勇者の軌跡2:勇者、いきなり身バレする
「ほぎゃあ、ほぎゃあ、ほぎゃあ!」
「ほーら、こんなに元気な男の子ですよ~。」
「うむ、元気なことは非常に結構だ。さすがは俺の子供だな、わっはっは。」
「もう、『私たち』の子供でしょ。」
こうして、俺は異世界の地に転生した。
ふっふっふっ、これから、この世界での俺の「勇者」としての
オラ、何だかワクワクしてきたぞ!
とか思っていたが、流石に産まれてすぐなので、ひとしきり泣いたら眠くなってそのまま寝てしまった。
ああ、ちなみに何で言葉が理解できたかというと、勇者専用のスキルで「自動翻訳」というのがあるので、そのおかげだ。
うむ、ご都合主義万歳。
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そんなこんなで転生して1週間、それまでおっぱい飲む→う●こ出す→寝るのルーティンをひたすら繰り返していた。
ん?ラノベみたいに生まれてすぐ「魔力」とかを上げる修行をしなかったのかって?
やろうとしたけどうまくいかなかったから諦めた。人間、何事も諦めが肝心。ま、なんとかなるだろう。
ということで、今日、親が俺を連れて教会に行って、「覚醒の儀」とやらを行うのだそうだ。
なんでも、この世界の人間は生まれた時から就ける職業が決まっているらしく、その職業を「神のお告げ」という形で知らされるそうだ。
だから教会に行くのね。
俺は、母親に抱かれて村の外れにある教会へと向かっていた。
そういえば、俺の母親って見た感じずいぶん若そうだな。20歳行っていないんじゃないか?
父親は無精ひげを生やして体格がよく、見た目は30歳前後かな?
2人とも職業は「
そんなことを思いながら、周りの風景を見てみると、前世で習った中世ヨーロッパの農村っぽい家が目に入る。村の雰囲気もそんな感じだが、何か違和感がある。
それにしても、生まれた時から進路が決まっているなんて、
「ようこそいらっしゃいました。この教会の司祭を務めております。」
そう言って、いかにもという格好の司祭がやってきた。なぜか頭頂部が
「では、祭壇の前にある椅子に座らせてください。はい、いいですよ。それでは『覚醒の儀』を執り行います。」
俺は祭壇の前にあった椅子に座らせられ、両親が支えている状態で、司祭(以降「河童司祭」)が目を瞑って祈り始めた。
「神よ、この者の職をお教えください...。」
神って、俺にスカトロプレイを強要した駄女神のことかな?そういえば、目の前にある像はそれっぽい気がする。胸と尻の部分がやたら盛られているが。
「・・・なんと!本当ですか!?」
そんなことを思っていると、祈っていた河童司祭が驚愕の声を上げた。
「し、司祭様、どうなさったのですか?!」
「まさか、息子が何か良くない職についているとか...?」
そう、両親が心配そうな声を上げると、
「いいえ、その逆です。先ほど「神」からお告げがありました。この子は...、」
河童司祭がそう言うと、両親は「ゴクリ」と喉を鳴らした。
「この子は、『勇者』です!」
河童司祭がそう宣言すると、教会内が一瞬、水を打ったような静けさに包まれた。
「・・・『勇者』...。」
そう、誰かがつぶやくと、堰を切ったように歓喜の声があちこちから上がった。
「やったー!」「この村に『勇者』が生まれたぞー!」「これで、この村も発展するぞー!!」
やれやれ、騒ぎすぎだぜ一般ピーポーたち。まあ、気持ちはわからんでもない。ふっ、さすが「勇者」だな。
皆が大騒ぎしているところで、
「そうすると、この子は『転生者』ということですか...。」
・・・はい?この頭頂ハゲ、今なんて言った?なんで俺が「転生者」って分かったんだ?!
俺が驚愕の目で河童司祭を見ると、奴はニヤリと笑った。
「ふふっ、その顔は『なんで分かるんじゃワレェ』と思っていますね?」
なぜバレたし。
「よろしい、説明しようっ!!」
と、河童司祭が某故・富●敬氏のような口調でしゃべりだした。
「この世界では、『勇者』は神の力によって、異世界から魂を呼び寄せ、力を与えると言われているっ。」
「『勇者』になれるのは、神によって呼び寄せられた異世界の魂のみとされていて、いままで一度たりとも例外はないのだっ!」
「つまり、『勇者』=異世界から転生した者、私たちは『転生者』と呼んでいるのであるっ!!」
なんてこった、パンナコッタ。
つまり、「勇者」という職業についているということは、この世界では「転生者だよー」、と言っている様なものなのかっ!
そう、俺がブルーディスティニーになっていると、河童司祭はさらに話し続けるのだ。
「『転生者』には当たりはずれはあるとされていますが、それは神からの見方であって、私たちにとってはすべて大当たりになるのですよ。」
「そのため、『勇者』が生まれた場所は、その『転生者』の知識を絞りt...ゴホン、ご教授いただいて、驚異的な発展をするのですっ!」
あー、成程。教会に来る途中で感じた違和感は、そういうことだったのか。
俺が想像していた「中世ヨーロッパの農村」に比べて、道路はきれいに整備されているし、村人の身なりもそれなりに綺麗。
よくよく思い出してみると、家には水道みたいなのがあった気がするし、夜は電灯みたいなのがあって明るかったな。
俺が生前読んでいたラノベでは、ほぼほぼ「中世ヨーロッパ程度の文明」ばっかりだったから、そんな固定観念があったわ。
成程、俺より前の「勇者」の尊い犠牲があってこの現状があるわけだ。
む、ちょっと待て、そうすると、この
そう思って、周りを見ると、欲と希望に
俺は、言い知れぬ恐怖と絶望感で、思わず叫んでしまった。
「ほげえええぇぇぇ、ほげえええぇぇぇ、ほげえええぇぇぇーっ!」
「あらあら、こんなに喜んで、やっぱり『勇者様』だけあって、器が大きいのね~。」
「おお、神よ。この地に『勇者』を使わせたいただいたこと、感謝いたします。」
「これで、この村はこの地で一番の大都市になること、間違いなしじゃ!」
周りの連中は、そんなことを言って喜んでいる。
違うわボケ!こちとら想定外のことで「ほげえええぇぇぇ」となっているだけじゃ!
・・・これからどうすべ。
まあ、なんとかなるか。あまり気にしたらあの河童司祭みたいになるしな。ケセラセラだ。うん。
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