/// 31.帰路は一瞬そして日常へ
なんやかんやと有ったものの、カトレアお嬢様を学園まで送り届ける依頼は無事達成した。
やってやりました!!!ということでいいのでは?
学園前に馬車が止まると、それぞれの馬車から全員が降りる。
「サイコ様ーー!」
旅で仲良くなったフレデリカお嬢様が抱き着いてくる。微笑(ほほえ)ましいのだが、ただそれだけである。抱き着いた時に膨らみがボヨンとならない内はデレないサイコである。
「お世話になりました。またお休みの時にでも会いたいです!」
そう言われたサイコは社交辞令を発動して「そうですね」と精いっぱいのイケメンスマイルを発動する。そしてカトレアお嬢様からは「ロリコン死ね!」というお言葉を頂いたので、ため息が漏れる。
「じゃあねーレアちゃんもまた後で―!」と元気よく執事ホドニ―と学園の門をくぐっていく二人を見送ると、執事エイルの「お疲れさまでした。では一旦もどりましょうか」という言葉と共に、2台の馬車消えたと思ったら自分の視界が一瞬まぶしい光に包まれ、少しだけ見慣れたオリベイル家の中庭に立っていた。周りにはお嬢様と執事エイル、赤い盾の3人だけ。一瞬でこの旅を無にしてしまう集団転移である。
「じゃあまた休みの時にはお願いするわね!サイコはそれまで必死で頑張るのね!」
お嬢様のそんな声と共に、執事エイルとカトレアお嬢様は消えてしまった。なんとも素っ気ない幕切れだが、これでで依頼がすべて終了したこととなる。
「よし!ではギルドに戻って報酬貰って、久々の我が家に戻るか!」
アレクがそう告げると「じゃあわしが!」といって転移を発動する。気づけば今度はギルド前であった。まったくこの世界は便利すぎてつらい・・・
カトレアお嬢様にしても、長旅を終えたら一度スタート地点に戻ってからまたゴールの学園に戻り、あの馬車の旅で感じたことなどをレポートとして書き上げる。それを2~3日後には始まる授業に提出するというから、まったくの無駄。不毛だ・・・まあ旅の経験ということについては無駄ではないのだが、それはあくまで自分が体験した場合であろうに。ほぼ見ていただけのお嬢様の経験はなんの意味があるのか・・・理解に苦しむ。
ともあれ、それで結構な額の報酬を貰えるのだから文句をいっても仕方がないかと、アレクたちについてギルドに入る。その後は問題なく報酬をいただく。サイコが受け取った額は、金貨30枚から前金の5枚を引いた25枚の予定だったはずなのだが、10枚上乗せされて35枚になっていた。日本円に直せば35万である。闇の森とそのあとのフレデリカお嬢様が護衛対象として増えたからということなのだろうか。
その後は、アレクさんたちが『お疲れ会』をしよう、という話にもなったが道中の疲れもあって一人戻ることにした。肉体的には超回復があるので全開ではあったが、どうも精神的なつかれについては回復していないようだった。ひさしぶりの部屋に戻ってシャワーを浴びると、無限収納からとりだした作り置きのサンドイッチを胃の中に流し込んでから、疲れた体をベットに横たえ死んだように爆睡する。しっかりと心を休め、明日は早くから食堂のバイトに出なくてはいけない・・・本当は今回の依頼報酬で数か月は何もせずとも生活できるのであるが、先の見通しがどうなるかわからない中で、安定報酬をなくすということに一抹の不安があった。早く遺跡で確実に生活できるよう一本化しなくては・・・
この旅でエイルさんに鍛えられたおかげで熟練度がかなり伸びた。ステータスは上がっていないのにスキル発動時の動きが良いのが自分でもわかる。それと加護欄の女神の加護に『(真)』がついている。この変化の意味は分からないがなんらかの能力があるにちがいない。
・・・あのクソ女神の加護か・・・あまり気持ちの良いものではないのだが、強くなれるのであれば多少の恨みは飲み込んで、その力で絶対殴りに行ってやる!まずは一気に行けるところまで行って、どのぐらい稼げるか試してみよう。まずはそれからだ!そんな思いの中、眠りにつくサイコだった。
結局、次の日は10時ぐらいに目が覚め大遅刻の中で食堂に走るが、そもそも食堂に戻ってきたことを伝え忘れていたため、本日はお休み。明日からしっかりと働くことを伝える。時間を持て余すことになったサイコは、折角なのでこのまま遺跡を初体験することを決めた。2週間もお預けとくらっていたのだ。どこまでやれるかワクワクが止まらない。
やってやりますよ!!!
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