勇者の軌跡4:勇者、初めての実戦経験をする

 さて、生まれ故郷を出て、王都がある南に向かって歩いているわけだが、街を出ると整備された道が王都まで続いているので、道なりに進めばいずれは着くはずだ。多分。

 途中にいくつか宿場町みたいなのがあるので、とりあえずそこを目指して行くとするか。

 ちなみに、一番近い宿場町までは徒歩で半日位かかるらしい。

 道中には人家などなく、道を挟むように湿地帯が広がっているだけである。

 というか、元々一面の湿地帯のど真ん中に道を作ったといった方が正しいだろう。

 で、この湿地帯には、ファンタジー作品でおなじみの「スライム」が生息している。

 今いるあたりに現れるのは、「モブスライム」と呼ばれる最弱のスライムで、たまに道で馬車にかれている姿を見かけるそうだ。哀れなり。

 そんなことを考えていたり、なーんにも考えなかったりで小一時間ほど歩いていたら、そいつが現れた。


 <モブスライムが1匹現れた!コマンド?>


 突如、そのような声が頭に響いてきた。びっくりしたわ!誰だよお前?!

 つーか、戦闘に入るたびにこれが聞こえてくるわけ?何だかな~。

 で、「コマンド」って何だよ?ゲームか!?

 と、俺が戸惑っていると、目の前に半透明のウィンドウが現れて、正にゲーム画面のコマンド一覧が表示されている。

 とりあえず落ち着いて、一覧を見てみる。


 コマンド一覧

[たたかう]

[ぼうぎょ]

[まじゅつ]

[アイテム]

[にげる]


 ・・・どこかで見たようなコマンドだな。まあいいや。

 さて、どうしたものかと考えていたら、モブスライムがこっちに向かってきた。

「うわっ、コマンド選択中は動かないんじゃないんだ。まあ、リアルはそうだろうなー。」

 モブスライムが飛び掛かってきたので、俺はひょいっとかわした。


 <モブスライムの攻撃!ミス!勇者はひらりとかわした!>


「いちいち説明してくれるのね。それより、どうすべ?」

 そういって、モブスライムを見ていると、ふと思った。

「こいつ、よく見ると、水饅頭まんじゅうみたいだな。食べたらおいしいのかな?」

 ピコン!

 何か頭に音が響いたので、ふとコマンド一覧を見てみると、


 コマンド一覧

[たたかう]

[ぼうぎょ]

[まじゅつ]

[アイテム]

[たべる]←New!!

[にげる]


 ・・・コマンドが増えていやがる。「New!!」って何だよ。

 待てよ、俺が思ったことがコマンドに反映されるってことか?

 ・・・ちょっと試してみるか。


 ピコン!


 コマンド一覧

[たたかう]

[ぼうぎょ]

[まじゅつ]

[アイテム]

[たべる]

[すう]←New!!

[にげる]


 おー、「喉が渇いたから、こいつを吸ってみるかな?何味がするんだろう?」と思ったら、反映されたわ。

 それじゃあ、さっそく実行してみるか。オラなんかワクワクしてきたぞ!


 コマンド一覧

[たたかう]

[ぼうぎょ]

[まじゅつ]

[アイテム]

[たべる]

 >[すう]<

[にげる]


 俺はモブスライムをむんずと掴むと、口を付けて思いっきり吸った。

 ちゅうぅぅぅぅぅぅぅっ!!

 モブスライムは、あっという間にしおしおにしなびてしまった。


 <勇者はモブスライムに襲い掛かった!吸引攻撃!モブスライムを倒した!>

 <勇者は経験値を得た!レベルアップ!勇者はいろいろ強くなった!>


「雑な説明だなおい!まあいいや。これでしばらくは水分補給の心配はなくなったな。」

 ちなみに、味は普通の水でした、まる。

 ----------

 それから、宿場町に着くまでいろいろなスライムを倒しまくった。

 ちなみに、味は以下の通り。

 ・レッドスライム:トマトジュース味

 ・ブルースライム:ラムネ味

 ・グリーンスライム:メロンジュース味

 ・パープルスライム:ぶどうジュース味

 ・イエロースライム:オレンジジュース味

 ・ピンクスライム:ピーチ味

 ・ダークイエロースライム:ウコン味(う●こではない)

 ・ダークグリーンスライム:抹茶味

 いやー、倒しすぎたせいで、お腹がタプタプだ。

 それにしても、俺が通るとスライムたちが逃げるようになったのだが、何故だ?

 まあいいや。それじゃあ、その辺で用を足したら宿場町に入るかな~。

 ミミズもカエルも皆ごめん。はー、ジョンジョロリン、ジョンジョロリン、ジョンジョロリンのパッパ。

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