第一章:勇者の旅立ち
勇者の軌跡1:勇者、転生する
「・・・知らない天井だ。」
俺は、目を覚ますとそう一人
・・・すみません、一度言ってみたかったんです。
「・・・つーか、周り全部真っ白けで天井なぞ見えんかったわ。んで、どこだここ?」
とりあえず、あたりを見回していたら、何か人らしいものが目に入った。
「ん?誰かいるのか?」
そう俺が言うと、人らしきものがこちらに近づいてきた。
「初めまして、と言うのかしら?ようこそ、異世界の魂よ。」
「私は、この世界を管理する女神です。」
と言ってきた。
女神?そういえば、子供のころ読んだおとぎ話に出てきた女神に似ていると言えば似ているかも...?
確かに見た目すっごく美人だけど、体のラインにあまり凹凸がないような気がする。
そう、俺が思っていたら、その「女神」とやらが話し始めた。
「あなたの魂は、私がこの世界へ呼び寄せました。」
「これから、あなたはこの世界に転生して、新たな人生を送ることになります。」
・・・転生、ねぇ。
・・・ん、転生だと?
それって、今散々やりつくされてきた「異世界転生」ってやつか?
あの、チートな能力をもらってヒャッハーしたり、無意識に手あたり次第女を口説いてハーレム作ったりするあれ?
「これから先、あなたには数々の試練が待ち受けているでしょう。」
どこか遠い地でスローライフ生活をするぜ!とか言って結局サバイバルー(誤記ではない)になるやつとか?
「しかし、あきらめてはいけません。その苦難を乗り越えて...?」
あー、でも俺TUEEEEはやってみたいなー。「お前たちのような雑魚が束になって掛かってきても無意味だ。」とか言ってみてーなー。
「無駄無駄無駄無駄ぁっ!!」とか言って相手をボコボコにしたり。
「・・・あの~、もしもし?」
あ、あとは悪役貴族になって、無意識のうちに世界を救ったりするのもありかも。
くぅ~、
俺は、女神(自称)の肩をむんずと掴む(魂なのに掴めるのか、という無粋なツッコミはなし)と、力いっぱいガクガクと揺らした。
「よーし、今行こう、すぐ行こう、ちゃっちゃとやってくれ!」
「ちょちょちょ、お、落ち着いて、話を聞いてください...。」
肩をゆすられた勢いで、頭をシェイクされながら、何とか答えた女神。
「んで、何くれるの?無敵の力?不老不死?イケメンで精力無限??」
さらにガクガク揺らしていると、だんだん女神の顔が青くなっていった。
「・・・そ、そんなに揺さぶられると...、も、もうダメ...。」
そう女神がつぶやいた途端、
「おろろろろろろぉ~。」
目の前で思いっきりマーライオンになって、俺にぶっかけてきやがった。
「うわっ、汚ったね!!」
「・・・うぅぅ~、まだ頭がくらくらするけど、すっきりした♪」
と、口元に色々つけた状態で女神は
「すっきりした♪、じゃねえよ!こちとら、そっちの
「あなたが私の話を聞かないからでしょう...?」
女神はそう言ってジト目をしてきたが、俺はまったく気にしない。しないったらしない。
「仕方がねぇな~、それじゃあ、その『おはなし』とやらを聞いてやろうじゃねぇか。」
「あれ?何で私がお願いする形になっているのかしら?」
女神が「ん?」と首をかしげた。
いや、あんたが「お願い」するのは間違っていないぞ?
「細けぇことは気にすんな。
「何そのドヤ顔は。微妙にムカつくんだけど。・・・まあいいわ。これから話しますので『しっかり』聞いていてくださいね?ね!!」
「へいへい。」
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「・・・ということです。どうですか、理解していただけましたか?」
長い長い「おはなし」が終わって、女神がそう尋ねてきた。
「話が長すぎて途中から聞いていなかった。3行で説明よろしく。」
俺がそう言うと、女神が
1.あなたは「勇者」として、この世界に転生してもらいます。
2.この世界を滅ぼそうとしている「魔王」を倒してください。
3.そのために必要な力を授けます。
何だ、やればできるではないか。最初からそうすればあのアホみたいに長い時間を費やす必要はなかったのに。プレゼン能力が足りないな。
と、ここで気になったことを女神に聞いてみた。
「そういえば、転生って言っていたけどそれって赤ん坊から?それともある程度成長した段階から?」
「赤子からになります。そこからこの世界に必要な知識を習得していってください。」
「わかった。それじゃあ、ちゃっちゃとやってくれ。」
「・・・わかりました。あなたとはもう会うことはないかと思いますが、どうぞよろしくお願いします。」
そう、女神が言ったあと、ラノベのテンプレ通り、俺は意識を手放した。
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「・・・はぁぁぁ、何ですかあれは。あれが本当に「歴代最強」になるのでしょうか。」
「まあ、こちらのお願いを叶えてくれればいいので、別にどうでもいいですね。」
女神はそう言って、先ほどの騒々しい転生者(の魂)を思い出していた。
「・・・そういえば、大事なことを伝えていませんでしたね。」
あっ、という表情をしたが、少し考えて、
「まあ、すぐにわかることですから、問題ないでしょう。」
と言い、女神は悪戯っぽい笑みを見せた。
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