勇者の軌跡16:勇者、打ち切りフラグを立てる
俺たちは、無事事件を解決して、王都に戻った。
王都に着いたその足で、城に出向き、国王に事の顛末を報告した。
町に大きな被害が出たものの、聖女の活躍により死傷者は最小限に食い止められた。今回派遣された討伐隊に至っては死者ゼロである。
同行していたちみっ子王女だが、自分の活躍はそっちのけで俺の活躍をそれは事細かに
あ、俺が一面焼け野原にした所だけど、ご都合主義が発動して人的被害なし!跡地は焼き畑農業でもすればいいんじゃね?(適当)
また、今回の事件を裏で手引きしていた魔族のことを報告すると、
「やはり『魔王』がいっちょ噛みしていたんですね!やはり私の推理は正しかった!!」
と、例の報告書を作成した担当者が鼻息荒く喋っていた。なんだろう、この敗北感。
そんな訳で、国王は国を挙げて「魔王」と「魔族」についての情報収集を緊急で行うことを決めた。近隣諸国にも協力を依頼するそうだ。
さて、今回無事事件を解決したので、討伐隊全員に
勿論、俺たちも結構な
ちなみに、聖女には、報奨金の他に
「人族の地位なんていらない。邪魔だし。」
と、きっぱり断られていた。国王涙目である。なんて可哀そう...、などとはこれっぽっちも思っていない。
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「それじゃあ、そろそろ次の目的地に行くか。」
「そうね、耳寄りな情報も入ったことだしね。」
あれからさらに20日余り経過した。
聖女は教会でのお勤め、俺はまた小間使いをさせられながら、情報が集まるのを待っていた。
そんなに時間をかけるくらいなら、さっさと出かければいいだろ!と思っているそこのアナタ。
闇雲に行動しても時間の無駄なのですよ?まだそこまで急ぎの旅ではないので、じっくり腰を据えて情報収集をした方がよいのです。
現に、ここまで待った甲斐あって、有益な情報を手に入れることができたからね。
まあ、そんなことはどうでもいい。やぁぁぁぁっっっっと、この退屈な状況から脱出できるのだ!!
実は先日、とある情報がもたらされた。
「東の大陸に、魔族の国がある」
かなり怪しい情報だが、各国から同様の情報が寄せられたため、
それによると、東側に行くほど魔族が原因と思われる被害報告があるためらしい。直接「魔族の国」に行ったわけじゃないのね。
困っている人がいれば助ける、これが勇者の使命なので、無視するわけにもいかん。面倒くさいけど。
てなわけで、とりあえず東に向かって旅を続けようということになった。
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そして迎えた旅立ちの日。
広場には、俺たちを見送るべく大勢の人たちが集まっていた。
「まだこちらに滞在していただきたいのですが、勇者様の使命は『魔王』討伐、致し方ありませんな。」
「聖女様、『魔王』討伐が終わりましたら、またこちらへお戻りください。」
俺たちは、今までお世話になった方々への挨拶を行っていた。
そのとき、「勇者様」とあのちみっ子王女に呼ばれた気がしたので、振り向くと誰もいない。
「あれ、王女の声が聞こえた気がしたんだけど、気のせいか?」
すると、下の方から「勇者様、気のせいではありませんわよ?」とちみっ子王女の声がしたので、視線を下に向けると、
なぜか旅立ちの格好をしたちみっ子王女が、満面の笑みを浮かべて俺を見上げていた。
「・・・・・・・・」
しばらく見つめあった後、俺は視線を上げて、「気のせいか。」と言うと、
「勇者様?!いま思いっきり目が合いましたわよね?またですの?!!『鉄板』ネタですの!!?」
と、ブリブリ怒っていた。
「えーっと、俺の見間違いじゃなければ、旅に出ようとしているみたいな格好しているんだけど、どっか行くの?」
そう、俺がしらばっくれると、ちみっ子王女は頬に手を当ててくねくねしながら、
「もう、勇者様ったら~。そんなの決まっているではありませんか。一緒についてまいりますわ!」
などとほざいたため、
「えぇーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。」
と、残念な子を見るような顔で思いっきり嫌そうな声を出した。
「勇者様!?何ですの、その物凄く嫌そうな声は?!あと、その『恐ろしく残念な子』を見るような目はやめて下さいませんこと?!!」
えー、だってその通りだし。
「先日の私の戦い、ご覧いただけましたでしょう?私、こう見えても戦闘には自信がありますの!」
ちみっ子王女が鼻息荒く自己アピールしていた。
確かに、このちみっ子は見かけによらず戦闘力は高い。少なくとも足手まといにはならないだろう。
だけどなぁ~、仮にも一国の王女をいつ帰ってこられるかわからない旅に連れていくわけにもなぁー。
「ねえ、国王陛下の許可は得ているの?」
俺がそう言うと、ちみっ子王女は「待ってました」とばかりに輝くような笑顔で、
「当然ですわ!お父様も快く送り出してくださいましたわ!!」
・・・嘘は言っていないようだが、それでいいのか、国王。
「ただ、流石に一人では心配と言うことで、護衛の兵を100人ほどつけるのが条件ですわ!」
アホか!そんな大勢引き連れて魔王を倒す旅なんぞできるか!めっさ邪魔だわ!!何考えているんだ、ここの国王は!娘同様クルクルパーなのか!?
そんなこと思っているとは
「それで、『当然』私をお連れいただけますわよね?いただけますわよね!?」
重要な事なので2回言ったか、このちびっ子。まあ、俺の答えは決まっているがな。
「やだ。」
バッサリぶった斬ったった。やったぜ。
すると、このちみっ子王女は予想外の行動を起こした。
「嫌ですの!私は勇者様と一緒に行きますの!!うわぁぁぁぁぁぁぁん!!!」
なんと、地べたに転がって大泣きしながら駄々をこねだしたのだ。
・・・うん、見た目と寸分違わぬ小学生である。どうしてこうなった。信じられるか?こいつ、こんな成りをして俺とタメなんだぜ?
ところでこのちみっ子王女、気づいていないのかもしれないが、何故かミニスカート姿なので暴れるたびに下着が見える。俺にはそちらの趣味はないので、子供下着を見せられても特に何にも感じない。
しかし、流石にウザくなってきた。どうしよう、その辺に穴掘って埋めるか?
そんなことを考えていたら、向こうからいろいろゴージャスな人がお供らしき兵達を引き連れてこちらに歩いてきた。
・・・ん?あのゴージャスな人、どこかで見たような気が...、あっ、確かこの国の王妃だ!
その王妃は、こちらまで歩いてくると、いまだに駄々をこねているちみっ子王女のところで立ち止まった。
しっかし、何だこのサキュバスも裸足で逃げ出すようなゴージャスボデーのオカン(王妃)は。娘との格差が圧倒的だわ。
とかなんとか思っていると、このオカン、おもむろにその豊満な胸の谷間に手を突っ込んだかと思ったら、ある物を取り出した。
おお!あれはツッコミの
王妃は、素人とは思えないような見事なスナップを利かせて、ちみっ子王女の頭を「スパーンっ!!」と思いっきりハリセンでしばいた。
「いったーいっ!もう、何をなさいますの!?ゆうs...、お、お母様?」
駄々をこねていたちみっ子王女は、一瞬で静かになった。
「あなた、大衆の面前で何をやっていますの?」
王妃の周りの温度が絶対零度まで下がる感じがして、思わず身震いしてしまった。
ちみっ子王女は、まるで蛇に睨まれた蛙のように震えあがっている。
と、王妃が俺の方を向くと、深々と頭を下げた。
「勇者様、この度は
と謝罪の言葉を言われたので、俺も思わず思っていたことを口にしてしまった。
「いえいえ、とんでもありません。娘さんにはそれはそれは大変迷惑をかけられました。」
「勇者様?!!!」
と非難の声を上げるちみっ子王女。やかましい、実際迷惑だったんじゃ!
王妃は、俺の言葉を聞くとちみっ子王女の方を向いて、
「一国の王女たるものが、勇者様にご迷惑をおかけするとは...。何たることですか。」
そう言って、王妃がにじり寄ると、ちみっ子王女は後ずさりするが、そこに御付の兵が現れて王女の脇をがっちりホールドした。
「あなたとは、ちょーーーっと『おはなし』をする必要がありますわね。ああ、国王陛下も一緒に、そう、『じっくり』とね。」
ちみっ子王女は、恐怖のズンドコ(誤記ではない)に落とされたような表情になって、御付の兵にドナドナされていった。
「勇者様、改めて申し訳ございませんでした。あの子にはきつーーーーーく言っておきますので、どうかご容赦くださいませ。」
「ア、ハイ。ワカリマシタ。」
そう言って王妃は頭を下げ、王宮へ戻っていった。
俺は知った。この世には、絶対逆らっちゃいけないものがあるのだ、と。「母は強し」だな。
そんなことがあったが、俺たちは王都の民衆(ほとんど兵隊)に見送られて、東の地へと足を踏み出した。
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これから、俺たちには数々の困難が押し寄せてくるだろう。
しかし、そんなことで
魔王は強大だ。しかし、俺には背中を預けられる仲間がいる。これから出会うであろう未知の仲間と共に、力を合わせて魔王の野望を打ち破るぞ!
そう、俺たちの旅は、まだ始まったばかりなんだ!
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「・・・ねえ、打ち切り漫画の最終回みたいなこと言わないでくれる?本気にする人がいるかもしれないじゃない。」
「何をメタな事を言っているんだ。あと、『
「何わけわかんないこと言っているのよ...。」
勇者達の旅は、まだまだ続く(多分)。
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