ヘビ男に出会った話

こんなことを覚えている。

まだ、私は保育園児で。

毎年、冬には家族でスキー旅行に行っていた。

その年のスキー旅行は北海道で、初めて乗る飛行機に戦々恐々とし、

空港に降り立ってからも、私はとにかく上着の襟元をぐいぐい上へと押し上げて、少しでも冷たい風が肌に当たらないようにと悪戦苦闘していた。

要するに、ウィンタースポーツには向かない寒さ耐性の低い子供だったのである。

(もちろん、寒さ耐性の低さは今も変わっていない。一番嫌いな季節は?と聞かれたら、間違いなく冬と答えるだろう)


降り立った空港で、タクシーを拾うんだか、宿泊予定の宿から送迎のバスでも出ていたか、とにかく私たち家族は車を探して歩いていた。

父は”車を見つける”という目的だけが先行するタイプで、

幼い兄と私と、それから母よりもだいぶ先を歩いていたように思う。

母は幼児二人をまとめて見なければならず、大変だっただろう。


あまり記憶も定かではないのでロータリーと言っていいものやら分からないが、

私たち家族が歩いていたそのロータリーらしき場所の歩行者通路には

壁際に電話ボックスがずらっと並んでいたように思う。


その一番端のボックスを、細身のジーパンをはいた男性が使用していた。

電話ボックスの隊列が目に入った時に、一度男と目が合った。

男はぱさぱさに痛んだ茶色い髪をしていて、厭らしいほどにギラついた眼光と、ニヤニヤとしたある種異様な笑みを口元に浮かべていたことを覚えている。

幼児ながらに、どことなく忌避感を覚えた。


そうして父と母と兄を追いながら、その男が使用している電話ボックスの横を通り過ぎた時だ。

ふと、男に目をやった。

そしてぎょっとした。

電話ボックスの中に、男が電話をしながら立っているのは先ほどと相違なかった。

一つだけ違ったのは、男の首が伸びていたこと。

グネグネと長く伸びていて、電話ボックスの中は男の首で埋まるように

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