第2話 恋

 美咲は渋谷の用意した高級マンションでいつも退屈をしていた。

川辺に逢いたい。今までアクションしたのは男性からであり、美咲は選ぶ側だった。


 連絡先を交換したはいいが、いつ連絡したらいいのかわからない。

「営業だから、昼は大丈夫だよね…」何を送ろうか悩む。

 小一時間悩み「先日はありがとうございました。暑いので気をつけてください」とだけ送る。


 返信がこないかスマートフォンを睨んでいたが、三時間ほどで「こちらこそありがとう」といういささかシンプルすぎる文面だけが送られてきた。

 男性の扱い方がわからない。どうすれば興味を持ってくれるのか。

美咲はベッドの上に大の字になり天井を見つめ考えていたが、やはりわからないものはわからない。

 川辺の妻はどうやって川辺と結婚したのだろう。


 羨ましさと妬みが両立している。美咲は金があり、美しくスタイルが良い。

何よりも川辺の事が好きだ。何が足りないのだろう。


恐らく川辺は家族の事を愛している。

恋と愛の違いはなんだろうか。

 ”恋は向き合う事、愛は同じ方向に歩く事”と渋谷は言っていたがいまいちピンとはこなかった。


「今度、お時間ある時にご飯でも行きませんか」震える手で送ってみると、やはり三時間ほど時間をおいて「時間がある時に連絡します」と返ってきた。

 まるで業務連絡じゃないか。”時間は作るもの”とも渋谷が言っていたが、美咲は川辺のどの位の立ち位置にいるんだろう。


 家族、仕事、その他の下に美咲が立っているのか。

 一番になりたいがなれそうにない。

せめてもう一度抱かれればと強く思う。

あの時は普段より丁寧に接客したが、美咲がリードする形だった。

 川辺から獣のように強く抱かれたい。考え、思い出していたら下半身が疼く。


 出来るだけ川辺に似たホストを探し部屋にデリバリーホストを呼んだ。全身をジェルでマッサージ受けていると「お願いです。入れたいです」と懇願してきたホストから激しく抱かれた。頭の中を川辺で満たしながら。


「これ。チップ」ホストに五万円を握らせて帰らせた。

 欲は治まったが、これでは堪らない。似た人でも川辺ではない。


 渋谷が帰り、裸のままベッドで転がっていると川辺から予想外に連絡がきた。

「いきなりですが、明日はどうでしょうか」飛び起き、即返信する。

「OKです。時間と待ち合わせ場所を教えてください」

 胸が激しく鳴って眠れない。その後夜中に「明日夜九時に池袋駅でどうですか?」とメールがきた。

 もちろんどこであろうが飛んでいく。「かしこまりました」と返信した後ベッドに服を並べ、どれを着ていくか悩んだ。ネイルも美容室もばっちりだ。

 まるで小中学生に戻った感覚がする。これが恋というものか。


「明日デートなの。秘密ね」渋谷が買ってきたシーズー犬に伝えるが犬にはわからないようで首を傾げていた。

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