第2話:森の王、撃沈す

「おっしゃあ!これでオッケーだな!」


「あんまりオッケーじゃないけど……。まぁさっきよりマシかな……」



ハンドレッドは上半身に巻いた包帯をぎゅっと結んだ。少年に渡されたシャツのサイズがどうしても合わなかったので、いろいろ試行錯誤した結果サラシを巻くことになったのだ。なお、下は短パンで靴は無い。

およそ森を歩く格好ではないが、動きやすいからこれでいいと彼女は満足していた。



「もうすぐ森が荒れてくるから一緒に村に向かおう。……ほんとに裸足で大丈夫?やっぱり僕のを履いた方がいいよ。僕は慣れてるから」


「優しいなーお前。でも気持ちだけで十分だ!ここまで素っ裸で来たわけだし!」


「素っぱッ……!わ、分かったよ!じゃあ、着いてきて。遅くなる前に帰らないとみんな心配するからね」



少年は慣れた様子で歩いていく。

時々後ろを振り返ってはハンドレッドの様子を伺って、足元を踏み固め、泥濘ぬかるみを避けて……。

今まで放置していた飛び出た枝も丁寧に折って先導していた。



「…………なあ、名前はー?」


「えっ?ああ……。レガリオだよ。レガリオ・アストーノ。君は?」


「俺はまぁ……ハンドレッドって呼ばれてんだけどよ。これは名前っつーかなんつーか……」


「ハンドレッド……?なんか変な名前だね」


「なに!?変なのか!?」


「そんなにショック受けなくても……。ご、ごめんね!僕が悪かったよ。生まれた場所にもよるし、人それぞれだよね」


「いや……うーん……。そうか、俺の名前かー……」



ハンドレッドという呼び名に愛着は無かった。

しかし特別違和感もなかったその名がここでは変な名前となれば、多少は気にするものだ。

これを機にしっかりとした自分の名前を決めようと頭を悩ませるが、また変な名前と言われるのは目に見えている。

そこで彼女は自分で考えるのをやめて、この地の者に任せることにした。



「よし!レガリオ。俺の名前、お前が決めてくれ」


「えぇ!?なんで!?ていうか変えちゃっていいの!?」


「だーいじょぶだいじょぶ!ここで会ったのも何かの縁ってやつだろ?どうせ俺が考えてもラチあかねーんだし」


「えぇ……そんな滅茶苦茶な……」


「なんでもいいぜ!こういうのは直感でビビッと来たやつが一番だ!」



そこまで言うならと呟きつつ、レガリオは歩きながら考えはじめた。

誰かに名前を付けるなど、将来結婚して子供が出来た時とか、漠然とした未来の出来事と思っていた。

まさかこんな突然にその機会がやってくるとは。


やがて二人の足音の他には鳥のさえずりと、そよ風が木々の葉を撫でるだけとなった頃。



「うーん……。じゃあ…………—―――――『レッド』なんてどう?」


「……レッド?」


「そのハンドレッドっていうのも誰かに呼ばれてたなら、思い入れはあるでしょ?そこから取ったのもあるんだけど……ほら、目も赤色だろ?」


「赤い目のニンゲンはいないのか?」


「いるにはいるけど……ここまで綺麗な色は見たことも聞いたことも無いよ。とっても印象的なんだ。ただ女の子には珍しい名前なんだけど、君の話し方なら違和感もないと思うし。そんな君がレッドって名前なら絶対忘れないよ。……どう?」


「……—―――――サイコーじゃねーか。レッドに決定!」


「…………提案しといてなんだけどさ。そんなにあっさり決めていいの?」



レガリオはじっとりした目で振り返った。

適当に言ったわけではないが、さっき会ったばかりでお互いのことを何も知らない者同士だ。

そんな自分が考えた名前で本当にいいのか……そう言いたげな顔だった。

しかし、聞かれた彼女は彼の疑問を吹き飛ばすような明るい笑顔で答えた。



「もちろんいいぜ!レガリオがいい奴だってのはもう分かったし、お前が決めてくれた名前なら大歓迎だ!」


「っ!……そ、そっか!ハン……レ、レッドが喜んでくれるなら、それでいいよ!」



ぷいっと前に向き直ったレガリオの頬は、夕日に照らされただけでは説明がつかないくらい紅潮していた。

彼はその顔色の変化をレッドに悟られないように無意識に歩くペースを上げたのだった。



「—―――――ってあれ……?」



しかしそこで、レガリオは何かを思い出したように立ち止まる。



「そういえば違和感が……消えてない……?」


「あん?」


「そうだ……さっきよりも日は落ちてる。もういい加減魔物たちが騒ぎ出さなきゃおかしいんだ。なのにずっと静かなままなんだよ」


「魔物だぁ?そいつらがなんで日が落ちて騒ぐんだよ」


「何も知らないの……!?」


「エッヘン!」



レッドは誇らしげに胸を張ってみたが、レガリオは視線を逸らしながら頭を抱えてるだけだった。



「夜になると大気中の『魔粒子まりゅうし』が濃くなるだろ?人間はほとんど影響受けないけど……魔物の魔力器官は人の何倍も発達してるから、『魔粒子やられ』にかかるんだ。それで狂暴化する。だから魔物が多い森には夜に近づいちゃいけない。これは常識だよね?」


「まりゅーし……?」


「まさかそれも知らないなんてことは……」


「なんか食いもんの名前か?」


「レッドはもう異世界の人としか考えられないよ……」



レガリオはため息を吐いた後、呆れ顔のまま説明を続けた。



「魔粒子は空気や生き物の体の中……そこら中にいっぱいあって、魔力を生み出したり、伝えたり、魔法に関する全てに係わってくる粒子なんだ。これを媒体にして魔法を発動させて、魔力が魔粒子を伝わることで、魔法を遠くに飛ばすことができる。生物は体内の魔粒子が少なくなったら外から取り込んで回復する。—―――――こんな感じでわかる……?」


「…………分からん!」


「ああ…………なら……魔粒子が魔力を生み出して、魔力が魔法を作るって覚えてくれたら大丈夫だよ。……多分」


「それなら何となくわかったぞ!なるほど……魔力……魔粒子か……」



レッドは手のひらを開いたり閉じたりしながら、ルーツのメンバーが言っていたことを思い出していた。

魔粒子というのは初耳だが、魔力がユークリアにもたらされたのは確実だろう。

そして自分がこの体に囚われているのも、ルーツとしての力が制限されているのもそのせいかもしれない。



「厄介な事してくれたぜ……」


「え?……厄介って……何が――――――ッ!?」



「ギュロロロロロロロロォッ!!!!」


「グォオオオオオオオッ!」「ジャッジャッジャツ!」「バルルルルルルッ!」



突如、けたたましい咆哮と同時に激しい地鳴りが大地を揺らす。

それに呼応するかのように森に生きる者たちの雄たけびが続き、おとなしかった鳥たちもギャアギャアと飛び立ち、辺りは緊張感に包まれた。



「な、なんでッ……!急にッ!それに激しすぎる!」



さらに地鳴りの発生源であろう巨大な何かが、木をなぎ倒してこちらに向かってくる。

大きさだけではなく、蛇のようにズルズルと蠢いているのが遠目でも確認できた。



「りゅ、龍!?いや……蛇……!?なんだよ……!こんな魔物知らない!こんな化け物、森の浅瀬にいるはずない!」


「あれ?あいつさっきのマムシ野郎……」


「ギュルルルルル…………」



唸り声をあげながら姿を現した魔物が首をもたげる。

龍のように逆立った鈍色にびいろの鱗、家屋一つ丸呑みできそうな大きな口と、先が二股に分かれた長い舌。

鋭く輝く黄金の瞳で縦に避けた瞳孔が、ギロリと二人を睨んでいる。



「ギャロオガアアアアアアアアアアアアアッ!!」


「……ッに、逃げてッ!レッド!!僕が囮になる!」


「囮って……ちょっと待てよ。こいつは――――――」



言うが早いか、レガリオは剣を抜いて構えた。

彼はすでにレッドの声が届かないほどに必死で、魔物から目を逸らせずにいた。



「防具も魔道具も無い……僕がやらなきゃ……!せめて時間を稼いでレッドを――――――うぁっ!?」



しかし龍蛇の魔物と目が合った瞬間、レガリオはその場に倒れ伏してしまった。

握りしめていた剣が乾いた音を立てて地面に投げ出される。



「がッ……ハッ……!」


「あん?……っておい!どうした!」



レガリオの異常に気付いたレッドはすぐさま駆け寄って抱き起すが、彼の呼吸は激しく乱れ、全身が痙攣けいれんして身動きができないようだった。



「レガリオ!お前震えっぱなしじゃねーか!えーなら無理すんじゃねーよ!」


「ぐぁッ……!ウッ、……フゥッ!ごめッ……!ウゥッ……!」



そんな状態にもかかわらず彼は焦点の合わない眼をかろうじてレッドに向けて、一生懸命に何かを伝えようとしていた。



「がっ……はぁ!はぁ!……うぁ……ご、ごめっ……ん!あぁっ……守れっ……な、くてっ……!—―――――君ッ、だけでも……フゥッ!逃げッ……ガハッ」


「お前……」


「ギュアララララ……コ゛ォ゛オ゛オ゛オ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!」



爆発音のような魔物の咆哮が後ろから浴びせられる。

周囲の木が何本も折れ、地面もべりべりとめくれあがっていく。

ショックで気絶したレガリオを足元に寝かせ、レッドは魔物の方を振り返った。



「─────……やけに喚くじゃねーか。ご機嫌斜めか?」


「ギュアアアアアァァァ……」



彼女はそのまま短パンのポケットに手を突っ込んで、黄金の瞳と睨み合う。



『—―――――我を前に怯えヌどころかそノ態度……どこマデ不遜なのダ……!』


「おん?お前喋れんのかよ」



魔物は口をほとんど動かさずにレッドの心に直接話しかけてきた。

地の底から響くような重苦しい声だった。



『ナに……?我ノ声が聴こえテいるだト……』


「ああ聴こえるね。なんか珍しいか?」


『ギュロロ……ならバ話は早イ……!我ハこの森ノ王【ディザムダキア】であル!人間ヨ……我ノ縄張りデ無礼を働いタことを心底詫び、こうべを垂れルがいイ!』



ディザムダキアと名乗る魔物は巨大な胴体を少し持ち上げて、心做しか胸を張ったような雰囲気でそう言った。



「無礼?…………あー、さっきお前が俺を食おうとしたときに殴ったことか?」


『ぐガッ……!!お……オのれ小娘……我ノ一生の不覚ヲ掘り起こすカ……ッ』


「いきなりおめーが噛みついてきたのが悪いだろ!えーっと……ガラムマサラ!」


『ディザムダキアだ!ムしか合っテないではないカッ!森デ無防備に横たわル人間を喰らっテ何が悪イ!我ノ魔力探知にモ反応せヌとは気味の悪イ奴ダ……ッ』


「そーかそーか、さっきの一発は優し過ぎたみてーだな。こんなに早く目が覚めちまうとは思わなかったぜ。ダキア」


『ぐぬヌヌヌヌヌ黙れえエエエエエッ!!我ノ名を気安ク省略しおっテ……ッ!!』



一向に改善されないレッドの態度に、魔物は完全に腹を立てていた。



『貴様モそこノ男のようニ地に這いつクばりたいカッ!?人間なド我ノひと睨みデ身動きすラ叶わぬゾ!』


「……レガリオに何かしたのか?」


『ギュロロロッ……ただノ【愚者の末路インセイン・カース】ダ。児戯に等しイ初歩ノ魔法にすぎヌ……。だガ我の邪眼ヲ通せバ……麻痺ノくさびは向こウ数刻、その者ノ自由を奪ウ』



自分に睨まれた者は動けなくなる。

ディザムダキアの口ぶりは、それがこの世界では当然の事だと雄弁に語っていた。



「…………魔法か。魔粒子が魔力をなんたらってやつだろ?」


『—―――――はァあ?なニを当たリ前のことヲ……』


「いいぜダキア……俺にも魔法を使ってみろよ。試してやる」


『ッ!?……どコまでモ生意気ナ……ッ!いいダろウ!そこマで言うなラその身をもっテ思い知レ!!』



ダキアの瞳がカッと光る。

一瞬というのも長すぎる刹那の時間、魔物の眼に浮かび上がった魔法陣から魔力が放たれ、空気中の魔粒子を伝って一直線に飛んでいく。

そのエネルギーがレッドに到達した瞬間—―――――



「…………見えた」



小さな呟きの直後。

彼女の眼前で何かがバチッと破裂し、確かにそこに存在していた魔力の気配が消え失せた。



『………………んン?』



ダキアは眉をひそめずにはいられない。

あまりに手ごたえを感じないからだ。

獲物が【愚者の末路インセイン・カース】にかかった時の、鼓動の乱れや発汗、魔力の揺らぎが見えない。

絶望に沈む心を表すように身体が崩れ落ちることも無い。

ダキアが不審に思っているとき、レッドは確かめるように瞬きしてからいたって普通に口を開いた。



「なるほどな。確かに体の中でなんかビリビリしてんのを感じるぜ」


『なッ!?きサ……貴様……ッ!なゼ平然と喋っテいられルッ!?』


「魔法ってのはこれで終わりか?森の王様よう」


『馬鹿ナ……英雄ト持て囃サれた人間共ヲ幾度も毒牙にカけタ我の邪眼ガ……』



ダキアはズルズル後ずさっていたが、すぐに現実を頭の中から追い出すように首を振る。



『あり得ヌ…………—―――――認めヌぞオッ!!!』


「ギュオオオオオオオオオオオッ!!」



龍としての本来の咆哮をあげたダキアが口を目一杯開くと、それを覆いつくすほど大きな魔法陣が展開された。

まさに今遠くの山に太陽が隠れようとしている薄暗い空の下で、複雑で立体的な紋様が周囲から光の粒を集めて輝いていく。



「綺麗なもんじゃねーか。それはどういう魔法だ?」


『貴様とイう存在ヲ認めルわけニはいかナくなっタ……もハや自身ノ被害モかえりみヌッ!こノ大地もろトも灰燼かいじんト化せェッ!!!』



ちょうど日が沈みきったその瞬間、魔法陣の光もフッと消えた。

急速な光量の変化で辺りが真っ暗になったのもつかの間だった。



「ガロアアアアアアアアアッ!!」



とてつもない光と轟音を発して、腕くらいの太さに圧縮された光線が撃ちだされた。

弾速は言うまでもない。

触れてもいない地面が衝撃で削られ、レッドに向かって通り道が伸びていくようだった。



「しょうがねー奴だなお前……」



…………森に君臨して六百年。

この首を獲らんと数多あまたの挑戦者がやってきた。

少しは骨のある幾人かを除き……それらを蹴散らした。

自分こそ名実ともに森の王。

この森一帯の魔物を統べる者。


そんな君臨者としてのプライドに傷を付けてくれた者が現れた。

数時間前に縄張りで倒れていたこの小娘だ。

偶然に偶然が重なった幸運の一撃で王たる自分の意識を飛ばしたこの女だけは……

跡形もなく消し去らねばならない。


少女の凄惨せいさんな最期を見届け、雪辱が晴らされる瞬間を待っていた。


しかしどうだ。

まさに今消し飛ばされんとするその人間は……不敵な笑みを浮かべていたのだ。



「手加減も楽じゃねーんだぞ」



レッドはまたも小さくぼやき、軽く片手を振り上げる。

一直線に突き進むはずの光弾が進路を真上に変え、あっという間に暗くなった夜空に吸い込まれて行く。



『…………ほェ?』



光が闇の彼方に消えた数秒後。

天に浮かぶ無数の星の輝きは見上げる視界全てを覆う白く眩い大爆発に掻き消えた。

堕ちた太陽が目前に迫っているかと錯覚する明るさだ。


そして遅れてやってくる爆音と衝撃波。

その激しさは音だけで大地が割れ、木々は広範囲にわたって吹き飛ぶほどだった。

すでに半径数百メートルは焦土と化している。

激しい爆風の嵐の中、レッドは右手を軽く上げたまま倒れた少年を守るように一歩も動いていない。



「まぁ花火としちゃ上出来だ」


『ナ…………何ガ……何が起きタ……?』


「確かにこれは可能性にあふれた力なんだろうな……。──────でもよお」


『まサか……ッ!弾キ飛ばシたといウのカッ!?片手デッ……我ノ魔法をッ!?』



掲げた右手で拳を握り、ゆっくりと腕を真横に伸ばす。

上空の爆発によって顔に影が差し、その表情までは分からない。

しかし、真紅の眼睛がんせいだけは煌々と燃え、真っ直ぐに獲物を捕えて離さなかった。



「使い方を間違えちゃいねーか……?ダキア……」



気付けば両腕が瞳と同じ深い赤の輝きを放っていた。

高熱を帯びているのか、腕の周りでは蜃気楼のように空間がゆらゆらと舞っている。

明らかに人間の身体機能の範疇はんちゅうではない。

だが魔力の欠片も感じられず、ダキアは混乱するばかりだった。


いにしえノ大戦時ヨり伝わル我ガ秘奥義ヲ……。貴様ッ……何者ダッ!?』


「何者かと聞かれちゃあ、正直俺にも良く分からねえ。だがレッドって名前だけは……さっき決めてもらったとこだ」


『はァッ!!!?』


「歯ぁ食いしばれ。口開けてたらその舌噛んじまうぜ?」


『ホ……ほザけエエエエエエエッ!!!』


「魔粒子だか何だか知らねーが……こんなことしか出来ねーちからならッ……そんなもん俺がぶっ壊してやる!!」


「ギュラアアアアアッ!!」



ダキアは大急ぎで発動させた二発目の魔弾を発射した。

魔法に思いが乗ったのか、先程よりさらに強烈な勢いで周りを巻き込みながら光が突き進んでいく。



「上等だァッ!」



それに対し、レッドは一足飛びで正面から突っ込んだ。

そのまま光線とぶつかる瞬間に口を開け……



「ふんガブッ!!!」


『ンな二ィッ!?』



噛み砕かれた光弾は口の中で爆散。

歯の隙間から黒煙が噴き出した。



『魔法ヲ……食いチぎっタあァッ!!?』


「ゲホッ!ピュンピュン撃ちやがって!しばらく寝てろッ!」



レッドは一瞬でダキアのふところにもぐりこみ、勢いと体重を乗せたくれないの鉄拳を振りかぶる。



「【アレス・ノート】……」


『マッ……待テッ!我ガ悪かっタッ!話シ合おウでハ無いカッ!!』



ダキアは恥も外聞もなく全身を波打たせ懇願こんがんしたが……

残念ながら聞き入れてはもらえなかった。



『ヤめテ​──────』


「【緋色の爆拳レッド☆ブラスト】オォッ!!!」



ドッッゴォォオオオオオオオオオオオッ!



「ジュガァ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!??」



突き抜ける衝撃波が腹部を覆う鱗を砕く。

もう数百年は傷一つ付けられた覚えのない自慢の鱗が何枚も。



「ガッ……ゴアァ……ギュル……」


「強えー奴が何してもいいってのは気に入らねーんだ」



馬鹿な…………我が……森の王である我が……



『こンな……小娘……ニ……—―――――』



白目をいた巨体が倒れ、大量の土が舞い上がる。

普段以上にざわめいていた魔物たちの声が少し落ち着き、森にいつもの夜が訪れた。

違うとすればあたり一面広がる荒地と、そこにピクピクと伸びる森の王の姿。

草木の消えたひらけた空間に夜風が吹き抜け、やがて土煙が晴れると……空には満月が浮かんでいた。



「自然の摂理とやらに文句言う気はサラサラねーが……」



赤光しゃっこうしていた両腕が優しい月明かりに照らされ、雪のような白さを取り戻す。

レッドは胸の前でこぶしてのひらを受け止めるようにバシッと合わせた。



友達ダチがやられて黙ってるつもりもねーよ!」



………………

…………

……


この夜起きた大爆発をきっかけに各国が動きだし……


後に世界中が大騒ぎする事件の幕開けとなる。

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