/// 21.まじめに修行を始めよう

転生者たちの集落、ジパングを訪ねたサイコは、このハードモードな世界に転生させられた理由が自分にあることを知る。しかしこのまま平々凡々な異世界ライフを送るつもりは毛頭ない。きっといつかという思いを胸にできることを探すサイコだった。


やってやりますよ!!!




とりあえずサイコは現状の低レベルを早急に解決しなくては話にならないことを再認識する。そして熟練度という数値も上げるための裏技的なものもわかった。鍛冶の際に行った単純作業の繰り返しでドンドン上がっていくということは間違いないであろう。そしてやはりレベルを上げるのであれば、訓練所というものが準備されているのだから利用しない手はない。こっちの世界ではどうも必死に何かに打ち込むっていう意識が低いようだし、俺のように熟練度を死ぬ思いで上げるっていうこともないようなので、異世界基準で言えば周回遅れのような現状を打破するのはそこまで難しくはないだろうというのがサイコの予想だった。


時間は午後になったばかり。食堂で軽くお腹を満たすと、さっそく訓練所に話を聞きに行く。カウンターの右の扉を開けるとそこは階段が続いていた。階段を降りると小さなカウンターの前にはがっちりむっちりな筋肉とグレーのタンクトップな厳つい角刈り男が待っていた。こちらを見るとニカッと笑い白い歯がまぶしい。


「よく来たな!ここはギルドがレベル100までは全面バックアップでお任せな訓練所だ!今日は俺、硬派なマッチョ野郎、タイマンが受付だ!初めて見る顔だな!俺に知らないことはない!何でも聞いてくれ!」


「はじめまして!サイコといいます。少し前にこの街にきて、初めてここに降りてきたので色々教えていただければと思います」


「そうか!なかなか礼儀正しいじゃないか!そして俺の新規さん用テンプレ説明口調に一切反応なしな奴は久々だ!」


(そうか・・・あれはテンプレネタだったのか。どうりでわざとらしい言い回しなはずだ・・・)

そう思ったサイコだが、ここは最初が肝心。色々教えてもらいながら効率よくレベルがあげられるよう便宜を図ってもらわねば・・・


「見ての通り田舎者の世間知らずなので、つい最近、覚醒したばかりなんです。でも頑張って遺跡に潜れるようになりたいのでよろしくお願いいたします」


「そうかそうか!じゃあ簡単に説明だ!この後ろの大きな扉をくぐると広間に出る。そこは木枠と結界で3つに分かれているからそうだな・・・まずは一番左のエリアにはいってくれ。スライムが沸いてくるから倒していってくれ!・・・もちろん、無理そうなら各エリアのサポート担当が助けたりする。まだまだいけるって時も沸き具合とか調整できるから行ってくれ!」


説明中に何やらこちらを覗かれているような感覚があったので、鑑定されて能力にあった説明がされているのだろう。こういう感覚だったのか。覗かれているというのは。


「左から1階層のスライム、3階層のゴブリン、10階層のオークが出てくるから慣れるまでは無理するんじゃないぞ!ある程度狩ったら魔石を拾ってこちらまで提出するまでが簡単な流れだ。その他、質問はないか?」


そう言い終わると、タイマンはサムズアップでこちらに白い歯を見せていた・・・まぶしい・・・


「あの・・・3つしかないということは予約などはする感じなのでしょうか?」」


「ああ、被った時には適度に離れてやるぐらいの配慮でいいぞ!お昼前の数時間はそれなりに使うやつもいるが、それ以外はそんなにかぶったりはしないがな。そもそもがあまり利用者がいるわけではないんだ。今もレベル上げに励んでいるのは10名程度だ。そいつらも昼前が多いな!」


「そうなのですね。ありがとうございます。では試しに少しだけチャレンジしてもいいですか?」


「もちろんだ!無理するなよ!」


再度のサムズアップに「はい!」と返事をして同じようにサムズアップを返してから扉をくぐる。その広い空間の手前には休憩所のようなテーブルがあり、二人ほど厳つい男たちがエールと思われるジョッキを掲げて談笑していたが、入ってきたサイコに気づくとまたも覗かれている視線を感じるもそのうち一人がこちらに向かって歩いてきた。


「よお、お前最近来た食堂で働いている奴だよな。確かウィンじいにかわいがられてる・・・」


「あっはい。食堂で雇っていただきましたしウィンさんにはすごくお世話になってます」


「だよなー!俺はチリチーリ!よろしくなー!そしてあっちはツンデレ―、見てわかると思うがエルフ族だ!」


自己紹介ついでに同僚を紹介するチリチーリにその声を受けてこちらを見るもすぐにツンと顔を背けたツンデレ―。もしかしたら言語疎通が相手の性格を読み取って名前の返還についても仕事をしているのでは・・・と思ってしまう。そしてチリチーリは俺の背中をバシバシ叩きながら「俺が担当してやる頑張れよ」という声と共に一番左の部屋へと誘導された。そしてひっかける金具とがま口のような開閉する口がついた小さな袋を手渡され腰につけるように言われた。これに魔石を拾い集めるらしい。


「まずは試しだ。そこにいろよ!」


左のエリアの中央へ誘導されたサイコにむかってチリチーリは声をかける。そしてなにやら遺跡とつながっているであろう小さな穴?のような空間のある側の壁側の右端の装置を操作すると横の椅子に座った。穴の中から一匹のスライムが出現。そのまま中央のサイコに向かって動き出していた。少しだけ焦るも事前にそのことは聞いていたので冷静を保つように心を落ち着けると、鑑定を使って戦うべき相手を見定めた。



スライムA

種族 魔物

LV 1m

力 1

守 1

知 1

速 2



うん。今の俺なら少しだけ勝ってるな・・・スライムに勝ってるとか・・・そんなことを思う日がくるとはな。とは言え気は抜けない。イメージはアレクさんの手刀だ。スライムなら角熊と違って柔らかいだろう。まあステータスを見たら実際そうなのだが・・・そして地面をけり走り出すと肉体強化が発動し一気にスライムの目の前に移動した。自分でもびっくりしつつも手に力を込め振りぬこうとすると、可視化できるほどの白く短い刃が右手を覆うと、スライムにかなりの傷をつけるk十ができたが、身の危険を感じて視線の端に緊急避難とばかりに転移した。


ぴろん!ぴろん!

『スキル危険察知ヲ習得シマシタ』

『光刃(こうが)魔法ヲ習得シマシタ』


予想通り、スライムは死んではおらず、半身を切り広げられた状態でこちらに向かって液状の何かを飛ばしてきた。危なげなく避けると地面を濡らし、少しだけジュっと音がする。どうやら酸のようなものみたいだが、それほど強力なものではないようだ。そしてサイコはこの戦闘中、実はスライムに向かって鑑定を使い続けている。詳細鑑定というものがなければ熟練度が見れない、というのはウィンさんに教わっていた。だから少しでも早く習得しようと鑑定を使い続けるには、魔物が丁度よかったのだ。まあ、ウィンさんなら事情を説明したら喜んで鑑定させてくれそうだけど・・・


そんなことを考えながら、安全に避けながらスライムを光刃(こうが)で切り付けていくと、3度目で『びぎっ』っという悲鳴の後にスライムは消滅して小さな黒い石が地面に落ちた。そばによると拾い上げて支給された袋へ入れた。


ふう、と一息するとチリチーリさんから「まだいけるか?」と声をかけられたので、当然のごとくうなずくとまたスライムが飛び出してきた。同様に鑑定をかけるとステータスは変わらなかったので、鑑定をかけつつ切るを繰り返した。もっと早く!もっと正確に真っ二つにしなくては・・・そんなことを思いながら戦い続けるサイコ。精密操作が効いていのか、少しづつ真っ二つにすることが簡単になってきた。そして何匹か倒したところで屋っとレベルが上がった。まあ鍛冶で一晩頑張って上がった1つに比べたら早いほうだ。ステータスもまた少しだけ上がったのでさらに効率は上がるだろう。


「あの・・・もう少し早くとか2匹づつとか出すことはできますか?」


「おお!じゃあ2匹づついくからな!」


そう言って装置を操作すると1匹、また1匹と順に2匹のスライムがこちらに向かってきたので冷静に切り裂く。うん。瞬殺である。


「あの・・・楽に狩れそうなので、隣のエリアに移ったりできませんか?」


そう言って隣のエリアを指さすが、手で左右にぶんぶんとされた。


「まだ難しいな。ゴブリンはレベル20前後だ。今の状態だと1匹でも厳しいな。必死に1匹しとめるよりも、スライム狩り続けたほうが効率もいい。まずはレベル20目指してみようか。ちょっと連続で出るように設定してみるから頑張ってみろ。やめたい時やピンチになったら声かけてくれな」


そう言われてしまっては省がないとばかりに同意してうなずくと、チリチーリは椅子に座りなおすと目を閉じてくつろぎ始めた。そんな様子には気にせず、穴の方に向き合う。言っていた通りに1匹また1匹とスライムが飛び出てくる。正確に・・・素早く・・・もっと!もっとだ!そう思いながらスライムをただひたすら切り裂いていく時間がしばらく続いた。途中で目を開けたチリチーリは、装置をいじるとスライムの出てくる間隔がどんどん短くなってくる。負けじと速度を上げて切り続けた。それは夕方の時刻に差し掛かるまで続けられた。


「おーい!そろそろ止めるぞー!一旦休憩。俺も交代だ」


そういうとスライムが沸くのが止まったので、すでに沸いていたスライムを瞬殺するとサイコも一息を付いた。


「とりあえず俺は上がりで晩飯だ。変わりは遅番が・・・ほら、あそこにいる奴らがすぐにでも入れるがどうする?」


そう言って入り口付近の休憩スペースを見ると何人かがこちらを伺っていた。あとツンデレ―はすでにいない。もう帰ったとのことだ。サイコもさすがにお腹がすいたのでまずは夕食をと伝えて訓練所を後にした。レベルは5つ上がって8になっていた。そして鑑定は詳細鑑定へと進化していた。初日としてはそれなりの成果に満足しながら、食堂へ行くとタイミングよく合流したウィンたちと食事をとり、そのまま部屋へ戻った。上がったレベルに喜んでくれた赤い盾の面々に感謝しながら今日のところは明日の仕事にそなえてゆっくりと休むことにした。なんだか今日はいい夢が見れそうだ。そんな気がするサイコだった。


やってやりますよ!!!




現在のサイコ

種族 人族 / 年齢 18 / 性別 ♂

LV 8m

力 19

守 6

知 12

速 36

スキル up!!詳細鑑定(318) 言語疎通(999999) 肉体強化(264) 魔力増強(82) 料理(694) 精神耐性(59) 無限収納 調合(5) 並行処理(458) 鍛冶(758) 酒造(5) 精密動作(241) New!!危険察知(5)

魔法 転移(51) 浮遊(28) 治癒(1) ウィンド(1) 浄化(5) ウォーター(12) ウォーム(5) New!!光刃(こうが)(124)

加護 女神の加護

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