勇者の軌跡11:勇者、女神と再会する

 宮中での晩餐会が終わった後、俺たちはこの国の教会へ向かっていた。

 教会は城からそれほど離れておらず、そこまで俺たちは街並みを眺めながら歩いて行った。

 教会に着くと、教皇の爺さんを先頭に司祭やシスター全員が出迎えてくれた。うむ、出迎え御苦労。

 出迎えを受けた俺は、そこで衝撃の事実を目の当たりにした。

 司祭が全員河童なのはある程度予想していたのでよかったのだが、シスターが全員「巨乳」なのはびっくらこいた。それも「超」が付くほどの。

 何だ?この国の教会はシスターは巨乳でないとなれないのか?なんて羨ましい制度なんだ!一人ください!!

 そんなことを思いながら魅惑の山脈を眺めていると、ふと背後から猛烈な殺意を察知したので、慌てて振り返ると。

 ・・・エルフが瞳のハイライトを消した状態で、殺意の波動を全身から溢れ出していた。

 俺が全身から冷や汗が滝のように流れ落ち、身動きが取れない状態でいたら、先頭にいた教皇の爺さんが一歩前に出て、

「勇者様、ようこそ私たちの教会にお越しくださいました。一同、心より歓迎いたします。」

 と言ってお辞儀をすると、他の者たちも倣ってお辞儀をした。それを見て、エルフの瞳に光が戻った。

 爺さん、グッジョブ!只の話がくそ長い耄碌もうろくジジイじゃなかったんだな!うむ、皆の者、苦しゅうないぞ。

「ほっほっほっ、それでは昨日の話の続きをいたしましょうかな?あれから...。」

 違ったわ畜生!やっぱり話がくそ長い耄碌河童ジジイだったよ!!

 まあ、流石に教会の入り口でくそ長い思い出話をすることはできなかったようで、周りの司祭に止められていた。


 教会に入り、俺たちは礼拝堂に案内された。

 やはり王都の教会は、地元のと比べたら雲泥の差だった。なんと言うか、やたら煌びやかなんだよな。あとやたらでかい。

 ただ、一般信者が全くいなかったので、その辺を聞いてみたら、なんでも俺たちがこちらに来ると分かった時点で、追い出したそうだ。いや、そこまでせんでもええやろ。

 そんな話をしながら、俺たちは祭壇の前に連れてこられた。

 目の前には、転生時に見た女神の像がある。ただ、ここも胸と尻が誇張されているな。

 と、ここで俺は教皇の爺さんに「あのこと」を聞いてみた。

「なあ、この国に『聖女』っているのか?」

「ほう、流石は勇者様。『聖女』様のことをご存じでしたか。」

 教皇の爺さんが感心した口調で答えた。

「いや、さっきの晩餐会でこの国のちみっ子...第一王女から聞いた。んで、いるの?」

「そうですか、第一王女殿下から...、いや、ご質問の件ですな。残念ですが、『この国』には居られません。」

 ん?「この国」って言ったな?・・・ということは?

「勇者様のご推察の通り、他の国におられます。今は確か...、この大陸にある人族の国で我が国を除く3か国にそれぞれお一人ずつおられますな。」

「え、この世界に1人しかいないんじゃなくって、何人もいるの?」

 俺はてっきり、勇者とペアということで1人だけかと思っていたわ。

「はい。勇者様は『神に選ばれし者』と言われており、一時代に御一人だけなのですが、聖女様は『神に認められし者』とされておりますので、極論になりますが、神に認められれば良いので御一人だけとは限らないのです。」

 にゃるほど。つまり勇者のハーレム要員ってことなのかな?いいなそれ!。え、違うの?勇者がっくりくりくりくりっくり。

「それじゃ、その国に行って国王とか教皇とか、もしくは本人に直接お願いすれば、俺のパーティに参加してくれるのかな?」

 俺がそう聞くと、教皇の爺さんは困った顔をした。

「そうですな~、勇者様のご依頼であれば、断られることはないと思いますが、魔王を倒すための戦力になるか、となると、...ですな。」

「え?治癒術のエキスパートってあのちみっ子...第一王女から聞いたけど?」

 あれ、今いる「聖女」って戦力にならないの?マジっすか。それは困った困ったこま●り姉妹。

「今居られる聖女様ですが、お一人は70過ぎのご老体、お一人はわずか7歳の少女、そして残るお一人は...、」

 ・・・な~んか、いやーな予感がする。一人は生きる屍、一人は警察にタイーホされる案件、ときたら、最後は何だ?「虚弱体質」とかか?あとは何だろう。

 そんなことを思っていたら、教皇の爺さんから衝撃の発言があった。

「・・・『男の娘』なのです。」

「そっちかよ!予想の斜め137度すぎてそのままブリッジする所だったわ!つーか、性別が違うだろボケ!!」

「勇者様、先ほど申しましたように、『神に認められし者』が聖女となりますので、性別は関係ないのです。」

 ・・・なるほど?しかし、男で『聖女』っつーのはどうなの?本人は抵抗がないのだろうか?

 ん、まてよ。「男の『娘』」ということから、そこら辺の抵抗はないのか。むしろ喜んでいそう。

「・・・参考までに聞くけど、その『男の娘聖女』はどんな感じなの?」

 念のために聞いておこう。もしかしたら奇跡的にワンチャンあるかもしれないし。もちろん戦力的な意味で。

「勇者様がお願いされたら、喜んでお仲間になられるでしょう。」

「ただ、勇者様を狂信的に信奉されておりまして、『ボク、勇者様のためなら、何でもするよ、モチロン「夜」のほうでね♡』とか言い出して...、いろいろ『搾取』されるかもしれません。」

 それって、「聖女」じゃなくって「性女」じゃねえか!いや、女じゃねえから違うか。

 きっと、搾り取られる→魔術で回復→搾り取られるの永久ループになるんだろうなー。怖ぇわ。

「わかった。分かりたくはないけどよーっく分かった。」

 まあ、そんなご都合主義のラノベ小説みたいに行くわけないか。さらばハーレム。

「お役に立てず、申し訳ございません。」

 そんなことを言って教皇の爺さんが頭を下げてきた。別に謝るようなことじゃないので気にしなくてもいいんだけどな?

「そうなると、誰かが『聖女』になってもらうのが一番手っ取り早そうだけど、認められる条件が何かだよな~。」

 そんなことを俺がつぶやくと、

「申し訳ありません。残念ながら私たちには分からないのです。今からでも教団総出で調査いたしましょうか?」

 などと教皇の爺さんが言ってきた。

 そこまでしてもらう必要はないかなー、とか思っていたら、俺のひらめき電球(LED)が「ピコピコピーン!!」と点灯した。

 そうだ、当事者に直接聞いてみればいいではないか!

「ということで、当事者にちょっくら聞いてくるわ。」

 と言って、女神像のある祭壇の前に進むと、おもむろに膝をついて祈った。

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 どのくらい経っただろうか、俺はふと目を開けると、見覚えがある一面真っ白の空間にいた。

 俺が辺りを見回していると、近くで聞き覚えのある声がした。

「まさかと思いましたが、やはりあなたでしたか。もう会うことはないと思っていたのですが...。」

 俺は声がした方に振り向くと、これも見覚えがある幼児体型の女神が立っていた。

 しっかし、本当に来れちゃったよ。俺ってすげえ(自画自賛)。

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