/// 35.モンスターハウスで特訓

ヒリヒリした遺跡探索中に、囲まれた魔物を倒し油断したすきに触手に拉致られてしまったサイコ。頬りだされた先は巨大なイカが待ち受ける魔物の巣窟であった。


どうしてこうなった・・・



サイコはもうすでに1時間以上もギリギリの戦いを続けている。見渡す限りの魔物の中には、サイコがまだ見たことのない魔物も相当数存在していた。神経を研ぎ澄ませて次々と魔物たちを葬っていく。その間も次々と別の触手が新しい魔物を引きずってはこの部屋内に放り投げられていく。


かなりの披露がたまり、集中力も切れかけてきたころ、サイコはその腹を触手にがしりと捕まれ宙に浮いた。危険察知についてはずっとなり続けている状態でもはや役には立っていない状態での奇襲であった。


その触手はサイコを巻き取るとその口に一気に放り込み・・・とはならずその顔を前で動きをとめた。


+マイカズシー

種族 クラーケン族 / 年齢 258 / 性別 ♀

LV 649m

力 9942

守 6428

知 1167

速 3469

スキル 詳細鑑定(999) 増殖(999999) 捕獲(999999)


目の前のイカがクラーケンという種族らしいことがわかる。この表示であれば魔物ではないのか・・・ステータスの高さからすでに逃げることを諦めてしまったサイコだが、ほかの魔物の時とは違いすぐには口に放り込まれないことに若干混乱していた。


「あ・・・あのーマイカズシーさんでよかったでしょうか?」


恐る恐る話しかけてみる。というか改めて確認した名前がすごいな。これも言語疎通を使った女神の嫌がらせなのだとしたら相当なものだと感じていた。何が相当かは知らないが。


『あ!私と言葉が通じるってことは、魔物ではないのね?』


脳に響くような言葉に激しく動揺するが、意思の疎通ができそうとうことに少しだけ安堵した。


「はい!この遺跡の最下層を目指して探索をしている冒険者!サイコといいます!」


つい面接の時の夢は大きくはっきりと!といったマニュアルのような自己紹介をしてしまうサイコに内心何をやってるんだと恥ずかしくなってきて若干赤面してしまう。


『ふふっ良い笑顔!イケメンさんね。ここは私のマイホーム。近場から食事を捕獲してひっそりと生活しているの。間違って捕まえちゃったのね。ごめんね。サイコちゃん』


「そうなんですねー」と言いながら、その捕獲された食事たちを見てみると、レベル800台もちらほら見受けられる・・・これどこまで階層もまたいで捕獲していっているのだろうと気になってしまう。


『あっごめんね。私あまり人族の人にあったことないから。この体制ってちょっと失礼だったかも?』


そう明るい声で話す彼女は、サイコをそっと横の地面に置いた。


「あっ、ありがとうございます。失礼なんてそんな・・・それより私の方こそ、マイカズシーさんにやさしく包んでいただいたのでケガもなく・・・」


得意の話術で好印象を狙っているサイコも、状況が状況だけにかなりおかしな返答になってしまった。


『あらーやさしいのね。あっ食べる?』


そういうと余っていた触手を伸ばすと、三つ目オーガがサイコの目の前に差し出された・・・困る・・・


「い、いやー私は自前の食料があるので・・・」


急いで無限収納からサンドイッチを取り出すと、顔の横に掲げてきらりと光る歯を見せて笑う。


『へー。ちょっとおいしそう?』


「大量にあるので食べますか?」


マイカズシーの首を傾(かし)げた言葉に反応してさらにサンドイッチを取り出すと差し出してみた。


『わーい』という言葉と共に口に放り込む。つかんでいた三つ目オーガはポイッと下に放り投げられていた。


『おいしー!でもちょっと量がすくないかな?ふふふ。ありがとねーサイコちゃん・・・で、どうしてこの辺りにいたの?』


「あー、ちょっと用事がありまして、最下層まで潜りたいなと修行している身です」


『へーでもそのレベルだときつくない?最下層ってレベル8000台ぐらいだし?』


「そうなのですね・・・でも幸いレベルの上りが早い方なので毎日強くなっている実感を感じながら進んでいます。まあマイカズシーさんにはかないませんが・・・」


『そうだね、加護も真化してるし成長早そー』


マイカズシーの言葉におどろくサイコ。


「すみません。加護の真化ってなんなのでしょうか?分かっていないので・・・」


『あ、真化ってね。本来の加護の力は発揮されるようになること、大抵は加護をくれた相手を思う強い気持ちに反応して真化するんだよ?女神の加護は各能力のアップと成長促進。だからどんどんレベル上がりそう?』


(最近のレベルアップの速さは加護のおかげだったのか・・・強い思いって恨み辛(つら)みにも該当するのかな・・・)


そんなことを考え、うんうんと納得するサイコ。


『じゃあサイコちゃんかわいいから手伝ってあげる。下のやつジャンジャン倒していっていいよ!私も次々捕獲していくから!』


予想外だがありがたい言葉に「いいんですか?」と返したサイコだった。下のはすべて食料というわけでもないのかな?そんな思いもあっての返答だったのだが、その返答を待たずして触手が激しく動きだし、次々とレベル500台の魔物が引きずり込まれては下に投げ入れられていた。


『この辺なら狩れるよねー危なくなったら助けに入るし?』


そう言われて下を覗くと、魔物たちの方もジッとサイコを凝視していた。目が怖い・・・


・・・とは言え、訓練所より濃密な訓練ができそうなことに良いことだ!と頭を切り替え、エイルさんに切りかかる勢いで覚悟を決めて下に飛び込んだ。


飛び降りたサイコに群がってくる魔物の群れをウィンドで押し潰しながら光牙(こうが)で蹂躙していく。神経を研ぎ澄ませて一つ一つを正確に、素早く、心を冷静に保ち狩り進めていく。終わらない戦い。サイコが狩る速度に追随するぐらいのペースでポイポイと投げ込まれては尻餅をつく魔物を狩り殺していく。なんと効率の良い事よ。


しばらく狩り続けると徐々に落ちてくる魔物のレベルが上がってくる。ナニコレ自動レベルアップ増強マシン?便利すぎ!最初はそんな感じで若干楽しくもあった。だが、それも2時間ほど経過すると、そろそろ辛(つら)くなってきた。ずっと動きっぱなしになっている。ステータス補正のためが体は一切疲れないのだが、徐々に心がすり減って壊れていくような気がするのだ。そこは精神耐性が仕事をしてくれているため、実際に心が壊れることはないのだろう・・・逆に言うと壊れないだけで何とも言えない不快感がずっと続くのだ。


周りの魔物がレベル800台をが中心となったところで、限界を感じたサイコはマイカズシーのいる崖の上へ飛んだ。


本当はお礼なんかも交えて言葉を伝えたいところだが、とりあえずは心の平静を保つために両手両膝をついてうなだれ、深いため息をついた。


『すごーい!あんなにバシバシ殺れるもんなんだねーかっこいい!惚れちゃうー?』


「ははは・・・どうも・・・」


褒められたのは良いとして、ふと疑問に思うことがある。マイカズシーさんはレベルが649。でもホイホイと落とされたのは800を超えていた・・・どうあっても格上なのになぜそんなに格上相手を捕獲していけるのであろう。


「あ、あのーマイカズシーさんは格上相手もバンバンこちらに投げ入れてましたが、返り討ちに合うことはないのでしょうか?」


『あっ、マイでいいよー。あとねー捕獲スキルだと相当格上じゃないと捕まえた瞬間から相手の攻撃無効化できるのー。たまーに捕獲前に切られちゃったりするけど?』


なるほど、ある意味チートな能力だ。


「そうなんですね。すごい能力ですね」


『えへへ。サイコちゃんだってもう少しでレベル800だし、そろそろ私も捕まえられなくなっちゃうかな?』


「いえいえ。全部マイカズシーさん、マイさん?のおかげですよ」


『ふふふふ。もうちょっと下の方からも捕獲できるから1200台ぐらいの瞬殺できるようになるまで、しばらく一緒に住んじゃう?私が捕獲できるのこの辺が限界だし・・・えへへへ』


「あ・・・もしマイ、さんが良ければ・・・お願いします!」


若干頬を赤らめているピンクな巨大イカに困惑しつつもこればチャンスと乗っかっていったサイコ。


『うふふ。同棲生活?』


「は、はは」


俺?別の意味でも食われないよね?そんなことが頭によぎったが忘れることにした。


そして夜も更け、それぞれが食事をとったら壁際で丸まって寝ようと思ったのだが、さりげなく巻き付かれた触手で抱き寄せられ、頬寄せ合って寝ることをさらっと強要されたサイコだった。


(寝ぼけて口の中に放り込まれたらどうしよう・・・)


そうして今日が明けていく。


どうしてこうなった・・・



現在のサイコ

種族 人族 / 年齢 18 / 性別 ♂

LV 774m

力 11036

守 3498

知 7135

速 12640

スキル 詳細鑑定(999) 言語疎通(999999) 肉体強化(74682) 魔力増強(5917) 料理(39165) 精神耐性(20336) 無限収納 調合(5) 並行処理(25948) 鍛冶(758) 酒造(5) 精密動作(24009) 危険察知(128408) 超回復(582)

魔法 転移(102) 浮遊(159) 治癒(4682) ウィンド(5489) 浄化(1025) ウォーター(718) ウォーム(81) 光刃(こうが)(259815)

加護 女神の加護(真)

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