第三章:ゴーゴーウエスト(西へ)

勇者の軌跡17:勇者、東ではなく「西」に行く

 俺たちは、王都を出て街道を西へ西へと歩いていた。

「・・・ねえ。」

「何だ?もう腹が減ったのか?コスパ悪すぎだろう。」

「確かに、あれくらいの量じゃ物足りなかったけど、...て、そうじゃなくてっ!」

 聖女が見事なノリツッコミを披露した。うむうむ、順調に「芸人」として育っているな。勇者さん嬉しいぞ。

「私たち、『東』に向かって町を出たのよね?何で『西』に行ってるのよ!?」

「ん?それってさっき説明したはずだが、気のせいか?」

 俺がそう確認すると、なぜかブリブリ怒っている聖女が、こう言った。

「聞いたわよ!でも理由が『困っている人を助けるのは勇者の使命、だけど面倒くさいからほかの所に行く。』って何よ!?」

 いや、そのままの意味だが?大体、「使命」とはこちらが率先してやることであって、「義務」じゃないんだからやんなくても無問題でしょ?

 そう、プンスコしているちびっ子聖女に説明すると、

「むぅ、た、確かにそうなんだけど、だったら別に『わざわざ』反対方向に行く必要はないでしょう!?」

 と、また抗議を受けてしまった。何故だ。

「まあ、確かにその必要はないけど、要は気分の問題だな。」

「『気分』で目的地を変えるのって、どうなのよ...。」

 このちびっ子聖女は変なところで真面目だな。所詮は「旅」なんだから、そんなもん気分次第でコロコロ変わるわな。

 それにしても、俺たちが一度町から出て、すぐ引き返してきたときの愚民どもの反応は面白かったな。「え?もう戻ってきたの」って顔してたし。

 それで、「改めて旅立つ前の腹ごしらえ」と言う名目で近くの飯屋で食事をしたんだが、その量に不満を持っていたのが最初に聖女が言ったセリフだ。

 つーか、軽く10人前ぐらい平らげて「物足りない」とは、コイツの胃袋どうなっているんだ?ブラックホールか?

「それに、魔王を倒すためには、パーティメンバーを増やさないといけないしな。」

 流石に勇者と聖女だけじゃ手が回らないでしょ。魔王単独ならともかく、「魔王軍」が相手なんだから。

「・・・アンタだけでも十分な気がするんだけど?...はっ、そうすると、私要らないってことに...?」

 何か聖女がブツブツ言っていて相変わらずキモイが、いつものことなのでスルーする。

「できれば、相性がいい種族に仲間になってほしいんだよな~。」

 例えば、術師はエルフ。これは精神力と魔力の適性が高いため、ほかの種族と比べるとスタート地点で差がついている。

 で、俺は王都で小間使いをさせられていた合間に、王都にある仕事斡旋あっせん所に行ってその辺のことを調べていたのだ。

 仕事斡旋所と言うのは、登録されている職業からほしい人材を紹介することや、今届け出がある仕事を紹介してくれる場所で、まあラノベでいう「冒険者ギルド」みたいな所だな。

 職業は、「戦士」「魔術師」と言ったメジャーなものから、「改名屋」「猫男爵」などマイナーなものまで数多くある。

 まあ、自分が「これは職業です」と言って、教会で(女神に)認められたら職業となるらしいので、そりゃあ多いわな。

 ちなみに、「芸人」と言う職業があったので聞いてみると、漫才やコメディアンたちではなく所謂いわゆる「大道芸人」のことを指すらしい。

 何故漫才師やコメディアンたちを「芸人」と呼ばないのかと言うと、説明してくれた職員曰く「芸じゃないから」などとほざいたため、所員とその場にいた「芸人」を全員集めて3時間ほど説教をした。

 と同時に、漫才師やコメディアンの素晴らしさを伝えた。これで漫才師やコメディアンが増えることを期待している。

 話が脱線したが、俺が調べていたのは、2つの職業に適性がある種族のことだ。

 一つは「斥候せっこう」。敵情視察、潜伏、必要であれば暗殺もありの職業。戦で必要なのは、「『正確な』情報」。その性能に特化している種族がいれば、そこにおもむきスカウトするつもりだ。

 もう一つは「タンク」。「重戦士」とも言うが、要はパーティの「盾」となる職業で、これがいないとパーティ全滅の恐れもある。これも適性がある種族がいれば、スカウトする予定。

 結論から言うと、ここにはそれらしい情報はなかった。

 ただ、この世界にいる種族の特徴はなんとなくわかったので、それで良しとしよう。まあ、ここの資料にある種族が全てとは限らんから、抜けはあるかもしれんが。

 それにしても、この世界って、人間...と言うか、人族は嫌われてるね~。全種族に満遍なく。ある意味凄いわ。

 人族はこの世界の人口比率で一番多くて、全体の約半数ぐらい居るみたいだから、数の力で好き勝手やっているみたいだ。

 エルフは約1割、魔族は2割ぐらい居て、残りの2割でほかの種族が分け合っているという状況。

 ここにある資料は、人族が書いているからかマイルドな表現をされているけど、聖女からの話を聞く限りかなりエグいことを長年やっているみたいだな。

 歴代の勇者がその辺を何とかしようとしたみたいだけど、やっぱり「数の暴力」に勝てなかったみたいだ。

 俺?俺は所詮しょせん「よそ者」だから、この世界のシステムっつーかその辺のことは「積極的に」関わることはしない。面倒くさいし。

 但し、自分のパーティメンバーに危害を加えようとする輩には、ものすごぉぉぉっく「酷い」ことをするYO?HAHAHA.


 と言うことで、現在目の前にそうなることが決まっている哀れな子羊たる「山賊」の方々。大体30人ぐらい居ますな~。

 連中の目的は俺の横にいる聖女(エルフ)。数の力でなんとかできると思っているみたいだが、そんなことできないYO?OH YEAR.Check it out.(意味はない。ただのノリ)

 てなもんや三度笠という事で、俺は以前ラーニングした「エルフへの禁句」を山賊に使った。勿論もちろんそのあとすぐに影響範囲外に退避したよ?パーティアタックなんて嫌だし。

 戦闘の結果?そんなもん「地獄絵図」ですわ皆さん。前よりレベルが上がっているので、口で言うのもはばかられるほど悲惨よ?まあ、「因果応報」だけどな。

 あ、そろそろ聖女が正気に戻るな。それでは、今逃げようとしている山賊の頭連中を倒しますか。

「と言うことで、『勇者からは逃げられない』発動~。」

「なにっ!?貴様『勇者』なのかっ?!!」

 今更分かったところで時既にお寿司です。大人しく寿司ネタになりなさい。


 <山賊の頭たちは逃げだした!しかし勇者に回り込まれてしまった!コマンド?>


「数が多いので、『覇王翔●拳』を使わざるを得ないか。」


 コマンド一覧

[たたかう]

[ぼうぎょ]

[まじゅつ]

[アイテム]

[ちょうひっさつわざ][覇王●吼拳]←New!!

[にげる]


「くそおおっ!やっちまえぇぇっ!!」


 <山賊の頭たちの攻撃!連続攻撃!しかし勇者にダメージを与えられない!勇者は不敵に笑っている!>


「何っ!?俺たちの攻撃が効いていないだとっ?!!」

 俺は「ニヤリ」と笑い、

「そんな訳で、超必殺技『覇●、しょうこうけぇぇぇーーーーんっ!!』」

 ゴオオオオオッ!!シュバッ!!!ドカァァァァン!!!!

「ぎゃあああああああああっ!!!」


 <勇者の反撃!勇者は超必殺技を使った!山賊の頭たちを倒した!>

 <勇者と聖女は経験値を得た!レベルアップ!勇者と聖女はいろいろ強くなった!>


 こちらの戦闘が終わった丁度その時、聖女が正気に戻った。

「あれ?私、またどうかしていたみたい。うわっ!何この惨状!?勇者、アンタがまたやったの?」

 俺じゃなくてアナタがやったんですけどねー。まあ、ここも俺の仕業にしときますか。つーか、アンタ全身血まみれでよく言うよ。

 つーことで、全身血まみれの俺と聖女は、聖女の水の精霊術で綺麗にしてもらい、この先にある(と思われる)町に向かった。

 ちなみに、綺麗にしてもらったのはいいけど、服が濡れて透けて見えていたので指摘してやると「見ないで!この変態!!」と言われてしまった。

 俺だってそんなロリババアの体なんぞ金をもらっても見たく...金額次第だな、うん。よーく考えよー。お金は大事だよー。

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