勇者の軌跡31:勇者、食糧危機を未然に防ぐ

 念願だった「白飯」を存分に堪能した次の日、俺たちは特に目的もなく町を散策していた。

「つーか、俺達何の目的でこの町に来たんだっけ?」

 と俺が言うと、聖女が呆れた顔をしてこう言った。

「やっぱり、何の目的もなくここに来たのね。まあ、分かってはいたけど。」

「でも、『ゆうしゃ』いくところ『まぞく』あり。ここもそうかも。」

 などとアサシンが不吉な事を言ってきた。やめろ、フラグを立てるんじゃない。俺も最近そう思っているんだ。

 まあ、今の所特に問題があるようには見えず、町は活気にあふれているけどな。

 そんなことを思いながら、町をふらふらしていると、図書館らしき建物が目に入った。

「せっかくここまで来たんだ、ちょっと調べ物をしていこうか。」

「しらべもの?」

「何か気になることでもあるの?」

 合法ロリーズがそろって疑問を口にした。

「ほれ、前回の時に、普通の武器しかもっていなかったから、アサシンがとどめを刺さなかっただろう?なので、対魔族用の武器がないか探してみるんだ。」

 俺がそう答えると、「なるほど」と言う顔で聖女が見る。

「べつにだいじょうぶい。そちらはゆうしゃとせいじょにまかせる。」

 とアサシンは言ったが、そういう訳にもイカんでしょ。

「まあ、今回は『何か情報があれば儲けもん』位のゆる~い感じで探してみようず。」

 てなわけで、図書館に入って手あたり次第本を持ってきては調べている。

 ちなみに、この世界は前世並みに印刷技術が進んでいて、ラノベにありがちな「本は貴重」と言うことはなく、普通に流通している。これも古の勇者たちの犠牲あってのことだろう。な~む~。(合掌)

「あっ、この場所って肉がおいしいみたい。あっ、こっちはスープ類がおいしそう...。」

 健啖家けんたんかのロリババアは「世界の美味しいもの発見」なるものを読んで、涎を垂らしている。

 もう一人のちびっ子は、本を枕にお昼寝中である。諜報員がそんなのでいいのか。

 仕方がないので、俺が頑張って調べていると、興味深い本があった。

 それは、俺が探しているもう一人の仲間である「タンク(重戦士)」の適性種族。

 物理防御力が高い種族、魔術防御力が高い種族は載っているのだが、流石に両方に適性がある種族は載っていなかった。

 しかし、人族が作成した「モンスター大全」と言う本に、両方の適性が高い種族が載っていた。

 その種族は「巨人族」。ただし、「モンスター大全」に載っているということで、人族と敵対している。

 う~ん、ここにきて人族が犯した「ごう」が影響してくるとは。これは最後の仲間はハードルが高そうだな。

 一応は、情報として頭の片隅に入れておこう。

 さて、本来の目的である「魔族特効武器」が載っている本は...、と。

 俺が見ているのは「歴代勇者の伝記」と言う本。あるとすればこれの「伝説の武器」とかだと踏んだからだ。

 まあ、結果から言いますと、そんな都合がよいものはありませんでした。つーか、そもそも「魔族特効」などと言う代物がない。

 う~ん、どうすべ?と考えていたら、ふと思った。

「あれ、本当に普通の武器でとどめを刺せないんだっけか?」

 思い返してみると、温泉での魔族の戦いでは、別に光魔術や神聖魔術で倒したわけではなく、熱湯風呂に突き落としただけだったからな。

 でも、漁師町で漁師のおっちゃんたちにタコ殴りにあっても倒せなかったしな~。うーん、わからん。

 まあいいや、次の機会があったら確認してみるか。

 そんな訳で、本来の目的は達成できなかったが、貴重な情報が手に入ったので、未だに本を見て涎を垂らしているロリババアと爆睡しているょぅじょを連れて外に出た。

 すると、何か町の様子がおかしい。

「なあ、何かあわただしくないか?」

 俺がそう言うと、トリップしていた聖女が気が付いた。

「そうね。何かあったのかしら?」

 町の人たちがわちゃわちゃしているのを見ていると、向こうからイケメン町長が走ってきた。

「ゆ、勇者様、探しておりました!この町に向かって大量の魔物が押し寄せてきているのです!」

「餅つけ、ではなく落ち着け。大量ってどのくらいの数?」

 若干パニクっている町長をなだめて、どのくらいの数が押し寄せているのかを聞いた。

「ゆうしゃ、わたしがみてくる。じゃすとあもーめんとちょっとまってて。」

 と、いつの間にか覚醒していたアサシンがそう言って、あっという間に確認に向かった。

「す、すみません。このような事は私が就任して初めてでしたので、取り乱してしまいました。」

 そう言って、イケメン町長が謝ってきた。まあ、初めてなら仕方ないわな。

 さて、魔物が押し寄せてきているということは、十中八九「魔族」の仕業だな。

 狙いは、多分ここの「食料」だろうな。ここの食料がなくなったら、この国は深刻な食糧危機に陥るからな。

 そんなことを考えていたら、確認に行ったアサシンが戻ってきた。早いなおい。

「みてきた。まものがおしよせているのはほんとう。でもかずはたいしたことない。にひゃくひき二百匹ぐらい?」

 まあ、数に対しては認識の違いだな。初めてで200匹は多いだろうからな。

「ご苦労さん。んで、その魔物たちって何かわかるか?『匹』って言っていたから狼とか?」

 俺がそう尋ねると、アサシンは「うーん」と言って、こう答えた。

「ちがう、『あり』のおおきいやつ。」

 アサシンの言葉に、聖女が反応した。

「それって、『アーミーアント』かもしれないわね。集団で押し寄せてきて、食料を根こそぎ食い荒らすはた迷惑な昆虫よ。」

 なるほど、「軍隊アリ」ね。まあ、それなら何とかなるか。恐らく「リーダー」がいるから、そいつを倒せば瓦解するだろうし。

「アサシン、『お掃除』を頼む。可及的かきゅうてき速やかによろしく。」

「ほいほいさー。」

 俺がそう指示すると、アサシンは早速「お仕事」に向かった。

「そうだ、あの『アーミーアント』って、防御力がすごく高くて、普通の剣だと全く歯が立たないのよ。」

 と、聞いてもいないのに聖女があのアリ共の特徴を教えてくれた。

 へー。つまり、物理防御力は高いのね。つーことは、魔術防御力は低いのかしら?

 さて、どうすべスベマンジュウガニ。「汚物は消毒だぁー!!」で「ボルテッカ・インフェルノ」を使うのもありだけど、そうするとこの辺り一帯焼け野原になるからな~。それと以前に似た様なシチュエーションで使ったし。

 とか考えていたら、アサシンが「お仕事」を終えて戻ってきた。

「ゆうしゃ、『おそうじ』かんりょう。ついでにうしろのほうでふんぞりかえっていた『まぞく』もきれいに『おそうじ』した。」

 おう、「魔族」を倒せたのか。それじゃあ、専用武器の調査は一先ず保留だな。

「ほんじゃま、やるとしますかね~。聖女はいつも通り補助魔法ヨロシク。アサシンはうち漏らした敵の『お掃除』をよろしこ。」

「分かったわ。」「まーかせて。」

「「「ギシャギシャギシャッ!!」」」


 <アーミーアントが現れた!アーミーアントがアホみたいな数で襲ってきた!コマンド?>


「いろいろ考えたけど、面倒になったから『いつもの』を使うかな。というわけで。」


 コマンド一覧

[たたかう]

[ぼうぎょ]

[まじゅつ]

[ちょうひっさつわざ][スクリュー●ッパー]←New!!

[アイテム]

[にげる]


「『飛んで火にいる夏の虫』とはまさにこのこと。では、超必殺技、『スクリュうううううぅ、ナッ●ああああぁぁぁぁっ!!』」


 ゴオオオオオオオォォォッ!!

「ギャアアアアアッ!!」


 <勇者の攻撃!勇者は超必殺技を放った!巨大な竜巻がアーミーアント達を天高く吹き飛ばした!>

 <アーミーアント達をすべて倒した!勇者パーティは経験値を得た!レベルアップ!聖女とアサシンはいろいろ強くなった!>


「うわっ、なんかへんなこえがあたまにきこえてきた。」

「あー、それね。勇者と一緒に倒すと聞こえてくるのよ。私も最初は戸惑ったけど、もう慣れたわ。アンタも早く慣れた方がいいわよ。」

 何か向こうの方で合法ロリーズが話しているが、別にどうでもいい。


 こうして、魔族による食糧危機作戦は、勇者達の活躍によって未然に防がれたのである。

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「結局、私が言った「防御力が高い」という情報は、意味がなかったわけね...。」

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