられた者たちを家族のもとに返すことと宴の準備をするので、これで一旦失礼する。勇者殿一行は、この屋敷にて宴が始まるまでしばし休んでいてくれ。」
「わかった。」
未亡人エルフが俺にそう言うと、助けたエルフたちを連れて出て行った。
程なく、この屋敷の使用人と思われるエルフがやってきて、俺たちを客室に案内してくれた。
「それでは、準備が出来ましたらお呼びしますので、それまでこの部屋でお
そう言って、使用人のエルフは退出していった。
「それにしても、意外と友好的だな。俺はてっきり『塩対応』されるのかと思ったんだがな~。」
俺がふとそんなことを言うと、合法ロリーズがそれに反応した。
「それは、アンタが『勇者』だからよ。
あー、確か過去の勇者がエルフの奴隷化を何とかしようとしたらしいから、そのことかもしれんな。結果的には「数の暴力」で失敗したけど。
「あと、れきだいの『ゆうしゃ』は、じんぞくいがいとのかかわりがなかったから、めずらしいのかも。」
つーことは、俺は珍獣扱いなのか。まあ、わざわざ「人族以外」をパーティメンバーにするために流浪の旅をしているから、物珍しいのかもしれんな。
そんなことを話していたら、使用人が俺たちを呼びにきた。どうやら準備ができたらしい。
使用人の案内で会場に向かっているとき、後ろにいる聖女がまたド緊張していた。お前、手と足が同時に出ているぞ。いつ「ナンバ歩き」を身に着けたんだ?
そんなことを思いつつ、会場に向かっていると、何やら騒がしい。
入り口でおろおろしている使用人に話を聞いてみると、
「は、はい。実は女王様が泥酔されておりまして、どう対応したらよいか困っている状態なのです。」
と言った。
はて?女王って「未成年」だよな?何で「泥酔」しているんだ??
「
俺が疑問に思っていたことを、先ほどまでド緊張していた聖女が答えてくれた。
なるほどな~。まあ、俺たちの世界でも未成年でお酒を飲んでいい場面はあるからな。特に驚きはしない。
とか考えていたら、会場から未亡人エルフが出てきた。
「ああ、勇者殿。折角来てもらったのに申し訳ないが、一旦客間に戻ってくれないか?女王様が
そう言って、ため息をついた。
まあいいけど、ちょっとだけ様子を見てみようかな~、と思って、未亡人エルフの横から顔を出して会場内を
すると、俺の目に入ってきたのは、絶世の美女が会場のど真ん中で顔を真っ赤にして騒いでいる光景だった。
「・・・・・・・・」
うん、見なかったことにしよう。つーか、あれが女王なのか?確か、俺より年下って聞いたはずだが、聖女とは正反対だな!(このあと聖女にしばかれた)
とか思っていたら、女王(と思われる美女)が突然こちらを向いて、衝撃の言葉を口にした。
「あ、勇者様、やっとかめー!!だなも。」
・・・えーっと、俺の聞き間違いじゃなければ、今「やっとかめ」って言ったよな?
何で「
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