勇者の軌跡9:勇者、王都に着く
ガタゴト・・・ガタゴト・・・
「ほっほっほ、いやいや、まさか勇者様にお助けいただけるとは、これも神のお導きですかのぅ。」
前回、盗賊(らしき連中)から助けた教皇御一行と一緒に、現在王都に向けて馬車で移動中。
で、この
「もぉ~、なに暢気なこと言ってるんですか、教皇様~。元はと言えば、教皇様が原因なんですよ~?」
と、苦言を呈しているのが教皇御付の修道女(シスター)。
このシスター、顔は地味なんだけどどうしてどうして、それはそれは立派な胸部装甲をお持ちです。でけえ。(
ちらりと隣にいるエルフを見ると、自分のものと見比べて「くっ...」と言っていた。エルフよ、現実とは時に残酷よのう。
で、そのシスターの話だと、この教皇の爺さんは、勇者である俺に会いに来るため、教会の仕事を周りに押し付けてお忍びで出かけたらしい。
で、その途中で
この爺さん、アグレッシブすぎんだろ。巻き添えを食らったシスターには合掌、お手々の節と節を合わせて「
そんな事情を聴いていると、エルフが俺の腕をツンツンしてきた。
「ね、ねえ。あの人たちなんて言ってるの?」
あー、そういえばエルフには言葉が通じていないんだったな。
「ん、『いやぁ、お仲間のエルフさんは美人さんで羨ましいですなー。』と言っているんだ。」
と、適当な事を言うと、エルフは真に受けたようで、
「えー♪、そんなことあるけどー♪」
などどほざいて、頬に手を当ててくねくねしている。正直キモイ。
しかし、言葉がわからないのは問題だな。今は俺と2人パーティだからいいけど、これからメンバーが増えたりしたらそいつらとの連携に支障が出るかもしれない。
う~ん、どうすべ?
俺がそう考えていると、教皇の爺さんが、
「おや、勇者様、どうかなさいましたかな?」
と聞いてきたので、
「いえ、王都まであとどれくらいかな~、とか思っていたんですよ。」
と、無難な返事をした。すると、教皇の爺さんが、
「ほっほっほっ、あと2日ぐらいで着きますよ。あと、私に敬語は要りませんよ。私と勇者様は同じ地位なのですから。」
ほう、そうするとこの国の教皇は国王と同じ地位なんだな。
そんなことを思っていると、シスターがとんでもないことを言いだした。
「そうだ、教皇様。教皇様がどれほど勇者様を尊敬されているのかを、ここで語られてはいかがですか?」
・・・は?なんて言ったこの、やたら乳だけでかいアホシスター、馬車が揺れるたびにゆっさゆっさと同期を取ったように揺れやがって!目の保養になるだろうが!本当にありがとうございます!!
だがな、その
ではなくて、そんなことをこのジジイに言ったら話が終わらなくなるだろうが!!聞かされる身にもなってみやがれこのおっぱいお化け!!!
「ほほぅ、あなたにしては良い提案ですね。それでは如何に私が勇者様のことを敬愛しているかをお話ししましょう。あれは私が子供のころ...。」
始まっちまったよこんちくしょう!こうなったら覚悟を決めなけりゃいけないのかよアホンダラ!!
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「・・・という感じで、私が19歳で教会に入るときに勇者様と運命的な再会をしたのです。それでですね...。」
・・・こんな感じで約3時間(=一刻半)、ずーーーーーーーっと話し続けているのでござる、このジジイ。
あの乳だけでかいアホシスターは、隣でニコニコしながら聞いているふりをしているし、こっちはこっちでエルフが俺の肩に頭を乗せてアホみたいに口開けて寝ていやがる。
あ、
俺ですか?俺は無の境地に入って、もうすぐ悟りを開けそうですよ、はい。
・・・しっかし、こんなアホ面していても、しっかり「美少女」なんだよなー。これは世のお嬢様方が激おこぷんぷん丸確定ですよ。
あ、そういえば「美少女」で思い出したんだが、こいつ、見た目は中学生みたいなんだけれど、俺のオカン(母親)とタメ(同い年)だった。
なんでも、成人と言われる15歳までは人間と同じく1年に1歳年を取るそうだが、その後は10~20年に1歳のペースで年を取るそうだ。
なので、エルフ年齢に換算すると、ギリギリ俺と同じ年だと言っていた。お前はイスカ●ダル人か。
と、そんなことを思っていたら、馬車の速度が落ちてきた感じがした。すると御者がこちらを向いて、
「教皇様、そろそろ宿場町に着きます。」
と言った。
やぁぁぁっっっっっっと着いたか!あと少しで悟りを開いて勇者ではなく聖者になるとこだったわ!
「おい、起きろエルフ、着いたぞ。」
「・・・ふにゃっ?もうお腹いっぱいで食べられないよぉ~。」
寝ぼけているなこの駄エルフ、よし、目覚めのデコピンだ!
距離よーし、角度よーし、溜めよーし、準備完了ー。
撃てーっ!!
ズドンっ!!!
「いったぁーーーーーい!!」
見事にエルフの額にヒット!
「よし、起きたな。それじゃあ、さっさと降りるぞ。」
「ちょっとアンタ!もう少し優しく起こす方法があるでしょ!?」
エルフがおでこを抑えて涙目で何か
「いやはや、すっかり話し込んでしまいましたな。」
教皇の爺さんも馬車から降りてきて、そう言った。
「それでは、続きは明日お話ししましょうかの。」
まだ続くんかい!どんだけ長いんだよアンタの話は!!
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それから丸一日移動して、身も心も
昨日爺さんの長話を爆睡で切り抜けたエルフだったが、今日は俺が逐一通訳してやったので、その技は使えなかった。フフフ、お前だけ楽に過ごさせないZE?一蓮托生、呉越同舟、死なばもろともだ。
「・・・なんで馬車に乗ってきたのに、歩いた時より疲れているのよ...。」
「それについては激しく同意するが、あの爺さんの前でそんなことを言うなよ?」
「分かっているわよ...。」
あ、言っても相手に通じないんだった。疲れているな、俺。
王都に入るとき、教皇が俺が来たことを守衛に告げたところ、大慌てで使いの者が王宮へ報告に行った。
しばらくして報告に行った人が戻ってきて、明日朝一に登城してほしいと言ってきた。
俺は、しばらく待たされると思っていたから拍子抜けしてしまった。この国の国王は暇なのか?
と、失礼なことを思っていたら、どうやらほかの予定を後回しにして俺の謁見を優先してくれたそうだ。すまんのぉ~。生きぃよぉ~。笑えよぉ~?
もちろん、俺だけではなくエルフも一緒に登城することになった。そらそうだわな。
そんなこんなで、街に入ると俺たちは教皇の爺さんと別れた。
「国王との謁見が御済みになりましたら、是非我々の教会にお越しください。お待ちしておりますぞ。」
一瞬、馬車内での悪夢(笑)が頭をよぎったが、
「分かりました。それでは国王陛下との謁見後、立ち寄らせていただきます。」
と答えた。
仮にもこの国の教皇で、俺が「勇者」というのはまだ知られていないはずだから、民衆の前でタメ
教皇の爺さんたちは、俺たちに軽く会釈をすると、そのまま馬車で教会へと帰っていった。
残った俺たちは王宮から用意された宿へ向かっていたが、途中やたらと注目されてしまった。
やっぱり、俺が発する勇者のオーラが一般ピーポーの注目を浴びるのかー、とか思っていたら、隣を歩いているエルフが注目されていただけだった。ショックのパー。
そんな感じで、俺は少しセンチメートル(誤記ではない)になりながら、宿屋に着いた。
流石は国が用意してくれた宿屋、ゴージャスすぎんだろ。宮殿かと思ったわ。それかどこかのラブホか。
俺たちは、疲れた体で足取りは重いが、ワクワクしながら宿屋に入るのだった。
しっかし、これって前世だとラブホに中学生を連れ込む大学生みたいに見えるな。「お巡りさんコイツです」って通報されそうだわ。
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