勇者の軌跡6:勇者、はぐれエルフと遭遇する

 ヒロイン登場!?


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 俺は、宿場町の町長から依頼を受けて、洞窟に向かっている。

 道中、底なし沼や腕時計の跡が付いた現地人に遭遇することもなく、小一時間ほどで問題の現場に着いた。

「ふむ、やっぱり『結界』みたいだな。」

 目を凝らして見てみると、透明な壁のようなものがあり、そこから入れないようになっている。

「目的の洞窟は、この奥にあるのか~、どうすべ?」

 周りを見ながら考えていると、俺のひらめき電球(白熱電球)が「チカチカチカーン♪」と点灯した。

「そうか、『上』がダメなら『下』から行けばいいんじゃね?」

 と言って、下...つまり地面を見た。

「こんなこともあろうかと、持っててよかった穴掘り道具♪」

 ・・・そんな感じで、穴掘りを続けること約1時間。

 見事に結界の中に入れた。

「うむ、予想通り。いい汗かいた。」

 一応、念のため掘った穴を埋め戻して、先に進んだ。

 念のために言っておくが、何故「穴掘り道具」を持っていたかは気にしてはいけない。勇者にも秘密の一つや二つや三つや四つぐらいあるのだ。それでいいのだ。

 洞窟に近づくにつれ、人の気配が強くなっていく気がする。

「やっぱり、誰かここに住んでいるな。」

 そうしているうちに、目の前に小さな洞窟が見えてきた。

「さて、どうするかにょー。」

 確か、目撃者の証言によると、滅多に洞窟から出てこないらしいから、ここで待っていてもらちがあかないかもしれん。

「となると、こちらから突撃するしかないな。」

 俺は、気配を消して洞窟の入り口に立ち、中の様子を窺う。ちなみに、大きなしゃもじは持っていない。勇者さんの失態である。ちくせう。

 うん、やっぱり誰かいるな。暗くてよく見えないけれど、何か人らしいシルエットがある。

 そう確信すると、意を決して洞窟に入る。

「邪魔すんでぇ~。」

 一応、入るときには挨拶をしないとな。一般ピーポーの常識ですよ。

 すると、奥から驚いた声が響いてきた。

「だっ、誰っ?!どうやって入ってきたのっ?!!」

 ん、女か?というか、言葉分かるんだけど?・・・ああ、「自動翻訳」スキルのおかげか。

「ちょっと、聞いているの!?」

 何か、子犬のようにキャンキャン吠えているので、とりあえず返事をする。

「聞いてるよー。つーか、こんな狭い洞窟でキーキーわめくな。声が響いて頭がクラクラするわ。」

 すると、声の主がまた驚いたような声を出した。

「えっ、あなた、私の言葉がわかるの?もしかして、同族?!」

「同族かどうかわからんが、俺は人間だ。あと、言葉がわかるのは『自動翻訳』スキルのおかげだ。」

 そう言うと、

「『人間』...、『自動翻訳』スキル...?」

 声の主は、何かぶつぶつ呟いていたと思ったら、

「もしかして、あなた『勇者』なの?」

 と聞いてきたので、

「ああ、俺は『勇者』だ。ここには、近くの町からの依頼で調査に来たんだ。」

 そう答えた。

 しかし、ゴブリンにも「勇者」の名声が届いているとは、まいっちゃうなたまんないよ。

「ちなみに、ここに『ゴブリン』がいるって聞いてきたんだが、お前がそうか?」

 と尋ねると、

「誰が『ゴブリン』よっ!私は『エルフ』よっ!!」

 と、猛抗議してきた。

 ・・・暗さに目が慣れてきたので、よくよく見てみると、確かに耳がとがっていて、緑色っぽい服装みたいだが、顔の輪郭が俺が想像しているゴブリンと明らかに違い、「シュッ」としている。

「それで、調査のために来たって言ってたけど、そのあとはどうするつもりなの?」

 そのあと?あー、正体がわかったらどう扱うのかを聞いているのか。

「依頼では、『ゴブリンだったら討伐する』だけど、『エルフ』ということなら特に何もするつもりはない。」

 エルフと言った声の主は、ほっとしたようだ。

「ただ、本当に『エルフ』かどうか確認できないから、一度出てきてくれないか?」

 まあ、俺は「ゴブリン」も「エルフ」も実物を見たことがないから、確認できるかと言えば怪しいけどな。

 すると、声の主は少し考えるような雰囲気を出してから、

「・・・そうね、あなたの言うことはもっともだわ。」

「でも、約束して。外に出たらいきなり襲い掛かることはしないって。」

 うん、まあそうだろうな。もし「エルフ」だったら、人間のことを警戒しているしな。下手すると捕らえられて奴隷商に売られてしまうからな。

「心配するな、俺は『勇者』だぞ。そんなことするわけなかろう?」

「・・・いまいち納得できないけど、いいわ、その言葉、信じるわ。」

 あれ?なぜ納得しないのだ?解せぬ。

 そんなことを思っていると、奥から声の主が出てきた。

「・・・・・・・」

 おぉー、これが「本物の」エルフかーっ!

 俺が前世で見てたラノベとかに出てくるエルフと同じだーっ!

 長い耳、金髪ストレート、あおい瞳、容姿端麗、白い肌!...ん?この世界のエルフは「女」だけのはずだよな?と思われる胸部装甲をしていた。

 身長は結構低いな。140~150cmぐらいかな?とするとやっぱり子供か?あと、目撃者が言っていた「緑の体」って、この民族衣装っぽい服のことなんだろうな。

 などと確認していたら、

「・・・ど、どう?これでわかったでしょ?」

 と聞いてきた。

「おう、確かに俺のイメージ通りの『エルフ』だな。」

 俺がそう言うと、明らかに安心した表情をした。

「よかった。それじゃあ、帰ってもらえるかしら?」

 などとぬかしたので、

「ん、何言っているんだ?一緒に連れて行くぞ?」

「・・・・・・・」

「はあぁぁぁっ?!!」

 エルフ(の少女)が叫んだ。

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