勇者の軌跡29:勇者、喧嘩両成敗する

『いたたたた...。な、何が起こったの?』

『確か、お前と言い争っていた時に何か物凄い力で引っ張られたような...。』

 ん、あのデカいイカとタコから話声が聞こえるな。・・・あ、そうか、「自動翻訳」スキルの効果か。

『え、何?あたし達、おかに上がっているじゃないっ!?ちょっと、どういうことっ!??』

『俺に聞かれても知らねえよっ!気が付いたらここにいたんだよっ!!』

 ふむふむ、イカの方が女...この場合「メス」か?で、タコの方が「オス」みたいだな。

 俺がそう確認している中、イカ女(イ●娘ではない)とタコ男(●こ八郎ではない)が痴話喧嘩ちわげんかを繰り広げていた。

 チッ、こいつら「リア充」か。魔物のくせにナマイキな。あ、魔物だからか。コイツはしまったしまった島倉●代子。

 ふと、周りを見ると、合法ロリーズを含め漁師町の方々がドン引きしている。言葉は通じていないはずなので、雰囲気で察したか。やはり「痴話喧嘩は犬も食わぬ」だな。

 仕方がないので、この中で唯一言葉が理解できる俺が痴話喧嘩に介入する。いい加減ムカついてきたしな。

『おいコラそこのイカとタコ。ちょっと聞きたいことがあるんだがおk?』

 俺がそう言うと、イカ女とタコ男が「眼だけ」こちらに向けてきた。

『何よアンタ、今取り込み中だから後にしなさいよっ!』

『あんだテメエ、今この女の相手をしているんだから、邪魔すんじゃねぇよ!』

 などとこの水棲すいせい生物どもがほざきおった。

 更にムカついた俺は、背中から巨大ハリセンを取り出して、この水棲生物どもの所に歩いて行き、

「「スパーンっ!!」」と、実に気持ちのいい音でこいつらの頭(正確には体)をはたいた。

『いったぁーい!!』

『いってぇー!!』

 イカ女とタコ男は器用に触手(下足げそ?)を使って頭を押さえていた。

『何すんのよ!』『何すんだコラ!』

 イカ女とタコ男は、ようやくこちらを向いて抗議してきた。

『やかましいわこの軟体なんたい動物ども!こっちが質問しているんだから答えんかいボケ!!』

 俺がそう怒鳴ると、この軟体動物どもは今頃俺を認識したようで、

『お、お前『ニンゲン』か?』

『な、何でアタシたちと話ができるのよっ!?』

 などと抜かしてきた。

『今頃気付いたか低脳畜生ども。お前たちと話せるのは俺の『スキル』のおかげだ。』

 と答えてやった。

『もしかして、俺たちをここに連れてきたのは、お前の仕業かっ!?』

『マジでっ?何てことしてくれたのよアンタはッ!!』

『おう、そうだ。お前たちに話があったからな。こちらにお越しいただいたわけだ。』

 この低脳畜生どもがそう聞いてきたので、俺が「丁寧に」説明してやった。

 すると、この低脳畜生どもは、お互いを見て同意したように頷いた(ように見えた)。

『おい、喧嘩は一旦中止して、この『ニンゲン』を始末しようぜ。』

『そうね、こんな弱っちい奴に舐められるのはムカつくからね!』

 などとほざいているようだ。

 うーん、どうすべ。普通にやると、こいつらを瞬殺してしまうから、手加減しなけりゃいけないなー。面倒くさい。

 と俺が考えていたら、奴らがすみを吐いてきたので、俺はひょいっとかわした。

 あ、ちなみに俺の後ろにいる合法ロリーズと愉快な民衆たちは、聖女が張った「結界」のおかげで被害なしです。


 <クラーケンとテンタクルスが現れた!クラーケンとテンタクルスの攻撃!奴らは墨を吐いてきた!ミス!勇者は攻撃をひらりとかわした!コマンド?>


 とりあえず、服が墨まみれになるのは嫌だから、バリアを張るか。


 コマンド一覧

[たたかう]

[ぼうぎょ][しょうへき][ウルトラバリア]←New!!

[まじゅつ]

[アイテム]

[にげる]


 <勇者は障壁を展開した!クラーケンとテンタクルスは墨を吐いてきた!!ミス!墨は障壁に防がれて勇者に届かない!>

 <クラーケンとテンタクルスの連続攻撃!しかし障壁により勇者はダメージを受けていない!勇者は不敵に笑った!コマンド?>


『くそっ!なんだあの壁は!?』

『何なの!?あたしたちの攻撃が全く通じていない!』

 軟体動物どもが何か叫んでいるが、雑音なので気にしない。

「そんじゃま、まずはその邪魔な下足を排除しましょうかね~。」


 コマンド一覧

[たたかう]

[ぼうぎょ]

[まじゅつ]

[アイテム][ブーメラン][ア●・スラッガー][1]←New!!

[にげる]


 俺が「アイ・●ラッガー」を選ぶと、頭に見覚えがある宇宙ブーメランが現れた。

「ていっ。」

 俺は、頭の宇宙ブーメランを両手で挟むと、軟体動物どもに放り投げた。

 ズババババババババッ!!

『ぎゃああああ!!』

『きゃああああ!!』

 俺が投げた宇宙ブーメランは、綺麗な弧を描き、軟体動物どもの下足をすべてぶった斬って、戻ってきた。


 <勇者の攻撃!勇者はアイテムを使った!クラーケンとテンタクルスに致命的なダメージを与えた!>

 <クラーケンとテンタクルスは戦意を喪失している!コマンド?>


『さぁて、これから『交渉』の時間だ。(ニヤリ)』

『『ヒッ!!』』

 俺が天使のような笑顔を見せると、この低脳畜生どもが怯えたような声を出した。解せぬ。

 ----------

 勇者が魔物たちと戦っている姿を見ていた愉快な民衆たちは、呆気あっけに取られていた。

「あ、あの~、勇者様って、あんなにお強いのですか?」

 そう町長が聖女に尋ねると、彼女は「ごく普通のこと」のように答えた。

「そうよ。いつもならあの程度の魔物、『瞬殺』するんだけど、今回は倒さないように手加減しているわね。」

「な、何故『倒さないように』されているのですか?」

「それは、あの魔物から事情を聴くためよ。アイツ勇者いわく『片方の事情だけで判断するのは危険だ』だって。」

「そ、そう言えば勇者様は『あらゆる者の言葉が解る』と聞いたことがあります。」

 町長は、驚きながらそう呟いた。

 そんなことを話していたら、勇者と魔物たちとの戦闘が終わった。

 そこには、仁王立ちする勇者と正座している二人の人間(?)がいた。

 ----------

 俺がこの畜生どもと「交渉」をして、漸く「会話」ができるようなった。

 ただ、このままでは奴らがデカすぎて首が疲れるので、「小さくなれないのか?」とで聞いたら、奴らは大急ぎで俺らと同じ大きさになり、さらに「人間」の姿になってくれた。

「それで、何で漁船を沈めたのか説明してくれる?」

 そう俺が尋ねると、筋骨隆々のイケメン(タコ)が、怯えながら話し始めた。

「そ、それは...、アイツらが俺たちの食料を『根こそぎ』取っていくからだ...です。」

 それに続いて、ゴージャスボデーの美女(イカ)が話し始めた。

「そ、そうよ...です。最初は脅しの心算つもりで、あたしたちの所に来たアイツらの船を壊していたんです。」

 なるほど、「乱獲」していたってことね。こいつらに話を聞けてよかったわ。やっぱり一方の意見「だけ」で判断してはいかんな。

「それでも、アイツらはめなくて、俺たちも空腹の限界になったので、『ちょっと』暴れていたんです。」

「あ、で、でも、アイツらを殺したりはしていません!あくまで『船』を壊していただけです!」

 それから、空腹でイライラがピークに達していたので、痴話喧嘩を始めたらしい。

 やれやれ、そう言うことか。まったく面倒な事だ。

 ん、そう言えば、あの魔族が「アイツらに任せた」と言っていたが、もしかしてこのことをネタに入れ知恵をしたのかもしれないな。こいつらアホそうだし。


 俺は、このイカとタコから聞いたことを確認するために、漁師たちの所に戻ってきた。

「・・・と、アイツらは言っていたけど、本当なのか?」

 俺がアイツらから聞いた話を「そのまま」漁師たちに聞くと、皆バツが悪そうな顔をした。

 そんな中、一人の漁師が声を上げた。

「何がいけないんだ!俺たちの魚なんだから、全部取ってもいいだろう!!」

 そう叫ぶと、周りの漁師たちも同調しだした。

 そのざまに、いい加減ムカついた俺は「ああン?」とドスの利いた声で威圧して、全て黙らせた。

「お前ら、何か勘違いしていないか?お前ら『だけ』で育てた魚ならその理屈は通るが、そんな訳ないよな?だったらお前ら『だけ』のものじゃなくて、この湖全体の『共有財産』だ。」

「それと、獲ってきた魚は『全て』使っているんだよな?余らせて捨ててはいないよな?」

 俺がそう言うと、漁師たちはうつむいてしまった。やっぱりそうか。

「いいか、この湖にいる魚だって無限に沸いてくるわけじゃあないんだ。限りある資源を如何に皆と共有するかを考えんかい!!」

 そう俺がいると、漁師の一人が恐る恐る聞いてきた。

「それじゃあ、俺たちの生活がやっていけない。どうすればいいんだ?」

 そんな事をほざきやがったので、俺は呆れながらこう答えた。

「そんなこと知らんわボケ。それくらい自分たちで考えろや。何でも他人に頼ろうとせず、自分たちのことは自分たちでなんとかしろ。」

 そう突っぱねた。まあ、ヒント位は与えてやるか。そうしないと、こいつら本当に餓死しそうだからな。

 そう言うやり取りがあった後、町長が意を決した顔で漁師たちに話し始めた。

「確かに、私達は他の生態系のことを考えず、自分勝手に漁を続けてきました。」

「しかし、このような事があって、はじめて私たちが犯した罪が認識できました。」

「これからは、自分たち『だけ』のことを考えるのではなく、湖にいる生物...『仲間』との協調を図っていきましょう。」

 そう話すと、町長は俺の方を向いて頭を下げた。

「勇者様、この度は我々が不義理を働いたため、このような事態になってしまいました。」

「勇者様のお言葉がなければ、我々はこの醜態に気づくことはなかったでしょう。」

「今回のこと、勇者様のお手をわずらわせてしまい、誠に申し訳ありませんでした。今後一切、乱獲をしないよう徹底させますので、そのようにあの魔物の方々にお伝えいただけますでしょうか。」

 そう町長が言うと、漁師のおっちゃん達も同じく頭を下げた。

「分かった。それじゃあ、その様にアイツらに伝えてくるわ。」

 ----------

 それから、俺が両者の通訳として、魔物たちと町長たちとの交渉が行われ、お互い協力していくことで意見がまとまった。

 魔族がちょっかいを出したことにより、一時は険悪な関係になっていたものの、話し合って協力できるまでに回復していた。良かった良かった。

 そうして、あのイケメンのタコとゴージャスボデーのイカは、自分たちの場所に戻って行き、漁師たちも安心して漁を始めることになった。


 で、俺たちは何をしているかと言うと、あのイカとタコからぶった斬った下足を使って「タコパ(タコ焼きパーティ)」をしている。タコ焼きはもちろん、イカ焼きも作っているゾ。

 タコパに必要な機材と調味料は、俺の「ご都合主義」で用意した。流石「ご都合主義」、万能すぎる。

 町長や漁師のおっちゃん達に「一緒にやるか?」と誘ったが、丁重にお断りされてしまった。やはり下足(の見た目)が気持ち悪いらしい。

 そんな訳で、俺が調理担当で合法ロリーズが食べるという構図になっている。

 聖女は、出来立てのタコ焼きを口いっぱい頬張って口内火傷をしている。アホだコイツ。

 アサシンは、口の周りをソースでべたべたにしながら、イカ焼きを黙々と食べている。うむ、どう見ても幼稚園児だ。

 そんな楽しい食事タコパをしながら、次の行き先を話し合っていた。

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