/// 34.遺跡に引きこもり

遂に目標額を大きく超えて貯金もたまったサイコは、食堂バイトにも別れをつげ、いよいよ遺跡最下層を目指して本格的に引きこもる。


やってやりますよ!!!



少し遅めに起きたサイコは、食堂で朝食をとる。朝食に合流した赤い盾の面々と談笑をしながらの楽しいひと時をすごした。出発前にはウィンが一緒に行くと駄々をこねたが、もちろん足手まといになることは明らかで本人も分かっているウィン。しかしご老体が寝っ転がって足をバタバタさせる様(さま)は中々の狂気をはらんでいるなと感じたサイコだった。


ポータルで131階へ進むと、340台の魔物なのでサクサクと狩り進める。一気に150階層まで進んで380台の魔物に囲まれるとそろそろやばさを感じできた。


緊張感のある戦闘で危険察知などの熟練度がどんどんたまり、魔物の攻撃も直感のようなものが働いで何となくでかわし続けることも多々あった。ここまでガーゴイルやリザードマン、〇〇スネークといったファンタジーおなじみの魔物の群れを倒したり、うねうねしたなんたらウォームやら、バッタ?蛾?蜘蛛?といった大型昆虫シリーズてきな魔物等々・・・気持ち悪いのも多くて精神的にきつい。それでもなんとか格上相手の戦闘を続けるため、上がるレベルに合わせて進んでいった。


夜になれば袋小路のような通路を見つけては、胡坐(あぐら)をかいたり横に猫のように丸まったりと眠りながらも、魔物が近づけばもう危険察知が良い仕事をしてくれうようだ。ちょっとでも物音がしたら目がさえてしまう。そんな緊張感を感じながらの遺跡生活であった。もちろんポータルがあるのだから毎日帰ってもよいのだが、今はとにかくこの遺跡の中の空気に埋もれ没頭してみたかった。




サイコは今日も狩りを続ける。遺跡にこもって1週間ほどたった夕方、現在サイコは255階で戦っていた。


ここまではかなり順調に進んでいる。途中あのスレイス嬢が、対抗心むき出して近くで狩りを始めてはどや顔を見せつけてきたが、彼女のレベルは依然よりは上がっているが200ほど。何度か周りを囲まれた彼女を助けていたがそろそろもう限界であろうと感じ、周りの魔物を一層し彼女の安全を確保した後、「そろそろ戻った方が良いですよ」と忠告しておいた。彼女は真っ赤な顔をして何やら叫んでいたようだったが、怖いので早々に逃げた。マウントが取れなくなってきてイラついていたのだろう。女の嫉妬こわい・・・


その後も順調にすすんでいたのだが、サイコは今、500前後の三つ目オーガとデカイ蝙蝠の群れに囲まれ若干のピンチになっていた。


サイコのレベルは450となっていたが、格上多数に囲まれた状態で軽い命の危機を感じていたのだ。とはいえ、今までもこのぐらいのヒリヒリ感を感じるとこも少なくない階層で常に戦っていた。ここ階で共存しているのか、三つ目オーガがブンブン腕を振り回し、躱すサイコの頭めがけてタイミングよく蝙蝠が飛び込んでくるという連携にかなり苦しい戦闘を行っている。


何度か全方向へのウィンドを連発しながら、少しづつ三つ目オーガの数を減らしていった。


時間にして数十分。途中で何度かさらなる来訪を受けていたがやっとすべてを倒しきることができた。そしてほっと一息ため息をついた・・・次の瞬間、危険察知が反応したのでその場を全力で飛び離れた・・・のだが、抵抗むなしくサイコの左足が何者かに絡め取られたため、バランスを保てず横倒しに地面に体を打ち付けた。


サイコの視界にうつった左足には、タコ?イカ?のような吸盤がびっしりとついたピンクの触手だった・・・


すぐさま触手にむかって光牙(こうが)を叩きつけたり足を引っこ抜こうとしたのだが、まったくびくともしない状態であった。そしてそのまま一気に触手に力がこめられ、曲がりくねった遺跡内の通路をジェットコースターのように猛スピードで引きずられていった。遺跡内にサイコの絶叫がこだまする。


かなりの距離をひきずられると、途中でもう一本の触手が複数の魔物を同じようにからめとって引きずっているのが見える。というか1匹見たことのない夜叉のようなロン毛のオーガがいるんだが・・・すっかり抵抗をあきらめ、その行く末を注意深く見守る。


(あーーそういえば安堵した時が一番危険だったっけな。エイルさんにまた怒られそうだ)


そんなことを思っていたら急にその触手がサイコをはなれ、そして自分の体が宙に浮いて投げ出された。


ふいに投げ出されたサイコは地面に打ち付けられ・・・てはいない。落ちた先は柔らかな感触の、魔物の群れの上であった。


素早く体制をととのえ、空いている地面を探して着地する。見渡せば10メートル四方ほどの岩壁に囲まれた部屋だった。そして周りには無数の魔物、さらには岩壁の上、その一角にピンクのイカ・・・サイコを攫ってきた触手の持ち主である大きなイカが、他の触手で攫われていた魔物の一匹がその口にほ織り込まれ、残りの魔物は同じようにこの下のスペースに投げ出されていた・・・


サイコは、周りの魔物たちの動向に気を付けつつ、岩壁上の咀嚼中の巨大なイカをただただ見守るのだった・・・

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