勇者の軌跡19:勇者、ダンジョンでスッキリする(意味深)

 さて、依頼された「ダンジョン調査」対象のダンジョンの入り口に着いたわけだが。

「・・・で、何でアンタがここにいるのよ?」

 そう、怨念おんねんこもった目で聖女が見る先に、何故かミニスカメイド姿をした仕事斡旋所の美人巨乳受付嬢がいた。

 「ミニスカメイドキターーーーーー(゚∀゚)ーーーーーーーーーーーー!!」

 俺は思わず叫んでしまった。だって仕方がないじゃない。男の子なんだもの。

 それにしても、何と神々しい姿なのだ!あのツルペタ駄女神とは正に天と地、月とすっぽん、エベレストと日本海溝ぐらいの差だ!ありがたやありがたや。

 俺が拝んでいると、聖女がまるで汚物を見るような目でこちらを見ていた。くっくっくっ、分かるぞその気持ち。悔しいのう悔しいのう。

 そんなことをやっていると、美人巨乳受付嬢(メイド姿:以降「デカメイド嬢」)は、顔を赤くして、スカートのすそを抑えてもじもじ君しながら、こう言った。

「あ、あの、そんなに拝まれても困るんですけど...。あと、この格好は、今から一緒に行くダンジョン調査に必要な『装備』なんです。」

 ほう、「装備」とな。あの伝説の「ビキニアーマー」並みの破壊力ではないか。後で「報酬」として本人含めてもらうとするか。え?もちろん勇者さんのモーニングジョークだよHAHAHA。

「は?『一緒に行く』ってどういうこと?私達だけじゃなかったの?」

 お、そういえば伝えていなかったな。

「あの銭ゲバ所長が、『ダンジョンの調査につきまして、うちの職員を一人同行させます。』って言っていたんだよ。」

 まあ、あの守銭奴しゅせんどからしたら、いくら「勇者」とは言え俺たちだけじゃ信用せんわな。職員を同行させて(監視を含めて)調査報告書なんかを書かせるんだろうな、多分。

「そういう大事なことは、早く言いなさいよ...。」

 そう言って、聖女が「ぷくぅ」と頬を膨らませた。うん、確かに可愛いが全く琴線きんせんに触れない。まあ、触れたら触れたで犯罪者まっしぐらだがな。カル●ンではない。あれはぬこ(猫)だ。

「で、その格好が『必要な装備』って、なんで?」

 俺がつついて頬をしぼませた聖女がそう質問すると、デカメイド嬢は、またもじもじ君しながら、こう説明した。

「この装備は、魔物からの認識を阻害する術が掛かっているんです。なので、私たちのような非戦闘員でも危険なダンジョンに入れるのです。」

 なるほど、所謂いわゆる「アーティファクト(魔道具)」と言うやつか。流石はダンジョンに依存している町だけあるな。そんな物もあるんだ。

「これは、いにしえの大賢者様が当時の勇者様に頼まれてお作りになられたそうです。あ、ちなみにこのデザインは勇者様の『趣味』と言う話です。」

 古の勇者グッジョブ!流石は「転生者」、よく分かっていらっしゃる。

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 そんなわけで、俺と聖女、デカメイド嬢の3人で目的のダンジョンに入っていった。

 ダンジョンの中は、洞窟のようになっていて思っていたより狭い。俺たちが横に並んでちょうどぐらいの幅だ。それがずっと奥まで続いている。

 歩きながら、デカメイド嬢がダンジョンの大まかな説明をしてくれた。

「まず、このダンジョンは5階層になっていて、最下層以外の階層には特定の魔物がいます。」

「下の階層に行くほど、強力な魔物が現れます。」

「あと、地上の魔物と違い、倒すとアイテムが残されて死体は消えてなくなります。」

「それと、一定時間たつと倒された魔物が復活します。ただ、階層によって魔物の数が決まっていて、増えることはありません。」

 ふむふむ、ラノベに出てくるダンジョンの特徴によく似ているな。

「つまり、『増えるはずがない魔物が増えているみたいだから、調べてきておくんなまし』と言うことだな。」

「はい、その通りです。」

 そんなことを話しながら進んでいくと、開けた場所に着いた。

「・・・えっ?何これ、どういうこと?」

 横にいるデカメイド嬢が、目の前の光景を見て驚愕の声を上げた。

 そこには、密集して「木」が生えていた。

 しっかし、あんなに密集していたら日の光が当たらなくてうまく光合成が出来んだろうが。あ、ここ洞窟だから、そもそも日の光が当たらんわ。

「で、何を驚いてるの?木が密集しているだけじゃないの?」

 そう聖女が聞くと、デカメイド嬢は慌てた様子で答えた。

「あれはただの『木』じゃありません。この階層に生息する『ザコトレント』と言う魔物です!」

 デカメイド嬢がそう叫んだと同時に、密集していた木がそのままの状態でこちらに向かってきた。

「でも、報告にあった『ザコトレント』と色が違うような...。確か、木と同じ茶色をしていたはずです。」

 そんなことをデカメイド嬢が言ったので、よく見てみると、確かに「茶色」ではない。どちらかと言うと「赤茶色」だな。

「まさか、『上位種』...?」

 聖女がそう呟いた。恐らく、王都の南の町で戦った時の事を思い出しているのかもしれない。

「で、どうするの?あれが『ザコトレント』だったら、確か『炎』が弱点のはずだから、アンタの『ボルテッカ何とか』とか言う魔術で倒すの?」

 などとクルクルパーな事を聖女がほざいた。

「パーかお前は。こんな密閉した所であんな術使ったら、全員もれなく『上手に焼けました~♪』状態になるわ。」

 こんな密閉したところで火を使うなんて自殺行為じゃボケ。たとえ熱を防いだとしても、その後酸欠になって「三途の川を渡りましょうねー」と案内人に手を引かれるわ。

「まあ、ここはこの勇者様にまっかせなさい。ほんじゃま、ちゃっちゃと終わらせるかの。」

 俺は、こちらに向かってくるトレント(上位種)の大群を見据えて、「ニヤリ」と笑った。

「「グガアアアアアア!!」」


 <エルダートレントが現れた!エルダートレントがアホみたいな数で襲ってきた!コマンド?>


「さて、木を倒すと言えば『木こり』、『木こり』と言えば『斧』、と言うことで。」


 コマンド一覧

[たたかう]

[ぼうぎょ]

[まじゅつ]

[アイテム][斧][ゲッ●ートマホーク][∞]←New!!

[にげる]


 俺は[アイテム]欄から「ゲ●タートマホーク」を選ぶと、両手にそれが現れた。

「行くぞ!●ッタートマホォォォク・ブゥゥゥゥゥメラァァァンっ!!」

 両手の斧を大きく振りかぶると、思いっきりエルダートレントの大群めがけて投げた。


 <勇者の攻撃!勇者はアイテムを使った!エルダートレントを10体倒した!>


「オラオラオラオラオラぁっ!!」

 俺は次々と出しては投げ、出しては投げまくった。


 <勇者の連続攻撃!勇者はアイテムを使いまくった!エルダートレントをすべて倒した!レベルアップ!勇者はいろいろ強くなった!>


「よし、終わり。あー、スッキリした。」

 流石はゲッタ●トマホーク、普通の斧だったらそもそも当たらないだろうからな。

「「・・・・・・・」」

 絶句している娘2人の目の前にあるのは、おびただしい数の「木材」。全て「エルダートレント」の成れの果てである。

「相変わらず、アンタは非常識なくらい強いわね...。」

 と、聖女が呆れながら感心していた。はっはっはっ、これくらい日常茶飯事(「ちゃめしごと」と読むべし)なんだから、早く慣れなさい。

「・・・・・・」

 一方、デカメイド嬢は、何故か目を真ん丸にして固まっていた。

「ん?あそこのデカメロン伝説デカメイド嬢は何を固まっているんだ?」

「アンタの非常識な強さに驚いているのよ...。」

 まあ、仕方あるまい。この程度の戦闘でも、一般ピーポーの彼女は初めてだろうからな。うん。頑張って慣れろ。


 その後、再起動したデカメイド嬢は、残された木材に後ろ髪をひかれながら、俺たちと共に次の階層に向かった。

(後から聞いた話だと、「エルダートレント」の木材は高価で取引されるため、こっそり何本か持っていこうと考えていたらしい。)

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