/// 39.ドワーフトリオ
マイさんとの修行の日々も終わり、800階層まで送り届けられたサイコは、また孤独な戦いを繰り広げ、最下層を目指していく。
気持ちも新たに、やってやりますよ!!!
今日もサイコは両手に光牙(こうが)で狩り進む。一心不乱に狩り進み、お腹が減っては食事をとり、眠くなったら丸まり眠る。そんなことを何日繰り返しただろう。
やっと3000階層を抜けることができた。
ここにきて魔物レベルは階層と近いレベルになっていく。1000階層では1600程だった魔物のレベルも、ここ3001階層では3500レベルの魔物がでてきていた。そいうサイコのレベルは3000レベルを突破していた。
もうあの執事エイルのレベルを超えてしまっていたサイコはそれで満足することはなかった。エイルさんの話ではもっと強い者たちがゴロゴロいる、という話だ。そしてそもそもがあの時みたエイルさんのレベルが本当にあのレベルなのかも疑わしい。もう一つ二つ、偽装の装備品をつけている可能性だってあるのだ。
そんなことを考えたサイコは思わず身震いしてしまった。
その時、通路の曲がり角からの気配にきづき身構えた。危険察知が反応していないため、魔物ではないとは思うのだが、この階層まで潜れる強者の何かがいるのだ、暗殺者である可能性だってあるのだ。
その通路の先から小太りのおじさん、見た目があきらかにドワーフがのそりと歩いてでてきて・・・サイコに気づくと「ぎゃーーー!」と大声を上げそのまま後ろにひっくり返っていた。急いで近づくと白目をむいていたので、どうやら驚きすぎて気を失ったのであろうと結論付けた。
「すみませんーーん」小回復を何度かかけ、体を揺さぶり意識を取り戻してもらおうと声をかける。しばらくすると、ハッと声を上げて目を開くその男。また悲鳴を上げそうになるが両手で口を覆って我慢して、その後ゴクリと唾を飲み込むように喉を鳴らすと、サイコに声を発した。
「に・・・人間でいいんだよな?」
「ええ、まあ」
頬をポリポリと書きながら答えるサイコの言葉にホッと胸をなでおろすその男。
「俺は見ての通りドワーフだ。ここらを根城にして武具作成を究めようと悪戦苦闘している・・・っとここじゃなんだ・・・根城に一旦帰るからついてきてくれ。見たところひとりのようだし、良ければ仲間に合わせてやろう」
そういうとサイコに手招きをして、ササッと忍び足を使って隠れるような動きで通路を移動していく。途中で魔物と遭遇すると身を隠していたので、サイコはサクッと狩り殺した。それをみてジンと名乗った男は汗をたらりとこぼし目を丸くしていた。
「俺はサイコといいます。最深部を目差しているソロ冒険者です。よろしく」
魔物を狩ったついでとばかりに、タイミングを逃しできていなかった自己紹介を済ます。
「おお、俺はジンだ。お前さん・・・ここまで実力が伴って潜ってきてたんだな。てっきり俺らと同じ隠密なんかで到達したとばっかり思っていた。なんせここらに100年以上潜伏してるが誰にも合ったためしはねーしな」
そういうとサイコを誘導しながら、今度は少し大胆な足運びで道を急いだ。
ジンさん・・・ってかあなた、日本人ですよね・・・
+山上仁(やまがみじん)
種族 ドワーフ族 / 年齢 126 / 性別 ♂
LV 10m
力 155
守 95
知 85
速 102
スキル 詳細鑑定(999) 言語疎通(999999) 肉体強化(456658) 無限収納 調合(658991) 鍛冶(66492) 酒造(302456) 隠密(658921)
魔法 爆炎(265489)
加護 鍛冶神の加護(真)
鑑定結果に明らかに日本人の名前が表示されていることに驚く。そして黙って連れてこられた突き当りに到着した。そしてその一角を指さし「ここは何もないので・・・おーい帰ったよー」と少し大きな声で声を上げると、このスペースにめり込むように体を進めるとそのまま消えてしまった。
「おお」と驚きの声を上げるが、慌てて続いてそのスペースに頭を差し込んだ・・・するりと頭は壁をすりぬけ視界には岩壁につつまれた広い部屋、鍛冶場の作業場のような設備が見えた。そのまま体も室内に入ると、二人の女性、小さくふくよかな女性がこちらを窺(うかが)っていた。
「いやーこの人すげー強いんだよ。さっきキラーパンサー瞬殺してたわ!サイコさん、こっちがリンでこっちがミーコ」
そういって二人の紹介をする・・・ああ、結城凛子(ゆうきりんこ)に夜月神子(よるつきみこ)か・・・「よろしく」と手短に挨拶をする二人を視ながらこちらもと挨拶をする。
「あの・・・サイコ、天武最強(テンブサイコ)といいます。どうぞよろしく」
そういってお辞儀をした。
「な・・・なんだよ!同郷かよ!ってか若いな!人族か?あっ18か、なんでこっちにきたんだ?俺らと同じ事故か?」
三人が近くに食い入るように近づいてきて質問を投げかけてきた。
「俺の場合は老衰です。90過ぎまで生きました。ここへはつい3か月ぐらいになると思います。最深部目指して進んでいる最中です」
簡潔にまとめたサイコに「おお」とうなる一同。そしておもむろにそれぞれが自己紹介などを始める。
三人でいった高校の卒業旅行で亡くなった際に転生。やってたゲームの影響で鍛冶をやりたくて三人でドワーフとして転生したという。さらには転生先の人の話もよく聞かず、鍛冶やりたさに遺跡なら素材ががっぽりと手に入るという言葉だけて強硬潜伏。転生時に願った隠密スキルを駆使して三人で下へ下へと下って行ったという。100年ほどかけて徐々に階層を進めていって、たまに転がっているという純度の高い素材を拾ってはつるはしなどを作って熟練度を上げていったとか。
今ではそのつるはしで壁を壊しながら、この階層を削ってこの作業場を作ったとのこと。通常は遺跡内の壁が崩れると一定期間で補修されるのだが、凛子さんのコーティングというスキルで保護すると戻らなくなるらしくて少しづつ部屋を拡張していったとのこと。コーティングは武具の強化にも使えるようだった。
ちなみにさっきの入り口については、神子(みこ)さんが幻影というスキルでごまかしているらしい。話を聞いている間にサイコにもスキルが発現したので、機会があれば試してみようと思う。
ぴろん!ぴろん!ぴろん!
『爆炎魔法ヲ習得シマシタ』
『コーティング魔法ヲ習得シマシタ』
『幻影魔法ヲ習得シマシタ』
ひさびさの新たな発現に「そういえば、マイさんの増殖とか捕獲は発現しなかったな」とふいに思った。やはり魔物専用のものもあるようだ。
そして、女性陣二人がそろって妊娠中と照れながら話す仁(じん)に若干の殺意を覚えたのは内緒だ。そして、さらに照れながらもう名前は決まっていると言い出した三人にストップをかける。何かまずい気がしたのだ。なぜか名前はもういっぱいいっぱいなのだと感じた。きっと何らかの何かがあるのであろう。
話はあらかた終わり、三人が自慢の逸品を見せると息まいていた。嫌な予感は止まらないがとりあえずは奇跡が起きている可能性にかけ、拝見することにした。そして。大事そうに手にした一振りの長剣について語り始める三人。
仁(じん)の爆炎で焼き上げながら凛子(りんこ)と神子(みこ)も加わり三人で魂を込めて打ち上げ、仕上げにはコーティングを何十にも重ね掛けしていくことで3年を費やした会心のできらしい・・・刀身が青白く光を放っており、かなりの業物といってもおかしくないであろう・・・この異世界でなければ・・・
攻撃力は倍加され、なんと驚異の攻撃力は30m・・・これは覚醒後で攻撃力30が付くという意味なのだろう・・・初めて覚醒後の武器ともいえるものを見て「ほぉ」と思わず声がでてしまった。この世界の高名なドワーフでも打てないレベルということがわかった。、街のドワーフ、シーザスから聞いた話が本当であれば、ここにあるのは最強の剣といっても過言ではない・・・のだけどなーー。
「すごいものですね・・・」
かろうじてサイコからひねり出された感想はこれである。
「そうだろそうだろ!そこでな、やっぱり武器は使ってなんぼだ!見たところサイコは徒手空拳、何もつかっていないようだからぜひこれを使ってほしいんだよね!」
そう言うとその自慢の逸品を差し出してくる仁(じん)・・・どうしたものか・・・
「いえいえ、そんな大事なもの頂けません!」「いや受け取ってくれ!おそらく転生チートでお前が一番この世界では強くなれそうだ!」「いやいや、私より強い人はいるんですよ本当に」「大丈夫大丈夫!何も見返りなんて求めてないから!」「いやでも・・・」「頼むから貰ってくれよーー;これで魔物をすっぱりと切り裂く様を見せてくれるだけでいいからさーー」
押し問答の末、仁(じん)に泣かれてしまったサイコ。後ろにいる妊婦二人も涙目でこちらを見ている。これに購えるものが居るだろうか・・・いやいない!
そしてゆっくりと、できるだけ胎教にも優しくあるように(絶対無理)言葉を選んで話し始めた。
「あのーですね。ゆっくりと話を聞いてください」
ひとまず長剣を受け取ったサイコは語り始めた。
「この外にいる魔物を鑑定はしたころはありますよね?」
「ああ、何度も見ている。おかげで詳細鑑定というものまで進化した!これも転生チートのおかげだろう!見たところサイコもそうなんだろ!」
「は・・・はい。それで、魔物のレベルの部分にmが付いているのは分かりますか?」
「ああ、それは分かる。俺らも来た時はレベル300程度だったが、9999まで上げた後にいつの間にか1mになってたからな。ランクが上がったみたいなもんだろ?サイコはランクアップ後でさらに凄いレベルになってるし・・・」
サイコの説明に仁(じん)が返し、嫁達もうなずく。
「で、ですね。ここらの敵のレベルが3500前後、で守備力でいったら30000前後が平均のようです・・・そこに30という攻撃をしかけたらどうなるでしょう・・・」
恐る恐る、最後まで言ってしまったサイコは薄目を開けて三人の反応をまった。
しばらくの沈黙の後、すすり泣く二人の声と、「大丈夫だ。逆に今気づいたのはラッキーだ」といった仁(じん)の慰めの声が聞こえた・・・
「なんか・・・すんません・・・」
あー逃げたい。早くここから消え去りたい!!!という思いでいっぱいになってしまったこの重苦しい空気の中、サイコは意を決してしゃべり始めた。
「三人が悪いんじゃないんです!」
そしてまくしたてるように、この世界にやってきて体験したこと、ジパングという村があること、同じように悩んでいる転生者たちがいること、すべての元凶はクソ女神であることを伝えた。
あまりの勢いに三人の目が丸くなり、そして笑い始めた。
「あーーーもう!なんか私、逆にすっきりしたわ!」
「じんくん。一旦ここ出て街でのんびりしてみない?」
「そうだな。まずは二人の出産が終わるまではもどってみるか?」
その三人の泣き笑いの声をきいて、サイコは大きなため息を吐いて安堵するのだった。
+ドワーフトリオ
山上、結城、夜月の三人でいった高校の卒業旅行で亡くなった際に転生
やってたゲームの影響で鍛冶をやりたくて三人でドワーフとして転生
周りの話をほとんど聞くことなく良い素材があると遺跡にこもる。
+山上仁(やまがみじん)
種族 ドワーフ族 / 年齢 126 / 性別 ♂
心優しきドワーフの鍛冶職人 結城、夜月は嫁
+結城凛子(ゆうきりんこ)
種族 ドワーフ族 / 年齢 126 / 性別 ♀
勝気な性格の鍛冶職人 現在妊娠中
+夜月神子(よるつきみこ)
種族 ドワーフ族 / 年齢 126 / 性別 ♀
おとなしくもしっかりとした性格の鍛冶職人 現在妊娠中
現在のサイコ
種族 人族 / 年齢 18 / 性別 ♂
LV 3006m
力 42056
守 17958
知 28645
速 56810
スキル 詳細鑑定(999) 言語疎通(999999) 肉体強化(256189) 魔力増強(26311) 料理(39225) 精神耐性(48625) 無限収納 調合(5) 並行処理(126598) 鍛冶(758) 酒造(5) 精密動作(81224) 危険察知(526891) 超回復(2103)
魔法 転移(102) 浮遊(398) 治癒(36507) ウィンド(22689) 浄化(1982) ウォーター(1268) ウォーム(146) 光刃(こうが)(999999) 爆炎(1) コーティング(1) 幻影(1)
加護 女神の加護(真)
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